L【第2次分権改革】

■増田寛也・地方分権改革推進委員会委員長代理(前岩手県知事)

「分権改革は成果と到達点をどう確実にするかだ。国民の関心を引き付けておく必要もあるし、今後ともできるだけ国民へのメッセージを込めるひと工夫が要る」

                                聞き手 尾形宣夫「地域政策」編集長

【略歴】
ますだ・ひろや
1951年東京都生まれ。77年、東京大学法学部卒業。同年建設省(現国土交通省)入省。茨城県企画部鉄道交通課長、建設省河川局河川総務課企画官を経て、94年、同省建設経済局建設業課紛争調整官で退職。95年、全国最年少の知事として岩手県知事に就く(3期)。2007年に岩手県知事を辞し、第2次分権改革を推進する「地方分権改革推進委員会」の委員長代理に就任。
知事在任中は全国知事会の改革派知事として活躍、岩手県でも「公共事業評価制度」の導入や市町村への権限・財源にとどまらず職員の移譲による「市町村中心の行政」を推進した。また、青森、秋田両県と北東北3県の連携事業を推進した。政府関係委員として、郵政民営化委員会委員、官民競争入札等監理委員会委員。21世紀臨調副代表。

▽分権改革は3次、4次へと続く

尾形 新しい分権改革推進委員会が本格的な論議を続けています。第二次分権改革はどういう風に進められるべきと考えますか。

増田 第一次分権改革は平成7年にスタート、平成12年の地方分権一括法で一つの権限関係が整理されてできあがった。財政面の問題はその時に行われなかったので、小泉内閣の三位一体改革で手をつけた。だから一次改革全体でつくりあげたベースキャンプを前提に、改めて分権について今の時点でこれまでの成果を分析、検証して、それで何をどう進めていけばいいのかと考えて改革を進めていく。
 一次改革のベースキャンプをさらにきちんと固めて、もっと頂上に向けて歩を進めようと第二次改革の議論を方向付ける「基本的な考え方」をまとめた。
分権改革はこの後も三次、四次と続いて行かなければならない。そういう流れの中で3年間という限られた期間にできることを委員会は求めていく。

尾形 一次改革は地方への国の機関委任事務を全廃しました。二次改革は積み残しの財源問題に切り込みますか。

増田 地方分権改革推進法の書き方を見ると、役割分担を国と地方との間で整理して、その上で役割分担を踏まえた税財政の配分のあり方を議論することになる。それと併せて、依然手がついていない権限移譲や義務付けとか枠付けなど、国の過剰関与がある。それから、法定受託事務と自治事務に分けて整理はされたはずなのだが、自治事務なのにまだ一律の基準があって、真の意味での自治事務になっていないということがある。
財政の問題も非常に重要だ。それも引き続き見直しをしなければならない。それから、条例制定権をもっと拡大して法律で全部一つ一つ決めるのではなく、各地域の自治体に委ねることもやっていかなくてはいけない。ただ問題を順番に審議をするのではなく、同時並行的にやらないと一次改革の繰り返しになってしまう。

尾形 一次改革で解決したはずの役割分担の中で国の関与などを整理して2次改革にもっていく。

増田 一次改革に当たった西尾勝さん(東京市政調査会理事長、東大名誉教授)の話を聞くと、閣議決定という前提があって各省ときめ細かな議論をやらざるをえなかった。そういった議論のやり方も教訓とし、消費税の引き上げとも絡んであまり議論をしなかった税財源とか財政問題についても十分時間をとって議論をしなければいけないと思っている。

尾形 第一次改革の任に当たった学者グループは、官僚と夜中までケンケンガクガクの議論をしました。しかし、二次改革の時間的余裕はあまりない。一次でできなかった事を整理しながら、蛸壺に入らない議論が必要だという考えですね。

増田 ここで大ナタをもう1回振るうやり方でやっていかないと駄目だ。

▽財政面でのセ−フティーネット必要

尾形 財政破綻した夕張市の問題は、地域振興のあり方を突きつけました。国税と地方税の税源配分を現在の6対4から5対5にするとか、法人二税を中心にした「共有税」案は自治体の財政裁量権を大きくしようというものです。自治体の関心はカネに向いています。

増田 財政がこれだけ逼迫しており最大の関心事かもしれない。だが、税財源の問題は難しい議論になり、国民に分かりづらい。どうせ税で取られるなら、国税で取られても地方税で取られても税負担が同じであれば、国民のためにいいことをやってくれる方でやってくれれば構わないとなりがちだ。
三位一体改革の4兆円の補助金カット、3兆円の税源移譲も政府と自治体、首長の金の取り合いみたいに思われたところがある。財政問題は大事だが、議論や審議の仕方に注意しないといけない。
自前の税収で自治体を自立させるのは基本原則だが、中小の町村に財政的な自立や財政規律の確立を文字通りの形で求めるには、同時に水平で自治体が連帯・連携をしながら、それを財政面でのセ−フティーネットにしていくというような発想が必要じゃないか。

尾形 財政調整機能を果たしてきた交付税は、三位一体改革で大幅に削られた。そして、交付税が今度は一部、交付金という形で性格を変える時期が始まっていると言う声もある。水平調整機能があやしくなってきたから、共有税のような形で調整機能を維持しようと狙っているとも思えます。

増田 交付税の原則はきちんと確認しておく必要がある。交付税は地方固有の財源であると同時に、財政調整と財源保障の二つの機能を果たしている。その機能を発揮させるためには制度の透明性を高くする必要があり、それができれば制度の信頼感も増す。
ところが、交付税が削られてほとんどの自治体がアップアップしている。そういう現実は無視できないから、水平調整で地方の共有の税として自治体間の税源の偏在を調整する。そのときに、特別会計にお金を直入するような形にして、それで制度の機能が発揮できるような形にしていくという、地方の共有の金として使うような議論が欠かせない。「ジリツ」させるための横の連帯が絶対必要だと思う。

尾形 「自立」ですか。それとも「自律」ですか。

増田 今は両方だ、夕張市の問題をみても。だから、両方の「ジリツ」がないと、多分国民は納得しない。律する方もきちんと働かないといけない。重要なポイントだ。
 心配しているのは、法律が役割分担から入って権限の話、それを踏まえた上での財政論となっているが、財政当局は税源移譲はあまり議論してほしくない、触れてほしくないという警戒感が強いんじゃないかと思う。ただ、私は二次改革の中で財政問題は、財政規律を高めるための装置をちゃんと組み込むことを含めて、やはりポイントだなと思う。

▽偏在問題の地方間対立は国の思う壺

尾形 ところが、二次改革の重要性が言われながら、永田町や霞が関の関心は薄らいでいる。一方自治体にも改革疲れが表れ、財政の窮迫が加わって改革への意欲が弱まっている感じもある。これを乗り越えるには相当な努力とエネルギーが必要です。

増田 改革の順番や手法は皆理解していると思うし、共有化しなくてはいけない。様々な各自治体間の財政面での偏在の問題に今まできちんと対応できていなかった。交付税の総額がこれだけカットされれば、財政調整の機能が働かない。だから、「ふるさと納税」の話だとか、あるいは「東京DC特区構想」のようなことも言われだし、その根っこには偏在の問題がある。
ただ、東京対地方といった議論に押し込めないで、あくまでも国対地方の中で地方の間の偏在の問題に光を当てるということが大切だ。その手法は様々あるが、例えば消費税を主体にした偏在性のない税制を中心に地方税を組み立てていくとか。あるいは、法人事業税、法人住民税の法人二税は国税の方に返して交付税の原資に組み換えるなどいろんなアイデアがある。
対東京の問題は知事会の中で本格的に議論する必要がある。分権疲れが地方団体の中ですらあるということに対しての答えを出すためには避けて通れない。

尾形 安倍内閣は統一選、参院補選などもあって税制問題に具体的に言及することはなかったが、消費税問題は避けて通れなくなった。地方消費税の取り分を増やすことは、消費税増税を視野に入れたジャブです。地方の財源が豊かになるが全体の消費税も増えます。

増田 消費税の議論をするときに、地方の取り分を増やすために地方がどういう役割を果たしていくのか、福祉目的税的に消費税を増税する、では福祉なり医療の分野で地方がこれからどういう役割を果たすのか、そこの地方が新たに今後果たす役割に応じた消費税の配分に自ずからなる。
地方消費税の割合を今の5%を前提にして、その中で取り分を変えるということは難しい。消費税率が7%になるのか8%なのか、10%になるのか分からないが、そういう税で対応しなければいけない社会的な問題に対して地方自治体がどのような役割を果たすかというときに初めて、地方の消費税取り分の議論に進んでいく。だから、そこの役割を地方としてもきちんと確保する必要がある。

▽自治の原点侵す国の判断基準

尾形 国と地方の役割を明確にしないで地方の取り分を増やすよう求めるだけでは、あまりにもシナリオがお粗末です。地方6団体が同じ認識に立たなければいけません。一方で、偏在の問題で国は地方間の対立に手を突っ込んでくる可能性もあります。頑張る地方応援プログラム」は耳当たりはいいが、自治体間の優劣を競わせるようで地方の受け止めは厳しい。在日米軍再編に絡む基地交付金も同じように「成果主義」です。

増田 今、国の方で基準を作って、その尺度からみて、「がんばってる」「がんばっていない」と判断することが多くなってきたように思う。一方で、限られた財源しかないのだからと、国民の気持ちに若干合うところもあると思う。
しかし、それは自治の考え方からいうとおかしい。もし、がんばらない自治体があったとすれば、それは住民が選択した執行者とか議会が良くなくて、結果として自分たちが受けるサービスが低下してしまう。極端にいえば夕張市みたいに。そこを勉強して、おのずと議会についても執行部についても一生懸命努力するような形に持っていくのが、自治の姿だ。
だから、それは国に判断される話じゃない。そういう地方自治の原点のようなことを、財政の規律を働かせる中で今の分岐点のような状況をうまく乗り越えていく。行革も一律の基準で標準的な自治体はこういう姿だと判断するべきではない。人が多ければ余計に人件費がかかって住民にまわる金が少なくなるから、おのずと人員減らしをやらざるを得ない。そこでの多様性は一方で認めないといけない。そこは重要なところだ。

尾形 分権委の丹羽委員長は住民の幸せと魅力ある地域づくりには自己決定、自己責任、自己負担の自治体でなければならないと三つの原則を挙げている。経済界は押しなべて同じ主張です。

増田 丹羽委員長の考え方は非常にシャープで、それでいて原則をきちんと立てて、全体を分権の国家に進めていこうと考えている。受益と負担の関係のことで負担は責任の中に入ると考えている。
委員長がさらに言っている原則は地方主役で考える、中央官庁の省益利用の厳禁だ。それから実現可能性だ。物事を実現させる上で、はっきりとした哲学を持っている。その考え方は6月から全国で始めた分権懇談会で各地方自治体に分かってもらえるんじゃないかと思っている。
夕張市の問題だけでなく、去年は3人の知事が逮捕されたり裏金の問題があったり様々な問題を抱えているのも事実だ。自己規律をしっかりさせる、責任を明確にするのは、自治を最大限発揮させるための最低限の条件だと思う。

▽地方団体は主義・主張を明確に

尾形 教育再生の公聴会で「やらせ」が世論の強い批判を浴びました。分権懇談会はどんな形式で。

増田 第一ラウンドは市町村長に話を聞く。第二ラウンドは直接市民から話を聞くこともする。地方に出掛けて行って、いろいろな所で意見を聞く機会を多く作ることが大切だ。

尾形 考え方としては非常にいいと思いますが、東京からの錚々たるメンバーを前にして、一般の人たちが自由に意見を開陳するのはなかなか難しい。であれば、各県で知事が地域に出向いて開いている地域住民との直接対話を利用する手もあると思います。

増田 地方での懇談会は、ある程度回数を重ねないと雰囲気も出てこない。やはり大事なのは、委員が直接地方の生の声を聞くことだ。首長は意見開陳に慣れているが、一般の人たちには難しいところもあるが、回数を積み重ねていけば聞きたいポイントはおのずと分かってくる。
日帰りではなく泊りがけで行けば、委員の間だけでの合宿形式の意見のすり合わせもできる。論議の時間を確保して、お互いに顔合わせて、腹蔵なく委員の間でも話をしないと。地方に行って少しでも地元の雰囲気を肌で感じることが大事なのではないか。

尾形 分権論議が本格化するのに併せて地方6団体の主張に明確な違いが表れだしました。補助金問題を巡る全国知事会議の激しい議論もありました。知事を経験した立場から見て、地方6団体はどうあるべきと考えますか。

増田 西尾さん(東大名誉教授)は一次改革の反省点として、当時の分権委員会は6団体で合意できた事しか取り上げられなかったと言っていた。ましてこれからは市町村合併で町村の数が激減、市の数が増えた。しかも、その市も人口が何百万人という県よりも大きな政令指定市もあれば中核市、特定市から1万人ちょっとの市まで様々だ。だから市の中での意見集約は難しい。
これからは基礎自治体重視でいかなくてはいけないが、市町村から見ると国も県も悪さの点では変わらない、むしろ身近にいる県の方がもっと厄介だとさえ言われる。だから、知事会と市長会の意見をすり合わせて、全員が一致団結して行動を取るのは正直言って難しい。本音を隠して表面的に取り繕うことは、もう限界かもしれない。

尾形 その知事会が麻生渡会長(福岡県知事)を無投票で再選しました。

増田 会長選挙は対抗馬が現われず無競争で当選されたが、やはり競争して勝った方が後の力が出る。無競争の方が全員から推されてという感じだが、やはり競争して、お互い強烈に意見を戦わせて、それを乗り越えた方がむしろ後に尾を引かない。
だから知事会も市長会も町村会もちゃんと主義主張を明らかにして、基本的に外にいる住民に対して見える議論をしたうえで、後はそれを国民世論の心に刻みつけた上で行動していかなければならない。
これからは特に、地方団体間の中での財政の問題、対東京問題を議論するときに、各団体がはっきりと利害を明らかにし、それを委員会の中で高い立場で見て、地方団体としてこういう線が妥当ではないかと議論するというのがいいのではないか。

▽「考え方」の柱は地方政府の確立

尾形 分権問題に対する国民的な関心は依然として盛り上がりに欠けます。分権の具体的なイメージが相変わらず見えてこないからです。だから、政治家も熱心にならない。分権懇談会も含めて各首長の責任は、これまで以上に大きいようです。
増田 国民的な議論、関心を呼ぶということでいうと、委員会の猪瀬委員は、いつもそのことを発言している。東京DC特区構想もそうだし、市議会議員半分以上は要らないなどと国民の関心を一生懸命呼び起こそうとしている。委員会審議も公開している。
分権の問題はどうしても地味な側面を持っているので、可能な限り話題づくりをしたり、分かりやすさを心掛けていかないと駄目だ。それと、「業界用語」的な言葉を極力排して、国民に説明をすべきだろう。「規律密度」なんて当たり前に使っている感覚を直さないといけない。

尾形 多くの国民が分権論議に乗ってこなかったのは、論議が専門的過ぎて理解できないからです。国民の胸にすとんと落ちなかった。委員長の言うように危機感を持たなければ、改革は進みません。そのためにも魅力あるプレゼンテーションが必要です。

増田 例えば、分権を進めていく上でまちづくりがどう変わるのか。福祉の面では、これからより重要になる地域介護が分権が進むことで形がどう変わってくるのかといった大括りの具体的な分野ごとの例を委員会で話し合っている。それを示さないと、分権問題は国民の胸にすとんと落ちない。

尾形 第二次分権改革に関する委員会の「基本的な考え方」で特に訴えたい点はどこですか。

増田 まず、前文にある「地方政府の確立」だ。それから、財政権、行政権、立法権を持った完全自治体を目指す、分権改革は政治改革である―の三つ。今までは行政だけの分権だけだったが、議会も住民もしっかりしなければ地方政府はできない。
 個別の成果に結びつくのは地方支分部局の廃止、条例で国の法令の修正を可能にする「上書き権」を含む条例制定権の拡大、それと思い切った税源移譲の実現だ。

尾形 何人かの委員が主張し、関係者も注目していた税源配分の数値目標は盛られませんでした。

増田 数値目標は数字が独り歩きすることがある。三位一体改革の時に4兆円の補助金廃止と3兆円の税源移譲といったことで、議論はそこだけに終始してしまった苦い経験がある。まさに数字を合わせる分権になってしまうことをわれわれは経験している。

尾形 数値目標はないが「考え方」は、第一次分権改革をリードした「諸井委員会」が発足直後に出した「理念」に比べると戦略が感じられます。

増田 それは、ここ10年の分権の議論の進む具合だと思う。盛らなければならないものは全部書いてある。 「考え方」をまとめるに当たって、例えば税源移譲について具体的な数値を求める意見もあった。どういう目標を掲げるかは後の戦略論につながる大事なことだ。国民に見えるような内容にするにはどうすればいいのかのジレンマはあった。

▽内閣だから政治決断ができる

尾形 委員会が目指す国と地方の役割分担は、相当難航が予想されます。提示する項目ごとに各省庁とのせめぎ合いになりませんか。

増田 あんまり蛸壺に入った議論にならないようやるしかない。役割分担もできるだけ、さらっとやりたい。

尾形 丹羽委員長は経済財政諮問会議の民間議員を兼ねています。分権委としても諮問会議と連携しながら改革を進めることになりますか。

増田 今回は諮問会議のパワーも使って連携を深めながら進めていかなければならない。尾形 「考え方」を受けて全閣僚を集めた地方分権改革推進本部が開かれました。政府の態勢も本格的にスタートしました。

増田 推進本部は全閣僚がメンバーになっているが、その中に少数の閣僚による会議をつくれるようになっている。時機がきたらその会議を動かすことになっている。首相には(官僚の思惑を超えた)政治決断するようお願いしている。これまでのように閣議決定にとらわれていると前に進まない。「考え方」は、政治的な責任でこれだけは内閣の中で必ず実現させる、それは内閣だからこそ、政治家だからこそ実現できることを提示した。
分権は国の中央省庁の形を変えること、大きく言えば国の体制を変えることだから、やはり動かすのは政治家だ。その実行過程のもとで事細かに心配しだしたら何もできなくなる。委員長が言っている「実現可能性」とは、官僚が考える実現可能性ではなく、もっと上に置き換えた国家全体として政治家も含めた国民全体として、これだったらいい国が実現できるということでの実現可能性だと理解している。

尾形 振り返ってみると第一次分権改革で、当時の橋本首相は委員会に「実現可能なこと」を求めた。その首相発言が委員会の行動を制約し、逆に霞が関の官僚を勇気づけました。

増田 そうだった。橋本総理がおっしゃったことで、当時の委員会メンバーはすごく悩んだ。

▽戦後体制の脱却に役割分担は不可欠

尾形 委員会は今後、秋に中間報告をまとめて2年以内にテーマごとに首相に勧告する予定ですが、作業スケジュールは相当過密になりそうです。

増田 これからは委員会の開催、そして都道府県に出掛けての分権懇談会を頻繁に持たなければならない。秋に中間的な取りまとめをして、たぶん来年春から勧告を出さなければならないと思う。2、3回の勧告になると思うが、それぞれの勧告でくさびを打っていけばいい。
「考え方」が「骨太の方針2007」にどう盛り込まれたかということよりも、誰も反対できない基本原則を確認したことが大事だ。それが秋の中間的取りまとめに生きてくる。そういうことが、霞が関をだんだん追い詰めていくときに有効じゃないかという気がする。

尾形 安倍首相は「地方分権は最重要課題」と言っていますが、永田町や霞が関は必ずしも首相の言葉を自らのものとしていない。改革の今後に悲観的で、首相のリーダーシップを懸念する声が少なくありません。

増田 首相は戦後レジームからの脱却を再三表明しているが、それには必ず分権の話や国と地方の形を触れざるを得ない。リーダーシップが随所で発揮されるためには周りの役者が必要だし、支える体制や条件整備がどうなされるかにかかってくる。
分権は最重要課題だという言い方は、分権委員会に最初来たときに挨拶で言っていた。後はその環境づくりが大事だが、官僚を乗り越えたリーダーシップを発揮しようという姿が随分はっきりしてきた。そこに期待している。

尾形 ところで、三位一体改革のときは、「国と地方の協議の場」がありました。二次改革に当たって地方6団体は同じ土俵を求めています。

増田 これまでの国と地方の協議の場は、政府が開こうというときしか開けなかった。それを、地方団体の要求をもっと入れて協議を進めるのが現実的ではないか。手掛かりが出来ていないが、今度できた政府の分権改革推進本部会議を開く前に、少人数の閣僚による会議で協議することをルール化するのが理想だ。

2007年 夏季号)