14)【道州制中間報告】=自民党道州制調査会

■杉浦正健・自由民主党道州制調査会会長(元法相、衆院議員)

「強大な権限を持つ道州の首長は『直接公選』か『議院内閣制』に基づく議会による間接選挙のどちらがいいのか議論が分かれる。議会の権能強化も必要だし、議会の政党化は避けられない」

                                聞き手 尾形宣夫「地域政策」編集長

【略歴】

すぎうら・せいけん

1934年、愛知県岡崎市生まれ。57年、東京大学経済学部卒。旧川崎製鉄鞄社。72年、弁護士登録。82年、第1東京弁護士会副会長。86年、第38回衆院議員総選挙で初当選。農林水産政務次官、国土政務次官、自民党財政部会長、衆議院法務委員長、自民党愛知県支部連合会会長、自民党政務調査会副会長、外務副大臣、内閣官房副長官、法務大臣(第3次小泉内閣、2006年退任)。現在は衆院予算委理事、衆院法務委員会、国土審委員、自民党総務会総務、自民党道州制調査会長、自民党国家戦略本部事務総長、清和政策研究会副会長。

▽中間報告は歴史的意義がある

尾形 道州制問題は、突き詰めれば国の姿をどうするのかです。自民党の道州制調査会が今年6月20日、安倍首相(当時)に中間報告を提出したとき、首相は「国の形をつくる大きな柱だ」と言いました。ただ、これまでの道州制論議を振り返ると、論議は立場立場で言うことが違い統一性ありません。

歴史的に見れば、1927年の田中義一内閣の「全国6州」の州庁設置案まで遡ります。戦後は55年の関経連の府県廃止と国の出先機関の道州提案に始まる長い歴史があります。それぞれの目的、狙いは様々ですが、95年の地方分権一括法成立から統一性が表れたようです。

中間報告の前文は、道州制は明治の廃藩置県に匹敵するような廃県置州であり、究極の革命的構造改革だと位置付けています。その意義は。

杉浦 中間報告は政治の世界で、自民党として初めて打ち出した方針だ。議論はいろいろあったが、道州制の理念、意義、目的、その大綱などを明確にし、今後詳細に詰めなければならない論点をまとめた。自民党としてものすごい議論を重ねながら結論を出したことは歴史的な意義があると思っている。道州制実現に向けて議論が本格的になるのはこれからだ。

尾形 自民党に道州制調査会が設置されたのは2004年秋ですが、昨年調査会が再編され、今年はこの夏までに調査会、小委員会開催が計46回に及びました。

杉浦 全部議員が議論して取りまとめ、我々の意見全体の中で方向性を出した。役人からは一切意見を聞かなかった。参加人数も多い会議は100人ぐらい出席した。議論はすべてマスコミ等にオープンにして行い、傍聴席はマスコミ、各省庁、全国知事会とか地方6団体の関係者でいつもいっぱいだった。議員の出席は延べで2千数百人になった。(中間報告は)自民党の議員全体の意見の集約だ。

▽戦略本部、調査会で本格論議

尾形 小泉(純一郎)さんが2001年4月に自民党総裁となり、国の中長期ビジョン策定を目的として「国家戦略本部」を設置。そして、04年10月に道州制調査会が発足(調査会長・伊吹文明元労相)しました。

杉浦 国家戦略本部は当時の自民党幹事長の山崎拓さんが進言したこともあったようだ。僕はその時、外務副大臣だったからメンバーに入っていない。事務局長は谷垣禎一さん(元財務相)だったが、谷垣さんが財務相として入閣、党に戻った僕が事務局長になった。
 小泉さんが出て大勝した最初の参議院選挙のときは載っていなかったが、次の衆院選には道州制の導入が入った。いわゆる、マニフェスト選挙だ。04年秋に道州制調査会が新設され本格的な検討を始めた。それとは別に自民党の道州制推進議員連盟としては検討していた。そして、戦略本部がまとめた中間報告の中から道州制のところだけを抜き出して小泉総理のところへ報告に行った。そしたら総理から「国民的議論するためにも北海道をまず先にやってみたらどうだ」と言われ、総理は相当先を読んでいること知って驚いた。 

尾形 北海道の先行実施を

杉浦 それで総理に、北海道の道州を先行実施するには法律が要ると申し上げた。特別法が必要になるからと内閣で検討しようということで準備室を作り、道州制特区推進法案の検討に入った。郵政解散で審議未了となり廃案になったが、郵政選挙の時には、自民党のマニフェストに「道州制導入の検討」「北海道先行実施」が入った。

尾形 党の推進議連がまず最初にやったわけですね。

杉浦 そうだ。最初は「道州制を考える会」がスタートし、その後国家戦略本部ができ、そして道州制調査会が発足した。この伊吹調査会の第1次中間報告というのは、北海道特区をつくるという結論を出すための中間報告だ。それ以外の問題は両論併記で全部賛否両論が書いてある、ただし北海道については先行でやるという報告書だった。

ただ、そこでの結論は連邦制は採らない、地方自治体で行くということだ。私は限りなく連邦に近い道州制と昔から言っていたのだが。私は法務大臣だから、その議論にはあまり出て行けなかった。

尾形 法務大臣としての発言は影響が大きすぎる。

杉浦 だから道州制特区の問題については調査会で議論したが、その議論の過程に僕は入っていない。昨年暮れに法律はできた。

▽沖縄には特別調整措置が必要

尾形 旧地方分権一括法ができた1995年あたりから各界の道州制の論議が始まり、ようやくイメージが固まりましたが、議論の統一性は十分とは言えません。国民の関心もない。政治はどんな役割を担いますか。

杉浦 国民の関心は極めて低かった。今でも高くはない。国民の議論といっても、どの程度までいったら熟したといえるのかはっきりしない。最終的には政治が決断する以外にないんじゃないか。1995年ごろの自民党内の議論と比べると、今はものすごく盛んになった。去年の暮れに私は法務大臣を辞めて、伊吹さんに代わって調査会長になった後のことだが、九州市長会が正式に九州の7県が合併して九州府を導入すると決議して私のところに持ってきた。こんなことは初めてだ。中国や四国、近畿も割合まとまっている。

尾形 九州の場合、沖縄の扱いが難しい。九州、沖縄は一つと言いながら、沖縄には地理的・政治的問題がある。

杉浦 沖縄には琉球王国という(歴史的な)誇りもある。特別州になるのではないか。九州の人たちは柔軟だ。九州市長会は「沖縄は特別扱いでもいいのではないか」という言い方をしていた。

尾形 ただ沖縄県の方針が定まっていない。腰が引けているとさえ言われている。なぜかといえば、沖縄が直面する問題があまりにも大きい。国に頼らざるを得ない面が多い。単独州になった場合の処方せんがない。

杉浦 道州制を実現しようとすれば、(財政的な)問題はどこでもある。そこは工夫が必要だ。例えば沖縄を全部フリーポートにするとか。今、経済特区がある。それを広げて沖縄全島にするとかね。

尾形 90年代半ば、大田昌秀さん(前参院議員)が知事時代に全島フリーゾーン構想を提起、「蓬莱経済圏」再現に当時の政府首脳も積極的でした。ところが、全島フリーゾーン構想には経済界が猛反発してつぶれました。

杉浦 琉球王国を復興させると思えばいいじゃないか。道州制を実現しようとすれば、財政的な問題はどこでもある。(沖縄が単独州になって)国が特別支援してもいいじゃないか。南西諸島は日本の安全保障の最前線だ。調整措置を設けても、国民は誰も文句言わないだろう。

▽難航した役割分担の3原則

尾形 中間報告は国の役割を外交や安全保障に重点化して、内政は道州に任せろと、という方向性を出しました。それは正しいと思うが、国と道州と基礎自治体の役割分担を線引きするのは容易ではありません。

杉浦 それは今度の議論で一番もめたところだ。役割分担に関する小委員会の遠藤武彦委員長が一覧表を出した。族議員が集まってものすごい議論になったが、最終的には一覧表は外し原則だけは決めた。
原則は、@国が政策や制度の決める場合も実施主体は道州と基礎自治体A地方支分部局を廃止し、その機能を道州、基礎自治体に移すB国庫補助事業は財源をつけて道州、基礎自治体に移行――の三つだ。この3原則は最後までもめた。役割分担を集大成するには、3原則を踏まえて専門家も入れてさらに濃密な議論をして仕分けしていく。

尾形 もめた理由は。

杉浦 地方支分部局の廃止とはどういうことだ、と。道州を導入すれば、廃止するのは当たり前だ。新しい体制で国の仕事をどうやっていくか。当然国の仕事をするには、支分部局は別にして実施主体をつくっていかなければならない。例えば、今みたいに各省庁バラバラでない国の機関を一括してまとめた九州局とかね。今みたいな「省あって国なし」では駄目だ。

尾形 反対する人の論拠はなんですか。

杉浦 基本的には道州制に反対なんだね。支分部局がなくなるのは当たり前だ。但し、国としての仕事はやらなければならない。それは、「残すとか残さない」ではない。

尾形 道州制は究極的な広域自治体です。支分部局の取り扱いにこだわるのは後ろ向きな議論です。

杉浦 北陸3県を例に取れば、農政は東海農政、産業は近畿という具合に省庁の管轄区域がバラバラだ。まだ支分部局の持っている国のやるべき仕事はある。それもバラバラではなく、国の仕事をやる機関を一カ所に集約すればいい。それと、最も重要なのは役割分担を明確にするには、国の支分部局だけでなく中央省庁の抜本的な再編が必要だということだ。また、国家公務員や道州・基礎自治体公務員のあり方を国民にどう提示するかなど考慮しなければならない点は多い。
 役割分担を巡って調査会で議論が最も集中したのは公共投資にかかる国と地方の役割だ。人口減少とか財政面の制約、環境への配慮を克服するためにも避けて通れない問題だ。

▽基礎自治体に政令市、中核市並みの権限

尾形 ところが、現業官庁は道州制に本音では強く反対しています。

杉浦 道州制に表立って反対している省庁はない。しかし本音の部分になるといろいろあると思う。道州制に強く反対していると推測されるのは国土交通省だ。職員のうち7割は地方で働いているから、道州制になればそのかなりの部分が道州に行ってしまう。だけど、道州か基礎自治体へ行くのか分からないが、仕事を移したら人が移るのは当然だ。

尾形 ほかには。

杉浦 農林水産省でしょうね。要するに現業官庁でしょう。国の行っている現業部分は、地方や民間に移していいものがかなりありますね。たとえば、厚労省のハローワークなんかは全部民営化してしまえばいい。民間の職業斡旋でいいんだから。ただ、基準監督署は民営化しては駄目だ。労働基準を守っているか監督する機関なのだから。

尾形 地方分権改革推進委員会(丹羽宇一郎委員長)も、国と地方の役割分担を最大のテーマとして取り上げています。丹羽委員会と協力して、役割分担を整理してはどうですか。

杉浦 それは考えている。スケジュールはまだないが、一応我々調査会のビジョンはまとめた。道州制問題は、安倍内閣になってさらに進んだ。担当閣僚を置き、道州制ビジョン懇談会も設けたし、地方の意見をまとめる作業も始めている。今年度中に中間報告を出すと、相当熱のこもった作業をしている。丹羽委員会とは緊密に連絡を取っていきたい。

尾形 道州議会の権能を現在の地方議会よりももっと強化すると中間報告にもありますが、国と道州議会、道州議会と市町村との関係を整理するのも難しそうです。

杉浦 一つには基礎自治体、市町村合併を進め基礎自治体を強化するのが前提。我々の考えでは、方向としては基礎自治体を政令指定都市や中核市並みの権限を担えるものにしたい。そうすると県の仕事はほとんど空洞化する。

尾形 平成の大合併で市町村数は約1800団体になりました。だが、これまでの経緯、結果を見ると更に合併を進めると混乱を伴う気もします。

杉浦 合併から漏れるところが出てくるだろう。合併できないところが最終的にどれくらい出るのか分からないが、そういう自治体をどうするかは別途考えなければならない。
 例えば、有力な政令市が合併から外れた自治体を支援するとか、あるいは、合併できない自治体だけで協議会をつくって広域行政をやるとか、さらには、州の直轄の地域にして首長も議会も置かないが、(住民生活のために)最低必要な事務だけは道州が責任を持ってするとか工夫すればいい。
 政令市は法律では50万人以上、運用は70万人以上になっている。中核市は30万人以上。しかし人口にはこだわる必要ないじゃないか。要するに基礎自治体の権限、機能を決めて人口20万人であろうと、10万人であろうと(自治体の業務を)担えればいいじゃないか。
 現在、市は政令市、中核市などと4種類の格付けしているが、新自治体はそれを一律にすればいい。問題は財政力だ。

▽「東京」は隠れた最大の問題

尾形 道州制でも財政問題は最重要課題の一つです。自主的な財政力を実現するため、中間報告は2段階の税財政制度が必要だと指摘しました。

杉浦 これは税財政制度に関する小委員会の大野功統委員長の考えだ。税源移譲で道州の税源を制度として導入しても、税収の基盤の経済力に格差があって、直ちに理想は達成されない。だから、第一段階として自主財源の強化や財政調整システムの創設、国の責任による社会的インフラ整備などを進めて基礎体力を強化し、第二段階として各種の交付金や調整システムを廃止する――というもの。
 つまり、いきなり財政的に独立しようとしても無理だから調整措置が要る。道州ができるまでに第一段階を終えるのかどうか、まだ詰めた議論になっていない。引き続きこの問題をそれぞれの委員会で議論してもらう。

尾形 財政調整システムで言う「シビルミニマム交付金」とはどのようなもの。

杉浦 新しい国からの交付金で、「特定目的包括交付金」と呼んでいる。交付金の対象は、社会保障、義務教育、警察・消防とし、道州ごとに客観的な指標に基づき配分する。
 要するに国へカネが集まってきているのだから、文句を言わないでドンと一括して渡せと。地方交付税プラス補助金プラス交付金をまとめて財政の不均衡を是正しないと、とてもやっていけない。いま現実にそういう問題が出てきているわけだから。

尾形 東京問題は、どのように考えますか。

杉浦 実は、これが隠れた一番大きな問題なのだ。中間報告の「道州制における税財政制度」で財政力の地域間格差を是正するためには、道州制全体の制度設計するに当たって、東京に税収が集中する問題にどう対応するか明確にしなければならない。東京への一極集中という古き課題を、道州制の仕組みの中でどう解決するべきか。

尾形 調査会としては問題をどういうふうに議論、対応しますか。

杉浦 これから議論していく。東京都選出の議員が調査会に出席している時と、いない時とでは議論が全く違う。出席していれば発言も控えめになるが、いなくなると激しい東京批判が噴きだす。
 この前、関西経済同友会で講演した時に会場を埋めた経済人に言った。
 「僕が若いころは、関西に本拠がある大手都市銀行や大手商社の本店や本社は大阪にあった。それが、みんな東京に移ったじゃないか。道州制になったら、本社を移すかどうかは経営者の判断で決めるわけでしょ。工場立地にしてもインフラとか税金のこととか、いろんな総合判断で決めるわけだ。だから、近畿州をつくると主張するのは結構だ。しかし、あなた方の本店・本社が戻ってこれるかどうか。地方への工場立地にしても、進出メリットのある道州を設計しないといけないと思う、そういう州にしないと意味ないですよ」
という話をした。

尾形 東京への一極集中が極端に進み、首都機能移転が真剣に論じられました。ところが、今ではその片鱗さえうかがえません。

杉浦 ドイツは連邦制国家だ。私が弁護士時代に、ウエラというドイツの当時世界一の化粧品会社の本社へ行った。フランクフルトから30`ぐらい高速道路で行った田舎町にある世界的な大企業だ。ドイツの場合は、大都市に本社はない。ベルリンなんかに本社がある会社は珍しい。要するに彼らに聞いたら、ここで十分だと言う。情報も集まってくる、空港はフランクフルトまで行けばいい。日本だけが、企業はなぜ大都市に集中するのか。集中しないような設計をどうしたらいいか考えないといけない。

▽「直接公選」か「議院内閣制」の両論

尾形 道州議会の議員の数について小委員会案は「10万人当たり1人」という基準を示しましたが、中間報告には盛り込まれませんでした。

杉浦 参議院選挙が間近に迫っており、県会議員に頑張ってもらわなければならないのに、基準を示すと怒る県議が出てくるかもしれないということで外してくれと(いう意見が強かったからだ)。今の府県議会議員は平均5万人ぐらい(に1人)かな。3万人に1人(のところ)もある。愛知県は10万人に1人だ。「10万人を目途」というのは、東京都は別として、道府県の中で一番多いところを「目途にして」と、道州の組織・権限に関する小委員会の大島理森委員長さんが言った。

尾形 「10万人に1人」の考えはまだ消えていないと。

杉浦 残っている。要するに、(人口が少ない)下に合わせたら(道州議員の)数が多すぎる。逆にあんまり上なら文句が出る。その適正な規模のあり方を検討し、さらに議論を深める必要がある。ただし、「10万人に1人」も議論したらどうなるか分からない。

尾形 道州の首長の選出方法についても「直接公選」と「議院内閣制」の二つの考え方があります。

杉浦 これは議論が真っ二つだった。道州制になれば規模が大きくなる。例えば「近畿州」なんかができると人口2千数百万人、「関東州」も3千数百万人となり、一つの国より大きい州ができる。そこで、首長は「大統領制」がいいのか、「議会制民主主義」がいいのか、という議論になる。今の知事だってものすごく権限を持っている。選挙がなければ代えられないということになると問題は大きい。
 一方において、「大統領制」に対しては議会の権限を強くする方法がある。議院内閣制にすると政党制になる。州議会議員選挙もある。道州政府の「閣僚名簿」や公約を示して議論をすることになる。どの政党を選ぶかという有権者の投票になる。選挙が終われば、議会が首長を選び、議員が執行部に入って行政を運営する形になる。

尾形 今の地方議会は党派性を薄めている。しかし道州議会は、そうもいかなくなる。

杉浦 議院内閣制では、そうなると思う。アメリカの州は党派性を明確にしている。アメリカの州議会の権限は日本より強い。だから、どちらの選択肢を取るかという問題と、議会の権限を強くしないと首長の暴走をチェックできないじゃないかという点では、調査会の意見は一致している。

▽参院選大敗で作業の遅れも

尾形 道州制調査会の中間報告に地方6団体が厳しい点数をつけています。

杉浦 点数はご自由だけど、僕たちは中間報告は歴史的な文章だと思っているし、自民党として初めてまとめたものだ。もうこれから後ろには戻さない。

尾形 調査会のこれからのスケジュールはどうなりますか。

杉浦 中間報告の最後でも記したが、道州制の長所、短所を国民に分かりやすく示して分権改革など諸改革と連携しながら道州制の導入を推進する必要がある。特に、北海道が道州制の先行モデルとなるよう推進していく。
 3年以内に策定される政府の道州制ビジョン懇談会の論議や分権改革の進展を踏まえて、その後3――5年をめどに道州制推進に関する基本法の制定や実施計画を策定、その2年程度の準備期間の後で完全に道州制に移行することを考えている。
 そのためにも、道州の区割りや国と道州の役割分担、道州議会のあり方、道州制下の中央省庁のあり方、税財政制度のあり方など11の論点の検討を深めたい。

尾形 先の参院選は与党が大敗、政局も微妙です。スケジュールに狂いは出ませんか。

杉浦 多少ペースが落ちるかもしれない。民主党の小沢代表は基礎自治体を300にするとマニフェストに書いている。小沢さんとも議論したいと思っている。

尾形 調査会の最終報告はいつごろ出しますか。

杉浦 まだ決めていない。来年3月に政府のビジョン懇が中間報告を出すって言っている。最終的結論をいつにするか。それまでは、我々は内部で議論する。

尾形 丹羽分権委員会も種々報告書を出します。

杉浦 とにかく分権委ともビジョン懇とも連絡を密にしながらやっていきたい。

尾形 霞が関の官僚は、手ぐすね引いて待つと言われています。

杉浦 官僚は反対できないはずだ。必要性はわかっているのだから。未知の世界に入っていくんだからね。我々は法律と制度を白地に書くようなものだ。それは役人に結論を出せといったって無理だ。政治が決める以外にない。

尾形 自治・分権を考える場合、欠かせないのは「団体自治」と「住民自治」です。これまでの分権改革は、国と都道府県間の権限、税財源の移譲という団体自治が柱でした。しかし、真の自治は住民自治が尊重されなければならない。道州制調査会の会長として、団体自治と住民自治の兼ね合いをどう考えますか。

杉浦 そういうところは、調査会として厳密に考えていない。ただ、地方自治体は現在のような「3割自治」でなく、百l自治でなければならない。団体自治であろうが、住民自治であろうが。国がコントロールするのは駄目だというのが基本的な考えだ。
                                              (2007年 秋季号)