E【沖縄の自治と米軍基地】

■小川和久氏=国際政治・軍事アナリスト

「防衛問題で日米の認識ギャップは大きい。日本は驚くほど知恵がない。日米安保が切られて一番困るのは米国だ。自治体も不勉強で、スクラムを組めば何とかなるという考え。独立した国、自治体であれば、こうするのが普通だというところで動いていない」

                              聞き手 尾形宣夫「地域政策」編集長

【略歴】

おがわ・かずひさ
1945年、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校終了。同志社大学神学部中退。新聞、週刊誌の記者を経て84年独立。危機管理総合研究所を主宰し、政府や各政党への助言やテレビ、ラジオなどでコメンテイターとして活躍。危機管理や防災対策の充実を政府、自治体に積極的に提言。著書に「『湾岸危機』の教訓」「LA危機管理マニュアル」、翻訳書に「生物化学兵器」など。総務省消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを務める。


▽認識ギャップが大きい日米交渉

尾形 在日米軍再編の問題をどうどうとらえますか。

小川 在日米軍の再編問題で浮き彫りになったのは、地方自治体だけでなく、政府も含めて軍事問題に対する基礎知識があまりにも乏しい実態が影を落としていることだ。新聞は「米軍再編」、「在日米軍再編」と統一されていない。米軍再編と在日米軍再編は全然意味が違う。米軍再編は米国のグローバルな戦略の中で米軍の配置をどうやっていくのかという問題。日米安保体制、在日米軍のあり方をどうするかが在日米軍再編。そして個別の基地問題がある。
 日本側は米国との認識のすり合わせをしなければいけない。米国は、日本は自分たちに近いレベルの知識や認識を持っているだろうとの前提で話をしてくる。ところが日本側は、面子の問題もあるから知ったふりをする。そういうことが繰り返されてきた。だから、日米の認識のギャップが拡大した。これを放置したら日本の国益を前提に解決することはできない。これが昨年8月、石波茂防衛庁長官(当時)と2人っきりで話し合った共通認識だ。

尾形 2人の話し合いはどんなことを。

小川 石破さんの留任を前提にしたのだが、一つは米側と日本側の専門家が、1週間くらい徹底した討論を合宿でやり、その中で認識のギャップをなくす。もう一つは、総理官邸の中に軍事問題が分かる総理補佐官を置いて外務省、官邸、防衛庁が三位一体でこの問題を取り込むことができるようにしなければならない。ただ、一番目の問題は非常に深刻だった。米側と対等以上に議論できる人間は数えるほどしかいない。この弱体ぶりをまず認識することから始まる。

尾形 しかし、防衛庁長官は代わりました。

小川 石破さんが留任しなかったので、合宿はなくなって、その代わり審議官級協議というところから始めることになった。防衛庁長官と僕が真顔で話をしなければならないほど日本の軍事問題に関する取り組みが遅れている。その結果としての米軍基地問題だ。だから、まず政府が米国と本当の議論ができるレベルに知識や認識を高めなければならない。
安保を切られて国益を損なうのは米国だということが現実にある。日本側が知らないことを前提に、米側が日本の足元をみた議論を仕掛けている。だから、自治体はそういう現実を直視して、自ら取り組まない限り基地問題は前進しない。

▽実質的意味をなくしたSACO合意

尾形 在日米軍基地を抱える東京、北海道、沖縄など14都道県の知事でつくる「渉外知事会」の動きも活発で、詳細な要望書も政府に出しました。

小川 政治家でなければならない知事たちなのに役人の発想で動いている。渉外知事会は、再編問題をまず外務省や防衛庁、そして自衛隊に聞く。自衛隊は専門分野はともかく、全体を見る立場にない。外務省は知識がない。結局、きちんとした日米安保観すら持たないままに、個別の基地問題について声をあげたり、知事会がスクラムを組めば、何とかなるだろうという認識だ。

尾形 在日米軍再編で最も注目されるのは深刻な問題を抱える沖縄米軍基地の取り扱いです。鳴り物入りで合意した普天間飛行場の返還は、嘉手納基地への統合案が飛び出すなど、一段と不透明になっています。

小川 (普天間返還を決めた)SACO(日米特別行動委員会)合意なんてないようなものだ。政府としてSACOなんかを吹き飛ばして現実味のある方向にいくためには、閣議決定を変更するかやり直さなきゃいけない。ところが、役人にはその度胸がない。それでいて、トランスフォーメーション(米軍再編)でごちゃごちゃにされる中で、一気に過去のSACOには関係なくやろうと悪乗りするところはある。(普天間代替施設は)名護市の辺野古にはもっていかない。嘉手納統合はもうないと思うべきだ。

尾形 辺野古沖の埋め立て方式による軍民共用空港計画はどうなりますか。

小川 辺野古沖での計画は、目の前の海が埋まってしまうなど最悪だ。沖縄担当の環境大臣、小池さんと話し合った。沖縄で守るべき環境は優先順位で一番は海だ。海に手をつけてはいけない。陸上は若干妥協しなければならないが、赤土の流失を防ぐ技術のある企業について国際的なコンペをやらないといけない、ということで認識が一致した。だから、(普天間の代替施設は)完全陸上基地になると思っている。辺野古の計画は白紙還元せざるを得ない。

尾形 では、普天間飛行場はどこへもっていきますか。

小川 危険だ、墜落事故が起きたら日米関係を壊すから、ということで米国は普天間返還に同意したが、そこで政府は役人に全部任せて何かができると思っている。政治がしなければならないことが全くされていない。大事なことは、返還合意と同時に仮の移駐先を決め、普天間駐留の航空機の部隊をたとえば1週間以内に移駐させ、住民の危険をなくすることだった。これが行なわれなかった。
また、政治は普天間移設合意を突破口にして沖縄の米軍基地問題全体の解決を図り、同時に沖縄の自立に向けての構想を描くことだ。これも、私以外に構想を出した者はいない。私は96年6月以来構想を提示してきた。去年3月にも、米ジョージ・ワシントン大学の日米フォーラムで構想を示した。

▽普天間はキャンプ・ハンセンに移転、嘉手納基地はハブ空港化

尾形 「沖縄クエスチョン」(米ジョージ・ワシントン大学出版)にある小川論文ですね。

小川 沖縄の基地問題を解決し、併せて沖縄の未来を切り開こうとするとき、米軍基地の整理・縮小の実現と抜本的な振興策の立案、米国の軍事的プレゼンスの維持の三つを同時に満たすにはどうするかだ。これが条件になる。
 まず、普天間と同じ大きさの海兵隊専用の飛行場をキャンプ・ハンセンの陸上部分につくり移設する。キャンプ・ハンセンは普天間の約10倍を超える広さがある。基地内の施設をすべて整理、滑走路などを建設する。それと、キャンプ・シュワブに沖縄の抜本的振興を視野に入れた完全な陸上型の軍民共用空港を新設、これと連動する形で嘉手納飛行場をアジアのハブ空港として運用する。
県内移設という反発を招きかねないが、海兵隊の縮小につながる海外への「即応後方配備」と嘉手納飛行場をハブ空港化する上で強力な対米説得材料となる。海兵隊の航空戦力がレベルダウンしないことを保障するから、(米国は)ほかの米軍基地の整理統合の話し合いに応じてくる。
 即応後方配備は、県民が一番嫌がっている海兵隊地上部隊の犯罪をなくすため、部隊の即応性を下げない状態で後方に配備する。後方がフィリピンであるか、米本土であるか、オーストラリア北部であるかは米国が決めればいい。そのために24時間以内に戻ってこられる有事協定を結ぶ。湾岸危機でも活用された民間機をチャーターする制度(CRAF)を海兵隊は持っている。
地上部隊の即応後方配備を実現するためには、もう一つ、MPS(事前集積船)、つまり世界の3個所の海上に配備している重装備を載せた事前集積船船団のうち、マリアナ海域・インド洋の分の機能を沖繩が支えているが、これを明確にする。これだけで米軍基地問題はかなり動く。

▽キャンプ・シュワブ内に民間機の高段階整備拠点

尾形 普天間の嘉手納統合は、沖縄の抜本的振興に役に立たないと。

小川 嘉手納統合は、軍事基地として嘉手納が固定してしまうことを意味する。米国は、日米安保をやめない限り嘉手納基地を返さない。ただ平和時にあの地域を占有し続けることは沖縄の自立を阻害する要因になる。だから平時にはハブ空港として使う。有事にはきちっと軍事に使えればよい。米軍の基地機能が弱まるという周辺国への誤ったメッセージにはならない。
 そのために、(96年の普天間)返還合意の2カ月後に米側と話し合った。空軍は、大型機は千歳でも構わないと。新千歳国際空港の開港で千歳の民間機部分は空いているし、6時間以内に戻って来られる有事協定も大丈夫だ。

尾形 キャンプ・シュワブの軍民共用空港構想を具体的に。

小川 アジアの民間航空機の高段階整備の拠点にすればよいという考えだ。本国の工場でしかできないボーイング社やエアバス社の高段階整備をここでやる。これは政府が両社に頼めばできる。そうすると、アジアの旅客機はみんなここにくる。

尾形 キャンプ・シュワブにそんな余裕がありますか。

小川 平地が空いているかどうかしか見ないのは役人的な考えだ。一番理想的なところに飛行場を作って、そこにあるものは全部どける。キャンプ・ハンセンも同じ。役人はどこが空いているかしか見ない。
兵舎を組み替えるのは簡単だ。普天間基地の大きさは福岡空港と同じだが、キャンプ・ハンセンとキャンプ・シュワブを合わせると、それが15個入る。ただこれは山がかかったりするので、環境の問題もあるが。キャンプ・ハンセンのど真ん中には昔、飛行場だった跡地も残っている。
だから、いかようにでも建設はできる。地元が同意すればだが、キャンプ・シュワブには、4000bクラスの滑走路をもつもの、あるいは3000b2本ぐらいあるものをつくりたい。アジアの高段階整備の拠点にすれば、それだけで航空宇宙産業や関連産業の大規模な展開や大学などの教育機関の誘致も期待でき雇用の確保と人口増が実現できるだろう。

尾形 大型機のそのメンテナンスを。

小川 最後の一番レベルの高い整備を、シアトルやツールーズに代わってやれるようにする。日本だけではなく、アジアの各国の旅客機を集めれば、アジア各国は、それだけで燃料代が浮く。これをやると、雇用から何から、巨大なものが生まれる。あと、問題になるのは、騒音を伴うテストフライトだが、これを下地島でやろうと考えている。下地島には3000b級の滑走路がある。地元はこれだったらいいと言っている。既存の基地内に高段階整備の拠点をつくって、テストフライトは下地でやる。この構想をアメリカ側は全部知っている。

▽米軍の即応性維持した後方配備

尾形 小泉首相は沖縄の過重な基地負担を減らすため本土側が一部を肩代わりするよう求めています。

小川 苫小牧東部地区の広大な原野に米海兵隊の地上部隊を持ってこようという話もあるが、それは相当抵抗がある。ただ自衛隊と民間が共用している千歳は、新千歳空港ができて民間機が移ったから、米軍の大型機部隊が移ってくることは問題ない。早期警戒管制機(AWACS)や海兵隊の空中給油機12機は岩国(山口)に移る。嘉手納には空軍のKC−130とKC−10は合わせて15機いる。これを千歳にもっていく。

尾形 目に見える形での基地縮小は米海兵隊の削減・縮小です。

小川 米国は、能力が落ちないような基地の整理・縮小は受けるが、削減を前提とした議論には応じない。今いる部隊が基地管理部隊だけで、有事のときに戦闘部隊がすぐ戻ってくる形なら受け入れると思う。
 即応態勢にあるというのが海兵隊のキャッチフレーズで、唯一、沖縄の部隊(第3海兵遠征軍)だけがその位置づけにある。そして、即応性を落とさないけれども、平時は部隊を後方に配備しているということを示す。それを明らかにしないと間違ったメッセージを中国に送るからだ。残念ながら、去年の11月の中国原潜の日本領海侵犯事件以来、米国が海兵隊地上部隊の即応後方配備をノーという可能性が高くなった。台湾をめぐって緊張が高まっていて、台湾に対する弾道ミサイルと巡航ミサイルを使った政治・経済・軍事の中枢に対する「断頭」攻撃と特殊部隊の急襲に備えたいということが理由だ。
沖縄の海兵隊地上部隊は、何が何でも後方配備したくないという姿勢だ。その辺をどうするかということは日本側の交渉能力だ。

▽自治実現のため自治体は独自調査を

尾形 基地問題は自治問題だという認識が高まっています。

小川 まさにそうだ。私は納税者として日米安保体制の中身を知りたいと思って調べたら、参考になる資料は何もなかった。防衛庁にも外務省にも自衛隊にもない。だから1984年に国防総省の正式な許可をもらい、自分で在日米軍基地を歩き、基地司令官に会って背景説明をしてもらったり、国防総省の正式な資料を取り寄せて全体を見たら、今まで言われてきたことと逆に、日本は米国にとっても唯一無二の戦略的根拠地であった。そのような作業を渉外知事会が独自にやるべきだ。それが地方自治を実現していく第一歩だと思う。
地方自治というのは、タックスペイヤーが身近な問題を常に行政のあり方に反映させていくということでもあり、そして、その地方自治の営みが集まってはじめて国政レベルにおいて世界に通用するような政策を実現し、あるいは民主主義を成熟させることができる。

尾形 その辺が遅れている。

小川 遅れている。全く駄目。

尾形 安全保障とか防衛問題は自治体レベルの権限を超えているからでは。

小川 どうやっていいか、分からないというのが実情ではないか。

尾形 有事法制ができてから、国民が安全保障問題に関心を持つ社会環境ができ、都道府県は国民保護計画作成に取り組んでいます。

小川 国民保護法で自治体は国民保護計画をつくるよういわれているが自治体は困っている。まず、国民保護法が、あるいは有事法制そのものが、機能するかどうかチェックしないといけない。しかし、チェックの仕方の知識すらない。有事法制は旧自治省系の官僚が書いたものだ。軍事について目配りがどこまであるかが分からない。法律が機能するかどうかをチェックして、手直しをしていく中で、計画もできるだろうし、それなりの基礎知識も備わるだろうと期待している。
 例えば、鳥取県の片山知事が政府に先んじて、北朝鮮の弾道ミサイル発射の兆しが見えたら鳥取市民をどうするかと考えた。これは偉い。しかし、避難させようとしたら11日間もかかると分かった。そこで、総務省・消防庁は自治体に、イスラエルの教訓に学んで、家の中に入るようおふれを出した。
イスラエルは湾岸戦争でイラクから39発のアル・フセイン(北朝鮮のノドンより一回り小型の弾道ミサイル)を打ち込まれたが死んだのは2人だけ。みんな防空壕と家に入った。直撃された場合以外は大丈夫だと、国民皆兵のイスラエルの国民は分かる。逃げ出したりすれば、パニックで潰されて死ぬ方が多いことを知っている。

▽安保の最大の受益者は米国だ

尾形 国民の安保観はまだ弱いですか。

小川 政府も国民も安保観は科学的ではない。根拠もなしに米国に逆らったら安保を切られると思っている。日本に安保を切られることを怖がっているのは一貫して米国だ。

ジョージ・ワシントン大学のフォーラムで、日本が安保を切ったら米国は世界のリーダーでいられるかどうかを米国側のパネリストに聞いたら皆がリーダーでいられないと言った。その意味が日本側にはわからない。
安保がなくなると日本が失うものも大きいが、米国は世界のリーダーから滑り落ちるほど大きなものを失う。それは日本列島に代わる戦略的根拠地が二度と手に入らないからだ。単なる軍事基地と戦略的根拠地は全く違う。
 日本はハワイからケープタウンまでの地球の半分で行動する米軍を支えている。沖繩が在日米軍基地問題の中心にあるのではない。日本列島全体で戦略的根拠地を形成しているのだ。基地はよその国で借りればよいが、日本列島の代わりができる国はない。米軍は巨大で世界最高レベルのハイテクで固めている。それを支えられる国は、米国と同じレベルの工業力と技術力、資金力もなければならない。だから日本が安保を切ると二度とそういう根拠地を手に入れることができない。地球の半分で行動する米国の軍事力の8割は機能しなくなる。

尾形 であれば、日本は米国にはっきり物を言うべきではないですか。

小川 だからといって威丈高に振舞う必要はないが、共通認識のもとに自らの国益を追求すればよい。小泉さんはそれを分かっている。口には出さないけれども、米国にはこれだけしてやっているのだから、これくらいは聞き入れるだろう、といった話はする。

▽沖縄は基地問題解決のベストの答案を書け

尾形 沖縄では基地に絡む事件・事故が頻発し、最近でも住民地区にごく近い所で実弾射撃をやる、米特殊部隊の都市型戦闘訓練施設に猛反発が起きています。しかし、基地被害に対する政府の対応は鈍く、沖縄の抗議にも何か欠けているものがありそうです。

小川 沖縄県は抗議するが、言いっぱなしで終わっている。腰を据えた行動がないし、その度胸もない。

尾形 経済振興の名の下に財政漬けされてしまって物が言えない。

小川 現実的にそういう問題があるが、もっと根っこにあるのは、日本人の姿が沖縄県民の姿としてあるということ。つまり、僕は98年の3月に嘉手納町で沖縄県の町村議会の議員の研修をやり、その時、問題点をレジメにして出した。野次や怒号が飛んでくると期待したが誰も反対しなかった。
 最初に問い掛けたのは、沖縄が米軍基地問題を自らの手で解決するためには、理論的には三つの選択肢があるということ。一つは日本からの分離独立、次は沖縄がアメリカの州になるという道もある。そして三つ目は日本の一部として問題を解決していく道だ。
沖繩は最初の二つを選ばなかった。大田昌秀さん(元知事、参院議員)に言わせると、我々は勇気がなかったと。ヤマトンチュは、それをはっきり言わないが、沖縄県民はリスクをとらなかった。だから三つ目の選択肢の中でベストの答案を書くべきではないのか、他に何かあるのかと問い掛けた。

尾形 具体的にはどんなことを。

小川 先ほど述べた普天間の移設を突破口とする米軍基地問題の解決と沖繩の抜本的振興策を話した。
 とにかく日本の場合、独立した国や地方自治体であれば、こうするのが普通であるというところで動いていない。
 防衛計画の大綱を例にとると、大綱には細かいことしか書かれていない。大綱というのは戦略だ。まず、自衛隊のあり方を明らかにする議論、改定が必要だ。
 一つの道は、普通の独立国家のように自立できる軍事力に変えていく。相手をたたきつぶす戦力投射能力を持つ。それは米国が嫌がるから、最悪の場合、日米安保解消もあり得るというリスクの高い選択肢だ。もう一つは、戦力投射能力を備えていない現状を周辺諸国に明らかにし、誇り高く自らの手を縛って、欠けている部分は日米安保で補えばいい。そのかわり、国連中心主義外交の立場からフルに自衛隊を国際貢献任務に出すと明言し、日本に対する信頼を高めていく道がある。
それが、本来、やらなきゃならない議論だが、一切ない。沖縄の基地問題も同じ構造だ。

尾形 沖縄でよく言われるのは事大主義です。歴史的背景もありますが、一つの生活の知恵でもあるようです。

小川 僕は、沖縄の県民は誇り高く生きていく道を選ぼうよ、と言っている。単なる、日本で一番低いレベルの自治体として扱われ、植民地的な風土を捨てずに生きていくのか。あるいは、日本の中に沖縄ありという形で、胸を張って生きていこうとするのか、どっちなんだという話だ。芸能の世界でも、日本の中に沖縄ありっていわれるほどになっている。日本で指折りの自治体になる可能性はあるんだから、やろうと言っている。そういう問い掛けだ。

2005年 秋季号)