秋月で安価(\300)に手に入るナショセミの LM1972 を使って、ヘッドホンアンプを製作します。 まあ、アンプはおまけですよw ただ、そのまま作っても面白くないので、フォトカプラでデジタル回路と絶縁してみます。 (これがよけいだったかもしれない・・・w)
世間一般的に電子ボリュームの利点は、
・ボリュームのギャングエラー(左右で音量が異なる現象)がない。
・ボリュームによる音質劣化(まあ、俺は気にならないがw)がない。
など言われています。
要するに、秋月で売っているような2連ボリュームで満足している人には、必要のないものでしょう。
え? 私ですか? ぜんぜんOKですよ。秋月でw
じゃ、なんで作ってみることにしたのか?
技術的な興味ですねw
さっそく設計・・・
で、こんな感じに製作しました。
・電子ボリューム部分は LM1972、制御には AVRマイコンの TINY13A を使用しました。
マイコンの ADC でボリューム VR1 の値を読込み、一定値以上の変化があった場合、電子ボリュームの音量設定を変更するようにしています。
今回はマイコンのノイズ対策として、フォトカプラによる絶縁を行っています。
これで、マイコンからのノイズ混入を恐れる必要がほぼなくなりますね。
また、1 ピン余りましたので電源LED D4 を PWM で音量に合わせて明るさを変えるようにしました。
* TINY13A 用のソースは TINY13A_LM1972.zip です。よかったらどうぞ。
・今回もお手軽な単電源仕様です。
仮想 GND の生成に OPA277 と LME49600 を使用しています。今まで作った中で一番高級ですw
・アンプ部分は LME49720 と LME49600 を使用しています。
LME49720 と LME49600 の組み合わせは結構評判なので、私も試してみたくなりましたw
まずは、アンプ部分の特性をはかって見ました。
・歪み率測定結果
0.003~0.005[%] 程度ですか・・・期待してたほど良くないですね。 歪み率だけ見ると以前作ったお手軽ディスクリートアンプ程度の性能で少しがっかりです。 というのも、LME49720 のカタログスペックでの歪み率は 0.000009[%] と記載されており、 ものすごく低い歪み率になるかな? と期待していたところもあったのです。 ま、そもそも私の測定環境では 0.003[%] が測定限界なので測定できませんが・・・w
・30[Ω]負荷での方形波応答
リンキングもなく綺麗なものですね(図4参照)。
・0.1[uF]負荷での方形波応答
0.1[uF] でも発振はしませんでした。これならば発振対策は不要でしょう(図5参照)。
・DCオフセット電圧
アンプのオフセット電圧は 1.5[mV] 程度でした(図6参照)。 この程度なら、データシートになるような”DCサーボ”までは必要ないと判断します。 たまたま当たりを引きましたかね?
・RMAA(RightMark Audio Analyzer) の結果
詳細は こちら です。
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB | +0.02, -0.12 |
Excellent |
Noise level, dB (A) | -100.5 |
Excellent |
Dynamic range, dB (A) | 100.5 |
Excellent |
THD, % | 0.0029 |
Excellent |
THD + Noise, dB (A) | -87.3 |
Good |
IMD + Noise, % | 0.0057 |
Excellent |
Stereo crosstalk, dB | -73.9 |
Good |
IMD at 10 kHz, % | 0.0041 |
Excellent |
General performance | Very good |
測定結果から見てわかるとおり、音質には不満はありません。 気になっていたマイコンのノイズもオシロスコープでは観測できませんでした。 もちろん聴覚上も問題ありません(くそ耳ですがw)。 とりあえず、ヘッドホンアンプとしては合格点です。
さて、電子ボリュームの話にうつります。
ボリュームを変更したときに僅かですがノイズが発生します。 ”グリッチノイズ”っていうんですか? 「チチチ・・・」という感じです (再生時にはまったくわかりませんが、無音時であれば僅かに聞こえるレベル)。
感覚で言ってもあれなので、そのノイズを WaveSpectra で測定したものを図7に示します。 WaveSpectra の設定を「ピーク」に設定し連続でボリュームを変化させました。
データを見てみると、全体的にレベルが上がってますけど 75[Hz] にピーク、次いでその2次高調波かな? 150[Hz] にピークが見て取れます。 うーん、何の周波数でしょうか? LM1972 のクロックにしては遅いし、ボリュームの変更間隔でもないし、60[Hz] のハムでもないですしね・・・ ちなみに、大きさは -90[dB] 弱です。 なんか数字だけ見ると聞こえるの? というような微妙なラインですが実際聞こえるんですよ! 気のせいではないと思います。
DCオフセットがあるとグリッチノイズが出とあったので、確認のために LM1972 のオフセットを調べてみましたが 1.4[mV] 程度と、 まず問題ない値でした(LME49720 のバイアス電流からオフセットを見積もっても正常範囲です)。 また、「FET 入力の OPアンプを使用するべし!」とありましたので、LME49720 から OPA2134 へ変更してみましたが変わらずです。
DCオフセットが原因でないとすると電源でしょうか? そこで電源ラインを調べてみると、ボリューム変更時に電子ボリュームのボリューム変更に同期した変動がありました。
図8は +6[V] 電源ラインですが、1回の音量変更につき 60[mV] 程度の比較的大きな変動があります。
図9は -6[V] 電源ラインですが、+6[V]ラインと比較すると小さく ±10[mV] 程度の変動でした。
フォトカプラにはボリューム変更時に、8~10[mA] 程度のパルス状の電流が流れますので、 これが +6[V] ラインを揺さぶっていると考えられます。 ちなみに、-6[V] ラインのほうが小さい理由は、フォトカプラの負荷側の電源を +6[V] と GND から取っているためと思われます。
というわけで、電子ボリュームのデジタル電源を別途外部から供給しても見たのですが、 結果グリッチノイズは消えませんでした。
まあ、変動は大きいですが周波数が遅いので、この程度の電源ラインの変動は OPアンプが吸収してしまっているはずです。 やはり、原因はフォトカプラのスイッチングによる電源変動ではないのか? 正直ちょっとお手上げですなぁ・・・(´・ω・`)
というわけで、まとめです。
・今回の方法でマイコンのクロックノイズは観測できませんでした。
というか、マイコンからのノイズが相当小さいので、絶縁までは必要なかったんですかね? とりあえず言えることは、「マイコンを混在させても電源さえきちんと処理すれば影響はほとんどない」って事ですね。
・しかし、電子ボリュームのグリッチノイズに対しては相当神経質になる必要がある。
音量変更しなければノイズは乗らないわけですが、
完成度を高めるためには”グリッチノイズをどこまで小さくできるか?”が肝でしょうね。
少なくとも私の回路構成では完全無音というわけには行かないようです。
・・・といっても、そんなに手抜きしたつもりもないので、
「そもそも LM1972 は ”完全無音” でボリューム変更できるのか?」という疑念も生まれ・・・
うわぁ、最悪だ!責任転嫁とか!! ううう、私が屑なだけです。ナショセミさんごめんなさいw
最後に感想ですが・・・
正直、普通のボリュームでもいいんじゃないでしょうか?w
べ、別に俺が LM1972 使いこなせなかったって言う、いいわけじゃないんだからね!(サーセンw)
まあ、今回 ”しっかりと電源対策すれば、マイコンを使用してもアナログ回路に影響は出ない。” ということがわかっただけでもめっけもんでした。 オーディオミキサーとかセレクタを作るためにマイコンを使用してもぜんぜんOKなわけですもんね。
さてさて、最終的には満足良く仕上がりではありませんでしたが、 これから LM1972 を使用しようかな? という人のために、少しでもこの記事がお役に立てたらと思います。