小ネタ5 絶縁型DCアダプター分配器


絶縁型で分配するのを作ってみるよ!

DCアダプターがいっぱいあってごちゃごちゃしているので統一したい!
そう思い分配器を作ることにしました。

1. 二股ケーブルはどうよ?(非絶縁型)

・ メリット
簡単に作れる

・ デメリット
非絶縁型ゆえにGNDの電位を考えないとショートするケースがある。
特に、音声機器を複数使用する場合に問題が多い。


一番最初に思いつくであろう二股ケーブルですが、このデメリットを忘れがちです (私も最初忘れて「分配するか・・・いやまずい」って感じでしたw)。 デメリットが問題となる場合を具体的に説明すると図1 の様になります。


図1 分岐ケーブルが使用できない例

この様に2つの機器のGNDが違う場合、正常に動作しないのです。 私の場合といえば「VUメーター」はアダプターの GND 基準の単電源仕様で回路が構成されていますが、ヘッドホンアンプは仮想GND を使用しているため、 音声入力を共通とした場合に図1 のようにまずいケースになっています。 また、私の例に限らず皆様のDCアダプターを使用する機器のGNDレベルがすべて同じとは限りませんよね?

補足 : 図1の例では、仮想GNDを作り出している中点が GND になってしまいます。 抵抗の場合はそんなに被害はありませんが、オペアンプ、トランジスタなどを使用した アクティブ型の仮想GNDの場合は「最悪機器が故障」します!

では、GND共通ならば全てのケースでOKなのでしょうか?
そうではありません。対象の機器が音声機器の場合は要注意です。 GND の電位は確かに問題ありませんが、アースの基本「ループを作らない」を思いっきり無視した状態になりますw


図2 GNDループができちゃう!

図2 のように巨大なGNDのループが形成されます。 せっかく機器でアースに気を使って配線したのに、こんなところでアースのループを作られたらたまりません。

補足 : 個々の音声機器同士の電源は絶縁されているのが普通です。音声機器への分配なんてはなから無理ってことですなw

というわけで、分配ケーブルを使用できるケースは以下の場合です。

・ アナログ音声信号などの非絶縁信号を機器間で共通使用していない場合。
上記の様な問題は起きませんので、この場合は問題ありません。

・ GND の電位がそろっていてノイズを気にしない場合。
ノイズを気にしないならどうぞですw

・ 機器間の信号線が絶縁されている場合(光、トランスなどで)。
音声入力が光やパルストランスで絶縁されたデジタル入力の場合は上記の問題は起きません。 また、アナログ信号でもトランスで絶縁してしてしまえばOKです。 が・・・そんな高級な音声機器をアダプター分配で使用するなんてそうそう無いでしょうし、 そんなことしたくありませんw

2. 絶縁型しかないな・・・

・ メリット
絶縁されているのでGNDレベルを気にしなくてもよい(事実上アダプターを複数使用しているのと変わりない)。

・ デメリット
まともな絶縁型DC/DCコンバータが高いw


まあ、電源を絶縁してしまえばアダプターを複数用いるのとなんら変わらずに使用することができます。 問題はDC/DCコンバータが結構高いということですなぁ・・・。 個々にDCアダプターを購入した方が安上がりですw まあ、趣旨はアダプターをすっきりさせることなので、多少は目をつむりましょう。 (秋月で買えればいいのですがぴったりののがなかった)。

今回使用するのは「TDKラムダ CC1R5-1212Sx-E」というものでマルツで840円でした(たけぇ!)。


図3 思ったより小さいです!

これは、DC12[V] 入力 DC12[V] 出力でまさに今回のケースに使用することができる DC/DC です。 ただ、電流が Max100[mA] しか取り出すことができません。
まあ、大概の機器は100[mA]あれば問題ないかと思いますし、大電力用にはアダプター直結の出力を用意すればいいでしょう (私のVUメータは250[mA]以上必要なためアダプター直結でカバーします)。
よって、大出力用にDCアダプターの直接出力(500[mA]程度)1系統、小出力(100[mA]程度まで)用に絶縁3系統で設計しました。 アダプターは12[V]、2[A]のものを用意しました。

補足 : CC1R5-1212Sx-E を使用しなくても構いませんが、必ず「絶縁型」と書いてある DC/DC を使用してください。
補足 : 大元の電源は余裕があるものを選んだ方がいいです。 初めは1.5[A] のアダプターだったのですが、使用中ノイズが大きくなる傾向がありました。 秋月のアダプターは出力が大きい方が高性能なようです。

図4 こんな感じだね
補足 : 私の場合は、12[V]の機器が多いので全て12[V]としていますが、DC/DCの電圧を変えればマルチ出力な電源を作れます。 ただし、誤挿入防止はよく考えておいてください。

3. スイッチとか、ケーブルとかの選択

(1) 大元にメインスイッチを設けて一括でON/OFFできるようにします。
メインスイッチは見た目重視で選んだ「マルツで買った 照光スイッチ オルタネイト 赤 」です。


図5 スイッチの外観(マルツさんから引用)

スペックを調べると接点容量が 100[mA] のようですので、さすがに1[A]もの電流をON/OFFさせるためには役不足です。 そこで、リレー「オムロン G5V-2DC12V」を使用してON/OFFするようにします。

補足 : スイッチは必ず定格内で使用した方がいいです。寿命が縮まったりしますので・・・

(2) 電源端子は、一般のDCジャック、プラグを使用しますが、入力、出力で形式を変えておきます。


図6 プラグ形状を変えておく

分配器の入力である秋月のアダプターのプラグ形状は「外径Φ5.5、内径Φ2.1」です。 ここで分配器の出力を同じ形状にしてしまうと、あやまって DC/DC の出力に秋月のアダプターを誤挿入してしまう恐れがあります。 そこで、分配器の出力を少し小さめの EIAJ3(外径Φ4.75、内径Φ1.7)という形状にしておきます。 こうしておけば、分配元の秋月のアダプターは物理的に出力に挿入できませんので、誤って出力に接続してしまうことはありません。

補足 : このような、勘違いなどによって誤動作させないような仕組みを「フールプルーフ」といいます。 といっても、誤挿入防止を強引にねじ込んで機器を破壊する人もいるんだよな・・・w
補足 : 分配器からのケーブルは、外径Φ5.5、内径Φ2.1プラグ付きケーブルを買って、反対側に EIAJ3 プラグを取り付ければ楽ですよ! (逆でもいいですが・・・w)

4. 回路はこうなりました


図7 回路図

今回は電子回路というより電機回路チックですなぁw そんなに注意する点はないのですが、リレーのダイオードは入れておきましょう。 無くても問題ないのですが、動作の度にノイズをまき散らすのは精神衛生上よろしくありませんw
DC/DC のコンデンサ C15, 16, 17 の 1000p/200V ですが、これはマニュアルを見ていただければわかりますが なくても動作します(入れるとコモンモードノイズが減少するらしい。また、耐圧は 200[V] 以上ほしい)。
あと、コンデンサはそんな盛る必要はありません。どうせその先でいっぱい盛ってるでしょうし。 ここは、DC/DC の推奨値 アルミ電界コンデンサ 47[uF] と、セラミック 1[uF] としておきました。

ケースは安いやつをチョイスしました。 「【TB33-B】汎用型モールドケース黒85×125×30」¥535円です。 まあ、もうちょっと見た目こだわってもよかったかなぁ・・・w


図8 ケース(マルツさんから引用)

5. 製作

はい、いきなり失敗! 表面実装タイプを買ってしまった・・・w


図9 あー表面実装だw

しょうが無いので裏技的に乗っけますか・・・ 皆さんは間違えない様にw


図10 表面に実装してやんよ!w

あと、あれですな買ったプッシュスイッチがパネル実装できないんですよね・・・。 マルツさん、パネル実装できるタイプを売ってくださいw と言うわけで、Lアングルで基板を立てて実装します。


図11 こんな風に立てればOKね!
補足 : しかし、このLアングル(Lカナグショウ】補助金具 小 )はどういう加工精度なんだ? 3個位入っていたが全て曲げる位置が合ってないんだけど?w マルツさん曲げてないやつ売ってください。自分で曲げますのでw

さらに、コネクタの位置が下過ぎてナットが回んねー!! ケースが小さいのがいけないんだ!!
というわけでボンド(アラルダイト)で止めましたw


図12 ボンド最強!これは譲れないw

というわけで、さくっと基板を作ってこのようになりました。


図13 それなりの格好になったw

ケース内の基板取り付けボスや、その他が干渉しますので、必要ならニッパーでばっさり切り取ります。 また、基板もコネクタ、スイッチと干渉しますので、「あらかじめ切って」おいてくださいねw 基板の取り付けは「ASR型貼り付けボス」というシールで貼り付けるものを使用しました。

補足 : ASR型貼り付けボスにはねじは切られていないので、基板の取り付けには「プラスチック用のタッピングねじ」が必要です。 タカチなら「EM-3】EM型固定用タッピングネジ」がちょうどいいかと思います。 また、TB33-B には足がないのでついでにゴム足も買っておいたらいいでしょう。

さあ、蓋を閉めて完成です。


図14 プラスチックのケースはやっぱ安っぽいなぁ・・・w

さて、小ネタにふさわしいちょっとした便利グッツでした。 まあ、弱点は単体でアダプターを使用した方が明らかに安いということでしょうかね?w でも、TDK の DC/DC がいいのか、秋月の 12[V]、2[A] のアダプターが優秀なのか、ヘッドホンアンプの性能がちょこっと上がりましたw

下の表は RMAA の結果ですが、「ノイズの減少」「ダイナミックレンジの増加」が見られます。

比較Creative SB X-Fi
(スプリッタの出力)
秋月 12[V]、1[A]
33[Ω]負荷
分配器の場合
33[Ω]負荷
Frequency response
(from 40 Hz to 15 kHz), dB:
+0.05, -0.19+0.03, -0.17+0.06, -0.22
Noise level, dB (A): -106.0-94.9-98.7
Dynamic range, dB (A): 105.494.399.5
THD, %: 0.00120.00160.0013
IMD + Noise, %: 0.00410.00480.0053
Stereo crosstalk, dB: -82.8-64.1-63.8
補足 : 実際には Creative SB の生出力ではありません。自作のアクティブ型のオーディオスプリッタ(音声分配器)を使用していますのでその出力となっています。

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