九時に家を出て、45分で釣り場到着、信号は釣り場迄5個所。

距離にして35キロ、自分はなんて恵まれた所に住んでいるのだろうと、この時つくづく思うのである。

 場所は山形県白鷹の実渕川、5月の連休は桜回廊巡りで大変賑わう所である。深山郷は美の里づくりコンクール農林水産大臣賞と、地域づくり総務大臣表彰賞を受賞している所。

ポカポカ陽気で風もなく釣り日よりです。早速水温を測って見ると4度、これでは魚さんは餌を食わない。最も気温は7度、餌を食うにはもう少しあとになるだろうと推測し近くの湧水を汲みに行く。そこで地元の人と話ができた。この水は白鷹鮎茶屋の主人が個人で引いたもので、2年前の大地震の時は、茶色に濁ったが涸れることはない。水道の水は下流の最上川から取水しているのでうまさが違うと伺う。私も良く汲みに来るのは、大変美味しい水と実感しているからです。

 そろそろいいかなと身支度を整え、竿を取り出す。今日は水に入らず土手の上から竿出すので“シマノ天平本流硬調7580”に2mの天井糸0.8号(編みつけ付き)をセットする。編みつけに0.6号のフロロカーボンの水中糸を5m、一番上にピンクのアルフアー目印3センチを付け100円ショップで買ったからみ糸はずしでほぐす、すぐ下に黒の目印(逆光用)を付ける、その下にオレンジの目印を片一方を長くして付ける。これは目印が止まって、くるりと回ることがある、それを見やすくわかりやすくする為である。

 針はカッパ極7号に0.5号のハリス40センチ、30㎝の処の編み付けにやわらか錘2Bを2個付ける。錘がずれて動くのを防ぐ為、以前は初めからハリスを30㎝にし、結んだ糸を錘分残し2本の糸を錘にかませていたが、編み付けに錘を付ける事で長さの調節ができ,錘からのハリス切れがなくなった。

 

 ペラマックのまき癖を取り、時計を見ると10時半である。ぶどう虫を回転がかからない様に尻から通し刺しにして、大石の裏の深みに第一投、水温が低いこの時期は明確な当たりが出づらい。“ツッ”と目印が止まる、そっと小指を絞る感じで合わせると、ククンという手応えがある。今年初めての釣果はニジマスの新子9センチ、初釣果なのでキープ、これは骨酒で楽しむ事にする。思わずニヤケて唾を飲み込む。

 水温を再度測って見ると5度やはり少し上がって来たようだ。しかし小さい!今年は水温が低い日が多く、餌がとれないので大きくなれないのだろう。スノーシューをつけての釣りは気の使い方が全然違う。まず胴付きは履かずネオプレーンの靴下を履くので、靴は大きな物を別途用意する。雪が入らないように上で縛る長靴でなければならない。川に落ちれば登る場所がないので最悪の事になりかねない。

 同じ所に再投入し、糸ふけが取れたとたん即当たり、ちょっと気が弛んでいた分竿先が跳ね上がり大きく上へ飛び出す。小物なのにあんな釣り方をするとは全く格好が悪い、そっと辺りを見回す、誰も見ている筈がないのだが・・・ついやってしまう動作だ。

今度は同じ大きさのヤマメだ。あぶらびれがとてもきれいだ、さきほどのニジマスと並べて写真を撮る事にする。

 あぶらびれ(脂鰭)は背鰭の後ろにある、鮭科を代表される(他の魚も一部含む)特徴であり、どういう役目かは不明。

この実渕川は昨年秋9月に、ニジマス0.8号で落とし、再度1号で32センチを釣った。ヤマメが自然産卵している川に、ニジマスを放すのはどうなのか?釣り物としてのファイトは大変面白いと思うが・・・(北海道トムラウシにてルアーで47年前に、51センチのニジマスを釣った感動は、今でも鮮やかに蘇る)自然環境を破壊する行為は考え物だ。

 遠くに朝日連峰を見ながら悠然と竿を出す、何と気持の良いことだろう。気温は10度迄上がり汗が出てきた。少し下流に行って大きな渕を狙う事にする。

正面左、上流に一発で振り込む、良いポイントに着水、すかさず竿を立て穂先を下げて深みに沈み込ませる。うまく入り20センチ流す。ここらで喰うはず・・?もう少し流して見る・・・??ちょっと止めて餌を浮かせ、すぐ下ろす。それでも当たりが出ない?そのまま渕尻迄流す、カラ合わせをして仕掛け回収・・・???なぜ出ないのだろう?

着水ポイント、流すコース、底取り、すべて完璧なはずだったのに・・・・もう一度今度は岸寄り、ヘチギリギリを流して見ようと、気を取り直して再投入しかし・・あたりは出ない。

 こういう大渕は大物が潜んでいるので、小物を釣って場を荒らさない様に、初めから大物狙いで最良のポイント、コースを流すべきでセオリー通り、100点満の釣りだった。と言う事はいないということだろうと結論付ける。

先日大雪が降って足跡を消している為、先行者が入ったかどうか判断できない。きっと誰か釣りに入ったのだろう。だから新子しか釣れなかったのかと納得する。

 何か気が抜けてふと足元に眼を落とすと、まだ硬いふきのとうがあった。

このとき私は先ほど思った骨酒ではなく、てんぷらを食べて嬉しそうな笑みを浮かべるカミのさん顔が目に浮かんだ。

 周りを見渡してみると、小さいが6個ふきのとうがありナイフで切り取った。山菜は刃物を使うなというが、ふきのとうだけはやむを得ない。それにしてもこの冬は雪が少なくて来年のコメは大丈夫か?イワナ、ヤマメは早々に釣られていなくなってしまうのでは?と思ったが、年明けから良く降った。トータルでは同じ積雪量だろう。取りあえずニジマスとヤマメの新仔の写真を撮り、場所を替えスノーシューを付けてから川岸に降りる。

 下を見て足を踏み出した途端、足元が崩れとっさに眼の前の枝に摑まろうとして、却ってバランスを崩し川に落ちてしまった。「ギエーッ!!冷たい!!」幸い膝までの深さで靴に水が入っただけだが、岸に上る所がない見つからない。上流に上がるところを見つけガタガタ震えながら即移動、即帰宅。散々な初日釣行となった。

リベンジ 

翌日自宅から25キロ、村山市の樽石川を目指す。ここは199011月卒業のない大学

として「樽石大学」を松田清男先生が開校、アウトドア、地域交流を主とした生涯学習施設で“いたや清水”の湧水は1年中コンコンと湧き出ています。当日は最高温度14.5度水温6度そして天候晴と、春らしいやさしい日差しが水をヌルませています。開校翌年の樽石川は大学がフオグラを取る為、サメの試験育成に取り組み、餌のニジマスが大水で逃げ出し、尺物を20匹近く釣った経験を思い出した。それからニジマスは自然産卵をしているようだ。

 さて10時ジャストまずは橋下の淵から、ブドウ虫で竿入れ即当たりがある。ツンツンと手応えを感じ小指に力を入れる事で合わせる、その途端ドーンという手ごたえが・・竿先が伸される。かろうじて踏みとどまり、溜めを入れてやっと魚の顔が水面に出た。これは大きい0.8号の道糸、0.6号のハリスで橋の上から抜き上げるのは無理?と思った瞬間「ブチッ!!」ハリスから切れた道糸は、無情に木の枝に巻きついた。竿を引いて糸を切りながら心はワクワクしていた。それは切れた悔しさより、居た事!間違いなくあの場所に尺物と思われるニジマスが居る事に感動している。「良し!帰りに再挑戦だ」と口に出して満面の笑みを浮かべて上流を目指す。

 ニジマス6匹、新仔ヤマメ9匹をかぞえて2時間後再度挑戦、橋に戻る。1号の通しにし、下に2B、そして上に3Bの錘を付けて先に針を結び、結束なしの通しにする。餌はミミズに変更、尻尾は少しチギって臭いを出す、尻から2センチでミミズ通しを入れて鉢巻きの上で抜く、そこに針をセットしこそぎあげる。さて準備が出来て餌を入れる場所、食わせる所、ぬき上げる場所を確認する。竿尻から肘一つ上を左手を下、右手を上にして投入。

 水中での餌の動きをイメージする。「良し、食うならここだ!」というポイントで、目印に当たりが出る。合わせる!グ・グーンと竿が引き込まれる、上流に竿を倒しダッシュを止める、1号の通しなので、なんなく寄せる事が出来た。そのまま抜き上げようとするが重たい、空中で頭を振って、最後のあがきを見せたものの勝利は我手に・・。

 32.5センチのニジマスは、釣り糸の摺れた痕が腹についたメスのツワモノでした。帰ってヒョッと口を見ると、何か細くて黒い物が出ている。孫を読んでつい言ってみた。「どじょうをどうじょ」孫は「キャー」と叫んだ後「じーちゃん!!」カミサンからも叱られた。腹を裂くとオレンジ色の綺麗な肉で孫5人、息子、娘夫婦でてんぷらを楽しんだ。

 今年の釣り始めは、中々ストーリーに富んだスタートだがどうなる事か、今年も釣りに、山菜採りに、燻製作りにと人に喜んで貰える1年にしたいと思います