小学校六年、冬になるといつも千歳小学校のグランドで、30㎝位の木の衝立のようなものを繋げ、消防車で水を入れリンクを作っていた。
スピードスケートを履いて最高スピードを出すと、遠心力で回り切れなくなり思いっきり外へ飛び出し、雪まみれになるのがすごく気持ちが良かった。

一月に入ってTが言い出した「おいみんなで一緒に、千歳湖に行かないか?枠がないから思いっきり滑れるぞ」「大丈夫か、まだ凍ってないんじゃないか?」「よし取りあえず行ってみようよ」と言うことになった。
その年は雪が少なく、みんな自転車に乗って
36号線をひた走る。昔弾丸道路と言われた真っ直ぐな道を、一列になって空港の前を過ぎると左折、この辺は6月にハスカップ(ゆのみともいう)と言う木の実の大きなものが取れる。
ブルーベリーの一種で、大変酸っぱいが心臓に良いと言われ、砂糖を掛けたものを御飯の上にかけたり、
搾ってジュースにしていた。


千歳湖が見えて来るとみんな歓声をを上げて、転げ落ちるように岸際に駈けよる。
湖のまん中はポッカリと、凍らずに黒い不気味な口を開けていた。
早々にスケート靴を履き湖に飛び出して、氷の感触を楽しんでいた。昨日降った雪が氷の上に積りカーブを切ると、スキーで雪を蹴立てるように回るのが、大変気持ちが良かった。

そのうち一人が穴の近く迄行くと、グーと言う音と共に氷が穴からあふれ出し、大変なスリルを味わうことが出来る。

みんな誰が勇気があるか競うように、穴近くまで行くようになりついにそれは起きた。


双子の兄弟の
Mが穴に近づき、あふれ出た水が足を濡らし始めた時、バリバリという音と共に氷が落ちたのだ。「うわー!」と言う声は、バシャーという水音に消され、ドーと水が氷の上にあふれでる。落ちたMはすぐに氷の上に這い上がろうとするが、氷は又無情に割れ必死に縋り付くM

驚きの声と共にみんな一斉に、穴に近付くと水は又あふれ出る。その水に押されるように這い上がった
Mは大きな声で叫んだ。
「みんな来るなー!」その声にみんな固まっていると、ユックリ這いながら
Mが近寄ってくる。
すぐに火を焚いてMの体をこするが、髪はあっという間に凍り付き、真っ青な顔でガタガタ震えながら声を上げて泣いている。しかし泣いているのはMだけでなかった。

恐ろしい体験でしたが、みんなが思い出の1ページを作ったのは間違いない。
中学校は、千中と青中に分かれてしまったが、そのメンバーで自転車に乗って支笏湖まで行ったのは、
新緑の五月のことでした。

子供の頃のこの思い出を鮮やかに思い描けるのは、そのうちの何名だろう?