花火とスカート

 小学校の頃、花火遊びをよくした。

特にNやSと、カエルを捕まえて尻に2B弾を詰めて爆発させる。

子供は平気で残酷な遊びをするが、かわいそうより面白いが先だった。

誰が一番長く持っていられるか度胸試しをした時、S君は放すタイミングが遅れ持ったまま爆発させ

てしまったのだ。黄色になった指を見て泣いていたのを思い出す。

色々な火薬をほぐして、鉛筆のサック(金物)に詰め、コヨリに火薬を詰めて導火線を作りロケット

にして飛ばした事もある。最後には水道の鉄管で本物の鉄砲の弾を飛ばした。

そこまで行くのに初めはビニール管で、しかしこれは割れてダメ、最後にはベニヤ板3枚を貫通させ、

「これ人殺せるよ、誰か殺したい奴いる?」等と、笑いながら物騒な話をしていた。防空壕にはまだ

弾があったし、ママチの射撃場などで、実弾を手に入れる事はそんなに難しい事ではなかった。

  ある時おふくろが作っている畑へ、兄弟3人が一緒について行った。真ん中の弟が松の木に上って

「降りられないよう、こわいよう」と泣き始めた。「大丈夫、上ったんだから降りられるよ」と無責任

に声をかける兄弟の前でそれは起こった。

突然クルリと逆さ吊りになると、バリッと言う音と共に弟が木から落ちて来たのだ。落ちた途端

「パンパンパン」と音がして、弟の半ズボンのポケットから煙が上がり始めた。

「アチー、あちー、あっついよー」という声と「パンパンパン」という音はズボンを脱がす間続い

ていた。弟のポケットには鉄砲に使う、花火やすり玉が入っていたのだ。落ちる時にこすれて発火

したのだろう。

黄色の色がついた所が、見る見るうちに紫色に変わって行く弟の皮膚を見ているうちにみんなが、

おいおい泣きだしてしまった。私は助けに木に登らなかった事を悔やんでいたのだと思う。

花火で穴があいた半ズボンを、又穿かせたおふくろが突然驚きの声を上げた。「アレー!!お前スカート

穿いて
来たのか?」なんと半ズボンの又が全部破れて、スカート状になっていたのだ。

おふくろの声に
泣きながら笑うという苦しい三人でした。

後でわかった事なのだが、ポケットの中に10円玉も一緒に入っていて木にこすらなくても、

ポケットのうえからたたいただけでも発火する状態だった。

ポケットに花火と10円玉は一緒に入れないようにしよう。