日本経済は完全に晴れとは云えないが、世界経済は全般的に見れば好調だ。だが地球の南側では「貧困と荒廃」が広がっている。主要国は足腰が強くゆとりがあるうちに、途上国への支援を強化しなければならない。世界経済の成長見通しは、より均衡のとれた持続可能な成長パターンに移行する中で更に改善した。ロシアを除く日米欧七カ国の首脳声明は世界経済の見通しについて、従来になく強い自信をのぞかせた。過熱していた米国経済は軟着陸に向かい、欧州も3%台半ばの成長軌道に乗った。日本についても不確実性は残っているが、回復への前向きな兆しを示していると評価された。日本の金融不安やアジア、ロシア、ブラジルの通貨危機に襲われた過去2回のサミットと比べれれば、沖縄サミットがはるかに恵まれた環境で開かれたのは間違いがない。こうした中で経済討議の焦点になったのが、新たな「南北問題」だった。重債務貧困国の債務削減やエイズを初めとする感染症対策、情報技術(IT)をめぐるデジタルディバイド(情報格差)是正問題などである。だが主要国経済の力強さと比べると、途上国支援策は迫力に乏しかったといわざるを得ない。重債務貧困国の債務削減は、昨年のケルンサミットの枠組みから事実上、新たな進展はなかった。首脳達は昨年、削減対象になる四〇ヶ国のうち四分の三について、今年末までに削減するように公約したが、ようやく二〇ヶ国の削減が決まる見通しになったに過ぎない。国内紛争の影響で統治機能が損なわれているといった事情があるものの、国際通貨基金が課した条件が厳し過ぎると云う声もある。情報格差の是正でも、途上国が取り残されないためにどんな支援をするのか、作業部会の設置を決めただけで、具体的な姿が見えてこなかった。次期多角的貿易交渉についても「途上国が貿易自由化の恩恵を受けるように、関心事項を取り上げるとの一般論を述べたに過ぎない。アナン国連事務総長は1万箇所に及ぶ途上国の病院や診療所をインターネットで結び、最新の医療情報を提供する提案をしている。IT
や貿易自由化は途上国の成長の鍵を握っている。主要国としては今回のサミットで、途上国に希望を与えるような、もっと明確なメッセージが欲しかった。これでは南北格差は縮じまるどころか広がるばかりである。日本は情報格差の是正と感染症対策で総額180億ドルの途上国支援策を表明し、取りあえず議長国の面目は保った。だが経済運営では景気刺激策を継続するよう注文がついた。欧米に比べ回復が遅れた日本は世界経済の均衡を保つためにも、内需主導の成長が求められる。構造改革を進めれば、短期的に産業の新陳代謝に伴うデフレ効果が避けられない。財政金融政策の運営は民間部門の復調を見極めた上で判断すべきであろう。


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縮まるのか?南北格差・・・
・・・沖縄サミットを受けて