人生への挑戦】

 匿名のM.Mさん → 女性行政書士K、K様。

K、K様、はじめまして。

ホームページを拝見してメールを差し上げます。

M.Mと申します。メールアドレスは夫の名義ですが、殆ど妻の私が使用しています。

さて、私は結婚と同時に仕事を辞め現在専業主婦半年目ですが、何かまた仕事に就きたいと考えています。
今度は、一生できる仕事、「手に職」をつけたいと思っております。

最近、「行政書士」の資格に興味があり、

4月から半年の受験講座(10月に受験予定)の受講を考えているのですが、「行政書士」への就職の実態を全く知りませんので果たして本当に志す意義があるものか分かりません。世間には資格を持っていても直接就職に結びつかないケースが多くあるからです(例えば私の知人は宅建を学生時代取得しましたが卒業後本人の志す不動産業界に就職できませんでした、経験がないという理由で)。結婚前は秘書の仕事をしていました。全く法律の仕事とは無縁でした。そして今は無職です。法律に関するキャリアの全くない者が、資格取得後(もし取れたとして)、「行政書士」として仕事をしていけるものでしょうか?

また私は文学部出身者です。?日頃、法律には生活していく上で大変興味はありますが、法学部卒業でない、全く本格的に専攻したことのない畑違いの者が資格を取得できるだけの実力がつくものでしょうか?

いろいろな方のホームページを拝見しましたが、行政書士の資格を取得され、仕事を始められたまでのいきさつを書かれた方はいらっしゃらないようでした。K、K様には同じ女性として親密感を特に感じておりますし、もしもお差し支えさえなければ、それまでのいきさつ、行政書士の就職事情の実態を教えていただければ幸いです。

お仕事で何かとご多用とは存じますが、どうかよろしくお願いいたします。突如メールにて大変失礼いたします。

明日からその受験講座が始まります。大変ご面倒おかけしますがなるべく早くに御返事いただければ助かります。 

M.M

 

女性行政書士K、K氏 →匿名のM.Mさん 

 

M.M様へ

M.Mさん、こんにちは。私のホームページを見て頂きどうもありがとうございました。ご返事が遅れ申し訳ありません。下記、気の付いたことを申し上げます。参考にしていただければ幸いです。

Q

果たして本当に志す意義があるものか分かりません。世間には資格を持っていても直接就職に

結びつかないケースが多くあるからです。資格取得後行政書士」として仕事をしていけるものでしょうか?全く本格的に専攻したことのない畑違いの者が資格を取得できるだけの実力がつくものでしょうか?

A

行政書士に限らず資格を取ることは良いことです。資格に向かって勉強し色んな見識を深めるからです。貴女もこれから行政書士の勉強を始められる訳ですから、その気迫と努力は素晴らしいと思います。資格取得後、それをどのように活かすかは貴女の努力次第です。

というのは、資格があれば就職に有利だとか、確実に就職出来るかは別問題です。専門技術と違い行政書士の資格は就職とは全く関係がありません。行政書士は企業に雇用されてはいけない規則があり、行政書士会という所轄機関に登録し、行政書士事務所を自ら開業することが資格を活かすことです。ところが、試験勉強の内容と実務とは殆ど合致していません。資格があっても実務を知らなければ仕事が出来ません。また実務を知っていても、顧客(どこから仕事を回してもらうか)の人脈がなければ仕事が来ず、開店休業になってしまい、利益を生むことにはつながりません。資格があればすぐ業務に結びつくと考えるのは早計です。試験は法学部なら有利だとかいうことではなく、本人の努力次第です。私も法学部卒業ではありませんでした。

一番の問題は、行政書士も一つの営利事業なんです。仕事を回してもらって、きちんとこなしお金をもらう仕事です。仕事の殆どは人脈の開拓から始まります。不動産業者、設計事務所、土地家屋調査士事務所、司法書士事務所、工務店、同業者など広いおつきあいの中で自分を認めてもらえたら仕事を回してもらえるのです。そのとき、実務を熟知し、役所との駆け引き、法律ぎりぎりのところで通してもらう手段などを知らなければ顧客の取得が出来ません。言うなれば、当たり前のできる仕事だけしているけでは何ら自分を認めてもらうことにはならず、よその行政書士に仕事が流れてしまいます。固定の顧客のハートとニーズをしっかり把握し、且つ、お客様のご希望に添う仕事をするのはとても神経を使います。責任もかかってきます。仕事として受けたからには甘えが入る余地はありません。出来て当たり前、出来なければ賠償ものです。お友達が経験がないので断られたというのは、実務を知らなければ仕事人として使えないからです。

Q

もしもお差し支えさえなければ、それまでのいきさつ、行政書士の就職事情の実態を教えていただければ幸いです

A

私の場合、工務店の経理事務で3年間、設計及び登記、行政書士事務所を兼業の事務所に約10年間、不動産業と行政書士事務所の兼業事務所に約8年間、独立開業して10年目です。行政書士の資格は勤務の傍ら、独学で取得しました。主婦、事務所勤務、勉強の日々は時間氏の戦いでとても辛かったけれど、やる価値はありました。2人の子供も、3ヶ月からの乳幼児保育園に預け、しっかりフルタイムで働きました。行政書士の実務は通算21年の間に身につけ、顧客の人脈つくりもこの間に行いました。だから開業後も支障はなく、順調にいっています。

仕事に就くということは、簡単ではありません。女性であれば社会的偏見にも合いますし、家事、育児も一心にかかってきます。それを理由に仕事に気を抜けば、即責任問題となり解雇です。女性であることの社会的偏見は実務を着実にこなし、信用をつければ解決出来ます。そのためには真剣に、人より多くの努力も必要になるでしょう。甘えの許されない仕事にはそれなりの覚悟も必要でしょう。無責任な仕事は何十倍の付けとなって必ず自分に戻って来ますから。

貴女もこれから子供を産み、育てていくことになるでしょうが、それなりの覚悟は出来ていますか?普通の生活をしながら仕事も両立できるほど、仕事は簡単ではないということを自覚された上で、目的の選択をすることが肝要と思います。

専業主婦の立場を恥じることはありません。仕事をするのも専業主婦を選択するのも個人の価値観だから、事情を知らない他人がとやかく言うべきではないのです。社会的価値観と個人の価値観とをしっかり区分けすれば、他人の意見に振り回されることもないでしょう。何が自分にとり大切かを外部に惑わされずに行動すれば、専業主婦であっても何も不安を感じることはないと思います。

  但し、私個人としては女性も仕事を持った方が良いと思います。仕事を持つことで社会的見識や交際の範囲が広まり、主婦とか妻、母ではない独立した固有の人間として認めてもらえるからです。これはとっても大切なことです。男女の区別なく、独りの責任ある人間として生ることが緊張の人生となります。緊張は生きている実感と若さを生み、それは充実した人生の大切な要素ですから。

貴女が目指す行政書士の仕事は端で見るほど素晴らしいものではありません。緊張と試練と競争と駆け引きの最たるものです。そこに金銭的なものが絡めば、良いことばかりではないことがお察し頂けると思います。憧れだけで選択するのは考え物です。資格商売は兎に角資格を取ってからがスタートなんです。実務を身につけることはスタートしてからでは遅いことはもうおわかりでしょう。行政書士の業務は多岐に渡り、自己の資格以外の実務も知らなければお客の需要に応えられません。如何に的確な業務運びかが自己の評価に響き顧客確保に結びつきます。行政書士を目指すなら、まずそういう事務所に就職して実務を身につけることが先決です。就職の際には資格を取りたいからといって面接すると断られることが多いでしょう。いずれ同業者となる人に気前よく実務を教えてくれる筈がないでしょう。実務を身につけたら資格を取って顧客ごとサヨナラは眼に見えていますから。だから、そういうことは極秘で就職しましょう。どんな世界でも競争原理の社会です。

蛇足で付け加えますと、行政書士は宣伝行為を禁じられています。開業に当たり広告宣伝を行えば免許の剥奪となります。看板は一事務所一個だけで字の大きさにも規格があります。勿論、雇われ行政書士は規則違反です。開業には行政書士会に登録する事になりますが登録料その他、まとまった費用が必要で、その後毎年6万円の会費納入が義務づけられています。事務所開店にも諸費用が必要で、これらを支払ってでも利益を上げていく勝算餐がなければとても安易に挑戦するわけにも行かないでしょう。

世間には、幾つもの資格を取って自慢している方も見受けられます。資格を取るにはそれなりの努力をされた結果として評価に値します。しかし、資格はそれを生かして初めて資格の価値が出るのです。履歴書の飾りでも、資格マニアの遊びでもなく、折角の努力と投資を取り戻すために、初めからするべきことを熟慮してからかかっても遅くはありませんよ。貴女自身の考えを尊重しましょうね。

貴女がこれから始められることに手放しでは喜べないアドバイスになって恐縮です。でもこれが現実なんです。理想と現実の差は貴女の熟慮で埋めて下さい。生きていくことは簡単ではありませんね。それだからこそ、人生は価値のあることなんですね。資格に挑戦しようとする貴女の気持ちはとて素晴らしいことです。色んな要因を貴女の努力で克服して目的に邁進して下さることを、同じ立場の女性として応援します。貴女のような女性が一人でも多く生まれることが、女性の質的向上につながります。頑張って明日の社会に参画しましょうね。大切なことは、自分に出来ることから始めましょう。足元をよく見て理想に溺れず、他人に惑わされずにね。

 

 

 

匿名のM.Mさん → 女性行政書士K、K氏

 

K、K様

御返事ありがとうございました。

現場に実際いらっしゃる方のご意見は大変ありがたかったです。

とりあえず、まずは「自分との戦い」の意味として資格に挑戦してみようと考えています。また何かありましたらご連絡さしあげますので、その際はどうぞよろしくお願い致します。

お仕事頑張ってくださいませ。

 

 

M.M

 

 

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