11|12|13|14|15
[11](極値に着目する証明)
Aを平面上の2nコの点の集合とする。これらのうちのどの3点も
共線(同一直線上にある)でないとする。
n点を赤、n点を青に塗り分けるとき、
「n本の線分がとれて、そのどの2本も共有点をもたず、各線分の
両端点は異なる色を持つAの点である」
とできることを示せ。(パトナム問題)
<Sol> 赤点と青点のペアリングのうち長さの総和が最小のが存在する。
もし2本の線分R1B1とR2B2(Riは赤点、Biは青点)が交わるとそれを
R1B2とR2B1に変更すると長さの総和が減少する。これは不合理。 //
<別解1> 帰納法で示す。
n = 1 のとき、明らか。n = 1,2, ... ,k のとき、成り立つと仮定。
n = k + 1 のとき; 題意の 2(k + 1) 点をAとする。
Aの凸包(包含する最小の凸集合)のある隣接する2頂点P,Qが異なる色
であるときは、A - {P,Q} でのペアリングと PQ でOK.
そうでないとき; Aの頂点はどれも赤点としてよい。
水平でなくて、Aのどの2点を結ぶ線分とも平行でなく、Aのどの点もその左側にある
ような直線 L をとれる。この L を左に平行移動して行くことを考える。
L の左側にある赤点の個数から左側にある青点の個数を引いた値を D(L) とすると、
整数値の中間値の定理により、Aを分断し D(L) = 0 であるような位置が存在する
ことがわかる。
分断された各々で、帰納法の仮定から、題意のペアリングがあるのでAでのペアリング
ができることになる。 //
<別解2> 2nコの点をそれらを中心とする十分小さい半径εの円板におきかえる。
それぞれの色のnコの円板の合計面積を等分するような直線Lが存在する。
2nコの点は「一般の位置」にあるので、
Lの両側に n/2 コずつに分けられるか、1種類の2コの円板がLで2等分される
か、赤、青の円板が1コずつLで2等分されるか のいずれかである。
どの場合も帰納的に示される。 //
【 NOTE 】 秋山とAlon は Aをd次元空間内の一般的な位置にあるdnコの
点の集合としてこの問題を拡張した。その証明は別解2に従っている。
研究課題: d=3で、面積の総和が最小だったら交わらない、といえるか。
[類題]
平面上にn点があってこれらのうちのちょうど2点のみを通る直線が存在しなければ
そのn点は同一直線上にあることを証明せよ。(シルベスターの問題)
<Sol> nが0と1のときは自明に成り立つので n≧2としてよい。対偶を示す。
n点を A1、A2、・・・、An とし、これらのうちの2点で決まる直線を
L1、L2、・・・、Lm とする。 m ≦ nC2 なのでmは有限である。
AiとLjの距離を dij で表す。あるdijは0でないことになる。
0でないdijのうち最小のを dab とする。
Lb が3点 Ai、Aj、Ak を通るとする。
Aa から Lbに垂線を下ろしたとき、 Aj、Ak はそれに対して同じ側にあるとして
一般性を失わない。
Aj と 直線 AaAk の距離 < dab なので矛盾。 //
[類題]
R2 の開円板の有限個の族 F の合併の部分集合 E に対して、
F の互いに交わらない部分族 D1, ... , Dn で
3D1, ... , 3Dn の合併が E を含むのが存在することを示せ。
但し、3D は D と中心が同じで半径が3倍の開円板とする。(パトナム問題)
(ヒント: まず最大の開円板に着目する。)
[類題]
nコの連続している整数の積は n ! の倍数であることを証明せよ。
<Sol> nコの連続している正整数に対して示せば十分なことはあきらか。
あるnコの連続している正整数の積が n ! の倍数でないとして、
そのようなnのうちで最小のを N とする。
このとき、ある非負整数mが存在して、
(m + 1)(m + 2)・・・(m + N) は N ! の倍数ではない。
そこで、このようなmのうちで最小のを M とする。( M>0(∵ N ! は N ! の倍数))
(M + 1)(M + 2)・・・(M + N) は N ! の倍数でないことになる。
(M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1)(M + N)
= M (M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1) + N (M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1)
MとNの選び方により、N ! は M (M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1) の約数で
(N - 1) ! は (M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1) の約数。
よって N ! は M (M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1) + N (M + 1)(M + 2)・・・(M + N - 1)
の約数であることになり仮定に反する。 //
四辺形の対角線の長さの和は周長より小さいことを証明せよ。
<Sol> 四辺形ABCDとする。ABが最短の辺と仮定してよい。
AC + BD < (AB + BC) + (BA + AD) ≦ AB + BC + CD + DA. //
[類題]
任意の平面4角形に対してある内点で4頂点までの距離の和が周長より短い
のが存在することを示せ。
<Sol> 四角形 ABCD において BD ≦ AC としてよい。
BA + BD + BC ≦ BA + AC + BC < BA + (AD + DC) + BC
よって頂点 B の十分近くの内点に対して成立する。 //
研究課題: 各頂点までの距離の和が周長より短いような内点をもつ
平面5角形を決定せよ。
[12](複素数による等式の証明)
次の等式を証明せよ。 Σk=1n cos(2kπ/(2n+1)) = -1/2.
<Sol> ω = cos(2π/(2n+1)) + i sin(2π/(2n+1))とすると
ω2n+1 = 1 ∴ (1 - ω) (1 + ω + ω2 + ... + ω2n) = 0
∴ ω + ω2 + ... + ω2n = -1
実部より Σk=12n cos(2kπ/(2n+1)) = -1
ここで cos(2kπ/(2n+1)) = cos(2π - 2kπ/(2n+1)) = cos(2(2n-k+1)π/(2n+1))
∴2Σk=1n cos(2kπ/(2n+1)) = -1
よって Σk=1n cos(2kπ/(2n+1)) = -1/2. //
[類題]
次の等式を証明せよ。 Σk=1n cos(θ+ 2(k-1)π/n) = 0 (n ≧ 2).
<Sol>
Σk=1n ei(θ+ 2(k-1)π/n) = eiθ(1 + e2πi/n) + ... + e2π(n-1)i/n)
= eiθ・(e2πi - 1)/(e2πi/n - 1)
= 0
実部をとると与等式をえる。 //
<別解> 複素平面における原点中心の単位円のn円分点の和を 2π/n
回転しても不変なので、n円分点の和は0. x座標をとれば与等式を得る。 //
[13](集合計算)
等式 (AΔBΔC)∪X = (A∪X)Δ(B∪X)Δ(C∪X) (Nagataの公式)
を証明せよ。(Δ は対称差)
<Sol> 一般のブール環R で示す。(すべての元がべき等である環をブール環)
chR=2( ∵ x + x = (x + x)2 = x2+x2+x2+x2 = x + x + x + x ∴ x + x = 0 )
x∪y := x + y + xy と定義すると
x∪(y1+y2+y3) = x + (y1+y2+y3) + x(y1+y2+y3)
= x + x + x + y1 + y2 + y3 + xy1 + xy2 + xy3
= (x∪y1) + (x∪y2) + (x∪y3)
ベキ集合P(A∪B∪C∪X)において加法をΔ、乗法を∩とするとブール環で、
J∪K = JΔKΔ(J∩K) となっている。 //
[類題]
集合Sの部分集合A,Bに対して A ∇ B を
A ∇ B = (A Δ B)c
と定義する。
この演算∇は結合的であることを示しなさい。
<Sol> A ∇ B = Ac Δ B = A Δ Bc なので
(A ∇ B) ∇ C = ((A Δ B)c Δ C)c
= (A Δ B)cc Δ C
= A Δ B Δ C
= A Δ (B Δ C)cc
= (A Δ (B Δ C)c)c
= A ∇ (B ∇ C). //
練習問題: 対称差Δが結合的なことを示せ。
<Sol> 全体集合 U とし、その部分集合 A に対して
(標数 2 の)特性関数 χA: U → {0,1} (= Z/2Z) を、
0 x ∈ U - A
χA(x) = {
1 x ∈ A
として定義する。 A = B ⇔ χA = χB である。
χ(AΔB)ΔC = χAΔB + χC
= (χA + χB) + χC
= χA + (χB + χC)
= χA + χBΔC
= χAΔ(BΔC)
∴ (AΔB)ΔC = AΔ(BΔC). //
♯ 結合的な演算を見出すのは思いの外むずかしい。
♯ 結合的な演算1個に理論1個が対応してるといっても華厳の滝、
♯ もとい、過言ではない。
練習問題: A∪(B∇C) = (B -A)∇(C -A) を示せ。
[14](集合族)
Sを集合族とし γ⊆∪S とする。
γがSの cover :⇔ ∀x∈S、γ∩x≠φ.
γがSの odd cover :⇔ ∀x∈S、|γ∩x|≡1(mod 2).
集合族Sに対して次は同値であることを示せ。(和は対称差Δ)
(1)Sは odd cover をもつ.
(2)|A|≡1の任意のSの部分族Aに対して、ΣA≠φ.
<Sol> (2)⇒(1). Sのサイズ|S|によるインダクション。
|S|= 0 のとき; Sは奇ヒフクをもち(2)をみたしている。
|S|≧ 1 のとき; x∈S とし、S-{x} にインダクションを適用すると、
S-{x} は奇ヒフク γx をもつ。
|x∩γx|≡1 なら γ=γx.
よってすべてのxについて、|x∩γx|≡0としてよい。
x∈S、y∈S、Sの要素としてx≠yとし、γxy = γxΔγy とすると、
0 z∈ S- {x,y}
|z∩γxy| ≡{
1 z∈ {x,y}
よって |S|≡0ならば S= {x1,y1,...,xm,ym} としたとき、
γ = Σi=1m γx_iy_i とおけばよい。
|S|≡1 のとき。 Sは(2)をみたすので
∃v∈∪S、|{x∈S| x∋v}|≡1.
|S- {x∈S| x∋v}|≡0 ゆえ、
S- {x∈S| x∋v} = {x1,y1,...,xm,ym} としたとき、
γ = Σi=1m γx_iy_i Δ {v}
とおけばよい。
(1)⇒(2). 明らか。 //
[類題]
対称差Δで2元体{0、1}上極小従属なn元集合族Sの
交差対(非disjointなペア)はn-1コ以上あることを示せ。
(但し自分自身とのペアは除く)
<Sol> Sの各元に頂点を対応させ交差する2頂点を結んで
えられるグラフ(交グラフ)を G(S) とする。
極小従属であることから G(S) は連結である。
よって辺の数、すなわち交差対の数、はn-1コ以上。 //
例 E = {1,2,3}上の(fullな)4元集合族Sを
S = {1,2,3,123} (ただし 1 = {1}, 123 = {1,2,3} など) とする。
このSについて ΣS = 1Δ2Δ3Δ123 = φ. よってSは従属。
Sの真部分族について総和はφとならないのでSは極小従属。
交差対(非順序対)は {1,123},{2,123},{3,123} の3コ。 //
♯ ちなみに 2-uniformなSに対しては、
♯ 極小従属 ⇔ サイクル(「輪っか」)
♯ で、交差対はちょうど nコである。
集合族(V,E)において v ∈ e のとき、頂点vと辺eは接合(incident)してる
とよび v inc e、
e1 ∩ e2≠φ のとき2辺 e1とe2 は隣接(adjacent)してる
とよび e1 adj e2 で表示する。
v,w ∈ V について
v 〜c w :⇔ ∃e1,e2,・・・,en∈E、v inc e1, ei adj ei+1, en inc w
列 e1e2・・・en を (v,w)-chain とよぶ。v 〜c v とする。
v 〜p w :⇔ ∃π⊆E、Δπ={v}Δ{w}(Δは対称差)
πを {v,w}-path とよぶ。
[類題]
次を証明せよ。
(1)〜c、〜p は V上の同値関係。
(2)Gのどの辺もサイズが2のとき、〜cと〜p は一致する。
(3)Gのどの辺も偶数サイズのとき, v 〜p w ⇒ v 〜c w.
g, f1,・・・, fkはベクトル空間Vの一次形式で、N,N1,・・・,Nkはそれらの核とする。
N ⊇ N1 ∩ ... ∩ Nk ⇔ gは f1,・・・,fkの一次結合 を示せ。
<Sol> 右から左はトリヴィアル(trivial)。よって、左から右を示せばよい。
By induction.
k=1のとき: f1=0 ならば、N1=V ゆえ N=V で g=0.
よってOK.
f1≠0のとき。 Ker f1はVの超部分空間(極大真部分空間)。
f1(α)≠0 となるα∈Vをとり
c= g(α)/f1(α)
とする。
一次形式 h= g - cf1 は Ker f1上で0となり、
また h(α)= g(α) - cf1(α) = 0. よって、h=0 ∴ g=cf1.
k-1のとき成り立つとして kのとき:
g', f1',・・・,fk-1' を g, f1,・・・,fk-1 の Nk上への制限とする。
g', f1',・・・,fk-1' は Nkの一次形式である。
α∈Nk で fi'(α)=0(i=1, ... ,k-1) ならば、α∈N1 ∩ ... ∩Nk
で g'(α)=0.
帰納法の仮定より、
g'= c1f1' + ... + ck-1fk-1'
となるスカラーciが存在する。
いま
h = g - Σi=1k-1 cifi
とすると、hはVの一次形式で、Nk上で0となる。
k=1のときより、hは fkのスカラー倍ゆえ h = ckfk とすると、
g = Σi=1k cifi . //
[15](積分)
平面上の境界が区分的になめらかな有界凸図形Cに対して、
方位角θの平行2直線でCをはさみつけたときの間隔を TC(θ) とするとき
∫0π TC(θ)dθ = Cの周長
となることを証明せよ。
<Sol> Cの周長は近似多角形C’の周長の極限で TC'(θ)は TC(θ)に一様に収束する。
よってCは凸n角形として示せばよい。
Cの周をなすnコの線分をC1、C2、... 、Cnとし、
Ciの長さを Liとする。
2TC(θ) = Σi=1n TCi(θ)
∫0π TCi(θ)dθ = ∫0π Lisinθdθ = 2Li
∴ ∫0π TC(θ)dθ = (1/2)Σi=1n ∫0π TCi(θ)dθ
= Σi=1n Li
= Cの周の長さ. //
系 平面上の境界が区分的になめらかな有界凸図形Cに対して
半径 r の円を境界に外接させて転がすとき
(中心の軌跡の長さ) = (Cの周長) + 2πr.
系 半径rの円の周の長さは 2πr.