平成22年第12問  勉強会に戻る

仮登記に関する次のアからオまでの記述の家、正しいモノの組み合わせは、後記1から5までのうちどれか。
 ア 地目が田である土地につき、農地法第3条の許可を条件とする条件付き所有権の移転の仮登記がされた後、当該仮登記の登記原因の日付よりも前の日付の登記原因で、地目を宅地とする地目に関する変更の登記がされた場合には、当該条件付き所有権の移転の仮登記を所有権の移転の仮登記とする更正の登記を経れば、当該仮登記の基づく本登記の申請をすることができる。
所有権の移転の仮登記がされた後、仮登記名義人の住所に変更があった場合には、当該仮登記に基づく本登記の申請の添付情報として、仮登記名義人の住所の変更を証する情報を提供すれば、仮登記名義人の住所の変更の登記の申請を省略することができる。
仮登記の登記上の利害関係人が、当該仮登記の抹消を単独で申請するには、仮登記権利者及び仮登記義務者の承諾を証するこれらのモノが作成した情報またはこれらのモノに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければならない。
抵当権についての放棄を登記原因とする抵当権の抹消の仮登記がされた後、債権譲渡を登記原因として当該抵当権の移転の登記がされた場合には、抵当権の譲渡人は、登記義務者として、抵当権の譲受人の承諾を証する当該譲受人が作成した情報または当該譲受人に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することなく、当該仮登記に基づく本登記の申請をすることができる。
所有権の移転の仮登記は、真正なな登記名義の回復を登記原因として申請することができる。
1  ア エ 2  ア オ 3  イ ウ 4  イ エ 5  ウ オ
正解は…
さぁ今日もがんばりましょぉ!
最初は、仮登記の問題です。
仮登記といえば1号仮登記と2号仮登記があった事くらいしか憶えていないのですが…
ダメですよ。憶えて定着までしないと絶対点数は伸びていきませんよ〜
ただ、1号仮登記も2号仮登記も、登記記録上の問題としては、それほど大きな違いはないんじゃないかなぁ。
あまり違いはないよって答えさせる問いが、肢のアですね。
地目が「田」だから、契約上の所有権移転の効力発生は、農地法の許可がなければ生じない…「法定条件」っていうんでしたっけ。
許可がおりるまでの間、とりあえず2号仮登記しておいたって事例ですよね。あくまで、登記申請した時点では、まだ物権変動が生じていないことになってる?
ですよ。
でも、民法実体法上の問題として「まだ物権変動が生じていない」というだけで、なされた登記としては実体法とはあまり関係ないかも。結局、登記記録上の記載から実体として「まだ物権変動が生じていない」ことが推測できるだけっぽいです。
ここで「仮登記の登記原因の日付よりも前の日付の登記原因で、地目を宅地とする地目に関する変更の登記がされた」というわけだから、この所有権を移転する契約の効力が生じるために農地法の許可は、そもそも必要なかった。実は当然に所有権移転していた、ということですね。
そこで、間違えていたので更正登記をしようというわけですか。「更正」って、登記申請時点から間違っていた場合にするものでしたっけね。
登記申請時点では正しかったけど、後から実体とずれた場合にするのが「変更」。
ここでは、許可がないってことで2号仮登記をしてたけど、許可ない状態でもすでに所有権移転の効力が生じていたので、1号仮登記に更正する?
です。
更正ができる場合って…どんな場合でした?
間違っている登記記録(更正前の登記記録)と、更正登記の申請によって書き換えられた後の登記記録(更正後の登記記録)の内容に「同一性」がアル場合、ですか。
そうです〜
ちゃんと憶えてますですね!
今回は、更正前の「2号仮登記」の登記記録と「1号仮登記」の登記記録に「同一性」があれば更正登記の申請ができる!
2号仮登記は登記記録上「まだ所有権移転は生じていない」。「将来物権変動が生じる」。
1号仮登記は登記記録上「すでに所有権移転が生じている」。「単に書類が全部そろわないので仮登記として申請した」。
内容が全然違うように見えますが…
これでも、同一性があるんでしょうか。
あるんですよ。
今、太郎さんが言った「所有権移転が生じていない」とか「所有権移転が生じている」というのはあくまで登記記録を見た人が推測するだけよ。1号仮登記も2号仮登記も、あくまで登記記録上は「仮」の権利者ですよ。だからこそ、1号仮登記の登記名義人も2号仮登記の登記名義人も、同じように、本登記して本登記としての「所有者」とならなければ、所有権本体を処分できないわけですから。申請書の記載事項も申請人とか添付書類とか免許税とか、あまりかわらないです。そして一度なされた仮登記である以上、その点からは大きな違いはないですよ。
なるほど。だから更正登記の申請はできる。
でも、「更正の登記を経れば、当該仮登記の基づく本登記の申請をすることができる」という出題だから、「更正の登記を経なければ、当該仮登記の基づく本登記の申請をすることはできない」んですか?現状、2号仮登記となっているんだから、更正登記をしないで、直接、本登記をしたらダメなんですか?
嘘ついちゃうことになるからダメです。
太郎さん、2号仮登記から直接本登記にするときの申請書の、「投機の目的」と「原因」いえるかな、かなぁ?
売買によって仮登記がなされた場合で考えてみて。
…「登記の目的 所有権移転(○番仮登記の本登記)」
 「原因 平成○年○月○日 売買」
…どこにも嘘はないと思うのですが?
例えば、間違って申請した2号仮登記の申請書には、「原因 平成23年5月24日売買(条件 農地法第3条の許可)」と書いていたとしますね。
太郎さんが今言った登記の原因の、原因日付はどういう風になるんでしょか?
う〜ん、農地法の許可がなくても、そもそも売買によって所有権移転が起こってしまっているから…売買契約を締結した日、「平成23年5月24日」ですかね。
そうやって申請すると、登記官は、売買があった日と同日に農地法の許可がおりたんだなぁって思うんですよ。
2号仮登記は更正しないで、登記記録にそのまま記載が残ってますから。
農地法の許可、その日におりたんですか?
おりてません。でも、登記官にはばれないから、申請したら登記は通っちゃう?
本登記申請の時に登記原因証明情報として農地法の許可書の添付が必要ですょ…既に宅地なんだから許可書は出ないですよ。
しかも、
今回の事例、表題部に地目変更が登記されてます。この例だと、「平成○年○月○日地目変更」って登記されちゃうんですよ。…登記記録を見た人も「あ、嘘だ!」ってなる。
そこで嘘がばれるわけですか…
太郎さんが言うように、もし2号仮登記から直接、本登記がされるなら、こんなうそ嘘な登記記録になりますよ。


続いて、イです。
やりたい登記申請の前提として、名変が必要かという問題ですね!
原則として、必要となる…
例外として、「義務者」の名変が不要になる場合が有名なわけですね。
そうです。
例外は個別に憶えなくてはいけないものがあるけど…
今回は、なしたい登記は「本登記」。
本登記の申請人はだれですかぁ?意外と、言葉の定義がしっかりしてないとイミフになるんですよ。
権利者は仮登記名義人。義務者は仮登記義務者。仮登記義務者って仮登記を申請したときの義務者のことですよね。
上に見た登記記録だと…
「仮登記義務者」は甲区1番の株式会社遠方不動産。
「仮登記権利者」は甲区2番の山田太郎。
この人たちが仮登記を申請したときの権利者と義務者だったわけですよね。
この場合、本登記の申請人は
「権利者 山田太郎」
「義務者 株式会社遠方不動産」ですかね。
正解。
今回は、なしたい本登記の前提として、本登記の「権利者 山田太郎」の名変が必要かというと?
不要と言うことですか。
です。変更証明書じゃ足りないです。
なしたい本登記の前提として、本登記の「義務者 株式会社遠方不動産」の名変が必要になることとちゃんと区別しないとですよね!
どんどん行きましょぉ。肢のウです。
これは優しいですね〜
「仮登記権利者及び仮登記義務者の承諾書」のところが誤り。必要なのは、「仮登記権利者の」承諾書だけですよね。
そうです。
仮登記が抹消されてうれしいのはこの肢の「登記上の利害関係人」もそうですけど、当然「仮登記義務者」もうれしいですからね。仮登記義務者は一方的にうれしいだけなのに、承諾書を求めてもしかたないですね。
次に、エ。ここは研究しちゃいましょう。
「抵当権についての放棄を登記原因とする抵当権の抹消の仮登記がされた後、債権譲渡を登記原因として当該抵当権の移転の登記がされた場合」の登記記録の例がこれです。抵当権移転登記と抹消仮登記がされた順番をちゃんと確認してくださいね。


ふむふむ。
本登記の申請によって乙区2番の「余白」ってあるところに本登記をしてもらおうというわけですね。
そうです。
それと、太郎さん、「1番抵当権抹消仮登記」の「1番」に注目して。抹消仮登記がターゲットにしている登記は、乙区1番付記1号のところだけじゃなくて、1番抵当権全部なんですよ。
へむへむ。
だから、この抹消仮登記が本登記にされると、1番抵当権の抵当権者として登記されている
主登記の「株式会社花子銀行」も付記登記の「株式会社花江銀行」も、どっちもなかったことになるというわけですね。
です。
権利が登記記録から消されちゃう場合は、消されちゃう者に無断で登記するわけにはいかないので、「承諾書」の添付が要求されるんです。
登記上の利害関係人の承諾書が必要ってことですよね。
だから、今回添付書類として必要となる可能性があるのは、乙区1番の主登記@「株式会社花子銀行」と付記1号A「株式会社花江銀行」の二人の承諾書って考えるとこですょね。
ところで、問題文によると、仮登記を本登記にするときの義務者は誰ですか、太郎さん?
抵当権が抹消されてうれしいのは所有者だから権利者はもちろん「株式会社遠方不動産」ですね。
問題文によると、義務者は「抵当権の譲受人」だから付記1号の「株式会社花江銀行」ですかね。
そうです。
まず、さっきの@、Aの承諾書のうち、株式会社花江銀行の承諾書はいらないです。義務者として自ら申請人となっている以上、申請書にした押印とか、委任状に押印したことで、抹消されるのを当然承諾してるからですよね。
「申請人は登記上の利害関係人にならない。」というのは、試験上、頻出ですよぅ。
ほむほむ。
そして、今回の場合、A「株式会社花江銀行」の承諾書もいらないです。
太郎さん、仮登記を本登記にするときの申請って、普通、仮登記義務者が義務者、仮登記権利者が権利者、ですよね?
この登記記録で「仮登記権利者」「仮登記義務者」は誰ですか?
仮登記権利者は、仮だけど、抵当権が仮にでも消えてうれしい「株式会社遠方不動産」ですよね。
仮登記義務者は…乙区1番の主登記の「株式会社花子銀行」ですか?花子銀行が抵当権者の時抹消仮登記が申請されたわけですから。問題文によると、義務者は「抵当権の譲受人」だから付記1号の「株式会社花江銀行」ですね…今回の本登記の申請人は、仮登記義務者ではない者が義務者となってる、と言うことですか。
そうなんですよ。
先例によれば、この場合、抵当権の譲受人も本登記の申請の義務者となれる。
本登記の申請の際、もはや権利を失っている主登記の「株式会社花子銀行」より現在の抵当権者を義務者としたほうが、妥当な場合が多いはずだからだろうと思いますです。そういうわけで、「現在もはや権利を失っているものは、登記上の利害関係人にならない」です。こちらはたま〜に問われる程度、かな。
へもへも。
だから…原則通り、本登記申請の際の義務者には、主登記の「株式会社花子銀行」がなることもできるですよ。
この場合、承諾書の添付は、どうなると思います?
自ら義務者として申請人になっている「株式会社花子銀行」の承諾書はいらないですね。「申請人は登記上の利害関係人にならない」。
でも、株式会社花江銀行は義務者でもないし、「現在もはや権利を失っている」わけでもない…から、株式会社花江銀行の承諾書の添付が必要になる?

正解!応用してみましょう。
問題文を一部改編して…
「抵当権についての放棄を登記原因とする抵当権の抹消の仮登記がされた後、債権譲渡を登記原因として当該抵当権の移転の登記がされた場合」を「債権譲渡を登記原因として当該抵当権の移転の登記がされた後、抵当権についての放棄を登記原因とする抵当権の抹消の仮登記がされた場合」にします。順番を逆にしました。登記記録は以下の通りですよう。


問「乙区2番の登記を本登記にするとき、承諾書の添付は必要か?」
ラクラク〜 不要。
本登記の義務者として考えられる人が一人しかいないから。
です。正解! 理由も大切ですね。
では、利害関係人として考えられる人を増やしましょう。登記記録は以下の通り。1番抵当権に、転抵当権者がいます。乙区1番付記1号、2号、2番の受付日をチェックして、登記がされた順番を確認してくださいね。


問 上の登記記録において「乙区2番の登記を本登記にするとき、付記2号は消されちゃう?」
ラクラクラクラク〜 消される。
抹消仮登記がターゲットにしている登記は、1番抵当権全部だから。
ですです。正解!
問 上の登記記録において「乙区2番の登記を本登記にするとき、転抵当権者「株式会社花美銀行」の承諾書は必要?
必要。
消されちゃう者に無断で登記するわけにはいかないから。
本登記の申請の義務者は「株式会社花子銀行」または「株式会社花江銀行」であって、花美銀行は関与していない。かつ、花美銀行は「現在もはや権利を失ってい」るわけではない。
ですですです。 正解。
続いて、次の問題は、各登記がなされた順番を変更してみましょう。
登記記録は以下の通り。登記がなされた順番を変えましたぁ。チェックしてくださいね。


問 上の登記記録において「乙区2番の登記を本登記にするとき、転抵当権者「株式会社花美銀行」の承諾書は必要?
う〜ん… 必要?
1番抵当権抹消仮登記が主登記でなされている以上、仮登記の申請の際に転抵当権者が「登記上の利害関係人」であったとしても、仮登記の申請の時に承諾書をもらっていなかったはずだから。
ですぅ。正解! やりますね〜っ。
最後の問題。上の登記記録とは無関係の出題ですよ!
問 「抵当権を目的とした転抵当権が設定された後、その抵当権を目的とした抵当権抹消仮登記がされた。本登記申請の添付書類にその転抵当権者の承諾書は、常に必要か」?
うっ…。
(あの登記、…付記で入ることがあるのか?)
クケケケケ〜 抵当権の債権額変更とか、根抵当権の極度額変更と考え方ゎぉなじ。
調べて★みてね♪
にゃぁぁぁ 生殺しじゃぁ〜
次、最後ですよぉ。肢のオ。
これは正しい肢です。
仮登記できない理由がないからかなぁ。
うおっほん。
2号仮登記の所有権移転請求権仮登記とか、停止条件付所有権移転の仮登記については、真正な登記名義の回復を原因として申請することができないってことと引っかけているのではないですかなぁ?
理由は、考えて★みてね♪

ブシャシャシャシャ〜
…真正な登記名義の回復って、所有権移転登記をした後抵当権が設定されたりしていて、所有権の抹消登記の際に承諾書が得られないようなときにする、最後の手段だったですたしか。最近は、登記原因証明情報に「(本来は所有権抹消登記申請すべきなんだけれど)〜が協力しない。でも、本当にもともと所有権は移転してなかったのよ。錯誤しちゃった。(どうしようもないから)真正な登記名義の回復で申請させておねがい。」みたいな内容のものを求められたりするよね。この原因での登記申請は、そんなに簡単にできる感じじゃなくなった。
2号仮登記は、どうしようもなくはないからかなぁ…
2号仮登記で申請したら、登記官に「本当にもともと所有権が移転してなかったんじゃなくて、これから所有権が移転するんだろコラ」っていわれそぅ。1号じゃなくて2号だし。
…さすがに、先生のところで実務に触れている分、何らかの理由がすぐ出てくるんですかぃ…
今日は私の負け、まいりました!