登記のお勉強   
※校正段階です。不適切な表現や誤っているところが散見されると思います。
ご注意ください。ご自身の責任でのご利用をお願いいたします。
気付いた点があればご連絡頂くとありがたいです。




※このサイトの内容をベースに、プログラムをつくってみました。 
※あくまでご利用は自己責任でお願いします。

太郎と花子の勉強会(ベータ ver.1.02) ダウンロード(プロローグと第7編 ベクターサイト)
平成24年12月18日更新依頼

※以下、既にインストールされている場合は、「プログラムの追加と削除」で一旦アンインストールしてから新規にインストールして下さい。

太郎と花子の勉強会(ベータ ver.1.02b) ダウンロード(第1編〜第2編)
平成24年12月18日更新

太郎と花子の勉強会(ベータ ver.1.02c) ダウンロード(第3編〜第4編)
平成24年12月18日更新

太郎と花子の勉強会(ベータ ver.1.02d) ダウンロード(第5編〜第6編)
平成24年12月18日更新

相続登記の簡易見積もり


作成後記(随時更新)

プロローグ 申請書に記載すべき「所有者」とか「権利者」「義務者」の記載について、
本当に登記事項との関係で決まっているのか悩みながら、一応の理由を考えて作ってみました。
本当はどうなんだろうか…

第1編 法定持分による相続登記の前に、遺産分割を原因とした共同申請による申請が本当にできないのかどうか、
よく分かりません。物語中では「共同申請だから困難である」ようになっていますが、できるような気もします。
「権利者 A」「義務者 亡甲 相続人 A B C」とすれば、矛盾はないのかもしれません。
その場合、実際に添付する書類として「Aの印鑑証明書」が増えることと、
添付した印鑑証明書の還付ができなくなることが、相続による単独申請の場合との相違点ということになります。

もし、物語中の結論のように、遺産分割による共同申請ができない場合には、
もう一つ、理由として「遺産分割の結果、遡る『効果』が相続」だから、「死亡年月日相続」を原因とする
単独申請しかできない」といったことも、もしかしたらあるのかもしれません。どうなんでしょう・・・

第5編 私の経験では、信用組合が譲渡担保を取る事例を聞いたことがありません。こんなことは本当にあるのか
悩んでいます。また、登記簿上の権利と民法上の権利の観点からの説明が続いていますが、
この理由は本当に正しいのか…はたまた悩んでいます。

第6編 税金部分については、私の専門外ですので、本当に税金が安くなるのかよく分からず悩みました。
もし安くなる場合がないのだったら、ストーリー全体の流れが変わってしまうので恐れています…

以上、平成24年9月30日 追記

初心者 初級 中級 上級 実務級
不動産登記の基礎(総論編)
目次
No 内容 タイトル 概要
1 初心者 不動産登記の社会的機能 事例。
不動産登記の制度によって、人の不動産の権利が信用される
2 初心者 不動産登記の作り方 事例。
不動産登記簿は、物理的現況の変化や権利の変動に伴って内容が書き換えられる。
3 初級 はじめに知っておきたい基礎理論 試験知識。
 言葉の整理。
4 初級 相続に伴う名義書換 実務中心。
相続登記の意義、概要。
5 中級 相続による所有権移転 試験知識。
申請書の記載。

※太郎と花子の勉強会(各論 作成中)

商業登記の基礎(総論編)
目次
No 内容 タイトル 概要
1 初心者 商業登記の社会的機能 事例。
商業登記の制度によって、経済が活発化?〜財産の分離の話
2 初心者 会社の基礎知識 試験知識。
どんな会社を作りたいのかな?会社の種類と社員の責任の話。
3 初心者 株式会社の設立準備 実務色。
株式会社の設立手続。
4 初級 株式会社の設立登記申請書 実務色だが試験知識。
株式会社の設立の手続及び添付書類総論。
5 中級 株式会社の役員変更 事例。
オンライン申請特例方式。

※次郎と花江の勉強会(各論 構想中)




不動産登記の基礎(総論)

●その1

  不動産登記の社会的機能  初心者

       「不動産登記の制度によって、人の不動産の権利が信用される」
  太郎さんがマイホームを買ってから、はや30年。
  長年勤めた会社も退職し、太郎さんもそろそろ
  田舎に帰ってのんびり、畑でも耕しながら残りの人生を満喫したいなぁ、と考えるようになりました。

  そこで、このマイホームを誰かに賃貸して、自分は田舎に引っ越そうと思いました。

  近所の不動産屋さんに相談したら話は進んでいきましたが、
  そのうちに「家の権利証ありますか?」と聞かれました。
  
  権利証…?そんなものは持っていないな…

 「ないと思います。」
 「じゃあ、家を購入したときの売買契約書をおもちですか?」
 30年も昔の契約書、捨ててはないと思うけど、探さないと出てこないなぁ…
 「帰って探してみます。なぜ、権利証とか契約書が必要なんですか?」

  「太郎さんが家の所有者であることを確認するためです。」

  近所の不動産屋さんだから、太郎さんがその家の持ち主であることは知っているはずですが、結局、書類上
太郎さんが「所有者」であることを確認できなければならない、とのこと。
  太郎さんの事例では、太郎さんが家の「所有権」を持っていることを不動産屋さんや家の借主に
信じてもらわなければなりません。
太郎さんは、「古くからの知人であっても人の信用のみでは不十分」、ということだったのだろうと思いました。

  一般に、不動産は価値の高いものです。不動産を他人に貸すこともまた、安くはないお金のやりとりが生まれます。
  
  なので、最終的には信用のある人に太郎さんが家の「所有権」を持っていることを書類上で証明してもらう必要があり、
書類なしに、人の信用のみで話を進めようとしても、賃貸すらままならなかったというわけです。
  ですので、不動産を売却するときはもちろんのこと、不動産を担保にお金を借りるときなど、不動産を「動かす」ときには
同じような場面に出くわすことになります。

  書類上、太郎さんに家の「所有権」があることの証明を手助けしてくれるものとして、「不動産登記」の制度があります。

  太郎さんは、以上のような経緯を近所の司法書士さんに相談しました。
  仮に以前、太郎さんが家の「不動産登記」手続を行っていたのだとしたら、
このような書類を法務局から出してもらえるとのことでした。

※実際の形式とは異なります


 法務局の公務員である「登記官」は、法務局の出張所の内部で「登記簿(登記記録)」を管理しています。
 これは、その内容の一部を紙面に書き写したもので、権利の内容の証明に役立つ証明書です(下の方に登記官が印鑑を押している部分があります)。
中央部分に太郎さんがこの家の所有者であることがわかる記載があります。
 この書面は個人が証明したものでなく、国家権力を背景に証明がされたものですから、
太郎さんに家の「所有権」があることの証明を手助けしてくれるものとしては、これ以上のものはなかなか探せないのかもしれません。


「これがあったら不動産屋さんも信じてくれたでしょうね。」

 登記は登記所の登記官が管理しているので、太郎さんの家の登記簿が作られていたなら、
この証明書も登記所(法務局)に行けば出してもらえるとのこと。
しかし、太郎さんは今まで自分のマイホームの「登記手続」を行ったという記憶がありませんでした。
「私の家の登記記録は、ないわけですね…」


●その2

 不動産登記の作り方  初級

       「不動産登記簿は、物理的現況の変化や権利の変動に伴って内容が書き換えられる」

太郎さんは残念に思いつつ、しかしその司法書士に聞いてみました。
  「私も登記簿を作りたいのですが、どうすれば作ることが出来るのでしょうか。」

  「では、登記簿を作る過程をお話しさせて頂きます。
  が、登記簿は登記所(法務局)の登記官が作るので、太郎さんがご自身で作ることはできません。」
  司法書士は丁寧に話してくれました。

  「もし、太郎さんの家の登記簿があったとしたら、普通は、このように作られていったはずです。」

遡ること30年。
昭和50年7月、周辺の大地主が社長の「遠方不動産」は
自らの土地を利用して、三丁目10番2の2の土地の上に
2階建ての家を建築した。

「不動産登記簿は、不動産(土地・建物)それぞれについて一つずつ作られます。
 土地の登記簿は多くの場合古くから存在しますが、建物登記簿はそうではありません。
 つまり、建物が新築された当時は、その建物に対応した登記簿は作られていませんので、
 登記所の登記官に作ってもらうようお願いをします。」

遠方不動産の社長は、よく知る土地家屋調査士に登記手続を依頼し、
この建物の登記申請をすることで
登記所の登記官に登記簿を作ってもらうようお願いすることにした。
依頼を受けた土地家屋調査士は書類をまとめて、最寄りの(管轄)登記所に出向き、
書類を提出することで、登記の申請をした。
その後、登記官の手により新しくこの建物の登記簿が生成され、
その登記簿はそれからその登記所で管理されることとなった。


「このときに作成された登記簿には、『表題部』しかありません。『表題部』の記載のみの登記簿は、
主に建物がどのような姿形でどこに建っているのか、いわゆる不動産の『物理的現況』を証明するのに役立ちます。
この『表題部』」にも『所有者』の記載がありますが、これは厳密には遠方不動産に『所有権』という権利があると書いてあるのではありません。
ですのでここの記載の『所有者』を、通常の「所有者」と特に区別して『表題部所有者』と呼びます。」

【表題部のみ記載のある登記事項証明書】

実際の形式とは異なります

遠方不動産の社長は、これだけでは建物の所有権の登記としては不十分であると知り、
司法書士に相談した。すると司法書士が所有権の権利の登記をしなさいと言うので、
その司法書士に依頼して再度、登記の申請をすることにした。
依頼を受けた司法書士は書類をまとめて、同日、登記の申請をした。
その後、登記官の手によって、登記簿が改変された。


「これで、建物の所有権が遠方不動産にある、ということが完全な形で登記簿に記載されたことになります。『甲区』の欄が
書き加えられたことがわかります。甲区の『権利部』に一番最初にされる登記は「所有権保存登記」と呼ばれるものです。」

所有者が書き加えられた登記事項証明書】


実際の形式とは異なります

「この後、太郎さんが遠方不動産から売買によりこの建物を購入し、太郎さんが所有権を得たら、
太郎さんが所有者であることを登記簿に書き加えてもらうために登記の申請をします。太郎さんは、
銀行からお金を借りて、抵当権をつけて購入されたのですよね?」
「はい、花子銀行、という銀行からお金を借りました。実は、まだ少しだけローンが残っておりまして。」

「なるほど、では登記の申請によって
『所有者』を太郎さんにするだけでなく、きっと
『抵当権者』として花子銀行も書き加えてもらう必要が
あったわけですね。太郎さんの場合は普通、
2枚の登記申請書を作って、登記所に2枚とも一緒に出します。」
…登記の申請がなされ、再び登記簿が改変された。

【山田太郎と花子銀行が書き加えられた登記事項証明書】


「赤く示してあるところが書き加えられたところです。このように、
不動産登記簿は物理的現況の変化や権利の変動に伴って内容が書き換えられます。
申請一つにつき登記簿内の『枠』が一つ付け加えられていく感じなんだな、とイメージして頂けるといいと思います。」

「なるほど…。しかし先生、他にもいろいろと疑問が出てきたのですが、伺ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ。相談は無料ですから^^。
ただ、これから私は外出しますので本日でしたら事務員に聞いてみてください。
若いですが、彼女は次の司法書士試験の合格を目指している、司法書士の卵なんですよ。」

●その3

 はじめに知っておきたい基礎理論  初級

先生に代わって私がお答えさせて頂きますね。
ありがとうございます。早速ですが…
登記「簿」ってどんなものなんでしょうか?
登記「簿」っていうくらいですから、ノートのような帳簿をイメージして頂けるといいのではないかと思いますよ。明治の初め頃から不動産の登記の制度がありましたから、昔は、そのようなノートに手書きで登記が書き加えられていったんじゃなかったかなぁ。登記所は、順次、最低限必要な昔の登記を含めた形で、登記簿の内容をコンピュータの中にデータとして入力していきました。でもそれは、かなり最近になってからのことなんですよ。
さっき先生が示してくれたもの、きれいな形になってたですよね。コンピュータ化後の登記です。
はぁぁ〜そうですか。昔はいわゆる「達筆な字」で書いていたのでしょうから、今それを見たら、さぞや見づらいでしょうねぇ。
ですよ。太郎さんの場合だと、昭和50年当時にされた登記ですから、先生が示してくれた登記簿の例は、本当は少し形が違うものであるはずです。先生はきっと、最近の登記事項証明書の形で示してくれたんだと思います。
だから…今の登記「簿」は登記「記録」って言うようになっているんですよ。そして、登記所内部の登記記録の内容を証明するものが、「登記事項証明書」です。
建物については新築したら、新築後に登記の申請をして登記記録を新しく作ってもらうといった手続になってきますけど…、登記の制度は明治時代からあります。先生も少し言ってましたけど…だから土地については明治時代から登記簿が存在している関係上、普通はその登記のデータに新しい所有者とかの事柄を書き加えていくことが、登記官のお仕事なんでしょうね。
はぁぁ〜そうですか。
ところで、私は近所の不動産屋さんに最初、「権利証」を見せるように言われたのですけど、
権利証は、いつどこで手に入れることができたんでしょうか?
ええと…確か不動産登記法の21条にあったと思うのですが…
権利証は、「その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合」に、登記官がくれます。
は?
権利証って、登記官がいる登記所が出してくれるものなんですよ。
登記をしてほしいとお願いする時は、登記所に「申請書」を出すことわけですよね。
もう一度、先生が示してくれた「所有者が書き加えられた登記事項証明書」と、その登記をしてもらうために作った申請書を見てみてください。
これですか…
これ、登記所に提出(申請)したのですよね。
そうです。
申請書に「所有者」とありますよね?ここに書いてある人が「申請人」です。
なるほど。
続いて、その申請によって登記記録に書き加えられた部分に「所有者 株式会社遠方不動産」と記載がありますよね。所有者など、所有「権」という権利を持つ者として登記記録に記載(記録)される者を、「登記名義人」というんですよ。
なるほど…だからこの場合、登記官が「その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合」に当たると判断して、権利証をくれる。…ということは、所有権という権利を持った遠方不動産は、このとき、登記所から権利証をもらうことができたはずなんですね。
そうなんですよ。でも、「権利証」を「くれる」というのは、実は正しい表現ではないの。
今の表現だと正確には、「登記識別情報」が「通知」されます。
は?
昔は、申請書と申請書の写し(副本)を一緒に登記所に出していたんです。提出された申請書の写しは、登記所によって「登記を受け付けましたよ」っていう程度の内容の赤い印鑑を押されて、後で返してくれていました。
実は、権利証は申請書の写しそのもの、を指しています。司法書士に登記の申請を依頼した場合は、登記所から司法書士宛てに返してもらった「申請書の写し」に、その司法書士が単にきれいな表紙をつけてお客さん(依頼者)に渡してあげていただけです。だから「権利証」といえば、きれいな冊子、というイメージがあるはずですよ。
その「登記所の押印のある申請書の写し」は、一般には「権利証」と呼ばれるけれど…その「権利証」がもらえるのは申請した後、登記所内部で申請書類の審査がされて、その後、登記が完了した段階なので、試験上も実務上も「登記済証」と呼ぶのが正しかったんです。
「写し」ってコピーのことですよね…意外です。
あ〜そういえば、前に友人が持っている権利証を少しだけ見たことあります。それも単なる「登記済証」だったんですか。
そうですよ。でも、登記済証の再発行は絶対にしてもらえません。だから、不動産の権利があることを証明することのできる、数少ない書類の一つなんですよ。しかも権利証は、何らかの事情が発生して、その後に所有者である遠方不動産が建物の登記簿を書き換えようとするときに、原則として必要となる書類でもあるんです。「権利証」という言葉が浸透したのも分かる気がするなぁ。

しかし時代は変わり、情報化社会の波が押し寄せた。
遠い目をしておられますね…
登記済証は権利を証明する手助けをするためにあるのだから、その目的が達成できるのであれば、別に「紙媒体としての登記済証」である必要はない。登記所としては、登記の申請人である「登記名義人になった者」に対して、これまでのように登記済証を交付するのではなく、その代わりに登記済証と同一の意味を持った番号の羅列を「通知」することにしよう。そして登記済証の所持人が、登記済証の提出が求められたはずの場面に出くわした場合には、登記済証の代わりにその番号の羅列を提出させる仕組みに変えることこそ、時代に合う。
…と思った人がいるのかもしれませんね。
!!今は、番号そのものが「権利証」?
その通りです。「登記識別情報」と呼んでいます。その実態は、数字とアルファベットを含む12桁の符号ですよ。
平成18年くらいから「登記済証」の代わりに「登記識別情報」が通知されるようになったんです。各登記所ごとに段階的に実施されたんですよぅ。
へぇぇ…
遠い目をしておられますね…
私、あまり説明するのに慣れていませんので、難しくしゃべっちゃいました。
お茶をお入れしますね。
いえいえ、先生の示してくれた、その他の申請書をみて疑問に思っていただけです。
私「山田太郎」が所有者となったときの一枚目の申請書、「登記の目的 所有権移転」となっているもののことですが…
「権利者 山田太郎」「義務者 株式会社遠方不動産」となっています。
「申請人」は誰ですか?
「山田太郎」と「株式会社遠方不動産」の二人ですょ。
司法書士に登記申請を依頼するときには、それぞれが司法書士に署名とか赤い印鑑での押印のある委任状を渡さなければいけません。自分で登記申請をする場合にも、申請書本体にやはり二人の署名とか印鑑を押して、それを登記所に出さなければいけません。申請人は署名したり押印したりして申請に直接関与するんです。
じゃあ、この登記の申請が終わったら、私「山田太郎」と「株式会社遠方不動産」にそれぞれ登記識別情報が通知されるんですか?
違いますよ!その申請で「登記名義人」になるのは誰ですか?
なるほど、その申請によって「所有権」という権利が登記記録に記載されるのは私だけ、ということですか。不動産登記法の21条の条文にそのまま当てはめる作業になるわけですね。
そうすると、抵当権設定の申請によって抵当権という権利を得る花子銀行にも、同じように登記識別情報が通知されることになりますね。条文上、「登記」の種類が限定されていない。
…どうしてさっきの「登記の目的 所有権保存」の申請書には「所有者」というふうに申請人が一人しかいないのに、私「山田太郎」が所有者になるときの「登記の目的 所有権移転」の申請書には、「権利者」「義務者」というふうに申請人が二人もいるんでしょうか?
登記簿を書き換える登記官の気持ちになったらわかりますよ。
(…遠回しな娘だな…)
「権利者」「義務者」とか「抵当権者」「設定者」のように、権利を得る人と権利を失う人が双方とも直接関与し、「双方が一緒にに申請してきたのでなければ登記しないぞ!」というのを「共同申請の原則」といいます。
太郎さんは売買で建物の所有権を得たのですよね?
そうです。
太郎さんが売買によって所有者となったのだから、太郎さん一人で登記申請できないとおかしいと思ってます…よね?
はい(キッパリ)。
もし、太郎さん一人だけが申請に関与して、申請書が提出されたんだとしたら、登記所の登記官には説得力がない気がしませんか?登記申請をして、登記官に登記を行ってもらい、証明書によって世間に太郎さんが所有者であることを証明したい気持ちになるのは所有権を得た太郎さんなら、当たり前。だから登記官は、太郎さんが嘘をついて申請しているのかもしれない、と疑う。
嘘なぞ!この私めがつこうはずがありません…
太郎さんはそうかもしれませんが、いろいろな人がいます。登記所は、嘘のない事実を登記することによって、みんなから登記を信用してもらいたいのですょ。所有権という権利を失う人が、自ら、「間違いなく太郎さんに所有権を売買であげましたぁ!」と示すことによって初めて、登記官が信用する。だから、不動産登記の申請は「共同申請」となるのが原則です。
今、多くの人は登記を信用しています。だからこそ、も、太郎さんが貸そうと思っていた建物の登記事項証明書を近所の不動産屋さんに持って行っていたら、先生が言っていたように、その不動産屋さんとか借主も信用してくれたはずだと思います。たぶん。

私は社会経済の安定化とか活性化に不動産登記が役に立っているものと思っています。
事務員さんかっこいいですね…(惚れそうじゃ)
「登記の目的 所有権保存」の申請は、そもそも遠方不動産の所有物であった建物の所有権を、単に、登記記録に書き加えてもらうといった申請でしかありませんでした。権利を失う人がいません。ですから、共同申請は原理的に不可能です。
だから単独申請、ということですか。
そうです。
登記官に嘘のない事実を証明するために、申請の際、申請書の他に、申請書と一緒に出さなければいけない書類なども申請の種類によって決まっています。「添付書類」って言います。添付書類も、考え方の大枠は同じですよ。
たとえば、売買による所有権移転の登記申請には、売買契約書などですね。売買契約書が提出されたら、登記官も「あ〜本当に売買ってあったのね。」ってなる。ものによって、大量の書類を提出しなければならないときもありますが…ですから登記官は嘘を見逃さないように、出された書類のすべてをチェックしているはずですよ。
はぁぁ〜登記官も大変ですねぇ。給料は高いんでしょうねぇ。
登記官は公務員ですから…給料に直結はしないと思いますが、登記簿を書き換えてもらうときに、申請人が税金を払います。「登録免許税」、というんです。
登録免許税は一般的には登記や登録を受ける際に必要になる税金ですけれど、私は手数料という気持ちでお支払いさせいて頂いている気持ちでいます。
そうですか。そうすると、登記官も大変でしょうけど、司法書士試験の学習も大変ですね。こちらは、無償なのですよね…?
試験中の不動産登記法に関する出題では、どのような事例で、どのような登記の申請をする必要があるのか、とか、そのときに必要な添付書類や、登録免許税に関する知識が要求されます。
学習は無償ですからつらいですけど…こんど太郎さんがいらっしゃるときにお土産なんて頂けたら、きっと、はかどります!
もちろん持ってきましょう。
しかし、そーゆーことなら今日、これから飲み行きません?きっと明日からもっとはかどりますよ。
おごりますから!
私、未成年ですけど…

設問

1 「登記簿」と「登記記録」、言葉の違いがわかりますか?
2 「権利証」と「登記済証」と「登記識別情報」、言葉の違いがわかりますか?
3 登記識別情報が通知される場合とは「○○○自らが○○○○○○○○場合」が覚えられましたか?
4 山田太郎が所有者となったときの登記が完了した後、登記識別情報は「義務者」である遠方不動産にも、通知されたのでしょうか?
5 「添付書類」とは何かイメージできますか?
6 登録免許税とは何かイメージできますか?
8 「単独申請」と「共同申請」について、共同申請が原則とされる理由がわかりますか?
8 司法書士試験で要求される不動産登記法の知識がどのようなものか、イメージできますか?




updated 2011/5/16 first

●その4

 相続に伴う名義書換  初級


 翌日の朝。
   もう一度事務員さんに会いたいということもあり、太郎は手土産をもって司法書士事務所を訪れた。

おはようございます
あ、太郎さん。
おはようございます。…今日は何を?(警戒の目)
(うっ…)
あ、先生が来た。
おはようございま〜す。

「おはよう。あれ、太郎さん?おはようございます。」

太郎は持参したお菓子を渡し、司法書士の仕事を見学したい旨を述べた。

「いいですよ!相談なら無料ですから★」
(ドキ)
「今日は相続登記の申請をしようと思っています。書類がたくさんありますから、手を触れないようにしてくださいね。」
太郎は表紙に「権利証」と書いてある書類が机上にあるのを発見し、指をさした。
「わ〜!…『登記済証』とかもあるんですね。」
「?…少し勉強されました?」

司法書士は丁寧に話し始めました。

 いわゆる「相続登記」は、不動産の所有者などの登記名義人が死亡したときに、その相続人を登記記録に
登記名義人として記載(正しくは、「記録」)してもらうために申請するものです。
名義人を被相続人から相続人に変更する。だから「名義変更」というふうにも言ったりします。

「今日は、去年亡くなった岩井裕二さんのご遺族の方から依頼があって、書類が整ったので申請をします。
現在の登記記録は、簡単に書くと、こんな感じでしょうか。不動産は2つです。」

不動産A
表題部 所   在 江戸川区江戸町二丁目
地   番 6番
地   目 宅地
地   積 110.10u
権利部 甲区1番 所有権移転 平成10年9月23日受付第833号
原   因 平成10年9月23日売買
所 有 者 江戸川区江戸町二丁目2番3号
岩井裕二
(ただし、登記記録の乙区に記録されている事項はない)


不動産B
表題部 所   在 江戸川区江戸町二丁目 6番地
家屋番号 3番
種   類 居宅
構   造 木造瓦葺平家建
床 面 積 82.55u
権利部 甲区1番 所有権保存 平成10年9月23日受付第834号
所 有 者 江戸川区江戸町二丁目2番3号
岩井裕二
(ただし、登記記録の乙区に記録されている事項はない)


「不動産Aが土地、Bが建物の登記記録です。土地なのか建物なのかは「表題部」の記載を見ればわかりますよね。
表題部には不動産の物理的現況が登記されるということでした。」

あぁ、登記官にお願いして、不動産Aと不動産Bの登記記録に「甲区2番」の欄を書き加えてもらう。そしてそこに相続人の名前を記載してもらう。
そのための申請書を作って登記所に出すことが司法書士の仕事か…と太郎は思った。大したことないな=っ…

続けて先生は、亡くなった岩井さんの、一家の戸籍を示す。
ここから、@裕二さんが平成22年2月16日に死亡していること、
      A同じ戸籍に妻「佐代」と子「健二」がいること
を指摘した。

相続人は妻と子の二人ですね!妻と子1人がいる場合には、妻に2分の1、子に2分の1の相続分があるんですよね?先生。

「それはわからないよ?」
先生は他にも子供がいる可能性があることを指摘した。

他の子供の記載は、この戸籍のどこにもないようですが…?

太郎は、先生が大体こんなことをおっしゃったと理解した。

戸籍の中にいる人は、死亡したら、戸籍の中から取り除かれる。
死亡した裕二さんの記載事項の中に「除籍」という記載があるが(B)、これはいわば、戸籍の記載中、裕二さんの部分は
「現在もはや生きている記載事項ではなくなった」、ということを意味する。だから裕二さんは戸籍から「除かれた」。

戸籍は今まで数度も「改製」され、新しくなってきたものである。
ずっと以前から岩井さん一家の戸籍は存在していたはずだが、
平成17年9月9日、法令の規定によって、以前の戸籍は新しく「改製」され古いモノとなり、
代わりにこのような形の記載のモノに作り替えられた(C)。
古くなった改製前の戸籍のことを、「改製原戸籍」というらしい。これも役所で手に入れることができる。

「昔に記載した事項まで含めてそのすべて今の戸籍に記載されていたりすると大変ですよね。
亡くなった方など大勢いらっしゃるはずですから、戸籍の記載が膨大な量になって、
とても見にくくなっちゃったりするはずですからねぇ…」

改製の際、改製後の新しい戸籍には改製前の古い戸籍に書いてあった記載内容がそのまま写される(「移記」される)が、
一部の重要な事項を除いて「生きていない記載事項」は移記されない。

「なるほど、そうすると仮に、次に戸籍が改製されて新しくなった場合には、その改製後の戸籍には、
この戸籍の中で除籍された裕二さんの記載は移記されないんですね。」
「たぶんそうです。」

死亡のほか、婚姻の際にも従前の戸籍から脱けてどこかの新しい戸籍に入ったりする(「入籍する」)から、従前の戸籍からは除籍される。

だからもし、亡くなった裕二さんには他にも子供がいたとして、その子が平成17年9月9日以前に婚姻していたのだとしたら…
改製前の戸籍(改正原戸籍)のその子の欄には「婚姻により○○市○○番地に新しい戸籍を作り、
そちらに移動したので、この一家の戸籍からは『除籍』しましたぁ」とあるはず。

改製後の戸籍には、改製当時「生きていない記載事項」は移記されない。

その結果、改製後のこの戸籍にはその子の記載はないことになる。

「健二さん、健「二」だし、二男ですよ。推測できますよね。」

太郎は、改製前の戸籍(改正原戸籍)も机上にあることを発見し、ちらりと覗いてみた。
そこには「健一」という長男の記載があることが明らかだった。ばっちり、その戸籍の中で「除かれて」いた。
結婚して別の場所の戸籍に入籍したことがわかる。

昨日、登記申請の依頼のために、岩井さん一家がみんなでいらっしゃったけど、そういえば…三人でお見えになっていたわ。そういうことなのね。相続人は3人。
相続分は妻については2分の1、子についてはあわせて2分の1だから、2分の1を子の人数で分配して、子は各々4分の1ずつですね、先生!

「それはわからないよ?改製前の戸籍の、さらに改製前の戸籍に、他に相続人がいるかもしれない。その3人が知らない
隠し子がいたりしてね。チェックしてみて。」

太郎には気の遠くなる話だった。昔の戸籍をすべて集めると、それだけ膨大な量になる。
しかも昔の役人が筆で書いている部分もあったりして、解読はきわめて困難だ。当時としては「達筆な字」ということだったんだろうが…
これは素人には難しい。

「たまに、ずいぶん前に亡くなった方の相続人の方がやってきて、相続登記をお願いしますってことがあるんですが、
かなり困難なときがあります。
依頼の時点では既に相続人の数が膨大になっていて、実際問題として、相続の内容を相続人全員と合意するのが難しい。
相続人が100人いたらどうにもなりませんよね。
だから登記のため、それぞれの相続人の戸籍を集める段階まで事を進めるだけでも、難しくなります。
また、そもそも戸籍などが役所に無いときもありますし。」
「役所に戸籍がない?」
「一定の場合には、古くなった改製前の戸籍は原本が役所内で捨てられちゃいますし、『震災で焼けたのでありません』と言われることもあります。」

太郎は、それは大変だ…と思うと同時に、相続登記は早めにしておくべきなのかな、と思った。


「戸籍の作りは登記簿・登記記録の作りと似ているんですよ。」
先生は不動産A(土地の登記記録)を指さした。

「甲区一番、『所有権移転』とあります。亡き岩井裕二さんが売買によって所有権を取得したわけですね。」
「はい。」
「このときの売主さん、つまり前の所有者は誰ですか?」

「?記載がない…」

「登記簿も改製されて、今の形になっています。やはり改製の際に、改製前の登記簿から現在の登記記録にその内容が移記された。
改製前の登記簿には、前の所有者の記載があったはずです。
しかし、改製前の登記簿の記載のうち、『生きていない記載事項』が新しい登記記録には移記されない、ということですと?」
「前の所有者には、もはや所有権はなかったはずなので…この登記記録に移記されない?」
「その通りです。だから、改製前の登記簿を見ると、以前の所有者の記載を確認できます。
そのような『閉鎖登記簿』も登記所で『閲覧』できたりするんですよ。」

太郎は不動産B(建物の登記記録)の甲区1番に「所有権保存 所有者 岩井裕二」の記載があるのをみて思った。
ああ、建物の場合は新築して最初に「所有権保存」登記をするんだった。その時点で、初めて登記記録が作成される。
その登記申請は、そもそも自分に所有権のある建物について、「所有者」であることを書き加えてもらうためだけのものだったはず。
だから、不動産Bははじめから岩井裕二の所有物なのであって、以前の所有者はいないのか…

「登記記録は一つ一つの申請によって書き換え、書き加えられる。登記官にお願いするわけですね。
戸籍も『出生』とか『婚姻』とか『死亡』など、一つ一つの届け出などで、書き換え、書き加えられる。
これは、役所の役人にお願いする。この関係は、住民票なども似ています。…ん、もうこんな時間か。」

「なるほど…。しかし先生、他にもいろいろと疑問が出てきたのですが、伺ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ。あくまで相談は無料ですから★
ただ、今日も私はこれから外出しますので、事務員に聞いてみてください。手を出したら高くつきますのでご注意を!
花子さん、申請書類をチェックしたら登記所に出しに行ってきてね。後はよろしく。」

(ギク)


●その5

 相続による所有権移転  中級

先生に代わって私がお答えさせて頂きますね。
私は未成年ですから、お酒のお供は出来ませんよ。
では今日もお願いいたします(泣)。事務員さん、花子さんというのですね。
(いやに古風な名前だな…)

早速ですが…
全部の戸籍を見直しても、他に相続人はいなかった。だから結局、相続人は妻1人、子2人だったわけですよね。
申請書、見せて頂いていいですか?
先生が良いっていってました。戸籍なども含めてとってもプライバシーな書類だから、他の人に言ったらダメですよ。
これです。
※本来、見せてはいけません

花子さんはこの後、この申請書と、添付書類を一緒に登記所に出しに行くんですね。
そうですよ。
あれ?申請書は一枚ですか…
不動産は土地と建物、だから2つあるわけですよね?土地と建物のそれぞれの登記記録を書き換えるんですよね?

そうです。
確か不動産登記令4条本文…
「申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。」

だから、太郎さんのおっしゃるとおり、本来は2枚の申請書を作って、両方とも登記所に出すべきなんです。
登記記録は各々の不動産に対応して、今回は2つありますから、それぞれの登記記録に目がけて申請するのが原則です。「1不動産1申請主義」って言う人もいます。
この条文、「申請書」のことを「申請情報」と言ってますけど、太郎さん、なんでだか何となくわかります?
「時代は変わり、情報化社会の波が押し寄せた」。登記所には申請書の内容が提出されればいいのだから、登記所に提出されるのは「別に『紙媒体としての申請書』である必要はない」?
よくできましたぁ。今日は紙媒体としての申請書を作ってますからこれを登記所に出しに行きますけど、この申請書の中身をパソコンに入力して、データを登記所に送信することで申請することもできるんですよ。クリックして申請するの。「申請書の中身」は登記所に提出されたことになりますよね。「オンライン申請」っていいます。
ふむふむ。
申請情報の枚数については、不動産登記令4条但書…
「ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」
つまり今回は、1つの不動産の登記記録に目がけて1つの申請情報を提出すべき原則があるけれども、「この限りでない」。1枚の申請書のみ提出すれば、同時に、2つの不動産各々の登記記録に目がけて申請したことにできる場合、に当たるわけなんですよ。
太郎さん、申請書の一番下の「不動産の表示」のところを見てみてください。
2つの不動産の記載が、一つの申請書の中に一緒に盛り込まれてますね…
だから今回は「一つの申請情報による申請」です。別に、申請書を二つに分けて申請してもよかったのですけれど、申請書を二つに分けて作っても、申請書に記載する内容はあまり変わりませんから…
へむへむ。
申請書の上から… 「登記の目的 所有権移転」。これは良いですよね?
民法が詳しい人だと、「移転」というのに違和感があるという人がいますけど…太郎さん、民法を学習されたことあります?
ないですねぇ…
死んだ岩井裕二さんから相続人に不動産の所有権が移転したから「所有権移転」。違和感なしです。
その次、「原因 平成22年2月16日 相続」。この欄に書いているのを「登記原因」と呼びます。
岩井裕二さんが亡くなった日に、相続人が「相続」を登記の原因として所有権が移転するわけですものね。
「相続は、死亡によって開始する。」民法882条!
ほむほむ。
そして…
今回は「相続人」は岩井佐代さん、1人です。
は?
子供2人はどこに行ったんですか?
相続人全員で、「この不動産はお母さんの岩井佐代さん一人にしようね」って決めたんです。遺産分割協議ってやつですよ。父が亡くなった場合、相続人の間でお母さんに不動産は全部あげるっていう合意をすることは多いんです。お父さんである裕二さんが亡くなって一年が経ったんです。落ち着いてきて先月、平成23年4月になって、「遺産分割協議をしたから」って、事務所に問い合わせてきたんですよ。
はぁぁ、しかしそれなら
「原因 平成23年4月○日  遺産分割」ってことになるのではないですかね…?
するどい!でも
「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼてその効力を生ずる。」民法909条本文!
また民法ですか…
不動産登記法を理解するには、まずは民法の基礎知識がしっかりしていないとダメだと言われてるんです。
今回は、平成23年4月○日になされた遺産分割(不動産は全部お母さんである岩井佐代のもの、との合意)の効力が、相続開始の時(死んだ日)である平成22年2月16日にさかのぼって生じています。だから、やはり平成22年2月16日に「所有権移転」です。
でも、「原因  平成22年2月16日 『遺産分割』」ではなく『相続』ですよ?
この場合、「相続」を原因として所有権移転登記の申請ができる!
先例です。
先例…?
たしか、法務局などが登記を受け付けた際などに問題となったことを、随時、決め事として発表しているもののことだったと思います。先例はみんなが知りうるから、その後の登記を規律する基準になったりするものです。
民法とか不動産登記法だけでなくて、不動産登記「令」とか先例とかも試験に出るんですか?
さっくり出ます!
むーむ、厳しいですねぇ。
…あれ、この「添付書類」って、この申請書と一緒に出す書類のこと、ですよねぇ?
ですよ。
申請書にあらかじめ、「こんな添付書類を一緒にだしますよ=」って書いておいてあげるんです。だから、一緒に出す書類の「宣言文」くらいのイメージで見ると良いですよ。
ただ、ここには「戸籍」とか「遺産分割協議書」とかの個別の書類の名前を記載をするのではないんです。通常、こんな風な概括的?な記載をしますから、具体的には何の書類を示しているのかわかりにくいですよね。だから、これだけでは何の書類を一緒に出したかわからない。
へもへも。
では、「登記原因証明情報」とは…?
これは、おそらく「登記原因証書」と、内容として同じものを指すはずですね?
そうそう、そうですよ。情報化の波!
今回、登記原因は「原因 平成23年2月16日 相続」ですから、相続が起こったことを登記官に証明する書類を指します。だから、具体的には戸籍類とか、遺産分割協議書になります。これらの「相続」を証明する書類は「相続証明情報」って言ったりもしますから、場合によっては「相続証明情報」って記載しなければいけない時もあります。けど今回は、「登記原因証明情報」とのみ、書いています。今回は登記原因が「相続」…ですから「登記原因証明情報」はまさに相続証明情報を指しているわけなんです…むずかしかったかしら。
(こやつめ、鼻につくのぅ…)
「住所証明情報」は…?
「住所証明情報」は登記名義人になる者の住民票の写しなどを指します。
だから今回は…「所有者」として登記される岩井佐代さんの住民票の写しを登記所に出します。
「写し」?コピーですか…
原本じゃなくて良いの?
住民票って…その原本はたぶん市役所とか区役所においてあるんじゃないかしら。普通の人が役所で手に入れることが出来るのは「住民票の写し」ですよ。だから世に出回る書類としても、「住民票の写し」がまさに書類の「原本」です。登記所には役所で手に入れた「住民票の写し」そのものを出します。提出する書類は、基本的に全部、書類の「原本」でなければダメなんです。
確かに、役所で手に入れられるのはあくまで住民票の「写し」、ですね。
「写し」が「原本」ですか。
登記だって同じですよぉ。
あくまで理念的にはということですけれど、登記簿や登記記録の原本は登記所内部にしかないです。結局私たちが手に入れることが出来るのは、その原本の記載内容が書いてある「登記事項証明書」にすぎないです。これはいわば、「登記の写し」ですよね。私たちは「登記の写し」を手に入れる。
むむぅ。
…原本は登記所に提出しちゃったら、返してはもらえないのですか?
一定の書類だけはどんなにお願いしても返してもらえなかったりしますけど、手続を踏めば、基本的には返してもらえます。「原本還付」の手続って言います。先生は大体、原本還付の手続をとってお客さんに原本を返すようにしているみたいですよ。
それならお客さんも安心して先生に書類の原本を預けられますね。
…「代理権限証明情報」は…委任状ですか?
正解!申請人である岩井佐代さんから、申請代理人である先生に宛てた委任状です。
今回の申請の申請代理人はうちの先生ですから。
先生、上井さんというんですか…
事務所の外に、「司法書士上井事務所」って看板がありますが…
見ていませんでしたが、何か?
後は…
「平成23年5月17日申請」。今日ですね!
今日、私はこの「東京法務局○○出張所」に申請書と添付書類一式を出しに行ってきます。
○○出張所、遠いですよ?この近くの法務局の出張所じゃダメなんですか?
ダメなんですよ…
この不動産の「登記の原本」?は、この出張所が基本的には管理してます。書き換えられるのは「登記記録のの原本?」です。だから、この出張所の登記官が内容を書き換え、書き加えます。その不動産の近くに位置する登記所が管理するってイメージすると良いと思いますよ。「管轄登記所」っていいます。
だから、他のところに出したら「こんな不動産は知らん!管轄違いじゃ〜却下!」と言われます。
厳しいねぇ…。
「課税価格」は…私の家にたびたび役所から送られてくる、納税通知書に書いてある価格で良いんですかね?
ですです。
普通は固定資産評価証明書という書類を役所とか都税事務所に行って出してもらって、そこに書いてある金額を書けば大体いいです。
この申請書の「登録免許税」は登記申請時に支払う税金…だったですかね?
そうです。今回は相続による所有権移転登記だから、「課税価格」の数字に1000分の4を掛けた数字が、納付する税金の大体の額になります。定率課税の場合は「課税価格」に税率を掛けて「登録免許税」を計算するんですよ。かけ算した後100円未満を切り捨てるから、ちょっと安くなるのかな。
私は算数が苦手ですので…
慣れですよ!
ところで、今日、登記済証が机の上にあるのを見ましたが、登記済証は登記所に出さないのですか?
出さないです。太郎さん、この登記済証は誰のものだか、わかります?
権利証≒○○○○情報」は「その申請によって申請人自らが登記名義人になる場合」に登記官がくれる。これは「登記済証」も同じことなのかな…?
登記記録を見ると、この不動産については…平成10年9月23日に自らの申請によって所有者となった「岩井裕二」に、登記官がくれた(はず)。だから岩井裕二さんのもの…ですか?
正解〜。登記済証って大切なもので、不動産を動かすときには必要になるってことでしたよね?
だから仮に、岩井裕二さんが生前、この不動産を売却し、そのときの買主さんに「所有権移転」をしたって言うんなら、その登記申請には登記済証が添付書類として必要になったはずなんです。売買による所有権移転は共同○○でしたよね?
確かに、共同○○でした。
権利証の再発行は絶対できません。
権利を失う者(義務者)が世の中に一つしかないはずの権利証を提出するわけだから、登記官としても、売買によって所有権が移転したという事実を疑いにくいです。共同○○の場合、実質的に「義務者」の地位を備えた者は、権利証を提出しなければいけないことになってます。
なるほど、共同○○の場合は、権利証(今回は、「登記済証」?)を添付しなければならないことになるわけですね。
です!
ただ、あくまでそれが「原則」であるだけで、「例外」もあります。権利証がなくても登記してもらえる手続も、用意されているんですよ。詳しくは、お近くの司法書士にお尋ねください♪…てへへ。
そうすると今回の場合、権利証は…
今回の申請で、登記記録上、権利を失う人は誰ですか?
岩井裕二さん…
!!死んでる。

…義務者の記載がありませんねぇ。
相続を原因とする権利の移転登記は、○○申請とされます…ので権利証は不要です!
先生は、申請に直接には不要であるはずの権利証を預かりました。これは、権利証に記載されているはずの「不動産の表示」を見て、岩井裕二さんが所有していた不動産の所在地などを確認していたのだと思います。
はぁぁ、確かに平成18年以前の権利証は「登記済証」でした。平成18年以降に登記されたものは、「○○○○情報」になっていたりするわけですね。
今回は、岩井裕二さんは平成10年に登記を受けている。従って権利証は「登記済証」。登記済証はその登記を申請したときの「申請書の写し」ということになる。そうすると…当時の申請書も今回の申請書と同じように「不動産の表示」の記載があるはずだから、「申請書の写し」にも当然「不動産の表示」の記載がある。先生はそれを確認した?
パーフェクト!さすが太郎さん、この二日間、よくついてこれましたね〜
センスあると思いますよ?
いやはやお恥ずかしい。私は田舎に帰って農業をやろうかな、と思っていたのですが…
少しだけ、司法書士試験の勉強をしてみたいと思います。奥が深くて楽しいですわ。はははのは。
わ〜すてき!
じゃあ、一緒にがんばりましょぉ。実は昨日、太郎さんが自分の家について、「私も登記簿が作りたい」っておっしゃってたでしょ?実は、たぶん少し複雑な手続を踏む必要があるんですよ。学習が進んだら、やってみましょう。
この次にお会いするときは、勉強会ですかね〜。
この次にお会いするときは、花子さんも成年者ですかねぇ

わ!もうお昼だ!早く行かなきゃ今日中に申請できない!
気をつけていってらっしゃい〜
太郎さんにも事務所を出て頂かないと私が外出できないのですが、何か?

設問

1 対話中に出てきた「○○○○情報」、「共同○○」という言葉の「○○」が埋められますか?
2 設問1に対応して、相続登記は「○○申請」。この「○○」が埋められますか?
3 「一つの申請情報による申請」に対するものの一つとして、「1不動産1申請主義」という言葉があることがわかりますか?
4 「遺産分割協議により相続がなされた場合でも、被相続人の死亡日が原因日付となる」とする根拠は、どこにありますか?
5 今回の申請書の添付書類の欄に「相続証明情報」と記載をしなかったのはなぜですか?
6 「原本還付」とは何か、イメージできますか?
7 亡き岩井裕二さんが持っていた「権利証」は「○○○○情報」ではなく「登記済証」でした。なぜですか?
発展 太郎さんが机の上にある登記済証を再度確認すると、2通あることがわかりました。後で先生に聞いてみたら、この場合は必ず2つになるはずだ、とのこと。登記済証が以前の申請書そのものの写しであるという理解を前提に、理由を考えてみてください。ヒントは、不動産登記令4条にあります。これは相当難しいはずです。
発展 「戸籍謄本」という書類があるのに対し、「戸籍から除かれた旨」が記載されている書類として「除籍謄本」などが存在します。一方で、「住民票の写し」という書類があるのに対し、「住民票の除票の写し」という書類があります。「除」という言葉から、「いなくなると除かれる」という理解を前提に、住民票の除票の写しとはどのような内容を確認できる書類なのか、考えてみてください。




updated 2011/5/17 first


商業登記の基礎(総論)

●その1

  商業登記の社会的機能  初心者

       「商業登記の制度によって、経済が活発化?〜財産の分離の話」
  昭和33年、関西生まれの次郎さんは、今年で53歳。
   中規模ではあるけれど業界ではそれなりに名の通ったIT企業で、長く勤務しました。
   そして、認められて本社での営業部長となっていました。
   妻は昨年亡くしてしまいましたが、息子はすでに手に職をつけ、家庭を持っています。
   自分を取り巻いていたものがなくなった…、という気がする今日この頃。

次郎さんは、第二の人生を考えていたのです。
「自分なら出来るはずだ。楽しくやるぞ!独立して仕事をしたい。」

  そんな折、近くに司法書士事務所が出来たことを知り、独立の方法など、疑問に思っていたことの解決策を教えてもらえるかもしれないと思い、
事務所を訪れました。

「事務所、この体育館の前にできたのかぁ…」

すんまへ〜ん。
(…す、すんま、へん?)
は、はい、上井事務所にようこそいらっしゃいませ。
どうなさったのかしら?
(…受付が、女医?口調も違和感が…ここ、大丈夫だろうか。)
いやいや、近くに司法書士事務所ができたと聞いてな、ちょっとご相談がありましてな。
特に予約などはしてないんやが…
そうでしたのね。
大丈夫ですよ、先生は今日はもうすぐ事務所に戻ってくるんだわ、そちらでしばらくお待ちあそばせ。
あらかじめご相談の内容を私が伺いますのよ?
実はやな、私は今、会社員なんやけど、長いこと会社で仕事をしてきたもんやから…
そろそろ自分で仕事をしたいな〜なんて思うてましてなぁ…
そうすると、自分の会社を作って、それで事業をおこす、といったことかしら?
そういったことも考えとるんや。やが、あまりお金が使えまへんでな。
なるほど。先生は「相談は★無料です!」と言うはずですわぁ。何なりとお聞きくださって結構かと思いましてよ。
あ、先生が戻られたようですわ。
先生ーお客様ですー。

「ああ、どうも、初めまして私、司法書士の上井です。」
「海畑次郎と申します。突然来てしまいましてすんまへんなぁ。」
「とんでもない、どうぞこちらへ…早速、お話を伺わせて頂きます。」

次郎さん曰く…

現状、事業をおこしと考えているが、
息子以外に身寄りはなく、将来自分に何かがあったときには息子を頼るしかない、らしい。
でも、息子夫婦に迷惑を掛けたくないから、
そのための生活費くらいは、何とか確保しておきたい。
だから、初期投資をして、大きな会社を作って、事業に失敗したら困る、とのこと。

「なるほど…。いくつか手続が考えられますよ。」

「個人事業をする場合、『商号の登記』をして事業をするという方法があります。」
「商号の登記?」
「そうです。例えていうと…飲食店の『のれん』ってありますよね?『○○ラーメン』とか書いてあるやつです。

その『商号』の中身をそのまま役所内部で登録(登記)してもらって、みんなが見られるようにする。」
「そんなことして、何か意味があんかいな?」

「先ほどの例ですと、『○○ラーメン』にいつもやってくる、というお客さんは
『○○ラーメン』という名前の店だから美味しいんだ、なんて思っているからこそ何回もやってくる。ですので
長年の間に看板、つまりその商号自体にお客さんの信用が蓄積します。『○○ラーメン』という商号そのものが、営業者の財産となってくるわけです。
信用の蓄積された商号なら、誰かに売ることもできるはずです。また商号の登記を経ることによって、かなり限定的ではありますが、
他の営業者が同じ商号を使いにくくなることになります。逆に、次郎さんが誰かに引き継いで仕事を辞めるとき、負債を免れる手続があります。」
「息子に継いでもらうつもりはないんや。うーん…」
「まぁ、そういったいわゆる「無体財産権」は、主に商標法や不正競争防止法といった法律で規律されるようですから、
ご興味があれば弁理士さんをご紹介しますよ。」
「いやぁ、結構やわ。会社は作れないんかのぅ。やっぱりお金がかかってしまうんやろか…?」

「いや、作れます。ただ、『会社』と一言で言っても色々な種類の会社があるのですよ?」
「と、いうと…?」
「株式会社はご存じですよね?」
「もちろん、今、私は株式会社の正社員やで。」
「有限会社もご存じですよね?」
「たしかに。…会社でも違うんかいね?」
「その通りです。他に、合名会社、合資会社、合同会社、一般社団法人・一般財団法人といったものや
医療法人、宗教法人、学校法人といった特殊法人も、大きな枠組みで言えばやはり、
次郎さんがイメージされているところの『会社』のように考えることができます。厳密には、『会社』は合名・合資・合同・株式会社の4つの『法人』
を指すわけですが…。ですから趣味の同好会や、場合によっては町内会も、『会社』にすることができるんですよ。」
「どういうことなんやろ?」

「会社は、『法人』です。『法人』とは、「法によって財産を持つことを認められた人」を指します。たとえば「株式会社」は
『会社法』という法律によって、株式会社自身が財産を持つことが認められています。もちろん次郎さんは法人ではないですよね。
次郎さんは生まれたその瞬間から財産を持つことを認められているからです。若干、憲法論かもしれませんが…。
ですから仮に、犬にも財産を持つことを認める『イヌ法』ができたとしたら、
『イヌ法』に規定されている犬は、財産を持つことが認められます。人間が、その犬の所有するエサを無理矢理奪ったら強盗罪になる
かもしれません。今のところそんな法律はないですよね…
趣味の同好会は、結果的に「同好会自身が財産を所有できる」となる法律があるから、法人にできます。」


「『財産を、法人自体が持つことができる』…のが法人、なんやな。そして会社も『法人』なんや。
だから、法人となれば、同好会も、町内会も、自ら財産を所有することができるわけなんね。」
「たとえばですが…会社の代表取締役がAさんのときに、会社が不動産を買いました。そうすると、その不動産はAさん個人の所有物ではなく
会社自身の所有物です。ですから、代表取締役がBさんに変わったときでも、不動産は会社所有のままです。プラスの財産は、
人間が所有するのと同じように、法律の規定により、まさに「会社の」所有物として認められるわけです。」
「なるほど…」
「その反面、会社はマイナスの財産も所有します。つまり債務も会社名義になります。」
「それはそうやわなぁ…」
「しかしたとえば、ある会社が多くの金銭債務を負ってしまったとします。このときの代表取締役はCさんでした。
このとき、Cさん個人の自宅に、Cさん宛に、債権者から『金を払え!』と請求されると思いますか?」
「今の話からすると、会社が負う債務は、会社内部の個人であるCさんが所有しているのではないことになる?わけやな。
や〜から…請求されることはないんや。」
「その通りです。Cさんが法に反するほどに悪いことをした、だから会社が多額の債務を負ったんだ!
なんていう事情があったらもっと話は違うのでしょうけれど、
たとえ多額の債務を抱えたまま会社がつぶれても、それだけでは代表取締役のCさんがお金を支払うことにはなりません。
つまり、個人の財産から会社の債務を切り離すことができるのです。あくまで、会社と個人のサイフは別モノです。」
「私が始めた事業がダメになっても、私は自分の生活だけは守りたいと思っているから、私にはぴったりかもしれんわぁな。」
「ですから、次郎さんのように、自己資金を元に仕事をしたいと考える人(起業者)にとっては、会社を作ることに大きなメリットがあるのです。
逆に、代表取締役のCさんが個人的に大きな債務を負ってしまったとします。会社は債務を負いますか?」
「負わない、ということになるんよね。サイフは別モノ?」
「おっしゃるとおりです。もし仮に、会社の構成員個人ひとりが個人的な事柄について失敗しても、会社は債務を負うことなく健全な状態で生き残る。
それらに、会社内外の人間の安心感が生まれます。代表取締役Cさんを含め、会社内部の個人の財産状態が悪くなっても、
会社外部の人間はその会社とは安心して取引することができます。そして、会社内部の社員たちも安心して働けるようになる。
個人財産が減少することは、会社自体には無関係ですから。」
「個人でやるよりは、会社の方が仕事がしやすそうやなぁ。」
「『法人』というシステムの存在によって、会社内外のみんなが安心して仕事をできるってことになりますから、
このシステムは経済が活発化する要素のひとつなんだろうと思いますよ。
先ほどの『商号の登記』は、法人ではなく、営業者が個人名義で仕事をするというものですから、事業が傾くということが、
イコールの問題として営業者個人の財産に直結します。」

                          

「で、今回は、どの種類の『会社』を作るのが良いんやろか?」
「…株式会社がお勧めです。
費用は、資本金の額(会社の設立時のお金のこと。)にもよりますが、私の報酬を含めても30万円くらいあれば十分作ることができますよ。」
「それなら全く問題ないわ。会社を作るのに1000万円くらい準備しちょるから。
ただ、『作る』って、具体的には何が作られるんかいな?」
「株式会社の登記記録(登記簿)です。会社は、登記所の登記官、という役人の手によって設立登記がされ、
登記記録(登記簿)が作成されると成立します。
だから手続を進めて、最後に登記官にお願いをして、登記所の中で次郎さんの会社の登記記録(登記簿)というものを作ってもらういます。
ですので登記記録を作ってもらうという目的を達成するために手続を進めることになります。『設立手続』と呼ばれます。
登記所の中には会社一つ一つに登記記録が存在していて、一度作られた登記記録は、その後ずっとその登記所で管理されていきます。
会社それ自体は社員とか権利とか財産の集まりであっても、実際に『会社』という現物を目で見ることができるわけではありません。
ですから我々人間はは概念上の『会社』というモノを、登記記録を通して見ることになります。」
「はぁぁ…会社の登記記録って、どんなものなんか、なかなかイメージがわかないんやが。」

「次郎さんの会社だと、たとえばこんな風にできあがるはずですよ。」

「次郎さんの会社の登記記録が登記所内部でできあがったら、その登記記録に記録されている内容を
こんな感じの書類(証明書)で示してもらって、確認することができます。」
「タイトルが『履歴事項証明書』ってなってるんやな。」
「そうです。『履歴事項』というわけです。会社が設立された後、登記所の内部ではこの会社の歴史が登記記録に刻まれ続けます。
ですのでこれはその履歴を確認することができる証明書、ということになります。この証明書、登記所に行けば誰でももらうことができますから、
登記の内容を見ることによって、みんなに『あぁ、こんな会社があるんだな』って、安心してもらえます。
これが「商業登記」です。これも、大きな視点で見れば、社会経済の活発化の要因の一つになるんではないでしょうか。」
「商号…会社の名前やな。本店…これは、会社の存在する場所なんよね?この証明書に書かれていること、
なんだか住民票の記載に似てるところがありまんなぁ…」
「そうですよね。人間の日本人には戸籍とか住民票がありますでしょ?そのような書類に変わるものとしてこういった書類を
使うことができることになります。会社自ら財産を所持する以上、そのような書類が必要になることがありますから。」

「べんりやねぇ。」
「では早速、手続を進めましょう。会社を作るのに必要な書類などを整理して、再度次郎さんにご連絡いたします。」
「よろしくお願いしますわ。しかし先生、他にもいろいろと聞いておきたいことがあるんやが…」

「どうぞどうぞ。相談は★無料ですから。
ただ、あいにく私はこれからどうしても外出しなければいけない用がありますので、事務員に聞いてみてください。
そろそろ若くはないはずなのですが、彼女は、次の司法書士試験の合格を目指している司法書士の卵なんですよ
特に、お作りになる会社の種類などまで含め、その特性とか、まだまだ色々選択の余地のあるところだと思います。
しっかり聞いてやってください。後日、私の方からまたご説明させて頂きます。
花江さん、いい加減コスプレはやめなさい。後はよろしく。」

updated 2011/5/17 first


●その2

 会社の基礎知識  初心者


       「どんな会社を作りたいのかな?会社の種類と社員の責任の話。
  

(先生ったら失礼ね…この話題には触れないでおこっと。)
先生に代わって私が答えさせて頂きますわ。
(コスプレだったんかいな…)
花江さん、よろしくお願いしますわ。早速なんやが…
法人を作れば個人財産をそこから切り離すことができること、よくわかったわ。
話の途中で「憲法論」といわれとったが…
人権よ、きっと人権のことを言ってたんだと思うわ。人「権」って憲法に定められている権利よ。
人権は人が人であるがゆえに認められる権利、とされるものですわ。
人間であれば生まれたら当然に財産を持つ権利があるはず。だから本来は、あえて「財産を所有することを認める」という意味になるような規定のある法律を作って、法律の規定で権利を認める必要がないのですのよ。憲法は法律より偉い、のはお分かりになりまして?
(この女性は高飛車だな〜)
なんとなくは…
法人は人間ではないから、法律によって初めて権利が認められる。そこで、「法によって権利を持つことが認められたもの」ということになるのですわ。権利だけではなく、当然義務も持つことになるわね。権利とか義務ではなく「権利能力が認められたもの」なんてふうに言いますのよ。しかも「法」って言うのは法律の一つ上の次元の言葉だった気がするわ。
なんか、哲学っぽい話やねぇ。なんとなくは、わかったわ。

あらあら、素直な子ね。
会社も「法人」、だから法律の規定によって権利とか義務があるのですわ。
だけど、法律上、会社の種類によってその内容がさまざまなのよ。

会社の種類?
ああ、先生が有限会社とか株式会社って言ってたやつやろか。

ですことよ。
そして考え方として、会社は「人的会社」と「物的会社」の2つに分類されることがあるわ。
ははぁ。
合名会社、と呼ばれる会社は「人的会社」に分類されるのよ。
へへぇ?
人的会社は会社内にいる人間の信用が直接、会社自身の信用を意味することになるわ。。会社外の人は、「あぁ、この会社の中にはこの人がいる。だから信用できるなぁ」、って思うってことよ。
嘘をつかない人が働くのなら合名会社がよい、ということなんやな?
ちょっとちがうわ。
私が言った「信用」というのは人柄じゃなくって「資力」という意味よ。お金を持ってるかどうか。

お金?
じゃあ、「あぁ、この会社の中ではお金持ちの人が働いている。だから信用できるなぁ」ってことになるわけなんか。

それもちょっと違うわねぇ…
順番にご説明しますわ。
まず、会社は「社団」法人です。
「社団」。
「社団」って、人の集りのことよ。これに対して、財産の集まりを「財団」っていうの。会社は、人の集まりに権利が認められるから、社団法人。

中でたくさんの人が働いているということやな?

ん〜、確かに「人の集まり」である以上、社団には必ず構成員がいるわ。その構成員を「社員」と呼ぶ、というところは大体次郎さんが考えている事と似てると思うんだわ。でも、会社の従業員のことではないのよ。社員って、その会社を設立するときにお金を出した人(出資者)などのことなのよ。
金貸しのことなんやな。
違うわ。
会社って、人の集まりに財産が積まれて、それで成り立ってるわけでしょ。その実体は、財産なのよ。会社は実質的に財産で構成されてる。だから、設立するときに出されたお金(出資金)はまさに、会社のからだの一部。出資した人は、会社の所有者。普通は共有よね。そういった会社の所有者を「社員」と考えればいいと思うわ。
社員は会社の所有者なんや。
合名会社は、「会社の所有者が信用できる。資力がある。だから信用できる。」という会社とみていいと思うのですわ。社員の人柄とか技能も信用の対象になるけど、資力の観点に置き換えた場合は…それはあくまで人柄や技能を経済的な価値に置き換えて考えていくことになるのよ。所有者が、価値のあるものを持っている。
ほほぉ。
たとえば、会社がたくさんの債務を抱えて、支払いができない状態になったとしますわ。そしたら最終的に、その所有者に「金払え」って請求が来る。払えないなら体で(技能で)支払え。会社の所有者である社員がお金持ちなら、会社外の人、たとえば取引先の人が安心する。もし、その会社のために請負工事をしたという人がいた場合、そのあと会社がつぶれても、後でちゃんと社員から報酬を受け取ることができる。この場合、会社の取引先の人が報酬請求権といった権利を持つって事だから債権者、ということよ。一般的に会社債権者は、合名会社では社員個人のの資力を重要と考える。業務執行という観点からの説明もあるけど、ぱんくしちゃうわね。だからそれはまたこんどね。うふふ。
なるほど、社員の信用がまさに会社の信用。それが人的会社なんやな。
そうよ。
人的会社に対して、株式会社は物的会社。憶えられるかしら?
株式会社は会社の持っている財産が信用の対象なのよ。「あぁ、この会社はお金をいっぱい持っているから信用できるな」ってなる。

ん?それは人的会社も同じなんと違いますか?

同じところもあるんだわ。でもそうねぇ…株式会社の社員って、どんな人のことを言うと思うかしら?
「社員」というのは会社の所有者、なんよね…誰なんやろ?
株主よ。株式会社が設立されるときなどに、株式会社に出資してその株式会社の財産としてお金を積んだ人のことを株主というわけよね。だから、社員は株主。だから、株式会社の実質的な所有者は、株主。
株式会社の所有者は、株主。
…ひひぃ。
たとえば、会社が多額の金銭債務を抱えて倒産した。
次郎さん、株主は債権者から「金払え」って請求が来ると思うかしら?
…こない?
そうなのよ。こない。
だから、会社外の債権者が信用するのは会社内部の財産しかない。債権者からは特に、会社内で「資本金」という名目で積まれているお金が信用されるのよ。
なるほどでんな…
合名会社は債権者から社員個人の財産を狙われる。だから、信用の対象は社員個人の資力。
株式会社は債権者から会社内部の財産のみが狙われる。だから、信用の対象は、会社の資力。
だんだんわかってきたわね。
株式会社の株主だって、会社がつぶれたら出資したお金がパァになるから、「自らお金を出した限度で」損をするわけだけどね。
ふふぅ。
合名会社のように、社員個人の財産が尽きるまで会社に責任を追うことを「無限責任」というの。
「責任」って倫理的な意味ではないのよ。裁判所によって強制執行されて無理矢理財産をとられてしまう地位のことを指すのよ。財産が尽きるまで無理矢理採られてしまう立場。それが無限責任ということね。
無限責任に対して、株式会社のように、社員個人は出資した限度でのみ会社に対して責任をことを「有限責任」というの。有限責任って、責任を負う金額に限度があるという意味よ。だから、「有限」。例えば、50万円の限度で責任を負う有限責任社員がいたとしたら、債権者に100万円払えと言われても、50万円支払えば許される。裁判所から無理矢理とられてしまうのも、50万円まで。
…先生は、法人は会社と個人の財産を分離することができるのがメリットだといっとったんよなぁ?
無限責任社員って、なんか、法人ではないみたいやな。個人営業と変わらないやんか。
そうともいえそうだけど、合名会社の社員、つまり無限責任社員も、いきなり債権者から請求を受けるわけではないのよ。あくまで会社本体の支払い能力がなくなったら、そのときに支払わなければならなくなったりするだけよ。そういう意味で、「二次的な責任」を負ってると言われることがあるわ。
個人が無限責任を負うとしても、会社である以上、一応、会社と個人の財産は切り離されているわけっちゅうことか…
そう。
合名会社の社員は全員無限責任社員よ。
合資会社は無限責任社員と有限責任社員の双方が社員として存在する。
合同会社は有限責任社員しかいないわ。
株式会社の社員は株主。4つの会社は社員が違うわ。会社を設立するっていうのは、普通は設立する人が社員になるのよ。太郎さんも社員になるわ。株式会社なら、太郎さんが株主になる。お金を出してるんだもん、その会社はその人の所有物よ。
私が従業員になるということではないわけわな。
…あれれ?株主は有限責任しか負わないわけなんよなぁ。合同会社と変わらんのじゃないんね?
回転がよろしいわ。有限責任、無限責任といった話からすると変わらないわよ。
社員の負う権利や義務がすこ〜し違うだけのよ…それこそ、業務執行という観点の話になるから、そっちの話はまた今度。
ただ、だからこそ先生は次郎さんの話からして、合同会社の設立もあり得るな、と考えていたんだと思うの。
どっちがいいんかいな?
合同会社の方が会社の運営は楽かもしれないわね…
でも、合同会社は十分に世の中に知れ渡ってないわよね…
たしかに、「合同会社」なんて私は初耳やったわ。
次郎さんと同じように合同会社という会社の形態を知らない人が見たら、なんだか怖い会社って思うかもしれないわよね。
「次郎合同会社の次郎です」?
(…それなら「次郎株式会社の次郎です。」と言っても同じことやないか?)
……そうかもしれんなぁ。
合同会社の方が株式会社より設立にかかる費用は若干安いのだけど、先生は設立費用はあまり問題はないのではないかな、と考えたのではないかしら。次郎さん、今使っても良いと思っている金額、言ってたわよね。
いくらくらい違うんかいな?
出資金が1000万円の場合、
はじめ、会社を設立する登記申請をするときにかかる税金(登録免許税)は、株式会社で15万円。合同会社で7万円よ。
それに加えて、株式会社の場合、定款の認証手続というのに別途の費用がかかるわ。普通は少なくとも5、6万円かかるのよ。だから少なくとも合計で20万円はこえちゃうわね。でも、それくらいの差なのよ。
次郎さん、お金もってそうだからステキ★

その程度の差かいや。それなら私の場合は、株式会社を作ってしても費用の点は問題ないわな。
合同会社と株式会社の違いについてはまた先生が説明すると思いますわ。そこで色々聞いてみるとよろしいわよ。
…恐縮ですわ。
(丁寧なところもあるのね。根は生真面目、そしてお金はアル。うふふ…)
ただ、もう一つだけ伺いたいんやけど…
なにかしら?
花江さん、おいくつなんやろ?
レディーに失礼ね。
ア・ラ・フォ〜のセレブって思ってて頂いてよろしいことよ。
(…んn〜、もっと全然若く見えるな…)
年まで聞いたのよ?次にいらしたときには何らかのお高いお品物〜♪を持ってくるべきでございますわぁ。
ははは、そうやな〜
(…お菓子でも買ってくるか。)
安物で済ますつもりね。考えが筒抜けよ。

設問

1 「会社財産と個人財産の分離」。この言葉の意味が理解できますか?
2 有限責任と無限責任の違いがわかりますか?
3 合名会社の社員と個人営業者とを比べた場合、責任の内容はどのように違うか、ひとつ挙げられますか?
4 合名会社、合資会社、合同会社、株式会社の順で「人的会社」性が小さくなり、逆に「物的会社」の要素が強くなる。これはどういうことかわかりますか?
5 株式会社の実質的な所有者は、誰ですか?




updated 2011/5/19 first

●その3

  株式会社の設立準備  初心者
 

「…では、株式会社を設立すると言うことでよろしかったのですね。」
 約1週間後、次郎は再度、司法書士事務所を訪れていました。

「せんせ、言われたとおり会社の印鑑を作ってきましたわ。それと、今日は私の実印と印鑑証明書を持ってきたんやで。」
「今日お持ちでなくても良かったですが…ありがとうございます。せっかくなので印鑑証明書だけ、お預かりしますね。
では、まず委任状にご印鑑を頂きます。」

「はい。
…?2通ありますね。」

     

「1通が定款認証用、1通が設立登記申請用です。いずれの手続も私が次郎さんに代わって行いますので、
それぞれの手続を依頼していただく委任状です。」
「『定款』『認証』?なんやそれ。」
「定款の認証はですね…」


次郎は、先生が大体こんな事を言ったと理解した。

 「定款」は、会社の決まり事などが記載されている書類。だから会社は、それに従って行動することになる。
 定款には、その会社が行うことのできる「権利」とか、行わなければいけない「義務」が記載されるもの、らしい。
 定款は、会社によって内容が異なる。会社それぞれが異なる規律を持っていると言うことだ。それはいわば当然のことかもしれない。
 しかし、株式会社は会社法という法律によって権利能力が認められる。
 だから株式会社の定款の場合、会社法で許された範囲でしか定款には記載することができない、らしい。
 そして先生によると、作られた定款はその会社の「憲法」にあたる書類になる、ということだ。
 
 

株式会社の定款は、株式会社を作りたいと思っている私が作ったり、私が依頼して先生が作ったりしても、それだけでは意味がないらしい。
定款が正規の「定款」として認められるには、公証人というえらい人に、作った定款を「認証」してもらうことが必要になる。
認証とは、公証人に定款を見せて「うむ、これでよいぞ。」と言ってもらう手続らしい。一旦これで良いと認められた定款は、会社の設立手続が終わるまで、簡単には内容を変更できないそうだ。
偉い人に認められてはじめて「定款は、効力を生ずる」ことになるのか。

「定款の認証手続の他、その他のすべての手続が終わって書類が整ってからしか、登記所に設立登記の申請はできません。ですから書類を整えていきましょう。」
「なるほどでんな。でもせんせ、会社の印鑑を押せばいいんかいな?私の実印を押せばいいんかいな?」
「署名欄に『発起人』とある方には実印をお願いします。『代表取締役』とある方には会社の印鑑をお願いします。
押印をなさるのは、今日でなくても結構ですよ。」
「はて、発起人?なんやそれ」


次郎は、先生が大体こんな事を言ったと理解した。

 私は株式会社を作りたい。だから、株式会社を設立しようとしているわけだが、そのような人を「発起人」と呼ぶ。
 一念「発起」して会社を作ろうというのだから、それはそうか。
 それに対して「代表取締役」というのは会社の社長のこと。それはそうだ。
 しかし、会社は目に見えるという意味での実体がない。だから会社の代わりに社長がいわば「会社そのもの」として行動する。
 ただ、株式会社は株主の所有物だから、会社内で一番偉いのは社長ではなく、本当は株主だ。だから社長は株主には逆らえない。
 あくまで会社外の人から会社を見た場合に、代表取締役が会社そのものになるらしい。たとえば登記所などから見ても「代表取締役=株式会社」となることがある、とのこと。
 株式会社の代表取締役とは、まさに株式会社そのもの、…なるほどねぇ。
 
 発起人は一念発起して会社を作る人、だから代表取締役個人ではない。一念発起して会社は作るけど、
 会社の運営自体は別の人に代表取締役としてお願いすることもあるはずだから、当然別人。それもそうか。
 単なる個人である発起人と、会社そのものを意味する代表取締役は、根本的に「人格」が違う。
  私が代表取締役になるのだとすると、個人としての私とは別に、別人格の私が生まれる。

 「会社の代表者を『会社そのもの』と見るかどうかは、学者さんたちの間で議論があるところですけどね…
まぁ、それは置いておいて、『発起人』のところには次郎さんの実印をお願いします。
『代表取締役』のところには会社の印鑑をお願いします。手続が終わったらその会社の印鑑のほうは
個人の実印と同じような意味を持つものになりますので、大切に保管してくださいね。その印鑑は『届出印』と呼ばれるようになります。」

 個人の実印に対して、会社の届出印か。

 「さて、既に伺った通りの内容を記載しているものとは思いますが、確認させて頂きますね。定款の最初の部分から。まず商号ですが…」
 
 …会社によって定款の中身は異なるわけだ。だから私の事案に応じた形で定款の内容を決定していくわけか。

 「…で、会社の役員ですが、今回は次郎さん一人が取締役、かつ代表取締役で、他の人はいないのですよね?」
 「そうやで。役員の数は、今は1人でもよくなったんやったね。」
 「そうです。会社法の改正(新設)によって『許されるようになりました』。
 続いて資本金の額は…1000万円ですね。」
 「そうや。1000万円なくても、1円でもよかったんやな。」
 「そうです。会社法(商法)の改正によるものです。株式会社の場合は…1円というのはあまりお勧めできませんが。」
 「物的会社やからやろ?」

 「…少し勉強されました?
 資本金は定款の認証が終わったらご連絡しますから、その後、会社用の通帳に振り込んでくださいね。」
 「私名義の通帳に振り込むんでいいんかいな?」
 「良いです。いずれにせよ、会社ができるまでは、会社名義の通帳は作れませんので。」
 「登記されるまでは法人として財産を持つことが認められないからやろ?」

 「…復習でもされているのですか?
 では本店、つまり会社の所在地は次郎さんの自宅と同じでよろしいのですね。」
 「自宅で仕事をやりますから。場所は同じでも良いんやんな?」
 「当然、良いですよ。」
 「個人の私と、それとは別の人格を持った法人としての私が同居していることになるだけ、だからやろ?」

 「…センスがおありですね。」

 次郎は小一時間ほど書類の説明を受け、納得の上、書類に署名や押印をしました。

 「本日ごらん頂いた書類の写しをお渡しします。お帰りになって確認してみてください。
 それと、今日私が預かっていない書類は後日事務所に送って頂けると助かります。宛名を書いてありますから、この封筒に入れてお送りください。

 では、またご連絡します。」

「親切やねぇ。
ぜひよろしくお願いしますわ。しかし先生、他にもいろいろと聞いておきたいことがあるんやが…」


「どうぞどうぞ。ただ例によって、私は今日もこれから外出しますので、花江さんに聞いてみてください。
花江さん、言葉遣いに気をつけなさいね。後はよろしく。
次郎さん、花江さんには気をつけてくださいね。
今回のご依頼の報酬は今度お支払い頂きますが、それ以上、想定外の出費がありませんことを。


(ドキ)

花江の要望を受け持参した高価品が入った、やや見栄えのする紙袋が、少しだけ自分の鞄の中から顔を覗かせている事に気付いて
次郎は頭をかいたのでした…




updated 2011/5/19 first


●その4

 株式会社の設立登記申請書  初級


  

今日も、先生に代わって私が答えさせて頂きますわ。
(…早くそれを渡しなさいよ。)
(…今日渡してしまうと、この後ずっとカモになる?…言われないうちは渡すのはやめるのが良い判断やな。)
花江さん、よろしくお願いしまんな。早速なんやが…
(^^!)
早速…?
登記、大体いつ頃になるんかいな?
書類さえそろえばすぐにでも申請できる状態なのですわ。遅くとも一週間以内の予定よ。
書類は押印を頂けばいいし、費用の振り込みも…次郎さん、すぐやって頂けるのですわよね?
そりゃもちろんですわ。
申請書を登記所に出すと、登記所で審査が始まるわ。
最近、東京だと1週間もかからないうちに登記が完了したりしますのよ。
出してすぐ終わるんじゃないねんなぁ。
ですわ。書面を登記所に出したら、そこですぐ受け付けられる。だから、「受付日」と「受付番号」はすぐ発行される。
審査が始まって、何事もなければそのまま登記が完了するけど、書類に不備があった場合、次のいずれかの手続に移るのよ。
「補正」か「却下」か「取り下げ」。
「補正」「却下」「取り下げ」ってなんね?
「補正」は書類の不備を正すことよ。たとえば申請書に誤植があった場合、誤植を訂正しに登記所に直接出向くことがあるわ。足りない書類を郵送することもあるのよ。
一方、「却下」は「登記しないよ」って決定されて、そこで手続が終了してしまうことなんだわ。
却下されたら、払った税金はどうなるんな?登録免許税と言っとったやつ。
うふふ。まずはお金の問題が大切よね。私もそう思うわ…
登録免許税は登記がされなかった以上最終的には戻ってくる。民法の用語で「不当利得」ってことになっちゃうからじゃないかしら。
でも、代理して申請した場合でも基本的には申請人本人に戻ってくるのよ。たぶん、税金逃れに利用されたら困るからだなんだろうと思うわ。
司法書士に手続をお願いして全部任せちゃってるのに、お金が本人に戻ってきたらびっくりしちゃうわよ。
次郎さん、今回の申請のために先生にお金を預けるでしょ?
もちろんやで。
却下されたら次郎さんの口座の中15万円が入金されたりするわ。でも、会社を作るって事だから、もう一回申請することになるわよね。
だけど、次の申請もまた別の新しい申請なの。だから申請するときには次郎さんからまた15万円を預かることになる。却下だと申請書と一緒に出した添付書類は戻ってこないから、もう一回作る。次郎さんからもう一回署名や押印をもらう。そしてやっと申請する。登記がされるまで長い時間がかかることになるわ。
却下になると大変やな。
それよりお客さんの信用を失なっちゃうわ。「却下になりましたので、もう一度同じような事をしてください」と申請代理人の司法書士から連絡が来る。お客さん(依頼者)は、同じようにお金を出し入れして、同じように署名、押印するんのよ?なにやってんだって事になるわよ。
だから却下は最悪なの。登記官にはなるべく補正手続で許して欲しいところだわ。
でも、商業登記法24条によると、そこに定めてある場合に当たると原則却下。
例外的に「補正」で良いことになってる。
補正が例外かいな。厳しいねぇ。
実務的には補正で許してくれる場合が多いわよ。
登記所から「間違ってるから補正してください」って電話がかかってくるわ。言ってみれば行政指導ね。
一方、「取り下げ」は申請がなかったことにすることよ。理念的には申請人の都合などで任意に取り下げることなの。でも、やっぱり実務的には「取り下げてください」って登記所に言われて、取り下げることが多い気がするわ。
なんで取り下げてくださいなんて言われるんかいな。
まず、登記官が「申請を補正してもらっても、どうしても誤っていることが正しくならないなぁ…」と判断したとする。登記官はどうする?
原則却下…なんやないんね?
そうなんだけど、却下するとどうなるかってさっき言ったわよね?
申請人に大きな負担がかかることがある。だから却下にしたくない。
そこで「取り下げてください」って連絡をくれる?
そうですわ。あくまでそういった連絡をする義務が登記官にあかどうかはわからないけど、実際、してくれるわね。
申請を取り下げると、申請書と一緒に出した添付書類を返してくれるから、次に申請するときにもう一度使える。
でも、登録免許税は申請人本人に直接戻ってくる?
それもできるけど、取り下げだと、申請代理人の方に戻すことができるのよ。
登録免許税の納め方、大きくは3つあるわ。
ふむふむ。
ひとつは印紙で納付する。印紙って、切手みたいなものよね。
印紙で納付する場合は、たとえばA4サイズの白紙に印紙を貼って、申請書と一緒に出すだけよ。
二つ目は電子納付。ネット上の銀行口座などから払い込むわけね。
三つ目は、銀行などにお金を納めて、「払い込みました」って用紙をもらって、その用紙を申請書と一緒に出す。
後ろの二つは、特に高額の時に便利よね。
はむはむ…
このうち、取り下げの時に登録免許税を申請代理人に戻すことができるのは、印紙で納付した場合だけね。
でも、印紙での納付の場合、受け付けられたらすぐに印紙が「消される」から、まっさらな状態で印紙が戻ってくるわけではないわ。
「再使用証明」という証明文言が付記された形で戻ってくるだけよ。
そうなんや…
最近は特別な委任状を持って行けば申請代理人の方に登録免許税を戻してもらえることがあるけど、従来から「お客さんにお金を直接戻すのは負担がある」って言うことで、再使用証明は重宝される手続よ。
取り下げにはメリットがあるねんな。
そうなのよ。
だから私のイメージだと却下って…「取り下げてください」っていう連絡を無視してそのまま放置した時にされちゃうことなんだわ。
どうしようもないから、登記官は仕方なく却下する。
でも、却下でも取り下げでも、私の場合はその後もう一回申請しようって言うわけなんよね?どっちにしても、登記が完了するまでは時間がかかるんよなぁ。
補正じゃダメな時ってどんなとき…なのかいや〜?
試験的には商業登記法24条の1号か2号か3号に当たる場合、必ず却下になる(却下事由に当たる)ってことを憶える必要があるの。
たとえば1号は管轄違いの場合ね。管轄違いの申請をしちゃったら必ず却下されちゃう。
株式会社の場合、本店の所在地に対応して、会社の登記記録を管理する登記所が決まっているの。
本店の近くの登記所が管轄の登記所になるって考えればいいわ。
会社の本店が東京にあるのに、北海道の登記所に申請書を出したりしたら、「こんな会社は知らん。」といって却下される。
実務的には「取り下げてください」って連絡が来るのかな?そのときは取り下げる。
そりゃ面倒やな〜。そんときは単に、北海道の登記官が東京の登記所に書類を送ってくれれば良いだけなんじゃないんね?
会社の中とかだと、間違った部署に届いた書類は、別の部署に回してくれるんやがなあ。
それはしてくれないのよ…条文上、補正では正せないときには却下される。
補正で正せないときってのは、そのほか、手続自体をちゃんとしていない時などね。結局条文の却下事由に当たることになるわ。
というと?
うふふ。お教え申し上げるわぁ。
次郎さんの会社の設立手続で言うと…
公証人の認証を受けた定款は、申請書と一緒に提出する「添付書類」になることは良かったわよね?
そやったな。
認証を受けないまま、つまり認証手続を全くしないで定款を添付書類として提出してしまった場合などは、却下ね。
認証を受けた定款はあるけど単に登記所に出し忘れただけなら、補正ね。
なんでやねん?
登記所から「これじゃダメですよ」って連絡が来た後に、別途公証人にお願いすれば良いだけやんか。
後で認証を受けた定款を登記所に郵送するのではダメなんな?
次郎さん、申請手続がわかってきたようね。
認証を受けた「定款には」、認証文言と、認証をした年月日か付記されるのよ。
そして、登記所に既に申請がなされていると、「申請には」その申請日・受付番号がついてる。
登記申請は、「申請」→「審査」→「登記官の手による登記」の流れなのも良かったわね?
全部で1週間くらいで終わったりすると言うことやったわなぁ。
そうよ。
だから登記が実行されるのは申請した日よりも後になる。だけど登記記録に記録される「登記した日」は、実際に「申請した日」になるのよ。
…?
日付が遡る…?
そうなんだわ。
たとえば…
4月1日に設立登記の申請をした。
「定款がダメですよ〜、認証された形跡がない」って言われて、登記所から連絡が来る。
4月2日に別途定款の認証を受け、その定款を登記所に提出する。
4月3日に審査が終了し、同日、登記官の手によって登記がなされた。
しかし、登記の日は4月1日に遡る…?
いい調子ね。
定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じない。定款が効力を生ずるのは、この例では、4月2日よ。
だから、効力のある定款がない状態の4月1日に、会社は設立されたことになる。
手続が変になっているのはわかると思うけど、だからどうだっていうのかしら?
会社は法人。法人は法律の規定によって権利能力が与えられる。
法律によると…絶対、株式会社には効力のある定款が存在していなければならないとなってるんな?
結局、そういうことよ。会社法よ。
そして、権利能力がないのは法人ではない。つまり1日分、無効な登記記録が作られることになるのね。
とすると、商業登記法24条10号の「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき」にあたる。
このときは補正で正せない場合には却下せよ、ってことだから、登記官に「却下じゃ」と言われる。実務的にはたぶん…
「取り下げてください」ってなる。
よちよち。いいわよ!
ちなみに…商業登記の申請の代理ができるのは、原則として司法書士だけよ。例外として弁護士などはできたりするけど。
そういった資格がない者が申請手続を「お手伝い」して申請した、なんて場合…もし補正や取り下げの手続に入った場合、
全部申請人本人がやらなければいけなくなるから負担が大きいわ。却下でも負担が大きいってことだったわよね。
ちょっと興味が出てきたわぁ。
…登記申請書ってどんなのなんやろ?
うふふ。
実は、もう大体できてるのよ。次郎さんの会社の設立登記申請書は、こんな感じになるわ。



向かって左側の書類が申請書本体。右側の書類は、申請書本体の記載の中に「登記すべき事項 別紙のとおり」ってあるでしょ?
その記載に対応した別紙よ。だから別紙の内容を申請書の中に直接書いても良いの。今回は別々に作ってあるわ。
この申請書と別紙を添付書類と共に登記所に出すのが「登記の申請」ね。
その後、登記が完了したら…こんな登記記録が登記所の中で作られるはずだわ。前に見たわよね。
登記所の登記官はすべての書類をチェックしているはずだけど、登記記録に記録されるほとんどの部分は「登記すべき事項」の記載に集中しているわ。
だから別紙の記載が特に重要なのよ。
「登記すべき事項」の記載がそのまま登記される…登記記録を見ると…確かにそうやなあ。
別紙の記載が重要…あ、私の名前がある。「取締役」と「代表取締役」、二カ所にあるんね。
そうよ。
でも、別に2カ所書く必要なんてないんじゃないんかい?かぶっちゃってるから、私の会社の登記には「取締役」の方はいらんよ。
それと、住所の代わりに生年月日を入れて欲しいねん。
年齢がわかった方が安心してくれるお客さんがいますしな、自宅が会社ってのはあんまりみんなに知られたくないんや。
それは無理ね。「取締役」とか「住所」は「登記事項」だし、年齢は「登記事項」ではないから。
「登記事項」?
会社法911条3項。
株式会社の設立登記の際、登記官はそこに書いてある事項は「登記しなければならず」、また、そこに書いてある事項だけしか「登記できない」のですわ。
たとえば会社の本店とか、取締役の氏名とか、代表取締役の住所と氏名とかね。これらは、登記しなきゃだから「登記すべき事項」にも記載がないとダメよ。申請がないのに勝手に登記官が登記しちゃうことになるから。職権登記はダメ。原則、当事者による申請によって登記がなされる。
また会社法かいな。
会社の登記申請に関しては、商業登記法という法律に決まりが書いてあるわ。
そして、商業登記法を理解するには、まずは会社法の基礎知識がしっかりしていないとダメだと言われてるのよ。
さらに、会社法は民法のある程度民法の基礎がなければダメ。だから、民法から学習して、2つ先の話よね。
逆に、会社法までがしっかり理解しているなら、商業登記法そのものは、それほど難解ではないわ。
そうなんか…
しかし一瞬、色々な事を書いて申請して、かっちょいい登記して欲しいと思いましたわ。
そうねぇ。でも、年齢でも登記して欲しくない人もいるわけだし、仮に何でもかんでも登記できるんだったら困るわよ。
登記記録に営業コメントが書いてあったら…だから、一律な形で「登記事項」が定められてるわ。
「登記事項」は登記しなければならず、また、「登記事項」だけしか「登記できない」。
住所を登記して欲しくない人がいたらどうするのかいな?営業コメントを登記させないっていうのはわかるんやがな。
今回の会社のような場合、代表取締役の住所がないとその人を探せなかったりして困る、なんてことを考えた人がいるんでしょうね。
色んな理由は考えられるわ。結局、登記事項とすべきかどうかは、政治家の価値判断で決まってるところもあるんでしょうね。結局どこかで「登記事項」とする、しないのラインを引いて、一律に定められているものなのかしらね。
…申請書の方も、「登記の事由」とか「添付書類」のところが気になるなけどな…
いいわ。かわいいから教えてあげる。
申請書(及び別紙)と添付書類は登記所に一緒に出すのよね。
「添付書類」の欄に書くのは、一緒に出す具体的な書類の、いわば宣言文のようなものだとイメージすると良いわよ。
不動産登記の申請書とは少し違って、普通、ある程度具体的な書類の名前を書くんだわ。
ふむ。
登記所としては「実際に書類が添付されているかどうか」が重要でしょ?
だから、実務上はここの記載が不正確でも補正を求められることは多くはないわ。試験上は受験者が実際に理解しているかどうか判断することが重要よ。だからそのために「書類の漏れ」は無いように、この点は注意して記憶しておかなければいけないの。
そういう意味で、記載の方法については実務ではもちろん、試験上でも幅広く認められるわ。
たとえば「発起人の同意書」は「発起人全員の同意書」と書いても理解を示せることが多いわね。
そうなんなぁ。
あと、定款以外の添付書類の意味がよくわからなんのやけど…
「発起人の同意書」とか「設立時取締役選任及び本店所在地決議書」とか…
会社を設立するときは、会社法の設立手続を踏まなければいけないの。
設立手続として発起人全員が同意をしなければいけないこと。設立時取締役選任しなければいけないこと。本店所在地を決議しなければいけないこと。これらは会社法に定められてる。そういった手続をしたことを登記官に信じてもらうために、これらの書面を出すのよ。
なるほど、法律の手続一つ一つに対応して、それを証明する書面を添付するわけなんね。
ただ、手続一つに二つ以上の書類が必要なことも、逆に書類を添付しなくても良い手続も存在するわ。
じゃあ、結局何を出して何を出さなくてはいけないのか、わからないじゃないやんけ。
…でしょ?
それだと困るから、この手続の時はこんな書類を出せって、やはり一律に決まってるのよ。必要な書類にするのかしないのかの価値判断。政治家がラインを引いた。
なるなる…
でも、それだと、書類がいらないとされる手続は、ちゃんと行ったことを登記官に信じてもらうことができないと思うんやが。
登記官も疑心暗鬼やんなぁ。
そうね。
でもね、たとえば…次郎さんが沖縄県に住んでいるとするわ。
登記所が朝8時半に開いたとして、4月1日の朝8時半に設立登記の申請をした、と考えて?
添付書類には、次郎さんが取締役に「就任を承諾した」手続をしたことを信じてもらうために、「取締役の就任承諾書」を添付しているわ。
イメージしたわいや?
ところが、その就任承諾書には「就任を承諾します。 4月1日」と書いてある。
就任承諾書を沖縄から東京に持ってくるにはそれ相応の交通手段が必要よね。4月1日の午前0時以降に作成したものを、翌朝8時半に東京に持ってくるわけよ。登記官としては、「本当に就任承諾したのかねぇ…」と疑う。本当は「それ相当の交通手段を採ったことを証明できる書面」などの書類の添付をして欲しい。
たしかにそうやな。刑事さんなら犯人のアリバイを崩すために証拠をそろえて提出する場面やなぁ。
でもいらないのよ…添付は不要。
登記官は、単に法律に定められた書類について法律に定められた内容を、法律に定められたように審査するだけ。それ以上の推測をしないことになっているのよ。登記官には「形式的審査権」しかないって言われるわ。別に、「ジェット機で飛んできたことを証する書面」とか「そのときは東京に滞在していたことを証する書面」を添付しても悪くはないけど、登記官はああそうですかって受け取るだけよ。そんなの見ないわね。
形式的審査…かいや。
法律に定められた種類の書類が提出され、その書類自体が適切に記載されているものである限り、登記官は手続がちゃんと行われた、と信じなければいけないということね。これは…そうねぇ、裁判の場合とずいぶん違うところなのよ。
裁判の場合だと…?
裁判の場合は、原告と被告が、「こんなことがあったんですよ〜」って、裁判官に信じてもらうためお互い証拠を出して証明していくことになるわね?事実を証明するときは、証拠は何でも良いの。
例えば、手渡しで100万円を貸したから返せっていう裁判の時、貸したことを証明するものってなかなかないわよね?
振り込みじゃないと…通帳のコピーとかも出せないわなぁ。
だから、別のものを出して証明しようとするの。
被告(お金を借りた人)の預金通帳のコピーが出せれば、渡された100万円がそのまま入金されていることがわかるかもしれない。通話の録音が示せれば、貸したことがわかる会話が証明できるかもしれない。また、証拠さえもいらないときもあるわ。
でも逆に、証拠が出されても、裁判官はそのまま信じなくても良いのよ。
登記官は決められた書類が出されたらそのまま信じなくてはならないし、なければ信じてはならないと言うことなんか…
非常によろしいわ。
国に何かをお願いするってところは登記官に対する「申請」も、裁判所に対する「訴えの提起」も似ているけど、ここがずいぶんと異なるところなのよ。

…あとは、「登記の事由」だったわね。この欄は…
今回の申請は、登記官に「登記すべき事項」の中身を登記しろって、お願いするのよね。
登記官には、登記すべき事項に書いてある「登記事項」が何の手続で生じたかってことを証明してあげる必要があるのよ。
それを書いているのよ。
ちょっとよぅわからんわぁ…
あらあら、調子よかったのに。
ギブアップね。残念でございますわ〜っ!
敗者は、貢ぎ物をよこしなさい。鞄から見えてるわよ?
(やっぱりばれてましたか…)
しょうがないわなぁ。ほい。
…なにこれ。
蛇の抜け殻。高価やで!
…今日は宿題をたくさん出しとくわ。間違ってもググったりして手を抜いてはダメよ?



設問

1 会社法30条1項。「定款は、○○○の○○を受けなければ、その効力を生じない。」の、「○○」が埋められますか?
2 設立の登記申請の際、登記所には必ず「印鑑届出書」を一緒に提出します。これは、誰の印鑑を届け出るのかわかりますか?
3 「補正」、「却下」、「取り下げ」とは何かわかりますか?
4 申請に不備がある場合、「却下」されるのを待つより「取り下げ」を選択するメリットがわかりますか?
5 「再使用証明」とは何ですか?
6 対話中の次郎さんの生年月日が登記できないのは、なぜかわかりますか?
7 「登記官に実体審査権はない。」との意味が、具体的にイメージできますか?
発展 学者の先生の間で「法人実在説」「法人擬制説」の争いがありました。「法人の代表者をまさに法人そのものと見る」事ができる場合があるという理解を前提に、これらの説を調べてみてください。。
発展 「法人には権利能力が認められる」わけですが、「権利能力」とはなんだったでしょうか。調べてみてください。
発展 「自由心証主義」及び「法定証拠主義」という言葉があります。「形式審査」及び「実体審査」の意味するところをイメージしつつ、調べてみてください。
発展 「職権登記」と「嘱託登記」という言葉があります。当事者の申請によって登記がされるのが原則、という理解を前提に、この二つの言葉の違いを調べてみてください。




updated 2011/5/20 first


●その5

 株式会社の役員変更  中級


   「先生、この度はありがとうございました。」
   次郎情報産業株式会社の設立登記が無事終わり、次郎は再び事務所を訪れていました。
   「いえいえ、無事に終わって何よりです。」
   「補正はなかったかいな?」
   「…ん?うちでは補正は滅多にありませんよ。
    それより、これからが大変ですね。がんばってください。」
   「いやぁ、実はやな、私が会社をおこすって言ったら急に手伝ってくれるという友人が1人も現れまして、旧友ですわ。
    …で、どうせなら共同経営しようと言ってきたんやわ。」
   「そうですかぁ。それはも安心ですねぇ。株主として迎え入れるのですか?」
   「お金を出すのは嫌なんやそうや。そこで彼を社長にして、私は社長を辞め、『相談役』といった形で仕事をしようと言うことになりましてな。
    社長というのはやっぱり私にはイメージ的に向いてへんから。」
   「なるほど、役員変更ですね。変更登記申請が必要ですね。」
   「『変更』登記申請…また登記が必要なんかいな?」
   「必要です。それを決定してから2週間以内に登記申請しないと、過料の制裁を受ける可能性がありますよ。」
   「そうなんか…ではお願いしますわ。」
   「わかりました。登記申請に必要な書類と手続を追ってご連絡いたします。」
   「その後、申請なんやな…先生、お願いがあるんやが。」
   「なんですか?」
   「申請、私に見学させて欲しいんや。」
   「良いですが…どうしたのでしょう?」
   「法律に興味が出てきましてな。」
   「なるほど。では今回の申請は事務所で行って、添付書類は郵送する方法でやりましょう。」
   「?事務所から申請するのですか」
   「そうです。パソコンを使って申請します。必要な手続が終わって、書類がそろったら申請しますので…1週間くらいで申請できますかね。
   とりあえず、書類をお持ちになって1週間後に事務所にいらしてください。…今ちょうどひな型が手元にありました、
   さきに、辞任届だけいただいておきましょうか。次にお越しになるときに辞任されるということでよろしいですね?」
   「いいで。『取締役・代表取締役である私は、平成23年5月27日が来た時に代表取締役を辞任する。 海畑次郎』、と。これでいいかいな。


   まぁ、いいです。
    ただ…いつものように私はその日は外出していると思いますので、花江さんにお願いします。わからないことは、彼女に聞いてみてください。
    …今日は何も持参されていないようですね。花江さんは花より団子、のようですよ。くれぐれも下手物など持参されないように。
    花江さん、当日はよろしく。」

   (筒抜けかいな…)   


  1週間後、次郎は言われた手続を終えて、書類をもって事務所を訪れていました。

今日は、次郎さんのお友達の甲野一郎さんを取締役、代表取締役として追加し、次郎さんを退任させるわけですわね。
申請書は準備できています。
お持ちの書類「など」拝見いたしますわ。
今日も、先生に代わって私が答えさせて頂きますのよ。
はい、お渡ししますわ。
花江さん、よろしくお願いしまんな。
書類だけ★なのね?

早速なんやが…
今回、なんで登記しなきゃなんやろ?
いいわ。
次郎さん、『登記事項』は良いわよね?
設立登記申請の時に、「登記すべき事項」の中に記載したものやったわな。
それは、登記記録に「登記しなければならず」それ以外は「登記してはならない」。
そうよ。だから今の次郎さんの会社の登記記録には、登記事項がそのまま記載されてるんだわ。
でも、すでに次郎さんは役員から脱けて、甲野一郎さんが社長になっているわけよね。持ってきてもらった株主総会議事録に書いてあるわよね。
だから、今、登記記録のうち、取締役、代表取締役と言った役員欄の登記事項が現実・実際とずれちゃってる。「実体」とずれてるって言ったりするわ。
そうやな。
登記事項と実体とのずれが出たときには、登記記録を実体に合わせる義務があるのよ。
会社法915条1項本文。
設立の時に登記した登記事項に「変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。」
次郎さんの登記記録、みんなが見られるようになってるでしょ。見た人に、取締役とか代表取締役の部分について嘘をついちゃうことになっちゃうからかな。
なるほど。登記事項に変更があったときは、登記記録を書き換える必要があるわけやな。
そうよ。
じゃあ、申請書を見てみましょうね。パソコンの中に入力してあるものを出すわよ。
(カチカチ…)



ほぅ。画面に出たな。
このデータはメモ帳とか、ワープロソフトで作ったのではないの。だからテキストファイルとかドキュメントファイルじゃなくて、「xml」という形式のファイルとして保存してあるんだわ。
このファイル形式はホームページのファイル形式とあまり代わらないから、インターネットエクスプローラのなかで表示されているのね。
作るときは申請書を作る特別のソフトを使う。ソフトの中で「登記の事由」とか「登記すべき事項」の入力欄の中に打ち込んでいくだけなのよ。だけど、結局ホームページを作っていく方法とあまり代わらないわ。私の場合、ドキュメントファイルはワードで作るから「doc」形式のファイルでパソコンに保存されてる。ホームページを作るときははホームページビルダーってソフトを使ってて、「htm」形式のファイルを作って保存してる。それに対して、申請書は専用のソフトを使ってる。「xml」形式などのファイル群ができあがるから、それをパソコンに保存してる。
姫、私めは、ぱそこんのことはよくわかりませぬ。
うふふ。そしたら今回はかなり飛んで言っちゃうかもしれないわね…よちよち、まぁいいわ。
今回は、これをこのパソコン上からクリックして申請する。
今パソコンに表示されているファイル群を登記所のコンピュータ(サーバー)に送信するのよ。
「オンライン申請」よ。
そんなことができるんやなぁ…でも、私が持ってきた書類はどうするんや?
添付書類として申請書と一緒に出すんよなぁ?
そうよ。でも、今回は添付書類の方は登記所に郵送する。申請書だけパソコンから送信するのよ。
通称「半ライン申請」をするわ。特例方式って呼ばれてるわよ。
完全なオンライン申請、つまり添付書類まで含めてファイルにして埋め込んで送信することも可能ではあるわよ?だけど、次郎さんのの電子署名が必要になったりするから、実際はなかなかできないのよ。
…今日は、申請書とか添付書類の記載の質問はない?
やまほどあるわいな。…が、ハマるのでやめとくわ。
くすくす。弱っちいのね。
商業登記法の学習をするとき、はじめは特に印鑑証明書の添付についてハマるわ。
後学のために概要だけ説明しますね。
(…いったい、誰に説明しているというんや?)
む〜、あたまがいたぃわぃ…
絶対に、まず原則を押さえること。
商業登記規則61条ね。ここで印鑑証明書の添付が要求される書類は、2つ。ちゃんと2つに分けて憶えるのよ。
そして、印鑑証明書とそれぞれの書類をセットの書類として見る。
一つは、@代表者が就任「承諾をした書類」とセットの印鑑証明書。「就任承諾書」とは限らないわ。「俺は就任を承諾したぜ!」と書いてある書面には承諾者の個人の実印の押印がある。それが個人の実印かどうかを証明するための印鑑証明書ということよね。登記官に就任承諾の意思とか、承諾者の実在を証明するものなんだわ。印鑑証明書には住所の記載もあるのよね。
二つ目は、A代表者を選任した議事録とセットの印鑑証明書。ちゃんと選任したぜってことを証明するものだから、選任決議に出席した人などが議事録に個人の実印を押してある。また、@とAの双方の書類を提出するとき、同じ人の印鑑証明書は重複して添付する必要はない。
そして、@とAそれぞれに「別個の」例外があるわ。
今回は「就任を承諾したぜ」と書いてある書面は「株主総会議事録」。だからそこには、代表取締役として就任する甲野太郎個人の実印の押印がある。したがって@の意味の印鑑証明書が必要。
そして、代表取締役を選任したのは株主総会だから、Aの意味の、「議長及び出席した取締役の個人の印鑑証明書」が必要…だが、こちらは例外に当たっているわけですな。
!?やるわね。
じゃあ申請するわ。電子署名を打ちますのよ。
電子署名?
今回は、うちの先生が申請代理人なのよね。申請代理人はオンライン申請の時、申請書に「電子署名」をすることが必要なのよ。「署名」ってことだから紙に手で「署名」するのと意味は同じよ。紙に、手で署名する。それに対して申請書のファイルに「電子署名する」。ファイルの場合は、ファイルに「電子署名しましたぁ」っていうデータを付加して、ファイルを上書き保存している、と言うことよね。
どうやって申請書のファイルにに「電子署名」のデータを付加するんかいや?
これよ。このICカードを使ってデータを付加するわ。
はぁ?
このカード、中に電気回路が入っているの。
この中に…?電気回路が、ですか。じゃあ、電気を流すと回路を伝って電気が流れる…?
そうよ。集積回路なんだわ。ただ、流すのはものすごく微少な電気なのよ。「電圧をかける」といったりもするわ。これをパソコンとつないでるのよ。
ほうほう。
パソコンでボタンをクリックする。そうすると、申請書のファイルのデータがICカードの中に流れ込む。
データが流れ込む…?
パソコンのファイルと言ってもデータだから、結局「0と1」の2進数の表現なのよね…。
パソコンの電子回路の中に、記憶領域と呼ばれるところがあるの。メモリーよ、メモリー。そこに、静電気の形で0と1がおいてあるのよ。それがファイルの実体。記憶領域の、たとえば「この部分に静電気があったら『1』、なければ『0』」、みたいな感じよね。「ファイルを読み込む」とは、パソコンがこの「0」と「1」を示す静電気を順番にパソコン内部で読み取っていくことなのよ。
申請書のファイルも結局、パソコンの中に帯電している静電気。膨大な数の0と1の固まりをデータとして、つまりファイルとして読み込んで、画面に表示しているだけよ。
むむむ・・・わからん。
うふふ。マウスの「クリック」操作によって、申請書のファイルデータは、ICカードに流されていくの。「0と1」の固まりが、いわばモールス信号のような形で送られるから、「信号」ということになるわね。
むむむ・・・やはりわからん。
ICカードに送り込まれた0と1の「信号」は、ICカード内部の電気回路で並べ替えられる。電気回路が「演算」をするってことね。そのとき、送られた信号に「電子署名」のデータ、つまり「0」「1」の固まりが付加されるというイメージで良いわ。
I電子署名の内容を意味する「0」と「1」の信号が付け加えられる…。
単純な付加ではないと思うけど、大体それでいいわ。その信号がパソコンに送り返されるのよ。送り返された信号が、「電子署名の付与された申請書」ということね。もしかしたら…今私が言った処理はすべて最初に一旦パソコンにICカードのロジックが読み込まれ、すべてパソコン内部の側で行われてるかもしれないけど…それ以上はよくしらないわ。
(カチカチ…ぽち。)
今、申請書に電子署名を打ったわ。
(はやっ)
この電子署名、先生が紙にペンで「司法書士 上井元気」と書いて印鑑を押したのと、意味は同じよ。
この申請書を、クリックして申請します。
お願いしますわ。
(カチカチ…ぽち。)
申請したわ。「0」と「1」の信号を送信したというわけね。
(はやっ)
…今、電子証明書も一緒に送信したのよ。
「電子証明書」?
実印を押したら、その印鑑が本当に実印かどうかを印鑑証明書で確認できる。役所が出してくれる書面よね。
同じように、電子署名のデータを入れたら、その電子署名が本当にその人の署名かを証明してくれるのが電子証明書。
電子証明書は、あらかじめ手に入れているのよ。このICカード内に一緒に組み込まれてるわ。それを一緒に送信したわけなの。
あ、受け付けられたわ。受付日と受付番号が出てる。画面に表示されたわ…
ふにゃぁ〜
今日は、登録免許税はパソコンから払いましょう。画面のココを見て。


「納付額 10000円」。なるほどやんな。
これを、ネット上で振り込むのよ。
これは、普通の振り込みではないのよ?
普通、金融機関からお金を振り込むときって、振込先の口座番号と金額を指定して、振り込むでしょ?
今回は、登記官の口座に振り込むといった形ではないのよ。
「納付番号」と「確認番号」という二つの数字に対応した一つの入れ物に、振り込む。
何が便利かわかる?
入金額のミスがない。
大変よろしいわね!
払い込みは、はじめにネット上で「納付番号」と「確認番号」を自分の手で入力(または自動入力)して、払込先を決定するの。この「納付番号」「確認番号」に対応した一つの入れ物に目がけて払い込もうというわけね。そして、これに払い込むもうとすると、自動的に納付額が10000円に固定されてることに気付くわ。だから「払い込め!」というボタンのクリック操作によっては、固定された金額でしか払い込めない。
「納付番号」と「確認番号」の入力を間違っちゃっても、別の人に別の金額が支払われてしまうという危険性はあまりないわ。「納付番号」に対応した「確認番号」が入力されなければ、ほとんどの場合たぶん「エラー」になるからよ。たぶんだけど。

うちの事務所は○○銀行のページから振り込んでいるのよ。
(カチカチ…ぽち。)
今、早速払い込んだわ。…画面に「納付済み」って出たわ。
これでおしまい。後は添付書類をまとめて登記所に送りましょう。
(はやっ)
はぁぁすごいやんなぁ…
「時代は変わり、情報化社会の波が押し寄せた。このような仕組みに変えることこそ、時代に合う」。
?誰の言葉かしら…どこかで…?
ネットを利用して申請するとね、登記が終わったことがすぐわかるから便利なのよ。原本還付っていう手続をとらず、返送されてくる書類がない申請をする場合には、普通、登記が終わっても登記所から連絡があるわけではないから。
さて今回の申請で、次郎さんの会社の登記記録はこんな風に書き換えられるわ。役員欄だけ載せておくから参考程度にね、はい。申請書の別紙の内容と見比べて、どこがどう書き換えられたか確認すると良いわよ。


花江さん…実は私、ここ1週間ほど勉強をしたんや。
あらあら。かわいい子ね。
少し、司法書士試験に興味が出てきたんやな。
あらあら…私と競争ね。
次にお会いするときは勉強会かしらね?
…是非お願いしますわ。
にしては、お土産がないわね。
ダイヤの指輪くらいじゃ足りないわよ…。
そうね、次郎さんが合格したら、私を養子にして!
(こやつ、私の財産のすべてを狙ってるんかいな…!)
わかったわ。
「司法書士試験に合格したら、花子さんを養子にします。」
わぁ!よいこよいこ!
喜んで合意させて頂きますわぁ。
あと忘れずに、息子さんには相続を放棄するよう言っておいてね!
(…こんなの無効やわ。)

設問

1 「登記事項」に変更を生じた場合、基本的には変更登記申請が必要になる、その理由が説明できますか?
2 対話中に出てきた申請において、申請書に添付した印鑑証明書は誰の印鑑証明書ですか?
3 オンライン申請と半ライン申請(オンライン特例方式)はどんなふうに違っているのか、一つ説明できますか?
4 「電子署名」と「電子証明書」とはなにか、イメージできますか?
5 対話中に出てきた登録免許税の振り込み方法は、銀行でする通常の振り込みとは、どう違うのですか?
発展 対話中の最後の部分。
なぜ、次郎さんと花江さんの合意は無効となり得るのでしょうか。「条件」または「期限」、「身分行為」という言葉を使って説明してみてください。
発展 学習が進み、後日になって次郎は今回の対話中の申請書の記載を見ました。そこでひとつの疑問が出てきました。先生に「私の個人の印鑑証明書の添付が必要ではないか?」と聞いてみたところ、「次郎さんが取締役を辞任したのは株主総会のあった日で、かつ、株主総会の終了後だったはずですよね。」とのこと。設問2に対応して、今回の申請の株主総会議事録に押印された印鑑は誰のどんな印鑑かということをイメージしつつ、考えてみてください。
発展 さらに学習が進み、後日になってもう一度、次郎は今回の対話中の申請書の記載を見ました。そしたらまたひとつの疑問が生じました。先生に「代表取締役は『辞任』ではなく『退任』と書くべきなのではないか?」と聞いてみたところ、「確かに資格喪失なら『退任』だが、今回は『辞任』だ」、とのこと。理由を考えてみてください。
かなり難しいと思いますので…二つほどヒント。
一つ目のヒントは、次郎が先生に直接渡した辞任届の内容。
二つ目のヒントは、上の「発展」の理解を前提にして、「取締役」と「代表取締役」を分けて辞任の時期を考えること。申請書の「援用」の記載に注意です。「権利義務役員の退任」の論点が浮いてきたら、それが正解です。
発展 実務レベルの問題。
申請書の添付書類以外のところに誤りがあります。委任状に押印した人が誰かという理解を前提に、見つけてみてください。




updated 2011/5/21 first


From 2011/5/18

辰巳法律研究所専任講師
司法書士 井上 元