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2012.10.30
 今日は陽が出なかった分肌寒かった。夜にもなってもますます冷え込む感じ。仕事は相変わらず。夕方になってなんか寒いので、ジンジャーミルクティをいれようと思って、ミルクパンにおろし生姜と水と細かい茶葉を入れて火に掛けて、ミルクを入れようとしたら鍋の柄にひっかかったのか、すっ飛んで中身がぶちまかれた。ミルクを入れる前だったのが不幸中の幸いとでもいうべきか。
 竹本健治さんがカフェ・バッハに行ったとミクシの日記に書いていた。こういう店が自分の家の近所にあったらいいのに、というのはまことに我が意を得た思い。自分の好きなものをほめられるというのは、純粋に嬉しいものだ。しかしあの店はカリスマ店長の店として有名なんだって。ほええ。
 明日は奥多摩にハイキングに行くので、仕事は一日お休み。

2012.10、29
 仕事は依然として『黎明の書』。

 読了本『江神二郎の洞察』 有栖川有栖 東京創元社 京都に旅行するようになった最近、しきりと思うことは「この街で学生をやりたかった」ということ。学生アリスシリーズの短編集は、そういう夢を味わわせてくれるような、心地よくリアルな(だからまあ現実よりは美化されているのだろうが)肌触りがある。しかしなまじリアルな分、よけいなことも考えてしまった。学生アリスシリーズの長編は4冊出ている。学生生活の間にクローズドサークルの連続殺人に晒されるようなことが4度もあって、彼らは人格的に破綻しないのだろうか。今回の短編集のちょうど真ん中へんで『月光ゲーム』の事件が起きている。そして学生たちはそのことをかなり引きずっている。しかし次の夏にはまた『孤島パズル』が起こるのだ。なんだか可哀相だよ、と思ってしまう。むしろ京都の町を舞台にした日常の謎短編が主力だったら良かったのに、なんて思ってしまった。
 それとは別の話だが、書き下ろしの短編「除夜を歩く」はその、ミステリが好きな学生たちの議論と楽しい日常が楽しめて、なおかつ優れたミステリ論にもなっている。例の後期クイーン問題についても、ミステリ愛好者というよりほとんど創作者の意見だと思うけど、篠田としては「そうだよな」と思う見解が開陳されていた。後期クイーン問題ってなに、と思った人は、自分でググって調べて下さい。

2012.10.28
 仕事は昨日も今日も代わり映えなく『黎明の書』の続き。天気が悪くて気分はいまいち。出かけられなくても、やっぱり晴れていた方が気持ちは良いね。

 読了本『密室殺人』 鮎川哲也 集英社文庫 神保町のミステリ古書店富士鷹屋の100円台で見つけた1979年の文庫。鮎川の、赤、白、青、密室もの3作が入って、幻影城編集長島崎博氏の解説が付いているというところが、ちょいと古書マニア心をくすぐるっぽいかも。篠田は古書マニアでは全然ないので、そのへんは想像だけど。ちなみにわりと薄目の文庫本だが定価は200円。1979年といえばもう大学は卒業していたんだが、そうか、あのころはこういう文庫が200円だったんだねえ、装丁のセンスとか、かなり古めかしく見えるねえ、やはり30年も経てばねえ、といまさらのように思いました。作品では「赤い密室」が1954年ともっとも古く、トリックは決して古びていないんだけど、登場人物の性意識なんかはさすがに全然違ってます。いまの若い人は「純潔をささげた」なんて文章を読んで、意味がわかるものかしらん。恋愛してセックスをしてその男と別れた女子大生が結婚すると聞いて、刑事が「みずから求めてキズモノとなった女房を、それと気づかずにいつくしむ亭主ほど、世に道化たものはあるまい」などという感慨を持つのも、「うへっ」という気になる。まあ1954年には、これが常識だったということだね。ネタバレになるから書けないけど、横溝の『本陣殺人事件』の動機なんてのも、すでに理解不可能なものとなっているのだろうな。それは悪いことじゃないと思いますが。

2012.10.26
 読了本『黒衣の女 ある亡霊の物語』 スーザン・ヒル ハヤカワ文庫 すごーく型どおりの、ホラーというより怪談なんだけど、これがけっこう怖い。イギリスというのはほんと、幽霊が出る舞台にはことかかないんだなあとつくづく思う。この話が例えばさんさんと太陽が照りつけるイタリアで有りか、といえば、まあないだろうと思うもんね。
 陰鬱な霧の立ちこめるロンドンから仕事を命じられて北へ向かった若い弁護士、彼を待っていたのは沼地の中の細い土手道の先にぽつんとある一軒の邸宅で、死んだ老婦人の書類を整理して必要なものを持ち帰るのが任務。しかしその土手道は満ち潮の時は海水に浸されて通行できなくなるし、霧が出れば道を失って沼地に足を踏み入れてしまい、ヘタをすれば泥に飲まれて死んでしまうという、恐ろしい場所。そんなところ、幽霊がいなくたってイヤだよね。でも、いるわけです。黒衣の女が。
 舞台設定の巧みさと描写の上手さが、物語的には特別意外ではない幽霊譚を怖い話に仕上げている。映画化されて12月に公開されるそうで、この風景や館がばーんと出てきたらそれだけで一見の価値はある、かも知れないなあ。ラストは最初からほぼ予想されるような書き方なんで、翻訳者あとがきにあるような強烈なショックは感じないけど、なにか悪いことをしたわけではないのに、ただ亡霊を見てしまったばっかりにひどい目に遭う主人公はひたすら気の毒、逃れようがない、というのは、やはり怖いです。

2012.10.25
 映画を見てきた。「推理作家ポー最期の5日間」という馬鹿に説明っぽいタイトルだけど、内容はまあその通りで、ポーの小説のモチーフを絡めた連続殺人事件が起きて、しかもポーの恋人が誘拐される。ポーは警察に協力して犯人を追いながら、しかもそれに触発された小説を書いて新聞に掲載しなくてはならない。つまらなくはなかったけど、ポーを演じる俳優が妙に田中邦衛似で、というのは口の動き方がね、田中邦衛っぽいの。で、ちょいと笑いたくなってしまうのが困りものでした。彼の相棒になる刑事は、なんか見覚えがあると思ったら最新の三銃士映画でアラミスをやった二枚目なんだけど、この人はヘアスタイルとか表情が鹿賀丈司ぽい。しかしポーの小説に登場するイメージというのは、確かに映像化をそそられるものがあるね。作品から独立して、そのイメージだけが一人歩きをするだけ、鮮烈なんでありましょう。
 皆川博子先生が日本ミステリー文学大賞を受賞されたということで、ジャーロも来春号に特集を組むそうだ。トリビュートの短編を書きませんかという依頼が来た。先生に引き比べられるのはお恥ずかしいが、ここで二の足を踏むわけにはまいりません。わーい、なにを書こう。20枚。枚数が少ないだけに難しいぞ。先生だって短編と長編、書くのはどちらが好きと聞かれると、長編と即答されるもんね。おいらも書くとすぐ伸びる悪癖があるから、そこは気をつけないとならんのよ。

2012.10.23
 なんだか変な天気。冬物を出して夏物の残りをしまうが、今日は少し湿度が高く気温は高い感じがする。夕方いきなりベランダの外で音もなく青っぽい光がはじけたと思ったら、爆弾でも落ちたような大音響。雷だろうが、前触れもなくそれ一発で終わり、雨がバラバラ。外であの雷にあったら、すごく怖かっただろうなあ。
 今日は喫茶店でジャーロのゲラをやる。戻って内容をパソコンのデータに転記。明日返送。

 読了本『えぞキリシタン』 永田富智 講談社 先日神保町の友愛書房で見つけた昭和47年刊行の本。これまであまり資料がなかった、キリシタン時代の北海道へのキリスト教の布教と、禁教弾圧について書かれている。松前の古い墓地に十字架に似た織部灯籠形の墓碑があるのだそうだ。松前藩は徳川家光からじきじきにキリシタン取り締まりを命じられるまでは、ずいぶんキリスト教に寛容であったらしい。墓地は藩主松前氏のものなので、葬られている人は特定できなくとも、キリシタンであった可能性が高い。金山の千軒岳で鉱夫106人がキリシタンとして処刑されたが、それ以外のキリシタンは見逃されたのではないか、ともいわれる。ただしその後も監視体制はきびしいものがあったので、蝦夷地にカクレキリシタンは残らなかっただろう、というのが著者の結論。しかしかつてのキリシタンの子孫で、明治3年に洗礼を受けた北海道の人間がいたということも書かれている。カクレキリシタン的な組織は保存されていなくても、記憶は残されていたということになるか。
 ただ、ひとつ面白かったこと。慶長16年に松前藩主が医師を求め、奥羽地方に流されていた日本人キリシタンの医師が蝦夷地に渡った。この医師はその後また津軽に戻って殉教したともいわれるが、著者は藩主の求めで蝦夷に渡った以上は、家臣として召し抱えられるのが当然であり、慶長年間から松前の藩医となった人物がそれではないかと推測している。その家系は幕末まで続いたというのだが、桜井氏というのです。

2012.10.22
 リブロで本を馬鹿買いする。仕事の資料としてというのもあるが、執事メイドものなど書く予定はないのに、なんかよさげな資料本が目に付くと手を出してしまう。それからこっちは本当に資料だが、泥縄だよなあと思いつつ中世の戦争に関する本など購入する。ムジで少しシャツなど買ってから、新橋に出てカタログハウスの店で首筋マッサージ機械を試して購入を決め、若菜で少しだけ漬け物を買い、一丁目のわしたで泡盛やなんだかんだと。昼飯代わりにアグーの豚まんを食うが、これはやはり電子レンジではいけん。皮が固い。
 仕事場に戻るとジャーロのゲラが来ている。一週間で返せと。せわしすぎる。

2012.10.21
 ゲラを返送。『黎明の書』3巻の第4章を書き始める。でも明日は東京に買い物で不在。

2012.10.20
 昼間は晴れて暖かいが、朝晩は日に日に涼しくなる。昨日は友人と神保町で会う約束があったので、眼科で目薬をもらった後、早めに神保町に出て、よく行く古本屋を3軒ばかり覗いた後で、ランチョンで特製メンチカツとビール。待ち合わせは東京堂書店で、久しぶりにいったら一階にカフェが出来、平台の様子もずいぶん変わっていた。なかなかお洒落な感じで、売れ線がどばっという昨今の新刊書店とはちょいと変わっている。
 今日は12月に出るメフィストに掲載の短編のゲラをやる。明日返送予定。

2012.10.18
 昨日採集してきたキノコはだいぶ乾いて小さくなってしまったが、図鑑の写真や説明と照らし合わせると、どうやらカキシメジらしい。当然の如く毒キノコ。死ぬまでではないらしいが、下痢と嘔吐ががつんと来るらしい。匂いをかいでもいかにもキノコらしい好ましい匂いしかしないし、傘の色はきれいな赤茶色、裏面のひだと脚は淡いクリームがかった白で、見るからに美味しそうなのだが、なるほどキノコというのは難しい。しかし、スーパーで売られているものが、まさか毒があるはずもないのだが、腹の調子が崩れた因果関係は4日前に食べた四種混合キノコだとしか思われなくて、まだ残って冷凍庫に入れた電子レンジ加熱済みのキノコをどうするか、心は千々に乱れるのだった。怪しければ捨てろ? まあね、それが正解だとは思うんだけどね。私、けちだから。

2012.10.17
 朝一番で南雲堂と原書房のアンケートみたいなモンを書き終えてメール送稿する。こういう小さな仕事はうっかりすると忘れてしまったりするから危ない。それから『黎明の書』の3巻3章をようやく終わりにする。切れ目らしさと引きは、一応自分で満足したように書けた。メフィストのゲラも来たし、仕事は依然としてあるわけだが、少しは外に出ないとストレスが溜まるっというわけで、近所の山に登りつつ自宅まで歩いて帰る。気分は悪くないのだが体調がいまいちで、山頂についたものの風が冷たくて早々に引き上げた。登り出す前にやっぱり少し食料が欲しいと思い、そばにあったぼろいコンビニ紛いの食料品屋でおむすびを買ったところ、これがひどくまずくてたまげた。米が悪い上に芯があったっすよ。

2012.10.16
 天気が良いが出かけたい〜と思いつつ、パソコンにしがみついている。書きかけの3章がやっと終わりそうというので、少しペースが上がったが、終わりそうで終わらなかった。章の切れ目というのは、やっぱり切れ目らしさと引きが欲しいんだよね。明日は天気は下り坂らしい。ああ、出かけ損なう。

2012.10.15
 今朝方胃が重苦しくて目が覚める。どうもキノコの食べ過ぎらしい。別に野生のキノコじゃないけど、ブナシメジとエリンギとマイタケとハナビラタケを買って、電子レンジで軟らかくして、ニンニクとさっと炒めてパスタにした。そしたら夕飯にもキノコが出て、その消化不良ではないかというくらいしか思い当たらない。結局朝は抜き、昼はヨーグルトとバナナ一本。いまもあんまり良い感じとはいえない。食べてないのに腹が張ってる気分。

2012.10.14
 ゴーヤの蔓をとぱらってプランターを明ける。タイムに青虫がついていたのでぞっくり刈って乾燥させることにする。原稿がなかなか進まなくて外に出られないのでストレスが溜まる。ストレスが溜まると血圧が上がる。小説を書くことには基本的に飽きないが、小説家をやるのは少し飽きる。

2012.10.12
 ウィルスバスターの最新版をインストールしたら、迷惑メールが一件も来なくなった。いままで迷惑メールに分類されていたメールも来ないのである。そういわれればメルマガのたぐいも減っちゃったみたいな気がする。いやあ、送ってもらってもあんまり見ないから、まあいいようなものだけど、必要なメールが消されていないかというのはちょっと気にかかる。音信不通だと思われる方がいたら、他の手段で連絡して下さい。
 今年最後のゴーヤを収穫した。今年は20本以上出来たうちのほとんどが100グラム超えで、最大では300グラム超えた大物も出来た。とれとれのゴーヤに慣れると、スーパーで売っているのはなんとなくぐったりしているし、イボの先が黒くなっていたりして、いまいち食欲が湧かない。我が家のゴーヤは食べるために作るので、緑のカーテンではありません。

2012.10.11
 パソコンは取り敢えずスリープしない設定にして、朝電源を入れて帰宅する時に切ることに。プリンタはまあ問題なく動くようだ。
 昨日までは雨の予報だったのが、なぜか晴れていてしかも気温が高い。靴下を脱いでサンダルになってしまう。夕方になったら突然土砂雨が来て、止んで、また降って。いよいよわけのわからぬお天気なり。

2012.10.10
 パソコン、やっぱりスリープ状態からキーを押しても起動しない。ブンとファンが高速で動く音が続くが、画面は真っ黒なまま。全体に妙に動きがのろくさしている。再セットアップが必要かもしれない。
 篠田が解説を書いた柴田よしきさんの『竜の涙 ばんざい屋の夜』祥伝社文庫が発売されました。前作『ふたたびの虹』ともども、美味しい傑作ですのでよろしくお願いします。

2012.10.09
 結局パソコンで壊れたのはキーボードだったらしい。キーボードと調子の悪いマウスを交換し、なぜか動かなくなっていたウィルスバスターを再インストールして、あとはプリンタがちょっとおかしい気がするのだが、取り敢えず使える、というわけで胸をなで下ろす。ああ、なんというか、もうちょい楽に使えるようにならないもんかしら。

 読了本『はぶらし』 近藤史恵 幻冬舎 高校時代の友人から10年ぶりに電話がかかり、困っていると泣きつかれてためらいながら待ち合わせのファミレスに行くと、彼女は子連れだった。離婚とリストラで休職中。一週間でいいから泊めてくれといわれて・・・ 実は読みながら、「サイコホラーになるのではあるまいな」と恐れていた。他人が家に入ってくるって、「銀の仮面」という怖い怖い短編があるでしょ。でも幸いそうはならなかった。ラストは微妙に救いがある感じ。
 『スチームオペラ』 芦辺拓 東京創元社 実をいうと途中まではいまいちだった。レトロチックな世界での少女主人公の探偵冒険話は、「ううん、こういうの好きなんだねえアシベさん」という感じで、しかし最後まで読んで、事件の真相から世界の謎、そして作者のしかけたお遊びっぽい隠し設定までがすっかり明らかになると「ああなるほど!」という気持ちになれました。お疲れ様です。楽しく読みました。
 『大塚女子アパートメント物語 オールドミスの館にようこそ』 川口明子 教育史料出版会 2003年に取り壊された同潤会大塚女子アパートについて、建築よりも住人だった女性たちに焦点を当てた本。はっきりいって掘り下げ方は浅いが、アパートが出来た当時のマスコミでの取り上げられ方(女性差別モロ出しの色物扱い)など、予想はしていたがこれほどひどかったのかとびっくりさせられ、なかなか興味深かった。『大いなる幻影』を久しぶりに読み直したくなった。

2012.10.08
 ついにパソコンが立ち上がらなくなった。文章を書くのに使っているのは別なので、必要な文書データがふっとぶ心配はないが、メールアドレスとネットのお気に入りがたぶんパーになる。がっくりきて読んだ本の感想とか書く気がしない。

2012.10.07
 疲れが抜けずに今日もぶらぶら。おまけにネット、メール用のパソコンが調子が悪い。ファンの音がやたら大きくて、スリープ状態から立ち上がらないので、そのたびに再起動しないとならない。立ち上がるのにもやけに時間がかかる。
 鮎川賞受賞作を読んだ。感想は下記。ネタは割っていないがどうしても触れざるを得ない趣向はあるので、先入観を持ちたくない人は以下を読まないで下さい。

 読了本『体育館の殺人』 青崎有吾 東京創元社 奇矯な設定もとんでもないトリックもない、かなり手堅い学園ミステリ。探偵役は学校の部室にひそかに泊まり込んでいるアニメオタクの高校生で、キャラはそれなりに立っているが、あり得ないというほどではない。探偵役はきっちりとロジックで事件を解析し、犯人を特定する。他の登場人物も、リアルで嫌みなく描かれていて、平易で読みやすい文章と共に好感が持てる。
 弱点は事件全体が地味なのと、探偵の駆使するロジックがそれほど天才的なものとは感じられないこと、犯人の使ったトリックというか偶発的で苦し紛れの手が、ちょいとリアリティに乏しいということだ。土砂降りの雨の日の、一本の傘の行方から犯人を推理する展開は面白いが、犯人がそのように行動できたのは、いくつかの偶然が重なった結果だし、その偶然がなくて当初予定の侵入及び退出経路を使うつもりだったら靴はどうする気だったのか、そのへんがまったく検討されていないことにも違和感があった。選評にも天才らしき探偵のロジックが粗いことは指摘されていて、改稿が受賞の条件だったことが書かれている。発表された作品がどの程度改稿されたものなのかは不明なので、ロジックの粗さは依然存在する気もした。それと、探偵の頭の良さの証明が中間試験9科目すべて満点だ、というのが、微妙な気がしたが、それは犯行動機の伏線だったのかな。
 でも、ここ数年の受賞作の中では、久しぶりに面白く読めた、というのは正直な感想。

2012.10.06
 昨日は鮎川賞パーティ。疲れた。もうそろそろ出席を止めようか。毎年そんなことを思ってしまいつつ。短編賞のミステリーズ!新人賞は読んだ。奇想的な設定に、最後の1行で意外な真相が開示されるタイプの、ツイストの効いたミステリ。惜しむらくは伏線が乏しい。ああいうオチならばいくらでも、読者に真相を悟らせずに大胆な伏線が仕込めると思うのだが。鮎川賞受賞作はこれから読む。最近知人作家さんの献本が多くて、読めないまま棚がふくれあがっている。しかしいよいよ徳間の吸血鬼ものの続きも書かなくては。パーティで徳間の担当の顔をチラ見したのだが、話す暇が無く消えられた。避けられたのではあるまいな。

2012.10.04
 昨日は歯医者の定期検診を済ませて、午後は友人と軽くハイキングをしてヒガンバナの名所に。いまや観光地なので人も出るが売店もいろいろ出ていて、昼酒を喰らってしまう。途中の山道に真っ白なキノコがやたら生えていて、なんだか気になったので図鑑でチェックしたらやはり毒キノコだった。毒と聞くとなにやら怪しくときめくものを感じてしまうのが、ミステリ作家の性であります。食い気回路はそういうときはお休みになる。
 4日の朝日新聞朝刊に、たぶんこれは東京地方版ではないかと思うが「東京物語散歩」という欄で拙作『緑金書房午睡譚』が取り上げられておりました。こういうことは珍しいのでちと嬉しい。
 明日は鮎川賞のパーティなので、日記の更新はお休み。これが過ぎたらいよいよ、また仕事を再開せんとなりませぬ。

2012.10.02
 今日は曇りだがなんとなく蒸し暑い。キンモクセイは香り始めたが、この空気にはそぐわない感じ。
 『ホテル・メランコリア』の再校ゲラを持って珈琲館へ。トーストサンドを食べながら昼を挟んで三時間がんばる。ぼろぼろと直したいところが出てきて、やれやれであります。見落としがあるんだねえ。1センテンスの中に「これ」が二度出るとか、「犯罪を犯す」なんて書いてる。もう少し内容的な書き換えが必要なところもありました。あまり見返しすぎてもどうか、と思うので、返送してしまう。やれやれ、これで明日はほんとに休めるかな。

 読了本『十津川警部 猫と死体はタンゴ鉄道に乗って』 西村京太郎 講談社ノベルス たまには読んでみようかと思って読んで、驚いた。こういう大先生になってしまうと、なにもいえないのでありましょうね。テレビのミステリドラマでも、なんていうか、もう少しひねりはあるのでは。帯にも書かれている「殺人現場から消えた女性が遺した百人一首」が、最後まで読んでもどうストーリーに絡んでいるかもわからない。そもそもストーリーがない。事件が起きて、刑事が被疑者が丹後地方に関わりがあるらしいということになって、聞き込みに何度も行くと、関係者の証言から過去の事件が縷々浮かび上がってきて、これこれこういうことで復讐の殺人でした、でも本当に復讐されるべきは別の人間で、恐喝事件も隠れていました、犯人は捕まりました、おしまい。しかしその過去の事件に非常に大きな役割を果たした重要人物の名前が浮上するのは、なんと174頁で終わる全体の130頁になってからという。初期の優れた長編が最近復刊しているが、晩節を汚さず、というのも大事だと思うよ。

2012.10.01
 台風一過の青空はいいけれど、どうしてこう暑いかな。陽射しが強すぎる。ヒガンバナはようやくあちこちで咲き始めたが、その朱色がなんだか目に暑苦しく感じる。『わたしはここにいます』最終回の原稿を、ちょい手直しして送稿。11月発売の次号に全部載せてもらえるかは、返事待ちだ。仕事場の散らかったものを片づける。それからトマトとバジルを植えてあったプランターをひっくり返し、土を広げる。ゲジゲジが一匹いる。どこかに引っ越して欲しい。虫はやはりあまり好きではない。明日は『ホテル・メランコリア』の再校ゲラを読もう。