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2012.07.31
 暑い。仕事は『黎明の書』。

 読了本『綺譚の島』 小島正樹 原書房 文章がずいぶんこなれて読みやすくなった。しかし孤島の共同体に伝わる異人殺しの伝説、呪いを解くための秘密の儀式、といった設定があまりにも既視感ありすぎで、それをどう解かれても驚きも薄い。まあ、こういう横溝的設定が好き、という読者は一定数いるのだろうと思うが、それにしては土俗の香りも乏しく、すべてが書き割りじみて感じられてしまうのが残念。

2012.07.30
 なんかもう、暑い。おかげで原稿は遅々として進まず。ようやっと第三巻の第一章を書き終えた。番外編一章分は書き終えているので、全部で五章のうちの二章が終わったという勘定でいいと思うが、8月はコミケの売り子手伝いに行って、下旬は4泊5日で函館に行くので、8月中には絶対書き終わらない。でもいいです。刊行予定も決まらない本に、命を削ってまで焦る気にはなりまへん。クオリティとは別の話よ。

 読了本『ファミ・コン!』 鏑矢竜 講談社ノベルス つまらなくはない。いや、けっこう面白い。楽しく読了した。しかしこれは小説ではなく文字で書いたマンガである。そう思えば凡人のはずの主人公が、バイクで空を飛んでもヘリコプターから飛び降りても、ろくに怪我もしないですむのも目くじら立てるには及ばない。しかしプロットは完全に『ルパン三世カリオストロの城』である。キャラの大半は一対一で対応するくらい。もちろん小説独自の味付けもあるが、女性キャラはクラリスと峰不二子で、クラリスの属性が少しだけ不二子に移してあるところが、まあミソといえばミソだ。いくらメフィスト賞応募作だからって、これはしかるべきイラストをつけてライトノベルのレーベルで出版した方が、読者にも作者にも親切だったのではあるまいか。この表紙じゃラノベの読者は買わないだろうし、講談社ノベルスの読者にも微妙だと思いました。

2012.07.29
 前夜が全然眠れなかった分、わりかし眠れて復活。しかしジーンズは汗で張り付いてどうもならんというわけで、ボトムをインドもののロングスカートに替える。自宅のバジルがやけに良く出ているので、これを刈ってジェノベーゼを作る。フードプロセッサのありがたみを痛感する。昔はすりばちでやっていたので、バジルの葉をきれいにペースト状にするのがえらい大変だったのであります。塩の代わりに塩麹を少し入れてみた。それからスーパーでゴーヤが安かったので、一本買ってスライスにして塩麹。キャベツもみも塩麹でやると美味いです。かつおぶしなんか入れなくても旨味があるのだ。

 読了本『超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか』 リチャード・ワイズマン 文藝春秋 オカルト解体系の本で、ネタ的にはどれも既視感が強い。人の認知システムから来る錯視、自称超能力者のトリック、占い師のコールド・リーディング、心霊主義のフォックス姉妹の話、カルト宗教のマインド・コントロール法、みんな知っていることばかりだが、語り口にイギリス人的なひとひねりしたユーモアがあって、楽しんで読めた。しかしいつになっても旧態依然たるその手のトリックは消えてなくならず、つまりそういうものにやすやすとダマされる人はいなくならず、こういう本も繰り返し書かれ続けるのだねえ。

2012.07.28
 昨日は新橋演舞場にスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』を見に行った。なんというか、主要キャラが全員紅白歌合戦の小林幸子のような派手派手な、日本とも中国ともつかない服装で出てくるので、目がちかちか。その他大勢が出てのアクションシーンでとんぼを切るのは普通の歌舞伎でもあるが、中国から京劇の役者さんが参加していて、その身体能力のすばらしさには目を見張る。クマソタケルの兄弟とか、伊吹山の山神とその眷属とか、悪役系のキャラは特にパンクなファッションと誇張されたアクションが観ても楽しい。しかし芝居としては、あっぱれ無内容であります。
 梅原猛の脚本というので、多少は期待していったのだが、そもそもヤマトタケルの東征というのは現代人の感覚からすればどう見ても侵略戦争。おまけに征伐されるクマソなどが自らの正当性を主張するせりふも多々あって、それと比べると、「父君が私をうとんじている」とめそめそしながら戦争に行って征服に精を出すヤマトタケルの主人公としての正当性というのは、それほど説得力がない。父親の天皇が信じられないなら、クマソと結んで反乱でも起こせよ、というようなことまで考えてしまう。しかしもちろんそんなことは起きなくて、タケルはなぜか新しい妻のもとに草薙の剣を置いて伊吹山に行き、白いイノシシ(ふかふかしたヌイグルミみたいで恐ろしいよりカワイイけど、これも京劇俳優が中に入って大健闘)に噛まれて、かなりしつこい愁嘆場のあげくに死ぬ。
 そしてラスト。古墳の石組みがバクハツしてせり上がる小林幸子似のヤマトタケル。エスカレーターで階段を下り(というのは着ている衣装のせいで脚が動かないから)、すごく説明的な長ぜりふがやっと終わったと思うと、ワイヤに釣られて花道の上へ。これはポスターなんかだと正面から撮られていて、おお、なるほど飛翔しているわい、という感じに見えるのだが、それは二階三階の正面あたりじゃないとそうは見えない。あいにくこっちは一階席だったので、宙乗りは横斜め下から見上げる感じで、下半身は人魚姫というか、白鳥の衣装というよりほとんど着ぐるみで、唖然というか、笑ったらまずいよな、という感じで、必死にこらえたクライマックスでした。あー、なかなかすごかった。でも、実はけっこう楽しんでいたりして。この歳になると映画でも何でも、難しい理屈がいるようなものよりあほものが楽しいですなあ。
 夜は神保町でギョウザにビールで帰宅。しかし暑さで眠れず、本日朦朧。

2012.07.26
 あ、暑いです。相当に暑いであります。かなりきびしい夏になりそうです。冷えピタシートも汗で流れます。今日は濡れタオルにケーキの箱に入っていた小さな保冷剤を巻いて、首の後へ。これはかなり効きます。ただし見かけは悪いです。
 明日は東京に出るので夜を外で食べようというので、候補にあげたのが前から神楽坂で見ていた海鮮ものの居酒屋。外の壁がない海の家みたいな作りのテーブルにガス台を置いて、貝を焼いて食べさせる一見海の家みたいな雑ぱくな感じがよさげだったのだが、ツレがネットで調べると食べログの評価があまりよろしくない。テーブルが狭くて料理を置く場所に困るし、椅子の下に脚も入らない。見かけが粗い割りに値段は高い。刺身の鮮度が悪い。カルパッチョのソースが業務用の既製品、お勧めのワインが甘くて魚介に合わない。などなど、誉めている人がいないではないが、かなりぺけぺけというわけでここは止める。狭くて座りにくそうというのは、外から見ただけでわかったし、そんな料理に合わないワインをお勧めにしているのでは、他の食べ物や飲み物にも信頼は置きがたい。これがなければ一度は入ったろうから、調べて良かった。

 読了本『夏雷』 大倉崇裕 祥伝社 プロットだけ取ってみれば、主人公の造形からラスト近くのどんでん返しまで、ハードボイルドの王道中の王道という感じなのだが、山がこれに絡んでいることでそのプロットに生彩が生まれ、山行の描写になると文章がぴりっと引き締まる。三ヶ月足らずで槍ヶ岳に登れるよう自分を鍛えて欲しい。便利屋稼業の男に持ち込まれた奇妙な依頼。その真相は・・・ なぜ?の興味で読者を引き寄せ、地道なトレーニングの詳細にほうなるほどと頁をめくる内、謎めいた依頼人が次第に隠れていた人間らしさを見せ始め、しかしそこで残酷な展開が。ラストの情景が美しい。久しぶりに大倉さんの山岳ものを堪能した。前回途中で読めなくなったのも、もったいないから再チャレンジしようかな。ところで大倉さん、341頁5行目、倉持の腕が、は、私の腕が、の誤植ですよね? 他にも366、7頁あたりのナイフの件が、ちょっとわかりにくかったです。彼はナイフをどこで回収できたのか。今度会ったら教えて。

2012.07.25
 いやー、夏がカムバックしました。むわんむわんと暑いです。しかしなぜか今年はゴーヤがよろしくない。7本雌花がついて5本実になって、いま7/13に受粉したラストが育ちつつあるけど、なぜかその後さっぱり花がつかない。見るとなんとなく、根本の茎が細いかなあという感じ。去年まではほんともう、いやってほど蔓が伸びて花が咲いたんだけどね。

 読了本『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』 西原理恵子 文春新書 出るかなと思っていたらついに出た西原さんの人生相談。橋本治の人生相談も面白かったけど、これも面白いわ。毒舌とか悪知恵とかいいながら、実はけっこうまともなことしかいってない、というのがミソですね。でもいつも思うんだけど、この相談者の人たちはその後どんな人生を歩んだのでせう、相談は役に立ったのかしら。私だってなやみはそりゃあたんまりあるけど、相談しようとか思わないもんね。つか、相談しても仕方ないことだとじぶんでわかっちゃってるから。

2012.07.24
 八高線と横浜線を乗り継いで横浜へ。しかし横浜線の車中で「京浜東北線が人身事故で止まっている」とのアナウンス。石川町へはその電車でしか行けないのでさあ大変。どこかで私鉄に乗り換えるかと思っても、路線図とか持っていないし、どちらにしろ石川町の近辺には他の路線は走っていない。というので大いにやきもきしたが、幸いぎりぎりで動き出して無事デザイナーの柳川さん、担当編集者のMさんとイギリス庭園のブラフ18番館へ。こじんまりとした洋館だが、壁の白に緑の窓枠、屋根の赤煉瓦色が実にいい。立派すぎない、ほどほどにぼろけている感じがぐっと来るんである。しかし窓から蚊がやたらと入ってくるのには閉口した。1時間の撮影を終え、タクシーで山下公園に移動。氷川丸の船内を見学して写真も少し。暑さはかなり戻ってむしむししたが、曇りがちで陽射しはいくらか少なめだったので、まだ良かったかも。

2012.07.23
 少しだけ陽が出て蒸し暑さもいくらか感じられ、エアロバイクを漕いだら汗がどばっと出たけれど、まだ先週までの暑さにはほど遠い。いきなりがびんでなく、少しずつ戻ってくれるならそれに越したことはない。5本目のゴーヤを収穫。へちまみたい、それほど大きくはないけど。200グラム弱。しかしこの後ちっとも花が咲かなくなってきてしまった。にがにがくんは比較的出足が早いのだが、枝の伸び方も少ないし、なにが違うのかようわからん。淡々と原稿続行。しかし明日は『ほてる・めらんこりあ』の表紙写真撮影にくっついて朝から横浜へ行くのだ。

2012.07.22
 今日もかなり肌寒い。明日からまた最高気温31度に、いきなりがびんと戻るんだろうか。なんだか信じられないような。変な天気だね。淡々と原稿続行。

2012.07.21
 せっかく身体が暑さになれてきたのにな、という気もちょっとある、昨日今日の肌寒さ。淡々と原稿続行。

 読了本『東京スカイツリーと東京タワー』 細野透 建築資料研究社 スカイツリーは東京の鬼門に立っていて、東京タワーは裏鬼門で、スカイツリーは将門の塔で、東京タワーは将門の愛妾桔梗の塔です、という、トンデモ本かと思ったが、二基の塔をひとつの物語として読み解く試み、なんだと思う。加門七海さんの愛読者なら、ぴったり来るかもね。篠田的には「鬼門」なる概念にリアリティを感じられなくていまいち。

2012.07.20
 いきなり気温が下がって身体がびっくりしている。涼しかったわりには、原稿がどっと進んだりは、しなかった。

2012.07.19
 朝マンションのドアを開けると、むっと熱気が来るようになった。前日の太陽熱で暖められたコンクリートが夜の間も冷めなくなったんである。それでもいまのところは比較的風があるので、外廊下の物音には目をつぶって玄関ドアを開け放し、首にタオル、おでこに冷えピタシートでどうにか毎日しのぎつつ仕事をしている。今日はジムの帰りにモンベルのアウトレットで、熊鈴を買った。片手で音がオン・オフできる優れもの。そうしたら夕刊に夏山登山の注意について書かれた頁が。うーん、そうだな。日帰りでもやはり雨具とコンパスはいるか。ヘッドランプはないけど小さなハンドライトは持っていこう。

2012.07.18
 角川の新担当と旧担当が仕事場に来る。ゲラの確認は5分ですんであとは雑談。なぜかキジマカナエ話で盛り上がるが、仕事にはまったく関係なし。

2012.07.17
 はあ、暑いです。「インドか〜」です。今日はツレが早起きで出かけたので、こちらもつきあって早起き。おかげで一日が長い。昨日まで書いていた原稿が終わったのが朝の6時。それからゆっくり本を読んで、銀行に行って、戻って早お昼を食べて、スタバでプロットをやって、新しい原稿を書き出した。『黎明の書』の三巻に向けて取り敢えずの船出。日の目を見るかは神のみぞ知る。

 読了本『海神の晩餐』 若竹七海 講談社文庫 1932年の横浜からバンクーバーへ向かう客船氷川丸の船上を舞台にした、映画を見るような楽しく臨場感あふれた物語。タイタニックとの関連はわりと薄いけど、小説としてなかなか楽しめた。横浜に繋留公開されている氷川丸も、近年往時の華やかさを取り戻したことだし、横浜観光の1ポイントとしてあの船を訪れる方にはぜひ手元にお持ち頂きたい。つーか、今度行く時は持ってこうと思った本でした。

2012.07.16
 昨日も暑いが今日はもっと暑い。そして明日も明後日も暑いらしい。ああああ〜 篠田は仕事しかしていません。仕事以外だと梅干しを干しました。

 読了本『英国メイドの世界』 久我真樹 講談社 もとは同人本で出ていたらしいとてもマニアックな本。メイドだけでなく執事から森番からイギリスのビクトリア朝時代をメインに、家事使用人のすべてを書き尽くしている。別にメイド小説を書く予定はないんだが、まんが『エマ』を愛読したこともあり、いろいろ興味深いなあと思って。

2012.07.14
 昨日は夕方福生の大多摩ハムに地ビールを飲みに行った。しかし夜が暑くて眠れず、今日はへろへろぎみ。友人が来て、来月末に4泊5日で函館に行くことになる。彼女がスマホでホテル付プランを検索し、その場で予約まで完了。これでは旅行会社がなくなるわけだなあ。篠田はやはり恵山へ登ることにした。タクシーをチャーターすることも考えたが、それはあまりに金がかかるので、バス停から1時間よけいに歩くことになるが、まあそれくらいは大丈夫だろう。果たして仕事になるかならないか、というか、これから売り込み先を考えなくてはならないのだが、あの学校を舞台にした黒いギムナジウムものを書きたいという気持ちがやはりあるので。

2012.07.12
 今日も仕事しかしていないので日記のネタがない。久しぶりに木原敏江のまんがを読んだ。『杖と翼』全4巻 小学館漫画文庫 フランス革命ものであった。サン・ジュストなのだった。高校の時に世界史のレポートで書いたなあ、サン・ジュスト。まんがはとても面白かった。この人の作品はかなり昔から読んでいるが、人物の表情が記号的でなくとても微妙なものになっているのに驚く。生き生きとしたヒロインだけでなく、多数の脇役がほんのちょい役まで含めて魅力的なのも、複雑を極めるフランス革命史がかなりわかりよく、しかし単純な善悪ではなく描かれていることにも感動。フランス革命といえば小説すばるで佐藤賢一がずーっと小説化しているが、この人が書くとなんでもすごく下品になるから苦手だ。

2012.07.11
 仕事しかしていないので日記のネタがない。あ、そうだ。数日前トマトとバジルを植えたプランタに突然キノコが生えた。キノコ図鑑を調べたら、馬糞に生えるヒトヨタケの仲間で幻覚作用のあるシロシビンを含んでいるやつらしいとわかる。堆肥に胞子が混じっていたんじゃないかと思う。ツレに「キノコが生えた〜」とメールをしたら「食べるな危険」と即返信が。わしはそんなものを食いそうに見えとるんかい。

2012.07.10
 仕事は『黎明』続行中。間の気晴らしとして松岡なつきさんのBLを一冊、井上ひさしの戯曲『父と暮らせば』を読む。

2012.07.09
 仕事は『黎明』続行中。

 読了本『ひさし伝』 笹沢信 新潮社 井上ひさしの評伝。井上は著書が多いので、数からしたらそんなにたくさんは読んでいない。直木賞受賞作の『手鎖心中』は文章の上手さに舌を巻いた。『吉里吉里人』は抱腹絶倒だった。『モッキンポット師の後始末』は面白くてやがて悲しかった。戯曲では宮澤賢治を題材にした『イーハトーボの劇列車』が好きだ。今回この本を読んであらためて井上ひさしの大きさを感じ、『手鎖心中』を再読したいなと思ったら、本が書庫で行方不明。やれやれ。

2012.07.08
 昨日はひかわ玲子さんのところへ遊びに行って、少し猫となごんでから豊島園の庭の湯へ。夜6時からだと安くなるのだ。けっこうゆったり目で良い感じ。それからアロマセラピーという全身マッサージを受けたらとても気持ちが良くて、帰ってからもツレとくっちゃべりながらウィスキーを過ごして夜更かし。そしたら今日は疲れがでたみたいでほぼ一日沈没。梅漬けに赤紫蘇を加えたのと、パンを焼いた以外は本読んでごろっちゃらしてました。

2012.07.06
 今朝は3時に雨音で目を覚まさせられる。おかげで今日も微妙に寝不足。ゴーヤ1本、ミニトマト6個収穫。

2012.07.05
 朝4時前に暑くて目が覚めてしまった。昼間も外に出たらやたら蒸し暑く、まるで食欲が湧かないので、昼はクラッカーにスライスチーズ、食べるラー油をかけた野菜と低脂肪ミルク。そしたらジムでマシンをやっている間に腹が減ってきて、腰が抜けそうになってしまった。じっとパソコンに向かっているだけなら、そんなにカロリーは要らないんだけどね。

2012.07.04
 『黎明の書』の外伝3を書き出す。

 読了本『執事とメイドの裏表 イギリス文化における使用人のイメージ』 新井潤美 白水社 英国文学と、使用人をいかに上手く使うかといった実用書、回想記などを材料に、執事、ハウスキーパー、メイド、ナニーといったイギリスの家事従事者たちの実像を記した一冊。なかなか面白いです。どうせならイギリス・ミステリに現れる彼らについても語って欲しかったな。装丁がステキだと思ったら柳川貴代さんだった。

2012.07.03
 ほとんど途中覚醒もなく6時まで眠れたのに、なんだかぼやっと眠い。朝食用のパンを焼く。いただきものの北海道産小麦に白神こだま酵母と有機くるみ。
 ゴーヤの雌花が咲いたので受粉。昨日一本食べたので、いまのところついている実はこれの他に大中小3本。ミニトマトを4個収穫。目方は4つで65グラムあった。驚いたのはゴーヤの蔓を伸ばすのにオリーブの鉢を異動した時で、なんとオリーブの実がひとつだけなっていた。今年は片方の鉢にしか花が咲かなかったのに、こんな鉢植えでは無理だろうと思っていた実がついたのはなんとも嬉しい。
 仕事はどうにかこうにか、徳間の書き下ろしに着手。といっても番外編のプロットを作っている段階。

 読了本『ローズ・ベルタン マリー=アントワネットのモード大臣』 ミシェル・サポリ 白水社 かのマンガ「ベルサイユのばら」にも登場した、フランス王妃に寵愛されたファッション・デザイナーの一代記。仕立屋ではなくデザイナーとして、ただの服ではなく芸術として、その作品を認めさせた人物であり、同時に働いて成功し階級をのし上がった女性の草分け的存在だった、というのがあらためて考えると新鮮。当時女の出世といえば、権力者に美貌で愛でられて寵姫となるる以外なかったのだから。もっとも女が純然と能力によって成功するというのは、現代だって生やさしいことじゃない。巻頭に4頁のカラー・ファッション画が載っているのは楽しいが、文中に登場した華麗なベルタン・デザインについては、モノクロでもいいからもっと図版が欲しかったなあ。

2012.07.02
 朝一で『ホテル・メランコリア』のデータを送稿。例によって一仕事片づいた後は部屋の掃除と片づけ。少々体重が増加気味なので昼はダイエット食のお湯を入れるだけ玄米がゆ、150キロカロリーで済ませて、散歩がてら駅ビルの本屋を覗いたら松井なつき『Flesh&Blood』の19巻が出ていたので、ほくほくと購入。夜まで我慢しようかと思ったが、エアロバイクを漕ぎながら1時間で読了。結局今日は他に読書もせず、だらだらっと休憩日。
 昨日はミニトマトを6個収穫したが、本日は今シーズン初めてのゴーヤを収穫。186グラムなり。それとバジルの花穂が出てきたところを切りつめて、ちょっとだけバジルペーストを作る。塩麹を入れてみたが、さて味の方は?

2012.07.01
 朝の内に『ホテル・メランコリア』の直しを完了させて、浅草橋まで鳩山郁子さんのサイン会に。とんぼ返りで戻ってきたら雨。駅から仕事場まで濡れて帰ってストールとカーディガンとブラウスを急遽洗濯。

 読了本は小林信彦三連チャン『怪物がめざめる夜』(なぜか悪役の芸人がタモリに見える)『イエスタディ・ワンス・モア』『イエスタディ・ワンス・モア2 ミート・ザ・ビートルズ』ビートルズ来日の騒動はかすかに覚えているがやっぱり印象は薄い。小林は大人の無知と若者の熱狂を対比的に描いているが、大学生くらいの年齢層はどうだったのかなあ。
 もう一冊『自己愛な人たち』 春日武彦 講談社現代新書 著者が述べているような「自己愛な人」とは完全に一致しないが、例のキジマカナエも、自己愛をキーワードに了解できるのじゃないかと思った。彼女は自分を大事にすることが大好きで、ブログのフォロワーを観客に自画自賛の一人舞台を延々と繰り広げていたわけだが、その自己愛のためには金が要った。早い話が、彼女が自分を大切にするというのは、自分のためにエステや美食、外車で月150万も浪費して、贅沢な生活を送ることと完全に同意味だった。しかし金というのは道ばたには落ちていない。彼女は自分のための金を手に入れるのに、男から絞るという手段を選択した。彼女にとってもはや、あれは詐欺でも殺人でもなかったのだ。狩りというか、収穫というか、そんなもの。うまくやらないとまずいというのはわかっているが、自分はそれが出来るのだからやってかまわない。それも自己愛の一部だったろう。結婚を餌に金を搾り取って、これ以上もう出ないとなったら別れる。上手く別れにくい相手は片づける。野菜の皮を剥いて捨てるように、不用になったごみを片づけるのは当たり前だと、いつかそう思いこんでいたのなら、あの感傷抜きの殺しも、妙に粗雑なやり方と後始末の投げやりさもわかるというもの。いくら馴れた手段だからって、つきあった男がそろって練炭で自殺するのは変すぎるだろう。彼女は疑いもなく、人を人とも思えない精神病質者である。しかし責任能力はある、ということになるだろうな。でも、刑務所で矯正が可能かというと、それは難しいんじゃないだろうか。かといって、治療するともできまい。病気じゃないんだから。