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2012.06.30
 いっぱいやる前のエネルギー消費にと、狭山湖周辺の「トトロの森」というのを歩いてみようということで出かけたのだが、道標はろくになくて、梅雨とは思えぬ炎天下で道に迷うし、やっと森に着いたらこれが全然人が来ないような荒れた感じで、蜘蛛の巣は張ってるし、蚊や蛾は飛ぶしで、散策気分にはなれず必死扱いて歩くばかり。ハイキングとしてはボツでありました。夜は秋津で一軒目焼鳥屋、二軒目海鮮系居酒屋。焼鳥屋はレバーがことに美味。大きな角切りで中はレア。海鮮屋は岩ガキがふたつ650円という破格の安値で、味は正直とびきりよりはやや落ちるが、この値段なら納得でした。
 本日はメランコリアの直し続き。あー、終わりまで行かなかった。

2012.06.28
 あとがきを書き終えて、これで奥付などついてぴったり304頁。なぜぴったりかというと、本というのは大きな原紙を畳んで作るので、総ページ数は16の倍数にする必要があるのです。16×19で304。プリントアウトして、データが手元にあった原稿からなので、ゲラと照合、ルビなどもチェック。これをもう一度データに反映させれば、取り敢えずは入稿の準備OKとなるが、今日はジムなのでそこまでは終わらず。
 明日は友人と一杯やってくるので、日記の更新はお休みにします。

2012.06.27
 今日はひたすらお仕事。メランコリアの直し、一応ラストまで到達し、あとがきを書いている途中でタイムアップ。金曜日はまた出かけるので、出来るだけ明日のうちに目鼻を付けたい。

2012.06.26
 スカイツリーを横目で見ながらそばにも寄らず、合羽橋道具街で食品サンプルストラップをあさり、いや、ストラップが格別欲しかったわけではないのだが、他のもっと精巧なサンプルはとても高いので、あんこのすけ具合が絶妙なたいやきと、味の染みた大根とこんにゃくの色合いになまつばのわくおでんのストラップを買い、粉を吹いた大福の皿に載せたら誰も見破れまい作りに感嘆しつつ、浅草へ。尾張屋で天せいろ。汁の辛いのがとても好み。どんどこ歩いてカフェ・バッハに行き、ここはコーヒー専門店だがケーキもすごく美味しい。帰りは三ノ輪に出て都電で。三ノ輪の商店街もチェックしたかったが、腹に余裕がなかったわい。

2012.06.25
 近くの駅ビルに買い物に行ったら抽選をやっていて、1枚抽選券をもらったのでカウンターに行った。くじ運ははっきりいって無に等しいから、全然期待していない。ここでも、もらったことがあるのは最低のティッシュかその次の安いお菓子だ。前に並んだおばさんが抽選券を10枚出す。ついじっと見てしまうと、参加賞の赤玉が8個、その次の白玉が2個。ところがこっちが一回廻したら緑の玉が出てきて、500円のお買い物券をくれた。「フッ、勝ったな」と思ってしまった、おいらの小ささを笑ってくれ。
 仕事はメランコリアの直し続行。ただし明日は外出。

2012.06.24
 仕事以外のことでは、梅干しを漬けた。塩分20%はそれほど多くはないので、焼酎を霧吹きに入れて容器などを消毒した。家に帰って本を確認すると、梅酢が上がるまでは重しはもっと重くていいらしい。明日取り替えよう。それと昨日塩麹に漬けた鶏もも肉を取り出して低温スチーム。これは今夜のおかずの一品。仕事は角川にゲラを返して、メランコリアの直し続行。今月中くらいには終えたいが、外出の予定が重なるのでもう少しかかりそう。

 読了本『キャラクター小説の作り方』 角川文庫 『キャラクターメーカー』『ストーリーメーカー』『物語の命題』 アスキー選書 大塚英志 光原百合さんが大学で小説創作のゼミを数年来担当していて、この前逢ったときそんな話をしたので、大塚英志のシステマティックな創作論は面白いよと紹介。しかし自分の本棚で該当する本が見つからなかったので、書店で新しく出ているものを買い、彼女に教えるのと同時に自分でも読んでみた。キャラを要素に分解して、さいころを振って組み合わせを決める、なんてワークショップが出てきて、自分がやったことがない方法というのはとても面白い。小説を書くことがなんらかの神秘的な才能に拠っているなんて、恥ずかしいことは篠田はちいとも思わないので、もしかすると頭の中で無意識のうちに、こうした作業をしているのかもしれないとも思う。『物語の命題』は、「鉄腕アトム」「どろろ」「トーマの心臓」「11人いる!」などの著名マンガ作品からテーマを抽出し、それに新しい肉を付けプロットを作るという演習で、一種の作品論でもある。『ストーリーメーカー』は、30の質問に答えていくことでストーリーが立ち上がる。これ、試してみようかな。いや、マジで。

2012.06.23
 今日から『ホテル・メランコリア』の直しを始める。連載のデータを新しい書式に流し込んで、あれ、案外薄いと思ったら、なんのことはない、一回分落としていた。結局300頁は超えるようだ。
 長いこと親しくしてもらっている読者さんとの、些細な行き違いにちょっとめげる。篠田の作品を愛して、友人知人にお勧めしてくれるのは本当に有り難いのだが、作品に対する読者のスタンスと作者のスタンス、著書というものに対する同じくそれ、というのは同じではない。しかし、それをどう説明すれば理解してもらえるのかがわからない。自分が親しくなった人に、ご笑納下さいと著書を差し出すのは普通にあることだが、知り合いの知り合いにまでその範囲を広げたら、それはプロの物書きではなく自費出版をした素人だ。だからといって、お金を払いますから売って下さいといわれるのも、なんだか違うという気がする。同人本を売っているわけではない。新刊書店にその本があれば、そっちで買ってねといえばいいだけの話だが、本屋ではすでに品切れで、それでも読みたいと、その人に直接言われたらそれもまた別の話で、あげちゃってもいいと思うかもしれないが、その間に仲介者がはさまるというのが、漠然たる違和感の元のような気がする。読みたい本が新刊書店でなくなっていたら、古本屋を探すか図書館を探す。その探すという行為もまた本のへの愛情の一部だとすれば、自分で見つけたわけではなく、人からもらった本というのは、その簡単な分だけ愛情も薄いのではないか、と思うのは間違っているのだろうか。

2012.06.22
 『閉ざされて』は1頁の行数が文庫になっても同じなので(1行の文字数は文庫の方が少し少ない)、ページのズレの調整はそんなに必要ではなかった。でもあちこち読み返して意にみたぬところを直せた。ラストとか。それとやはり思い切ってネタバレ自作解説が、ぜひお読みいただきたい気分。他にも小谷真理子さんに解説をお願いしていて、これもどうぞネタバレてくださいといってあるので、堂々二大ネタバレつきになるかしら。ミステリの場合どうしても、奥歯にものの挟まったというか、靴の上から足を掻くようなもどかしさがついて回るから、もうこれからは全部ネタバレ有りで行こうかなと思ってしまった。ネタがばれたくらいでつまらなくなる小説はダメでしょう、なんてえらそうに。

 読了本『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』 水城せとな フラワーコミックスα 角川の新担当おすすめのBLマンガ。新しいマンガ家さんの作品を読むことはあまりないので、「おお、最近のBLはずいぶんと進化と進化を遂げておるなあ」と感動してしまった。カップルの片方が自覚的なゲイで、片方がまったくのノンケ。ゲイの方がノンケに惚れて迫りまくって、やがてラブラブに、というのは完全にBLの定石だけど、普通ラブラブになればノンケも観念するというか、「これからはおまえだけだ。お前以外の女とも男ともくっつくことはあり得ない」となって、まあハッピーエンドになるもの。しかしこのマンガではノンケの方が熱烈に彼を恋してしまったゲイを受け入れて、一緒に生きていくことを決意はするものの、「自分は結局ゲイにはなれないから、この関係が先々まで安泰だとは思えない。自分より相手の方が耐えきれなくなって逃げ出すだろう。でも、それまでは共に歩いてやろう」という、不思議に曖昧な、だがそれゆえリアリティがあるともいえる決意をするところで終わる。まあ、自分もこの歳になって、さすがに愛の永遠を信じますかと聞かれれば、そりゃ神話だなあとしか思えない。いや、神話は好きですよ。永遠にラブラブのフジミもいまだに愛読しているし。だけど人間の感情なんて一寸先は闇で、夫婦の関係だって恋愛がずっと続くわけではないのがリアル。そもそもこの物語のしょっぱなで、ノンケの主人公は嫁から一方的に離婚届を突きつけられる。とっくに愛はなくなっていても、別れる気はなかったから青天の霹靂というわけで、人間関係は壊れ物、という認識がこのマンガ家さんにははっきりあるのでしょうね。

2012.06.21
 奥鬼怒の疲労感がまだ抜けない。歳だのう。それでも今日はジムで汗を流した。その前には講談社にゲラを返して、角川の方を始めた。どちらも担当が新しくなったので、お手際拝見的な気分もある。
 台風の風でバジルとミニトマトを植えたプランタが倒れかけたり、ゴーヤの蔓も一部傷んだが、そう大したことはなく、本日ミニトマト一個収穫。いや、青い実はたくさんついているのだが、ちゃんと赤くなったのはこれ一個なので。
 最近読書感想を書いてないまま読了した本が溜まっていた。面倒なのでタイトルだけ書きます。『謎解き名作ミステリ講座』 佳多山大地 講談社 『古代ポンペイの日常生活』 木村凌二 講談社学術文庫 『ガウディの伝言』 外尾悦郎 光文社新書 『そうだ、京都に住もう。』 永江朗 京阪神エルマガジン社

2012.06.20
 台風一過といってもすっきり青空にはほど遠く、やたらと湿度が高くて蒸し暑い。この調子で夏になってしまうんだろうなあ。うう、ついこないだまでは寒い寒いといっていた気がするのに、今度は頭に冷えピタシートを貼って、濡れタオルを首に巻いてパソコンに向かうことになるのか。今日は一日『胡蝶の鏡』のゲラをいじる。用字が元本を書いた時と変わっているので、思い切っていくつかの単語をかなにすることにし、ワープロソフトの検索アンド置換でチェック。一応終えて、これは明日返送。しかし9月刊の角川文庫のゲラが届いたので、こっちを明日やる。

2012.06.19
 来年1月刊行予定の単行本『ホテル・メランコリア』の装丁関係の打ち合わせに、ツレと池袋へ。表紙は新たに撮り下ろすことに。池袋西口の四川料理知音食堂で唐辛子たっぷりの牛肉麺を食べて、ビックカメラでインクカートリッジなど買って帰宅。途中から雨が降り出す。仕事場では『胡蝶の鏡』のゲラチェックを続けるも、次第に風雨激しくなる。いまも激しい。東北の三陸海岸や紀伊半島の山地や、雨でまた災害が起きたりしなければいいのだが、そうでなくてもきっと壁や屋根の薄い仮設住宅なんて、雨音風音が激しく響いて心細いだろうなあ。

2012.06.18
 パーティの二次会で、皆川先生と故宇山さんの奥さんと写真を撮ってもらったので、それをプリントして手紙を付けておふたりに送る。サイン会で手紙を下さった読者の方には、お礼として函館、恵山の風景写真をお送りした。あの話に出てきた学園は充分使い切ったという感じがしないので、もう一度違う小説にしてみたい気持ちがある。ゴシック・ロマンスでギムナジウムもの、なんてどうでしょうね。女子校ものはいずれ書く予定があるので、こっちは男子校ものです。もちろんブラックに。

2012.06.17
 昨日は本格ミステリ作家クラブの総会と授賞式。友人の作家光原百合さんとランチをしてから会場の出版会館へ。受賞は城平京『虚構推理 鋼人七瀬』と、皆川博子『開かせていただき光栄です』、評論賞は笠井潔『探偵小説と叙述トリック』。賞の行方は会員の投票で決まる。全選評はただいま発売中の光文社のミステリ雑誌ジャーロに掲載されています。興味を覚えた方はぜひご一読。そして受賞作を未読の方は、買って読んで損のない作品ですよ、といまさらのようにお勧めの弁を申し上げておきます。
 今日はすでに恒例となった受賞者のトークショウと、その他希望作家を加えてのサイン会。篠田も「本の行商じゃ」と参加してまいりました。たくさんのご来場を賜りありがとう存じます。しかし、山行から立て続けのイベントで、かなりへろへろであります。今夜は酒飲んで、ついでに睡眠導入剤も飲んでしっかり眠ります。ここへ来て妙に仕事が混んできてしまったので。

2012.06.15
 2泊3日で奥鬼怒に行ってきた。駐車場から2時間歩く一番奥の日光沢温泉に泊まり、翌日はかなりきつい登りを登山マップに書かれている所要時間よりはかなりゆっくりめに歩いて、日本で一番高いところにある湿原、鬼怒沼に。尾瀬の規模の小さいのといいますか、しかしここが文字通りひとっこひとりいなかった。貸し切り湿原。小さな野の花(不勉強で名前がわからない)がちらほらと咲く、点在する沼からカジカガエルの鳴き声がころころ、ころころとたちのぼる他はただ静寂。ずっと曇りだったが、我々が湿原に出た10分ばかりは雲が切れて、青空が水面に映りこんだ。奇蹟のように美しかった。またのろのろと歩いて下って、宿に預けていた荷物を受け取ってさらに1時間歩いて、2泊目は手代沢温泉。なんと2泊とも相客がいない、貸し切り状態だったのにはびっくり。手代沢は「ヒュッテ」といっても布団の上げ下ろしまでしてくれるが、日光沢はほとんど山小屋(でもちゃんと浴衣はあるしね)で、しかも夕飯はうまかった。赤白のワインまであるのが嬉しい。結局ほとんど雨にも降られず、帰りは陽が射して緑が目もくらむばかりにきらめく中を帰ってきた。いや、いい旅でした。
 明日は本格ミステリ作家クラブの授賞式なので、日記は休みます。

2012.06.11
 今年のゴーヤは最初の年と同じ品種、にがにがくんだが、なんともう雌花が咲いた。一昨日の一輪は雄花がなくて、カップリングならずだったが、今日はちゃんと雄花も一輪咲いたので、これを取って受粉。えらく早いのでびっくり。しかしゴーヤの雄花は、甘いのにさわやかなよい香りがする。
 文庫の担当が異動で変わるので、地元の喫茶店で顔合わせ。あとは『黎明』の続き。
 明日明後日出かけるので、日記の更新は金曜日になります。

2012.06.10
 牛乳胡麻パンを作る。水の代わりに牛乳を使って、たっぷり白胡麻を入れたパンは、トルコやギリシャの街頭で売られているシミットのような味になる。これはわりといつ作っても上手に出来るので嬉しい。仕事は『黎明の書』の第三巻をやっとぼちぼち書き出した。でも前途遼遠という感じで、あんまり意気は上がらない。でも書き上げないと、前の2冊もいつまで経っても出してもらえないんでしょー。ぶちぶち。

2012.06.09
 昨日は角川の担当が異動で変わるので、新担当と引き継ぎ。高校生の時に建築探偵を読んでいたという、篠田の娘のようなお嬢さん。しかし昔からBLにも親しんでいたということで、「最初に読んだのはなに」と聞いたら「栗本薫『終わりのないラブソング』」となかなに濃いお返事が返ってきた。後はとなりにいる男性の元担当を置き去りに「富士見がね」「タンホイザー」「春抱きが」「ドク×ボク」と、話題暴走。娘のような人と萌え話ができるというのが、こういう方面の嬉しいところだね。

2012.06.07
 今日は仕事はお休みにして、新しく買ったレインウェアとストックの使い心地を確認するために、御岳山に行く。山登りなどというものではなく、バスとロープウェーを乗り継いで上に上がり、御岳神社に参拝。長尾平で引き返して日の出山からつるつる温泉に降りた。しかし下り道はけっこう傾斜が急で道も悪く、こういうときは特にストックがあると便利だと痛感。それから下は晴れて暑かったが御岳周辺は雲がかかって寒い、その程度に気候は違うということ。新緑はきれいだったが、奥多摩の山はどうもいまいち景観的には美しくない。神社前の紅葉屋で食べたくるみの付け汁のそばと、温泉で飲んだ地ビールが美味、というかなり軟弱な山行でありました。来週の奥鬼怒は大丈夫かのう。

2012.06.06
 歯医者の予約を入れて、『黎明の書』第二巻のゲラを最後までやって返送しがてら歯医者。来週は来れないので、もいっぺん取れたやつをひっつけて下さいといってそうしてもらう。そのままスタバで仕事しようかと思ったが、なんか空模様が怪しいので昼飯のパン買ってまっすぐ戻る。案の定、仕事はあまり進まないでだらだらしてしまった。医者とか行くと、なんかそれだけで疲れてしまうんだよね。

 読了本『そうだ、京都に住もう。』 永江朗 京阪神エルマガジン社 京都の町屋を買ってリノベーションしてセカンドハウスにする、というとってもうらやましい人の体験記。しかしいくらお金があっても、こういう大変なことはようやらんだろうなあ、とうらやましがりつつも感心する。いや、京都好きだし、それもなにかを見物するというより、茶店に行ったりパン屋に行ったり本屋を覗いたり、そういう生活ぽいことをするのがいい町だよなあとつくづく思うんだけど、不動産を手に入れる、それもこう家の構造から内装から家具から、ああだこうだと決めて、集めて、整えて、ということがとてもする気がしない。そんなことをするくらいなら、寝そべって本を読んでいたいんで、ただの旅行者でいいわ、と思う。財産を増やしたくないんです。

2012.06.05
 降圧剤をもらいに婦人科の医者に行く。仕事方面のストレスのせいか、昨日から血圧高めで微妙に体調が悪い。おまけに昨日歯を磨いていたら奥歯の詰め物がぽろりと取れて、なのに今日は歯医者の休診日だ。来週は奥鬼怒なのに。まあ、山登りしている最中に取れなくて良かったとは思うけどさ。
 徳間書店の『黎明の書』は結局、もう一冊書き下ろして三ヶ月連続刊行、話は終わらなくても(まあ確実に終わらないんだが)あとは未定、売れ行き次第ということで、問題はその三ヶ月をどこからスタートするか。たぶん来年、1〜3月というので、「1月はPHPの単行本が出るよ」といったら「じゃあ2月から?」そうすると、今度はジャーロの連載を纏めるのとだぶるかもよ。ころころ話が変わるんで、予定なんか立てられん。わしのせいやないで。

 読了本『魔境の女王陛下 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 田中芳樹 講談社ノベルス 医者に行く往復と待合室の間に読んだ。そういう時間をうっちゃるには格好の話だけど、下僕泉田へのラブを自覚した途端に、お涼さまが妙におとなしくなってしまった感じがあって、そこがかなり残念だ。おまけに泉田の超がつく鈍感ぶりには、「恋に疎いのは少年マンガのヒーローではお約束だけど、これはあんまりでしょー」と、お涼さまに同情したくなってしまう。彼女はやはり、人を人とも思わない天下無敵のタカビーぶりを発揮してもらいたいもんだ。

2012.06.04
 今年最初の本がやっと出る。といっても、単行本のノベルス下ろし。ちまちまと手を加えた『緑金書房午睡譚』です。店頭に並ぶのは6/6から。それと、6/17の日曜日、銀座教文館ビルで本格ミステリ作家クラブのトークショーが開かれるのだが、その後で集団サイン会があり、本がいくらかでも売れればいいやというわけで、篠田もサイン会に名を連ねました。その場で本を売ってもらい、サインをする形らしい。教文館は篠田も好きな本屋さんで、キリスト教関係の専門書籍などをよく買いに行くほか、ティールームでお茶を飲む。ここはちゃんとしたリーフティーが出てくるのだ。
 仕事は『黎明の書』のゲラを見つつ、第三巻の構想を立てているところ。

2012.06.03
 今日はツレが桐箪笥を完成させて納品する日なので、夕飯は作ることにして、プランタのバジルを摘んでジェノベーゼ・ペーストを作る。フードプロセッサを買ったらこの作業が実に楽になった。塩麹本に載っていたシシカバブ(といっても豚肉なのでシシカバブーてなもんだ)も、どうせならというわけでフードプロセッサで肉を挽く。仕事は黎明ゲラの続行。

 読了本『女中がいた昭和』 小泉和子 河出書房新社 らんぷの本 昭和の暮らし博物館の館長編による女中史。知っているようで知らない「女中」という存在。いまやヴィクトリア朝のメイドについての方が資料がそろってるくらいだものね。しかし保存されている住宅を見ると、女中部屋とわかる部屋はかなりの確率で存在するから、建築ウォッチャーとしては気になっていた。なぜ女中部屋とわかるかというと、たいていは北向きの、台所に近い場所にある3畳間で、内装は粗末というか押入さえない場合が多い。この本でも住宅史における女中部屋の内実とその変遷を語る章が、篠田には特に興味深かった。それと、現在とは違う戦前中流階級家庭の、家事の多さ、複雑さ、洋風生活の浸透に連れて、着物も必要なら洋服も必要、鍋もフライパンもいる、なのに電化にはほど遠い、つまり主婦ひとりで担いきることがかなり難しい状況だったという指摘も、ああなるほど、とうなずかされた。いまは病気になったら医者に行くのが当たり前だが、戦前は家庭でのケアが当然で比重が高かったとか。

2012.06.02
 ようやく『黎明の書』の2巻のゲラが来た。これは連載でなく書き下ろしとして去年の9月に書いた原稿なので、正直な話内容はかなり忘れている。ゲラを読み返しながら3巻の構想を練る。話がふくらむ一方なのでそのへんが大変に困る。しかも行く手が見えない。腹をくくってやるしかないけど、それにしても本はいつ出るんだ。

2012.06.01
 午後から仕事場で打ち合わせなので、午前中はばたばた。カップケーキを作る。これは卵を泡立てる必要もなくてとても簡単。小さな紙カップを買ってきて、いつもより小振りに作った。
 打ち合わせはPHPからの『ホテル・メランコリア』と、来年からPHPの文庫に降ろして書き下ろしもやる『北斗学園七不思議』について。デザイナーの柳川貴代さんと装丁のことなど。取り敢えずは『メランコリア』だが、ページのデザインが決まるのを待って仕事に入る。それまでは少し余裕あり。せいぜい山歩きでもしよう。