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2012.04.30
 『緑金書房』の再校ゲラ返送。著者のことばメール送稿。本格ミステリ大賞投票郵送。ジャーロの直し第一回。プリントして明日もう一度見る。皆川先生とお会いした時「篠田さんは全部考えてから書くの?」と聞かれたので、「ジャーロがあと一回なんですが、終わり方がまだ決まっていません」と明るく答えたところ、そのときそばにいた光文社のS木さんがやたらと怖がっていた。いやあ、怖いのは書いてる当人ですってばさ。

2012.04.29
 昨日は皆川博子先生のサイン会で、土曜日連休初日の新宿へ。本当は花束など担いで行きたかったが、やたらと気温が高く、近場に花屋が見つからなかったので断念。でもすごい大きな薔薇の花束を担いできた読者がいて、お帰りになるまでなかなかの大荷物であったので、花束は持ち帰るのが大変だ、と再認識。改めてお祝いの花は、ご自宅へ送らせてもらうことにしよう。なんといっても40周年。すごい。すごすぎる。篠田はとうていあと20年なんて働けません。
 今日はジャーロの原稿の直しより前に、先に終えられることを終えてしまおうというわけで、まず文蔵のホテル・メランコリアの原稿を手直しして送稿する。これでほぼ半日使った。それからちょっと外に出たら暑くてビックリ。いきなり初夏。戻って本格ミステリ大賞の投票用短文を書く。これは一日置いて明日あたりに投函する。それから『緑金書房』の再校ゲラをチェック。付箋の位置だけさくさくっと見る。著者のことばを少し迷って書く。これで明日ジャーロを終えられれば、連休の後半には『胡蝶の鏡』の直しに着手できる。休み明けには『黎明の書』のゲラも来るらしいので、『胡蝶』の〆切は五月末といっても、あんまり安閑とはしていられない。5月は他にもいろいろ予定が入りそうなので。

 読了本『マイマイとナイナイ』 皆川博子 宇野亜喜良 岩崎書店 「怪談えほん」とシリーズ名はいうが、皆川さんが普通の怪談など書かれるはずがないと思ったら、案の定そうだった。すごくシュール。全然不条理。オチはない。突き放されておしまい。まあ、その方がずっと怖いよね。

2012.04.27
 ジャーロ、取り敢えずラストまで。といっても最終回は次回。せめていまのうちにラストの段取りまではつけておきたい。まあ、連休中日あたりに送れれば御の字かな。

2012.04.26
 ジャーロ、たぶん明日で終わる。終わらせる。明後日は出かけるから、完成原稿でなくてもとにかく最後までは。
 昨日の読書感想に少し書き足した。

2012.04.25
 ぼちぼちにしとく、なんていって、まだ終わらないジャーロ。土曜日は皆川先生のサイン会だっちゅーのに。

 読了本『イタリア旅行』 河村英和 中公新書 18世紀以降のヨーロッパ人が憧れ旅したイタリアについて。要するにみんなイタリアが好きなんだねえ、という本です。事実が丹念に収集されているが、そこから先の分析みたいなものはないので、ちょっと退屈。でも昔流行って現代はいろんな理由ですたれてしまった観光地がけっこうある。第二次大戦の爆撃でやられちゃったとか。でも大きな要素のひとつは、旅の手段が馬車から鉄道になったことでした。

 読みかけ本『落日の剣』 ローズマリ・サトクリフ 原書房 実録アーサー王物語、という感じだが、これはなんと『ともしびをかかげて』の続きの話なのだった。物語になってるアーサー王の宮廷というのは、基本的に平和で、強い騎士がたくさんいてもあんまりすることがない。しかたがないから冒険を求めて出かけて果たし合いをして、そんなのばっかりなんだが、こちらはローマ帝国が完全撤退した後のブリテン島を、サクソン人やなんかから守る戦争をしているが主人公なので、暇どころか戦争ばっかりで、そりゃあ大変。騎士団はその軍の中核なので、遊んでるの逆。円卓を囲む余裕もないというか、そもそも満足なお城もない。しかしこれを読んでいて思ったことは、『指輪物語』の背景ってこういうイギリスの原風景がそのまま出てるんだな、ということ。荒れ地の中にかつてあった文明の跡が点在していて、優れて正しい権力ともっと洗練された文化的な生活がかってはあったが、いまは失われている、という非常に強烈な感覚が常にある。時代は変化して、その変化に抗するべくもないけれど、せめて消えようとする灯火を守って戦うというのは、指輪の主調音だもんね。指輪の場合、滅び行くのはエルフで、復興しこれから大きくなっていくのは人間の世界だけど、優れた王権の主であるゴンドールはエルフの血ゆえに一般人に優越していて、しかしそのエルフの血はやはり薄れて消えていくだろう、それは変えられないという悲しみが流れている。他にも魔法を使ったように足音を立てずに現れ消える小柄な異人種が、微妙に畏怖され嫌われているのを、主人公が友誼を結ぶあたり、人間から見たホビットや、アラゴルンの前に現れる現地人ガン・ブリ・ガンの設定を思い出させる。

2012.04.24
 着るものに迷いつつ、帽子は冬帽子をつばの広い日よけ帽子(一澤帆布製)に交換。でも朝の内はなにか一枚欲しいかも、というので京都で買った染司よしおかの生絹茜染めストールを巻いていくが、汗かいた。ストーブ焚きたい肌寒さから夏日とは、いくらなんでも変動が激しすぎやしませんか。
 今日は神楽坂で打ち合わせ。今年10月予定だった『ホテル・メランコリア』は来年一月に延期になるようだ。やはりそこいらは景気が悪いかららしい。まあいいや、出るなら。もう、そんなにがつがつ仕事しない。ぼちぼちにしとく。

2012.04.23
 まだやってるジャーロ。まあ、今月中に書き上がればいいやって感じ。でも明日は打ち合わせなんでお出かけ。晴れて気温も上がるそうだ。
 昨日の本の感想に書き足しをしました。

2012.04.22
 昨日は朝一番で新宿紀伊國屋へ、皆川博子先生のサイン会の整理券をもらいに行く。さすがに平積みがどどん、だが、10時25分の時点で番号は23番。まあこの時間にやってくるのは相当に入れ込んだファンだと思うが、土曜日のうちに出払ったのではなかろうか。100枚の四分の一がすでに出ていた勘定だもの。
 今日は仕事の続き。しかし変に寒い。やっぱり天気おかしいよ。

 読了本『心のケア 阪神・淡路大震災から東北へ』 加藤寛+最相葉月 講談社現代新書 心のケアなどとあっさりいうけれど、精神的な問題には特効薬も万能治療法もないのだと改めて感じさせる本。この精神科医はちゃんとした人らしいんだけど、PTSDからの治療法のひとつとして「長時間曝露療法」というのを挙げていて、原因となった恐ろしい経験を当人の口から説明させる。それを何度も何度も繰り返して、録音したのを聞かせたりもして、それを継続することで馴れさせるっていうんだけど、よけい状態が悪くなったりしないのかと怖くなった。だいたいそれについての文献としてジュディス・ハーマンの『心的外傷と回復』を挙げているんだけど、これってあの虚偽記憶問題でやり玉に挙がった本だ。そういえば両親から虐待を受けた記憶をクライエントが回復するときに、カウンセラーが誘導的にいろいろ質問をして、思い出したことをしゃべらせ、書き留めさせ、さらにそれで感じた感情、怒りや苦しみを吐き出すようにうながしていたんだよね。それも曝露法の一種という感じなんだけど、これが主に集団セラピーだもんだから、他の人の激烈な告白に引きずられたり、カウンセラーに認められたくて存在しない過去のトラウマを進んで思い出したりしてしまって、単なる不定愁訴みたいなものがかえってこじれてえらいことになった、みたいな症例がかなりあるらしいんだな。震災なんかのPTSDには虚偽記憶というのはあり得ないにしても、そうやってさらけ出すことで回復する人だけじゃないだろう、と思ってしまった。
 しかし同時にまた思い出したのが、自分の小説でありまして、建築探偵番外編の『AveMaria』です。ここで蒼は自分の過去の事件というか、自分がやってしまったことを、思いがけず残酷な悪意ある形で見せつけられて、でもその衝撃を忘却するのではなくいわば噛みしめて、咀嚼して、自分の中に取り込んでしまう形で克服するんだけど、それは一種この長時間曝露法みたいな部分があったなと、今更のように思う。でもそのとき蒼は、京介すら自分のそばから遠ざけて、傷ついた獣が巣穴に籠もるようにして、ひたすらその傷とひとりきりで向き合う。どう考えてもトラウマの克服に集団セラピーというのは違うんじゃないかなと思うんだよね。カウンセラーの存在さえ邪魔というか、やばい。精神的に落ちているときほど、他人の影響は受けやすくなるし、でも傷って基本的に自分で癒すしかないものでしょ。といいながら、蒼は臨床心理士になって、きっとそういうジレンマみたいなものにも悩む事になるんだろうな。必要とされるぎりぎりの手助けだけはしながら、決して支配しないというのは簡単な話じゃないよね。良かれと思えばこそ手も出し口も出し、その結果がいけません、なんて教育の現場でも親子の子育てでも、いくらでも例がありそう。

2012.04.20
 今日も昨日一昨日に同じ。ただし朝の内に、本棚増設で空いた棚に辻真先先生の著書を整理して詰める。

 読了本『猟奇博物館にようこそ』 加賀野秀一 白水社 初めはフィレンツェの「ラ・スペコラ」とか、パリのカタコンベとか、わりと知ってるよ〜的なものを取り上げていたのが、後になるほど濃くなってきて、ラストの方に出てくる医学誌博物館やら何やら、写真はちょっとでも「いやもうけっこう、お腹一杯」と言いたくなるグロさでありました。
 読みかけ本『芭蕉全発句』 山本健吉 講談社学術文庫 索引が充実していて、うろおぼえの句を探す時など便利。鑑賞文も簡にして要を得ている。というわけで、トイレにおいて順次読んでいるところ。さすがに20代の作品はあんまり面白くない。ところで花見の時に書いた句の初五は「木の下に」じゃなくて、「き(読みはこ)の元に」でありました。謹んで訂正いたします。

2012.04.19
 今日は散歩もせず、パンも焼かず、ジムにも行かずにジャーロ。ああしんど。

2012.04.18
 今日もやっとこすっとこジャーロ。少し散歩。パン焼き。

2012.04.17
 やっとこすっとこジャーロを書き進める。『緑金書房』の表紙ラフが来る。波津彬子さんの描き下ろしです。徳間の担当からとても久しぶりにメールが来る。どうやら予定通り『黎明の書』の1と2は、7,8月連続刊行で出る模様。ただしイラストがどれくらい入るかは、トレス柴本さんのスケジュール次第だ。

2012.04.16
 読了本『幽女の如き怨むもの』 三津田信三 原書房 パーティでいただいた新刊をさっそく読了。このシリーズはほとんどの場合都会を離れた山村が舞台になっていて、閉ざされた村の入り組んだ人間関係や特殊な習慣、信仰、位置関係など大量の情報を飲み込まないと小説世界に入り込めないという点が、毎度自分にとっては関門だったのだけれど、今回の話は戦前の地方の遊郭を舞台に、登場する人間の数も限られていて、最初のハードルは低い。それともうひとつ、貧しい村から売られてきた利発な少女の日記である第一部が、小説として大変に素晴らしい。その分ミステリとしての衝撃力というか、ひっくり返しのパワーはこれまでと比べておとなしいかも、という気はするのだが、取り敢えず全体の半分近くを占めるこの第一部だけで満足してしまえた。本格ミステリとしては当然後の部分が必要になるのだけれど。

2012.04.15
 昨日は三津田信三さんの結婚披露パーティにお招き頂いて新宿まで。三津田さんはいつものように目を丸くしてびっくらしたような顔だったが、花嫁さんはえらい美人だった。久しぶりに柴田よしきさんや芦辺拓さんとお話ができた。京極夏彦さんはえらい貫禄が付いていた。ちょいとメタボ系ではあるまいか。
 今日は上天気に誘われて仕事場周辺を長散歩。相変わらず仕事は開店休業状態。やばい。

2012.04.13
 新しく買った本棚に本を移すついでに、仕事場の棚の中を片づけていたら、自宅の書庫に放置してあった古い同人本の段ボールが気になってきて、思い切って過去の欲望の跡を精算しようと始めたら、当然の事ながらこれがけっこう手間がかかり、しかし中から亡き宇山さんの手書きのメモが出てきたり、どこへ行ったかわからなくなっていた神代邸の平面図が出てきたり、その辺は良かったものの、一番下の段ボールからデビュー前に延々と描いていた長編ファンタジーの原稿が見つかってしまい、うわあ、このまま見ずに捨てるべきか、などといよいよ悶々。おかげでジャーロが進まない(ただの言い訳)。
 明日は同業者の結婚パーティに出席するので帰宅が遅くなる。日記はお休み。

2012.04.12
 ジムに行く。しかしその前後に、どうにかこうにかジャーロ開始する。といっても前回の後でポメラに書き入れたプロローグ的な部分を20枚ほど。

2012.04.11
 昨日の今日でやけに寒く感じるけど、うちの周りの桜もようやく満開。しかし満開といかないのは篠田の頭で、ジャーロやらないとやばいのに集中力がちっとも働かない。書かなきゃいけないことはだいたいわかってるのに・・・

2012.04.10
 今日はツレと花見。石神井川に沿って桜を愛でつつ王子まで歩く。去年は中板橋からだったが、わりとあっさり着いてしまったので、今年は氷川台から。しかし途中30分くらい桜のない川岸が続いたのがちょっと残念。帝京病院のところで一度石神井川と別れ、十条商店街へ行ってやきとりやおでんを購入。酒は好みのものを見つけるのが面倒なので四合瓶を持参しております。今回は澤ノ井の純米。ちょうど昼時で、前に使ったベンチとテーブルはすでに先客がいたものだから、もうしばらく歩いて遊歩道から一段降りられた地面にシートを敷く。風はあまり無く暖かかったが、ときおりぱーっと花びらが散り出すと頭の上に降りかかり、盃にも浮かび、「木の下に 汁も膾も さくらかな」の発句そのまま。まことにけっこうなお花見でございました。

2012.04.09
 昨日は姉とふたりで、生まれた家の周辺、文京区の花見散歩。公園はなくとも寺が多いので、特に桜の時期はあちこちで花を愛でられる。その間に路地の猫をかまったり、小さな骨董屋で明治の印判皿を買ったり、古本屋を覗いたり。途中谷中の商店街は人だらけなのでパスし、墓地は花見で人だらけだったがそのへんもするっと抜けて、4時間以上も歩いていた。
 今日も暖かいので、仕事場周辺飯能の散歩。このあたりもようやく咲いてきた。しかしこう春めいてくると、真冬の北海道へ頭を戻すのが難しくなる。なあんていってね、作中の季節と現実がそろう方が珍しいのに、なにいってんだか。

 読了本『ともしびをかかげて』 ローズマリ・サトクリフ 岩波少年文庫 これはさすがにローマン・ブリテン連作の中でも小説のレベルとしては一頭抜けていることは疑いなし。ローマ帝国が衰微しブリテン島から軍団を引き上げたため、取り残されたローマ化したブリトン人と、南下するサクソン人の間に戦いが起こる。主人公は『ワシ』のマーカスの子孫だが軍団にしたがってゴール(現在のフランス)に引き上げるのでなく、父と妹の暮らすブリテン島にとどまったためにサクソンの襲撃を受け、目の前で父や召使いたちを殺され、妹は連れ去られ、自らは奴隷にされる。彼の苦難と復讐の意志はその後の変転に翻弄され、残されたローマ側の戦士として地位を上げながらも、容易に心を開けぬ孤独な性格になっていく。彼の未来に待ち受けるものは・・・
 余韻に満ちた、悲しみと希望のラストまで、文句なしの傑作。

2012.04.07
 ようやく本棚に全部棚板を入れ終える。ハードカバーと新書、文庫がそれぞれ入れられるので、テーマで本をまとめやすい。いままでの本棚から本を移動させて、さらにあふれていた本を空いたところにまとめて突っ込み、と行ったり来たり。参照用に使う本は、もっとも出しやすいようにパソコンのある部屋へ纏める予定だが、そっちは空きスペースに合わせてツレに棚を作ってもらうことになっているので、今回の移動は暫定的。それにどっちにしろ、仕事の資料に使う本は移動させないとならないので。しかしこれまでは連載や執筆中、執筆予定は、それぞれコンテナに詰め込んで床に積んでいたのが、今度は棚に入れられるので見通しが良くなった。夕方に『緑金書房』のゲラチェック。これは指摘箇所だけなのでささっと済ませる。

 読了本『名被害者・一条(仮名)の事件簿』 山本弘 講談社ノベルス バカミスかと思ったらバカSFでした。面白いから良いけど。

2012.04.06
 ジャーロの連載次回の〆切があるので、続きを書かねばならないとノートやこれまでの分の原稿を引っ張り出して読み直す。しかし『緑金書房』のゲラが明日来るということなので、じゃあそっちが先だなとなり、講談社文庫の夏の文庫下ろしもデータが来るそうで、しかしこれはジャーロが済んでから。そうしたら注文してあったスライド本棚が来たので、夕方はそれに本を入れるので終わっちゃいました。

 読了本『銀の枝』 ローズマリ・サトクリフ 岩波少年文庫 『第九軍団のワシ』に続くローマン・ブリテン連作の第二作。前作のマーカスの孫に当たるふたりの若者が活躍する話だが、なんかもひとつ乗らなかった。やっぱり奴隷と主人というシチュエーションに萌えるんだろか。

2012.04.05
 午前中は洗濯機のクリーニングと玉葱パンの三度目の挑戦。昼前に医者二カ所と薬局、池袋でちょっと買い物、その後ジム。全然物書きの仕事ではない、ただの日常でありました。

2012.04.04
 午前中に短編の直しをやって、それから医者に行こうとしたら保険証を4月から有効のに取り替えていなかったことに気づき、やむなく戻ってまた短編の直しをする。取り敢えずこれについては今日で終わりにしておく。

2012.04.03
 午前中は晴れていたが、昼から曇ってきて風も出てきて、一度降って止んで見事な虹がかかったと思うのもつかの間、雨ばしばし風ぶわぶわの荒れ模様であります。今日は短編の直し。なんとか少しでもレベルアップ。

 読了本『茶坊主漫遊記』 田中啓文 集英社文庫 全編水戸黄門のパロディで、しかも生きていた石田三成が三代将軍の御代に雲水姿で諸国漫遊。しかし全体に田中さんにしてはおとなしめ。

2012.04.02
 青梅線の日向和田から梅の公園へ歩いたのだが、やたら人が多く、切符売り場も行列なのを見て入る気がしなくなる。そのまま奥へ進むとハイキングコースの入り口なので、まあいいか、という感じで登り出してしまう。ハイキングをするつもりはなかったので、食料とかなにも持っていないのだが、青梅のホームで立ち食い蕎麦を食べて腹は減っていなかったし、ポケットには飲みかけのジャスミン茶のボトルがあったので。途中で二俣尾の方面へ下る分岐があったのだが、その道はあまりたたずまいが気に入らなかったので、結局御岳山まで歩いてロープウェイとバスで御岳駅へ。3時間弱のハイキングでした。

 読了本『第九軍団のワシ』 ローズマリ・サトクリフ 岩波少年文庫 先日見た映画の原作で、あらすじはそう違っているわけではないのだが、確かに印象は全然違う。映画は戦闘シーンがやたら多くて長く、殺伐とした印象と緊迫感がやたらと強調される。ブリテン島にローマ人が来て砦を築くのはどう見ても侵略戦争なので、主人公のマーカスの正当性も「いいのかなあ」という気がしてしまうし、その侵略軍のひとつである第九軍団が現地の戦士に殲滅されて、軍のシンボルであるワシが奪われたって、それは仕方ないので、その後は一応平和に暮らしている民の所へ嘘をついて入り込んで、そのワシを奪い取ってくる、しかも追っ手を殺してしまうというのはひどいんじゃないかと。しかし原作では全然書き方が違っていて、いつか反乱が起きた時にそのワシが敵が団結するシンボルとして使われる危険があるから、というのが、マーカスの感傷以上に大きく、しかもマーカスは策略を用いてワシを盗むというより奪い返すが、追っ手をひとりとして殺さない。そしてローマ生まれの彼もブリテン島に定着して、いずれ融合した新しい国を作っていく、という話になる。情景描写の美しさや、敵味方に単純に分裂しない人間の心理描写がひかる。

2012.04.01
 先月からずっと苦闘していた短編、一応最後まで書き終えたが、あまり出来は満足していない。100枚ちょいの短編にしては、いささかごちゃつきすぎているような気がする。しかしとにかく最後までは来たので、ちょっとクールダウンしてからまた手を入れることにする。明日は晴れで明後日は雨ということで、天気が良いなら梅でも見に行きたいのだが、まだちょっと未定。