トップに戻る



2012.12.28
 天気が悪くて寒い。外出の疲労感もあり、掃除をする元気もなくて、黒豆だけ仕込みをする。熱い調味液にしばらくつけ込んだ後でゆっくり加熱、という方法だと、いわゆる料亭風の、作りよりは少し堅めでしわも入るが、素人にはこれがやりやすい。掃除は、適当で良いなあ。明日から煮染めだけは作るつもりだけど、原稿書きたい気持ちがあったらもう少し書こう。たぶん日記はお休みにします。

 読了本『幕が上がる』 平田オリザ 講談社 いつも地区大会で敗れている高校の演劇部の生徒たちが、せめて県大会へと一念発起して頑張る話。特別極端な、ドラマチックなエピソードもなく、しかしリアルでそれなりに熱く進行する青春物。実は篠田は小説書く前には戯曲とか書いていて、そっちに憧れがあったのでした。高校に演劇部なかったからなあ。でも人間関係ヘタなんで、あってもきっとダメだったと思うけど。でも、いまでも地の文より会話を書くのが好きだ。地の文もつい、登場人物の内白(口には出さぬまま心中思うことば)になっちまう。

2012.12.25
 明日明後日は所用で外出するので、一応今日が御用納めの予定だったが、書きかけの短編がまだ書きたいという感じがあるので、もしかしたら大掃除や黒豆煮の合間にもう少し書いてしまうかも知れない。日記の方も、もう少しは更新するかも知れないけど、まあその程度。
 どんどん寒さがきびしくなります。どうぞ皆様、お風邪など召されませぬように、お気をつけてよいお年を。

2012.12.24
 昨日で年賀状を書き終えた。今年はわりと順調。メフィストの短編は半分くらいまで来た。これからやっと桜井京介が出る。どっちにしろ今年には書き終わらない。残りは来年。
 アマゾンに注文していた「ホビット」のサントラCDが到着。トーリン様の渋い歌声を聞く。この歌と、その前のドワーフたちが合唱するコミカルな歌、どっちも原作にある歌だと思ったら、歌詞が変わっていた。ヒアリングができなかったのは耳のせいだけではなかったのね、と納得。実は今回は翻訳は出そうにないので、アマゾンで目に付いた関連書籍を何点もポチッしてしまい、それが順次到着する予定。それと原書房版の翻訳「ホビット」をどうしようか、いま考えている。トンデモ訳だから笑う気ならいいかも、と英文学の先生からもいわれていますので、うーん、話の種かな。

 読了本『私と踊って』 恩田陸 新潮社 ノンシリーズ短編集 ミステリ、幻想、SF、不条理とバラエティに飛んでいる。最初の「心変わり」の趣向がなかなか。ラストの「東京の日記」は、なんだか予見的でそう思えば怖い。

2012.12.22
 今日は真面目に家事とお仕事。部屋が寒いのでこういうときは煮物をするに限ると冷凍にしてあった牛筋を煮る。一度脂をすくって、大根とでも煮るかな。パンは機械におまかせで葡萄と胡桃の食パン。後は桜井京介の続き。といっても彼はまた全然出てこない。年内にどこまで進むかな。今年は25日まで働いて、あとは取り敢えず掃除と片づけに行く予定。

2012.12.21
 ミクシの方でも「ホビット」話をぶったので、いくらかガスが抜けて今日からやっと、来年のメフィストに載せる桜井京介returnsの3を書き出す。3本たまったら書き下ろしをつけて、ノベルスにしてもらえる予定。来年中に出せるかどうかはまだわからない。
 と、ここでまた話題は「ホビット」に戻ってしまう。忘れていたけど原作を読み直したら、龍のスマウグというのはしゃべるのだった。それもかなり巧みに、悪辣にしゃべる。つまり西欧的伝統では、龍というのは悪魔のイメージなのだね。我々東洋人はついそこのところを忘れてしまうが。悪魔はことばで人間を誘惑するのだ。エバに語ったエデンの蛇のように、荒野のイエスの前に現れた悪魔のように。しかしPJはドラゴンをかなりリアルに造形しているらしい。今回は目玉が出ただけだが、爬虫類の目だったよね。じゃあ映画のスマウグはしゃべるんだろうか。いくらリアルな造形でも、しゃべったら「あれれ」ってことにならないか。現代人はたとえ欧米人でも、しゃべる龍をリアルには思えないでしょう。なによりコミュニケーションが可能だったら、怖さって質が変わってくる。オークなんてのはしゃべってもおぞましいけど、スマウグのしゃべりはそれとも違うし。答えがわかるのは再来年か。それまでがんばって生きようっと。

2012.12.20
 昨日は指輪友達と、銀座四丁目に期間限定で出ているホビットグッズショップへ。なんと12/25で終わってしまうのだ。上旬からやっていたといわれても、映画を見る前にグッズを買うというのはやはりあり得ないでしょう。で、友人はフィギュアが好きなのでガンダルフのフィギュアを買う。一番小さい1200円から、上は何万もするのまで、小さいのでも顔はけっこうよくできているといっても、ガンダルフはという限定。他はうーんと首をひねる程度なので、「よしよし、馬鹿な散財はせずにすんだわい」と、はなれ山の地図を刷り込んだメモ用紙とドワーフ一行のシルエットの入ったメモ用紙を買って、ほいとレジの横を見たらそこのガラスケースに、箱入りのペーパーナイフが。ガンダルフがトロルの岩屋で見つけた二振りの古剣であります。ガンダルフが選んだグラムドリングは細身両刃の直剣だが、今回初登場、トーリンの手に渡るオルクリストは刃身のやや厚い片刃で少し反りがあり、曲線は優美だが振りかぶって叩き切る豪腕を期待している作り。特徴はドラゴンの牙をそのまま一本柄にしているというところで、はい、迷うことなく聞いてます。「これも売り物ですか」「はい」「下さい、オルクリスト」あああ、やっぱり散財してるっ。そんなに高くはないけどさ。
 今日になって原作をひっくり返したら、トーリンはクライマックスでオルクリストを使っていない。闇の森のエルフの所で取り上げられて、そのままだった。いやん、それはないでしょう。この剣が戦いに参加しなかったらお話の整合性がおちるじゃありませんか。いや、原作の流れからいうと仕方ないんだけど、ここらへんはネタバレになるので、原作読まずに三部作のラストを待つ人のために自粛。とにかくPJはそこらへんをぜひ補完してくれますように。だって原作ではオルクリストの柄にドラゴンの牙がなんて描写はないんだから、ここは伏線だと考えちゃいけません?
 ネットをいじっていたら、「ロード・オブ・ザ・リング」で撮影されながら使われなかったシーンに、アラゴルンとアルウェンがロリエンの丘でふたりいる、というのがあると知った。原作の追補編にある、アラゴルンたちのラブストーリーの一部です。わああ、それ見たい。頼むから見せてくれ。使わなかったらDVDのおまけ映像で見せてくれよーっっっ。

2012.12.18
 昨日は「ホビット」の2回目を見に行った。字数に制限のある字幕より吹き替えの方が情報量は多い、というのはわかっている。英語のヒヤリングは怪しいもいいとこなんで、聞き取れないけど、字幕だけ追っていると「ここ、絶対せりふが飛んでるよな」という感じのするところはある。それでも俳優の声が聞きたいから字幕。トーリンの歌声とか、サルマンの「my friend」とかね。2度目でも全然退屈しなかった。
 今日は原作を斜め読み。ほとんどのエピソードが順番も変えず原作通りに並んでいることをいまさらのように確認。ガンダルフが現れて、ドワーフ13人が詰めかけて、なにがなんだかわからないうちに冒険に飛び出して自分でもビックリ。トロル3人と出くわして食われかけでガンダルフに助けられ、荒野でワーグとオークに襲われ、裂け谷に行き、嵐の山道で岩の巨人に遭遇、ゴブリンの地下都市とゴクリのエピソード、地上に逃れられたと思ったら再びワーグとオーク、木に登って危ないところをワシに助けられる。裂け谷でサルマンとガラドリエルが出るとか、茶の魔法使いラダカストが出るとか、そこは膨らませているわけで削ってはいない。
 ただギャグっぽい部分が多い原作が、シリアス寄りに舵を切られている。おかげでがんこじじいのトーリンはプライド高い美中年だが、このキャラで原作のクライマックスの展開となると、けっこうきついものがあるかもね。ネタバラシぽいことは書くのは慎むけど、今回は「子供も楽しめる」がコンセプトらしいので、あんまり悲惨なことにはしないで欲しいんだけど、やっぱりあの方は亡くなられるんだろうなあ。

2012.12.16
 ファンタジー作家の友人が「ホビット」を見て、トーリン・オーケンシールドにやられたと日記に書いてあるのを見て、わあい、同じと喜ぶ。

 読了本『鬼畜の家』 深木章子 原書房 『衣更月家の一族』の作者のデビュー作。筆力は認める。なんらかのどんでん返しがあるに違いないと思いながら、最後まで読まずにはいられなかった。しかし、すべての登場人物に好意も共感も同情も持てない。読み終えた後に残るのはカタルシスならぬ「げんなり」感だけだ。嫌な話である。フィクションでまでこんな、つくづくと人間というものが嫌いになる世界を見たくはない。これ、まったく個人的な感想なので悪しからず。

2012.12.15
 まだ頭に北斗学園が残っているので、今後の伏線とか考えついたことをノートに書いておく。これをしないと絶対に、次の作業に入るまでにいろいろ忘れているから。そして頭を切り換えてメフィスト用の短編をやらないとと思うのだが、脳みそが例によってうなぎのようにぬるぬると仕事から逃げ回るのだわ。こいつを捕まえてそっちへ向けるのが一苦労。

 読了本『衣更月家の一族』 深木章子 原書房 なんの関連もないような3つの事件が最終的につながって意外な真相が姿を現す、という形のミステリ。非常に手堅い。文章も読みやすい。これなら松本清張でミステリ頭が止まっている年代の読者にも十分楽しめると思う。しかし、篠田はやっぱりこういうタイプの本格ミステリはあんまり好きでないな、とこれは純然たる趣味趣向の問題。

2012.12.14
 本日より公開の「ホビット 思いがけない冒険」を見てきた。いやあ、予想したより全然面白かったっす。「ロード・オブ・ザ・リング」はなにしろ膨大な原作を削りまくるしかなかったけど、こっちは逆にふくらませるわけなので余裕がある。間延びした感なんて、全然ありませんでしたよ。
 しかし映画化進行中と聞いて原作を再読したときは「ほんとにこれをやるのか。やれるのか。原作なんか影も形もないようなことにならないか」と激しく疑ってしまったんだよな。なにしろ出てくるのが見事に、じじいとおやじと化け物ばかりで、女性キャラがいないどころか、美形男性キャラもいない。しっょぱなから突然ドワーフ13人に自宅を襲われる主人公のビルボにしてからが中年だ。
 まず思ったのが13人のドワーフを5人とか7人とかに切りつめるんじゃないのか、というの。それと、これも中年だったはずのフロドを若い美形少年に変えちまった「ロード・オブ・ザ・リング」の悪しき前例から推察して、ビルボも美形にしちまうんじゃないのかというのが、おいらの事前予測でした。そのへんは役者が決まって「まあ美形ではなさそうだな」と思い、ドワーフも13人出るとわかってほっとし、袋小路屋敷が髭のドワーフで満員になって、彼らが歌うシーンでもうジーンと来ていたんだけど、美形はどうした問題だけは依然宙に浮いていた。
 映画を見て驚いた。やられた。なんと、本編一の美形キャラはドワーフの王トーリン・オーケンシールドでありました。このキャラも原作ではかなり老人で、老い先短い身だからこそ、龍に奪われた故郷はなれ山奪還、王国再興という望み無き冒険に固執するんだけど、映画はトーリンをもう少し若くした。まだ壮年の力にあふれてはいるが、いまを逃せば後がない、自分の老化を意識せずにはいられない男の乾坤一擲の賭がこの冒険である、と。それはそれでちゃんと筋が通っております。
 そしてドワーフのそれぞれには原作にないキャラの設定が細かく付け加えられて、個性を発揮しているが、トーリンは決して親しみやすいキャラではない。ビルボに向かって足手まといといいはなつ冷酷さ。それでもちゃんと崖から落ちたのを助けたりはしてるんだけど。でも彼は流離する貴種という感じで、悲劇的でパセティックで美しいんだわ。冷たくされたビルボが、殺されそうな彼を助けに駆けだしてしまう気持ちもわかるっていうか。ちゃんと誇り高い王様なのよ。でも彼の王国は失われている。
 そして原作だと「我らの宝を龍から取り戻す」というのは、なんとなく金勘定とかドワーフの吝嗇ぶりとかが感じられてしまう書き方なんだけど、映画では追われたふるさとを取り戻したい、そのための戦いだという風にニュアンスが変わっているのね。それでふるさとの袋小路屋敷をこよなく愛するビルボも、彼らの動機にやがて共感して、そのために力を貸しましょうという気持ちになる。そのへんがとてもいい。
 キャラでいうと新登場の魔法使い茶のラダカストはなかなかな変人ぶりで魅力的。オープニングにちらっと登場し、後でまた出てくるはずのエルフの王スランドゥイル(レゴラスのパパです)が、ちょいと冷酷すぎて残念。あそこはトーリンの視点だから、彼の目から見ればそうとしか見えなかったろうけど。再登場のキャラでは、フロドは育ちすぎてどう見ても不自然。出さなくても良かったんでは。ガンダルフは大活躍で大満足。ガラドリエル様は少し太られた? ガン爺とラブラブぶりが楽しい。白の会議はガラ・ガン・サルマン様、エルロンドと4名だけでちょいとさびしく、気苦労の多いエルロンドが他三名の大御所の間で対応に苦慮する様がなかなか笑えました。
 しかし我が家から一番近いシネコンはとても空いていたので、あっさり上映が終わってしまわぬうちに、最低もう一回は行っておかねばなりませぬ。

2012.12.12
 おお、12が三つか。
 昨日は京橋の焼鳥屋さんで極上の焼き鳥を食べてきた。篠田が定期購読している雑誌「東京人」で、噺家の林家正蔵さんの「ちゃいとごめんなさいよ、四時からの悦楽」という連載を毎回楽しみにしている、そこで紹介されていた店に行ってきた。半生のささみはわさびで、レバはたれで、砂肝は塩で、と緩急自在のフルコースを堪能。
 北斗学園は正式に予定変更、来年9月に改訂第一巻がPHP文庫でスタートということになりました。波津さんに会いに来年は又金沢へ行ってきます。

 読了本『猫間地獄のわらべ歌』 幡大介 講談社文庫 時代劇で新本格をやりました。笑えます。そんなに褒め称えるほどではないと思うけど、まあおもしろいです。

2012.12.10
 『王国は星空の下』の直しがもうじき終わると思っていたら、表紙などをお願いしたいと思っていた波津彬子さんが4月まで忙しいということがわかり、そうすると5月刊は無理だけど、どうしますか、他の方に頼みますかといわれ、いやそれだったらいまから直しをやらなくても良かったなあとは思ったものの、もっと早くそのことがわかっていたら途中で止めて半端なことになってしまったところ。ほぼ終わりかけているなら、直しについてはこのままとにかく終わらせてしまうのがよろしかろう。焦っても仕方ないので、刊行が伸びてもそこは初志貫徹。イラスト的にはいまひとつ恵まれなかった北斗学園シリーズを、波津さんの絵で、というのは方針変えずに行きたいと思います。

2012.12.08
 今日は日米開戦だった日です。日本が間違った道にはっきり突っ込んだ記念日。戦争はいかん。肝に銘じないとだめ。

2012.12.07
 のったらのったらと『北斗学園』の直しというか、書き足しを進めていた夕刻、なにか異様な音を聞いてびっくりして音源を探して、バッグから携帯を取り出し
てやっとわかった、緊急地震速報。あわててパソコンをつけたら、数秒後揺れた。仕事場のあたりは震度4。かなり精神的に動揺いたしました。

 読了本『鳩の中の猫』 アガサ・クリスティ ハヤカワ文庫 女学校ものだ、というんでちょっと期待して、久しぶりに買ってみました、クリスティ。うーん、残念ながらあんまり盛り上がりませんでした。謎解きというほど意外性のあるプロットでも無し、サスペンスも全然感じられない。解説が浅暮三文さんで、ちょいと変わった感じでありました。

2012.12.06
 メフィストに出す短編をずっと考えあぐねていたのだが、主人公の横顔がふいと立ち上がってくる。しかしこの話を作り上げるのにはもう少し時間が必要で、その間遊んでいるわけにもいかないので、先に来年文庫にする『北斗学園』の手直しを始めてしまうことにした。文庫になって少しキャパに余裕ができたので、描写の密度を上げることにする。これさえ終わらせておけば、1月から2月の前半まで基本メフィストの方に時間が使える。

2012.12.05
 ジャーロの短編を入稿して一息ついたので、秋川渓谷に行ってきた。武蔵五日市駅から川沿いと国道沿いを歩くこと一時間半。途中にはちょっとトレッキングぽいところもあり、造り酒屋もあり(もちろん酒ゲット)、日帰り温泉瀬音の湯に到着。ぬるりつるりのアルカリ泉。お湯の後は散る黄葉を眺めながら昼の蕎麦と昼酒。

 読了本『ペガサスの挽歌』 皆川博子 烏有書林 皆川先生の初期短編、それも同人誌に発表された児童物と単行本未収録短編のみの贅沢な一冊。最初は児童ものか、なんて思っていると、いきなりがつんとやられます。中間小説誌に発表された作品はかなりきっついです。読み応えずしん。そして編者が解説で書いているとおり「初めから、皆川博子は恐ろしいほどに完成されていたのである」いや、まったくもってその通り。

2012.12.04
 ジャーロで連載が終了した『わたしはここにいます』の書籍化についての打ち合わせ。一応6月に出してもらえる予定。版型は未定。

 読了本『文豪ミステリ傑作選 三島由紀夫集』 河出文庫 信濃追分の古本屋さんで買った一冊。ミステリといっても、一種神秘的な雰囲気を称えた幻想ものというべきか。久しぶりに三島の文章を読んだ。好きですわ。

2012.12.02
 皆川トリビュート短編を未練がましく修正。20枚ぎりぎりなので、少し書き足したいと思えばその分を削らなくてはならない。そのつもりで読み直し、なくても意味の通る文章をばしばし削る。削れると言うことは贅肉が多いのだなといまさらのように反省。

2012.12.01
 いよいよ師走といっても、やることに大きな変わりはない。自分でもつたない皆川トリビュート短編に手を入れる。余分なことばやだぶることばを徹底して削り、書き足らないところを足したら、5行あふれた。これをどうするかはまた明日考える。

 読了本『山本くんの怪難 北陸魔境勤労記』 雀野日名子 MF文庫 福井県というのは日本の地方の中でもマイナーな県だそうだが、篠田は泊まったことがある。金沢へ波津彬子さんの原画展を見に行くついでに、三国に行って近代建築を見て越前ガニを食べてきた。建物もカニもグッドだったので、福井県には好意しか持っていないのだが、この小説は「泣けて笑えるふるさと怪談」なんだそうで、過疎地の嘆きや町興しに食い物にしようと魑魅魍魎が寄ってきて騒動が、というあたりは、リアルな見聞が下敷きになっているような感じ。ジモピーならそこで泣けるのだろう。妖怪変化は出てくるが、別に怖くはない。少しは笑える。小説としてはそこそこ面白いが、強い女に鼻面を引き回される弱い男という構図はそろそろ鼻についてきた感あり。