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2011.10.31
 仕事が進まない進まないと焦りまくっていたら、消化器が変調を来した。朝の四時に胃部の不快感で目覚めて眠れず。昔は長編1本書き上げるとばったり倒れて水も飲めなくなったりしたんだけど、今回はそれほどでもないが、まだ終わっていないんだから倒れるわけにも行かない。でも完全断食じゃよけい筆も進まないので、飲み物主体で固形物は減らして、胃薬飲んで、今日は第3章が115枚まで。といっても全部で300枚くらいは書かないとならないんで、まだラストはだいぶ先です。ぜい。

2011.10.30
 今日も全然代わり映えしません。仕事してました。ひたすら『黎明の書』でした。おかげで本も読めません。少し時間があると京都のガイドブックとか読んでしまうというのもあるんですがね。送られてきた文蔵の11月号、乾くるみさんの連作短編『カラット探偵事務所の事件簿』がちょいと面白かった。ネタ的にすごく大きいというのじゃないけど、一種の宝探し、乃至は暗号解読かと思わせて、思いこみを外して皮肉な結末をパンと出す。ただこの意地の悪い解決には、もう少し依頼人の性格というか、人間性のようなものが、クリアに感じられた方が効果が上がると思う。しかしそういう描写やエピソードを増やすと長くなって、ミステリ短編的な切れ味には相反するのかも。その辺を書き込むとミステリより普通小説に近づいちゃう。難しゅうございますね。

2011.10.29
 代わり映えしません。原稿書いてました。今日は25枚書きました。明日から天気が悪くなるというので、今日のうちにと思って洗濯をして、エアロバイクで歩数を稼ぐのじゃなく、少し歩こうと思って外に出て、畑の縁の無人販売でひとふくろ100円のさといもを買いました。さいとも、好きなんです。

2011.10.28
 今日はやっとこ20枚書けたけど、血圧が上がっちゃって頭が痛い。でも、見たい映画があるんだよ。行きたい展覧会もあるんだよ。身体はひとつしかないんだよ。わんわんわん。と、なんとなく犬になって吠えてみる。

2011.10.27
 昼間は晴れるとけっこう暖かいが、朝晩の冷え込みが近づく冬を思わせる。朝、ベッドから出るのが少しずつおっくうになる。布団を冬用にチェンジ。仕事を続ける。午後はジムに行ったので23枚まで。

 読了本『私の東京地図』 佐多稲子 講談社文芸文庫 実は佐多稲子という作家の名前しか知らない。つまり読むのはこれが初めてだが、新聞の書評で面白そうなので買った。少女時代から東京で労働者として生活してきた一人の女性が、そのときどきに住まう東京の街と自分の周囲の人々を細やかな筆致で描き出した私小説的な作品。巻末に詳細な年譜があって、それと対比することで20世紀の初頭(1904年、明治37年)に生まれた女性が、料亭の下働きやカフェの女給から丸善化粧品売り場の店員、二度の結婚を経て作家となるが婦人運動や労働運動との関わりから弾圧を受けて、1945年の敗戦に至るまでの半生が概観できるようになっている。途中、最初の夫の家族的苦悩に巻き込まれて心中未遂をする羽目になったり、二度目の夫も弾圧によって転向を余儀なくされてから夫婦関係がゆがんでいったり、はっきりいって修羅場も山ほどあったのだろうと思われるが、筆は乾いて主観におぼれず、どろどろになりかねぬところはさらっと済ませて、なおかつ淡々としてあざやか。いわゆるインテリ的教育を受けてきたわけではないのに、この人はどこでこれだけの文章力を身につけたのかと感嘆し、そうして自分の人生を通り抜けてすでに彼方へ旅立ったひとりの女性の存在に、200頁ちょっとの薄さの中に長い物語を読み上げたような不思議な感慨に襲われた。

2011.10.26
 仕事を続ける。章の切れ目になったので、駅のスタバまでちょいと頭叩きに行く。書き下ろしなのでノベルスの字組でずっと書いてきたが、取り敢えず進行させる速度を上げたいと思い、残りは一度400字で、つまりページ切れなどについては取り敢えず気にせずに書き進めることにする。というわけで今日書いたのは9.5枚。すっかり晴れたので陽を浴び風を感じながら少しだけ遠回り。本当はもっと歩きたいんだけど、歩いていては仕事にならない。
 北杜夫が亡くなった。彼の本は中学時代からしばらく、篠田の愛読書でありました。『どくとるマンボウ航海記』『同昆虫記』『同青春記』みずみずしい『幽霊』でも一番好きなのは『白きたおやかな峰』かな。若い頃に大好きだった作家に逝かれるというのは、秋に木の葉が散っていくようなさびしく心細い思いがあるなあと、いまさらのように。

2011.10.25
 昨日はひかわ玲子さんの家に、彼女の家に来た(というか、状況を聞くと湧いて出たといいたい)子猫を見せていただきに行く。フレンドリィで、おとなしくて、しかも美形という三拍子そろった子猫だというので、ホンマカイネという気持ちもありつつ出かけていったら、ホンマでした。おとなしくなでさせてくれるんだけど、別に元気がないわけではなく、お客の篠田がじゃらせばじゃれてくれるし、献上した猫ボールなど喜んで遊んでくれるのだが、ひかわさんが席を立つとじっと目で追いかけるし、膝の上で寝るのはやはりお客様のところよりひかわさんのところがいい、というわけで、ちゃんと区別をつけているところも好印象。おとなになったらぶにゃん(デブ猫を意味する篠田語)と化する可能性は無論あるが、いまはお目目ぱっちり耳大きく、肉球桜色の美少年でありました。
 そうして猫を愛でつつ、彼女の読んだ本の話、指輪物語話(共通の趣味です、映画ホビットの公開もいよいよって感じだし)、仕事の話などもする。彼女とは年齢も近く(といっても彼女の方が若く、しかしキャリアは10年長く、著作数は倍)、最近の本が売れない状況とか、電子出版のこととか、いろいろ関心の傾向も近いところがあって、大いに有意義な午後でありました。
 本日は再び『黎明の書』へ。少し調子が出てきた。12月に京都に旅行するので、それまでに目鼻を付けたいというわけで、がむばる。

読了本『ミステリーを書く! 10のステップ』 野崎六助 創元ライブラリ 近頃全然依頼のない版元からこんな本が送られてきたので、さては「おまえの小説など読むに足らんから、この本を読んで最初から勉強し直せ」という意味かしらんと思ったけど、それはまあ考えすぎ、ということにしておこう。通読して思ったのは、人は結局自分のことしか語れないものだという、新しくもない事実。真面目に書かれた本だとは思うが、ここに書かれていることをその通りに実行して「これであなたもミステリが書ける!」帯 とはちょっと思えないです。著者が講師を務める創作講座を受講して、ここに書かれているようなことを実際指導されたら、それなりに効果は上がるのじゃないかと思うが、独学でやるにはハードルが高い感じ。そう思うのは、篠田の小説の書き方と「野崎流」に距離が大きいからだろうけれど。「本格ミステリ2012」のインタビューをしてもらって、改めて自分の小説の書き方はスタンダードじゃないと痛感した。よい子は真似してはいけません、の世界なので、それを人に教えたいとは思わないが、この本を読んで「おお」と目を開かれたり、仕事の能率が格段にアップして傑作が続々書けるということもなかった。要するに、どうやって書くかはその人がそれぞれ見つけるしかないんじゃないの。

2011.10.23
 原書房の「本格ミステリ2012」に掲載されるインタビューの原稿が来る。行数を増やさぬように減らさぬように、削りつつ書き足す。プリントしては読み返し、赤を入れて、を数度。こういう作業はわりと得意。その合間に牛タンのゆで汁を漉してすね肉の鍋に移し、トマト缶を半分ほど足してシチューを煮続けると、あやうく焦がしそうになる。仕事中の料理は危険であります。インタビュー原稿を返送して、やっとこ『黎明の書』に戻る。
 昨日はいくら丼を食べた。この季節になると生の筋子が出回るので、あれをぬるま湯の仲で丁寧にほぐし、牡蠣醤油を少々入れて冷蔵庫に一晩。ご飯の上に海苔の千切りとおろしたての生ワサビをたっぷり載せてむさぼり食らう。この季節にしか食べられない、というのはやはりポイントが高くて、いささかお値段が張るとはいえ買わずにはいられない。
 すね肉はポトフ風に野菜たくさんとあっさり煮ても、赤ワインをまるまる一本投入して煮詰めるのも、それぞれそれなりに美味しいが、今回はニンジンと玉葱を最後に入れて火を通し、出来合いのドミグラスソースをラストに少しだけ足して、生クリームの代わりに牛乳とバタで練ったマッシュポテトを添えようかと思う。絵的には青みが少し欲しいですね。後はバゲットと赤ワイン。

2011.10.22
 原稿をやりながら塩漬けにしてあった牛タンを塩抜きし、香味野菜と茹でる。隣の鍋で昨日赤ワインに漬けていた牛すね肉を煮始める。なんだか料理づいてしまって、紫キャベツをスライサーで千切りにして塩をする。これは明日リンゴ酢に漬けてザワークラウト風にする。仕事も、まあしてますw

2011.10.21
 読者からのお手紙で、京介は高校生の時、神代さんの姪の藍川芹(『アベラシオン』のヒロイン)が小学生の時の家庭教師をしていたのではないか、という推理が書かれていた。篠田は全然忘れていたのだが、『原罪の庭』の中で神代さんが京介のことを「高校の時小学生の家庭教師をしていた」と語る場面があったのと、年齢からの推測で、確かに年齢的にはまったく齟齬がない。京介は84年から87年の間が高校生で、芹は1999年に24歳だから1975年生まれと考えられ、すると小学校在学は1982年から88年となる。小学生の時から芹は神代邸に入り浸っていて、叔父の蔵書で見た絵から西洋絵画に目覚めたわけだが、その間に京介とひとつ屋根の下にいたことは間違いないのだ。だいたい高校時代の京介というのは対人スキルは大学時代よりはるかに低かったはずで、赤の他人のカテキョは出来なかったろう。その点芹なら充分あり得る。小学生と仲がよい高校生京介というのも違和感があるが、芹も少し変わった偏屈なところのある女の子だから、案外ふたりしてにこりともしないまま本を読んだりしていた気もする。
 というわけで、杉並区のAさんの推理に花丸をお送りします。

2011.10.20
 原書房刊行のムック「本格ミステリ2012」に掲載されるインタビューを自分なりにまとめてみた。掲載は4ページなので、たぶん内容の半分も入らないと思い、思いつくままにあれあれしゃべったことを自分で確認しておきたいと思ったからだが、それだけではちょいともったいなくなってきた。商品内容と重複するものを勝手にタダで公開するのはまずいので、ただいま出版社などに確認中。ムックが刊行されてしばらくたったら、OKになる可能性があり、そうしたらこちらのサイトにアップしたいと思います。
 トクマノベルスで刊行される見込みがたった『黎明の書』、といっても来年の7月8月に、という先の話なのだが、仕事のスケジュールで確認するといまやるしかないというわけで、中断していた作業に取りかかる。なにがなんでも後一ヶ月の内に第二巻を書き終えるぞ。

2011.10.19
 戻ってきた暑さにたまげてロックアイスとアイスコーヒーを買いに行ったのはたった3日前なのに、今日はもう寒くてあわてて冬物を出すだけでなく、長袖のシャツに薄手のセーターを重ね着し、出かける時はコットンの薄手のハーフコートにコットンのストールをつけてしまう。天気予報に反して一日陽が出なかったので、なんとも薄ら寒い。心持ちがさびしくなってしまう。今日はジャーロのゲラをチェックして、南雲堂と原書房のアンケートみたいな短文を書き上げてメールで送稿。原書房のインタビュー起こしを送ってもらったので、それを自分なりに整理してみる。12月に京都に行くので宿をチェック。当初予定していた守口のシティホテルは連泊するのに泊まれない日が入ってしまうので、一休のビジネスホテルのくくりで安いところを探すと駅から少し離れたところに今年出来たわりとよさげなホテルを見つけ、そこを予約する。ひとりで7泊、それからツレが来てもう2泊。喫茶店と本屋と町歩きだ。さあ、それまでに書かねばならない原稿がかなりあるぞ。

2011.10.18
 昨日は歯医者に歯のクリーニングに行って、夕方は東京に出て打ち合わせ。休刊してしまった徳間のSFJapanに、一巻分と少し連載した『黎明の書』がようやく本にしてもらえるらしい。といっても来年の夏。イラストレータさんが人気の方なので、あちらの予定次第というところがかなりあるのだ。その上休刊以降の原稿は書き下ろしにしなくてはならないというわけで、はあ。
 今日は東京で用足しあれこれ。第一目的は銀座青木画廊でやっている建石修志さんの個展を見に行くこと。他に東急ハンズに行ったり、宮城県のアンテナショップに行って牛タン定食を食べたり、カタログハウスの店に行ってあるものを試したり(これが全然ダメな商品だった)、教文館で紅茶を飲んだり、ITOYAでカレンダーを買ったり。二日続きの外出でくたびれた。帰ってきたらジャーロのゲラが来ていた。はあ、せわしい。

2011.10.16
 昼間外に出たら陽射しがやたら強くて、首筋が日焼けしそうでびっくりしてしまう。湿度も高いし、なんだかぐんなりしてしまった。
 今朝も5時すぎに目が覚めてしまったが、ベッドの中で起きていたら急に物語の設定が降ってきてびっくりする。しかしこれ、やっぱり建築探偵シリーズの一部なんだなあ。おまえそればっかりかよ、と自分で自分につっこんでみる。

 読了本『もうダマされないための「科学」講義』 光文社新書 評論家の大宅瑛子さんがラジオで「おもしろい」と勧めていた本。最近の食品関連や原発関連で特によく見られるにせ科学的な言説を、なぜ間違っているか、素人にもわかりやすく明快に説明してくれる1冊。ここで問題になるのは個々の科学知識ではなくて、科学的な思考法というものです。本当ならこういう事こそ学校で、それも小学校で教えるべきなのに、日本の学校は平気で「ありがとうと声をかけた水はきれいな結晶になる」なんてことを教えたりするらしいからなあ。ファンタジーはいいですよ、個人的なファンタジーは。でもそれを万人向けのリアルと混同したらダメでしょう。強固なリアルがあって、その上に一輪可憐な花が咲くからファンタジーは美しいんで、そこがごっちゃになったらオウム真理教のハルマゲドンと同じになっちゃいます。

2011.10.15
 14日は用足しついでに浦和。気に入りの日本茶喫茶ギャラリーでお茶をした後、気に入りのイタリアンでワイン。15日はだらだらと。

 読了本 『鷺と雪』 北村薫 文春文庫 文庫化されるのを待っていた「ベッキーさんとわたし」シリーズ最終作。さすがにお上手な小説ですね、という印象。ヒロインがこの後どうなっか、とか、ベッキーさんはそれからどうしたの、とか、思うけど。しかし、ひとつだけすごく気になったこと。ヒロインの女学生が父親と話す時の言葉遣いが妙に乱暴。「…大問題なんだね」「あちら立てればこちらが立たず、だものね」などという男のようなしゃべり方を、若い娘が父親にするとは思えないので、これは誤植だろうかとしばらく悩んだ。その直前には「いらっしゃるでしょう」などと一応敬語を使っているので、なんで途中からこうも話し方が変わるのかと首をひねってしまって、まことにキモチガワルイ。現代ならともかく時は明治で、しかも上流階級のご家庭という設定なので。

 『七人の探偵のための事件』 芦辺拓 早川書房 名探偵勢揃いのオモシロサ、メデタサを狙った長編ミステリ。しかしかつての西村京太郎「名探偵〜」四部作などは、メグレ警部やポアロ、クイーン、明智小五郎がそのまま登場して(著作権とかは問題にならなかったのだろうか、当時は)、とにかく派手やかな印象があったので、オリジナルキャラのみで勝負する今回の話はちょっと分が悪いかも。自分が生み出したわけではない既成の名探偵を使うという方が、例外的というか禁じ手というか、であることは間違いないのだが、「豪華絢爛探偵祭り」(裏表紙ネーム)というには舞台も地味めだし、芦辺作品では最も出番の多い定番名探偵森江春策が、ギャグ担当的な扱いをされているように思えたのも、彼の誠実さや真摯さに魅力と好感を覚える読者としてはいささかならず残念な気分でした。

2011.10.13
 龍の直しを一応最後までやる。ルビを入れようと思ったが、結局どこまで入れるかわからなくなってしまう。あとはジム。

 読了本 『眼鏡屋は消えた』 山田彩人 東京創元社 第21回鮎川賞受賞作 プロットの出だし部分をばらすので、未読の方はご注意。


 処理済みの過去の事件が掘り返される、スリーピング・マーダー・ミステリの一種だが、その発端に新工夫。ヒロインは何者かに殴打されて8年間の記憶を失う。高校二年生の時から現在までの後の記憶がすっぽり消えていて、親友が死んだと聞かされても驚くばかり。よく考えればとんでもなく悲惨な状況だが、ヒロインはとにかく誉めていえば不屈で前向き、けなしていえばがさつで面の皮の厚い性格で、ちっともめげずに真相を解明しようとする。おかげで読み味は軽くて読みやすい。おまけに彼女は大変優秀で、8年間のギャップもなんの障害にもならず現代のパソコンを駆使し、高校生の知識で英語教師を務めてばれない。優秀なのは彼女だけではなく、関係者全員が8年前のその日に何が起きたか、聞かれれば逐一思い出して語ることが出来る。おまけに8年前の証拠物件もすべて見つかる。ものもちがいい世界なのだ。
 これは「この世界ではこういうのがお約束」と飲み込んで読むことにすれば、まあいいことだ。いちいちリアルでない、と目くじら立てて非難するのも大して意味のあることではないだろう。ただ事件の舞台となっている学園の建物配置がわかりづらい。おかげで何が起こり、どんな偽装がほどこされたかがもうひとつぴんと来ない。学園ミステリに平面図は必須だと思う。それから、最終的にあぶり出される真相は、最初の数ページで感づかれるというか、他にあり得ないようなものなので、その点一考を要する。総じて嫌みのない素直なミステリだが、富士見ミステリー文庫あたりで出ていたら「おお、ラノベだけどちゃんとミステリ」と感動してもらえたろう。鮎川賞と言われると「?」だ。

2011.10.12
 今日は仕事場から一歩も出ずにずーっと「龍」。やたらと濃い話だと、いまさらのようにため息。忘れてたし、いろいろ。でもこのときも、プロットの先が読めなくて苦慮したんだっけなあ。どう考えても主人公たちより敵の方が強くて、その敵を倒すためにはどうしたらいいか、なかなか思案が付かなくて困った記憶がある。これが終わったら少し休もうっと。

2011.10.11
 ジャーロの原稿をメールする。130枚くらいといわれたら、第四章が終わらなかった。だらついているかもしれない。17日に徳間の担当と会うので、『黎明の書』の書き終えた途中までも送っておく。来年の前半には一巻二巻と出してくれるそうなので、出来れば今年中に第二巻の分は書き終えたいものだ。その後は龍ローマ編の直しを続行。合間に鮎川賞の受賞作を読み出したが、どうもいろいろと違和感があって、読み続けられるかどうか自信がない。この狭量さ加減はまったくもって老化現象だろうとは思うのだが、如何ともしがたし。まあ、選考委員みたいな役割が自分のところに回ってくる気遣いはないので、その点については心配はいらないと思うけど、本の巻末に載った選評も皆様けっこう辛口ではあった。

2011.10.10
 10/7は鮎川賞の授賞式パーティ。相変わらずの混雑ぶりで、会いたいと思っていた人が、来ていたのかいないのかわからないまま、なんてのも。その中でお会いできたのは、福島在住でいろいろ大変な愛川晶さん、亡き宇山さんの奥さん慶子さん、麻見和史さんには「建築探偵完成おめでとう」をいっていただけて嬉しかった。獅子宮敏彦さんは、「リアルタイムで買いました」と『琥珀の城の殺人』のハードカバーを持参してくださってサインさせていしただき、これまた大変にありがたかった。光原百合さんには現在手入れ中の『龍の黙示録』ラストへの解説をお願いして、快諾を頂いた。彼女にはぜひ熱くセバスティアーノへの愛を語ってもらいたいと期待しております。
 アフター・パーティは今回さっぱりと二次会を断念し、評論家ナミオカヒサコさんと、翌日予定のインタビューについて打ち合わせ。その興奮もあってか夜は全然眠れず。午前中建築探偵完結関連インタビュー。メフィスト、活字倶楽部から3度目なので、出来るだけ違う内容のことを話しましょうというので、小説創作のプロセスなどを中心に。原書房から刊行の「本格ミステリベスト10」に掲載されます。
 その夜は身内の通夜で翌日は告別式。日頃社会性のない生活を送っているので、ほとんどつきあいのない親類などとお社交するのは精神的に大変にくたびれる。しかし葬儀社から頼んだお坊さんは真言宗智山派で、やはり密教系はパフォーマンスが派手ねといいますか、特に告別式になると袈裟は見事な金襴だし、朱の組紐の凝った細工なんかも目に楽しいし、法具や鳴り物もさまざま、特に銅鑼のビートにはしびれてしまい、お経のリズムの良いのには危うく椅子の上でスイングしかけた。おかげで今日になっても頭の中で般若心経がエンドレスで鳴っていて、ヘタしたら解脱してしまいそうである。
 一夜明けた今日は仕事を再開。南雲堂のムックの1ページを書き上げ、後は龍の文庫下ろしを続行。でもまだぼけ感が続いているので、今日は早めに仕事を終わらせて入浴した。

2011.10.06
 仕事がだぶったときには、〆切順ではなくさっさと終えられそうなものからやること。そうすれば少なくとも抱えている件数が減る。というわけで、文蔵の短編の再校ゲラを見て、訂正点を担当にメールする。それから原書房の再校を、これは頭からきっちり読み返す。昨日の夜から始めて午前中に読み上げて少しだけ訂正して、昼を食べた後にゲラを送り返しに行く。昨日は雨であんなに寒かったのに、今日は秋晴れで、しかし秋晴れというには少し暑い。キンモクセイがあちこちで満開。キンモクセイの生け垣のある細道を通る。芳香馥郁。午後からはまた「龍」に戻る。明日は鮎川賞で、明後日の午前中にインタビューがあって、夜と翌日はプライヴェートな用事。その後はたぶん疲れ切っているだろうけど、一休みしたらジャーロを仕上げて送稿しないとならない。次に日記の更新が出来るのは10日かな。

2011.10.5
 今年は作家生活20周年ではなく19周年であることが判明してしまった篠田であるが、1991年には鮎川賞第2回のパーティに、一応最終候補に残ったひとりとして出席させてもらって、しかし当たり前だが知っている人など誰もおらず、その上当時選考委員の一人だった故中島河太郎先生のスピーチの中で、受賞作を称える引き合いに、つまり受賞作がいかにリアリティある地に足の着いた作品かを誉める、その対比として、まあ「こういうのはいけませんねえ」という意味ですね、日本人と縁もゆかりもない外国の昔を舞台に日本人が一人も出てこないという作品があって、などといわれて屈辱の涙を呑んだ記憶が、はい、もういまもありありとあるんで、その日から20年ではある。
 で、なんだか知らないがいままでになく忙しい。〆切がだぶっている。ジャーロの連載がまだ終わらないのに、祥伝社のノベルス「龍」シリーズのラスト、ローマ編2分冊の直しが来て、連載をおいてそっちをやっていたら、今日は文蔵の連載(短編だけど)と原書房の書き下ろしの再校がきてしまい、週末は屈辱の記憶の鮎川賞で、徳間の打ち合わせなんてものも控えていて、よくわからないがいろいろ踵を接したあわただしい有様になってまいりました。
 その上プライヴェートな気骨の折れる用事というのも、ちゃんとあるわけで、はあ、しばらく日記の交信が途絶えてもご容赦召され。

2011.10.03
 先月13日に開花したラスト・ゴーヤ、だいぶ大きくなってきて収穫時期を探っていたが、本日実を持ち上げてみたら裏側から虫に食われていた。よしずに這わせた分だったので、裏に目が届かなかったのである。ああ、それにしてもニョロついたものは大の苦手だというのに、もろ見てしまったよ、青虫ニョロリ。いままで葉には虫が付いても、実はやられたことがなかったので、その点も油断でした。うー悔しい。
 ジャーロの原稿はようやく終わりが見えてきたが、連載だからラストの引きをどうしようかまだ決めかねている。そこに12月に出る『龍の黙示録ローマ編』の文庫版がデータとプリントでどばっと来て、いや、その〆切じゃ絶対間に合わないって。今週はジャーロ終えて、原書房の再校が来て、週末はパーティで、来週は徳間の打ち合わせもあって、そうじゃなくてもいつもの倍のボリュームなのに。いいよ。そんなら直さないで戻しちゃうから、もー。

2011.10.02
 9/28に日記を更新しようとしたらなぜか出来ず、結局容量不足だということが判明して、少しの間更新が止まりました。篠田は相変わらずのったらのったらとジャーロをやっています。今週リミットという気分です。週末は鮎川賞のパーティです。仕事場のベランダのすぐ下でキンモクセイが満開で、部屋の中まで香りが入ってきます。しかしカレーを煮たので、双方の匂いがせめぎあっております。