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2010.11.30
 今日は一日遊んでしまう。仕事場からハイキングして晩秋の山中で落ち葉の散る音を聞き、日帰り温泉に浸かり、岩盤浴でふつふつと汗を掻きながら文庫本を読む。しかしウィークデーでもお客はたくさんいた。帰りはバスの時間に合わせて30分で仕事場へ。ちょいと湯疲れしていたので仕事は辞めて、明日お客が来るのでビスコッティを焼く。
 カドカワノベルス版『風信子の家』が出ました。中身はあとがき以外は変わっていないので、元本を買われた方はお買いになりませんようご用心。値段は少しお安くなっております。

2010.11.29
 メランコリアの4を完成させる。頭を切り換えてジャーロの続きをやろうとしたら、なぜかメランコリアの新しい短編が動き出してしまう。ちょっと困るけど、書けるようなら書いてしまおうかな。

 読了本『エデン』 近藤史恵 新潮社 自転車競技という知らない世界を舞台にした作品。モチーフの部分は全然わからないのに、ちゃんと小説として面白く読めるし、リアリティも感じられるというのはすごいことだと思う。
 『星町の物語』 太田忠司 理論社 太田さんのショートショート集。とてもたたずまいが良い、洒落ていてきれいな本。ブックデザインと内容がぴたりと合っている。こういう本を手にすると、やはり本は本で電子書籍には置き換えられないなあと思う。外みばかり誉めてしまったが、もちろん内容もすてきで、ハートウォームな話があったかと思うと、ひやっと冷たいものが背筋に触れたような話もあり、猫はとても猫らしく(太田さんは犬派だと思っていたので、生彩あふれる実に猫らしい猫に感嘆)、いいなあという感じ。篠田はショートショートの執筆経験はゼロに等しいのだが、こういうのを読むとやってみたくなる。

2010.11.28
 講談社へゲラを発送するのに外に出たら、あまりの小春日和に仕事場に戻るのが嫌になり、そのままハイキングに行ってしまう。といってもスーパーでお茶と柿の葉寿司を買い、そのままぱこぱこと山道を歩いて、いささか人が多い小高い場所で弁当を使い、降りてきて2時にもならないというお手軽さ。
 それから気を取り直してメラコンリア4の書き直し。一応ラストまで行く。もう一度読み返して完成。この後は年内にジャーロの次回を書いておくかな。

2010.11.27
 メランコリアの4のブラッシュ・アップをしようと思っていたら、建築探偵の三校が来たので、先にそちら終わらせることにする。ゲラを読むのはつくづく苦手だ。いや、校閲が苦手だ。
 ようやっとSFJapanの新号が届いた。もう出ないかと思った。『黎明の書』の番外編が載っております。

2010.11.26
 新聞に載っていた山口晃さんの個展を見に、ツレと東京へ。この方の絵は以前に講談社のPR雑誌「本」の表紙で見かけて以来かなり好きで、京都まで個展に行ったくらい。一口で説明しがたいのだが、建築幻想もかなり入っていて、幻想というか、むしろ奇想というべきか。東京大学出版会の雑誌「UP」でずっとエッセイマンガを連載しておられるのだが、今日行ったギャラリーでゲットした11月号によると、子供の時から住宅販売の広告の間取り図や、建物の模型が好きだったとあって、「同じ同じ」と喜ぶ。展示されていた墨一色の絵の、主人公が朝青龍そっくりであった。

2010.11.25
 昨日担当に見せた短編は、やはり仕上げが粗いというか、もう少し手を入れなくてはならないのだが、まあ一段落という感じで、今日はカレーを煮る。超テキトーで、牛すね肉を赤ワインに浸して、にんにくしょうがたまねぎを炒め、ニンジンのすり下ろしにリンゴの薄切り、トマトにヨーグルトと入れていったらやけに酸味の強いカレーになってしまった。味が落ち着くことを期待して一晩寝かせる。

 読了本『長い廊下のある家』 有栖川有栖 光文社 未読の「ロジカル・デスゲーム」が異色作で面白かった。サイコな男の罠にはまって自殺ゲームに巻き込まれた火村がいかにして窮地から脱したか。やはりこのシリーズは長編より短編がいい。

2010.11.24
 やはりなんとか短編を書き上げてしまいたく、朝からパソコンにかじりついて、どうにか短い話を書き上げる。まだ決定稿ではないが、一応この線で、という感じ。やれやれ。担当と話して単行本のキャパから、連載回数などをいまごろになって決定。漫然とやっていると絶対書きすぎてしまうと思うので、そのへんはきちんと決まっていた方が安心できる。三ヶ月に一度というのんびりペースの連作なので、完結は再来年。単行本も再来年の内に出したいということに。

2010.11.23
 数日前から書きあぐねていた短編について、解決策が突然天から降ってきた。明日担当と会うので、それまでになんとか書き上げたかったが、間に合うかどうかぎりぎりではあるものの、方針が立ったのは大変にめでたい。やれやれ、毎度「もうあかん」というところでどうにかなる。しかし出来るならば、「もうあかん」という前にするりするりと書きたいもんだな。

2010.11.22
 天気は悪く絶好の引きこもり仕事しなさい向き空模様だったのだが、物語の神様が雲隠れしてしまって、なんともお手上げ状態。しかたなく小雨の中を散歩。歩くといくらか頭が動き出すような、気がする。

2010.11.21
 今日もつい掃除してしまう。仕事からの逃避に他ならぬ。/新潮文庫のマークを集めて、ついにゲットしたよんだぱんだウォッチ。最近は腕時計ってあんまりしなかったんだけどね。/昔神保町付近でバイトしていたときに好きだったカレー屋があって、そこはキャベツのサラダが食べ放題。カレーの中に山のようにキャベツを入れて食べたが、その店は地上げで消滅。以来自分で作ってもどうも上手くできなかったキャベツサラダ、ネットでたいめいけんのコールスローのレシピを発見し、やってみたらかなり近いものができた。キャベツ半個に塩は小さじ1杯、それに砂糖が大さじ1杯入るのが、自分ではやらなかった点であった。

2010.11.20
 晴れていると部屋の中も明るくて、ゴミや汚れが目立つ。というわけで、にわかに掃除欲が高まってしまう。フローリングの床を古タオルでごしごし拭く。本棚の埃取りにクイックル・ワイパーを買ってくるが、大掃除にはまだ早いのでそこで自制してなんとか仕事に向かう。「ホテル・メランコリア」の担当と来週会うので、それまでにもう一本短編を書いておこうというので書き出す。例によって道行きも決着も決定せぬままの船出。

 読了本『消えたタンカー』『ミステリー列車が消えた』『終着駅殺人事件』 西村京太郎 まとめ読み。つまらなくはないが、心が躍るということもないな。ケレンみの無さがおじさん受けするのだろうか。

2010.11.19
 用事があって東京に出ていたので、本日は仕事はしていない。本格ミステリ作家クラブ編纂の『ミステリ☆オールスターズ』、送ってきてくれるかなあと思って待っていたが、来そうもないので諦めて購入。

2010.11.18
 風邪は薬で一応押さえ込んだが、これで治ったと思って油断するとぶり返してしまう。ゲラ2つはそれぞれ返送して、年内の予定はだいたい片が付いたようなものだが、だからって遊んでいると年明けの2月にまた〆切のだぶった月がやってくる。というわけで、ジャーロの第三回くらいは年内に書き上げておくべきだろうなあ。しかし昨日届いた秋号を見ると、ページ数が減って連載はどれも短い。なんとなく心細い風情。徳間のSFJは見本の予定もとっくに過ぎたのにまだ音沙汰ないし、出るのか出ないのか、こんなにも気を揉まされる雑誌なんていまどきそうはない。ちゃんと続けて出てくれるなら、『黎明の書』の続きを書きたいのだが、この調子ではどこまで時間を投下していいものか、こちらもはなはだ心細い。

2010.11.17
 57歳の誕生日を迎えたとたんに風邪を引いてしまった。鎌倉に遊びに行ったのだがその夜は前線の通過で雨降りで、翌日は晴れたが風が強く、今日はどど曇りでひたすら陰鬱に寒い。そんな日に限ってゲラが2本まとめて来る。頭はぼけるし全身は倦怠。ライ麦パンを焼こうとしたら、レシピを間違えた。いつにもまして注意散漫。これじゃ仕事にもなんにもならねーよ。というわけで、今日は引きこもってうだうだ。
 鎌倉では猫と名残の薔薇と建物を撮影して、夜は由比ヶ浜通りの小さなレストランで値段の割にとっても美味しいフレンチを食べて、釜揚げシラスと腸詰め屋のソーセージとベーコン、某所の絶品アジフライ、一枚たったの100円を買って帰ってきた。しかし昨日の鎌倉小町通の混雑ぶりにはびっくりした。ウィークデーであれなら、土日はどうなってしまうのだろう。新京極どころか年末のアメ横みたいに人で埋まっていた。もう鎌倉に行っても、小町通には近づかないぞ。

 読了本『海炭市叙景』 佐藤泰志 小学館文庫 函館出身で、五度も芥川賞の候補になりながら受賞に至らず、1990年41歳の若さで自殺した作家が、ふるさと函館をイメージした地方都市を舞台に、そこで生きるさまざまの人たちを描いた連作短編集。冬から春まで。この後夏から秋までが描かれて完結するはずだったそうだが、作家はその完成を放棄して逝ってしまった。ミステリではないので、ここに登場する「同じ街で現代に生きている」という意外の共通点がないとしか思われない人々が、びっくりするような形で繋がる、といったラストが予定されているわけではないだろうが、途中だな感はぬぐえない。最初はいきなり正月の函館山で自殺としか思われない死を遂げる青年の話だから、めちゃ暗いのだが、季節の移ろいと共にトーンは少しずつ明るくなってきている。でも完成すればラストは大晦日で、その街が発展よりは衰亡に向かっている、という認識は共有されているので、さあどうなったんだろうね。

2010.11.14
 明日明後日出かけるので、ちょっとその準備でばたばた。短編のプロット、なかなか決まらない。添える写真は小説に先行してある程度プールしてあるので、逆に写真からヒントを貰おうと紙焼きした束をめくりかえす。おかげでなんか見えてきたかな? くらい。こういうときは資料探しに行くと、肝心な仕事からどんどん脱線してしまいがちなので、そこは自粛。

 読了本『続あしながおじさん』 ウェブスター 新潮文庫 初読のときはロマンティックなシンデレラ・ストーリーに回収される『あしながおじさん』よりも、お金持ちのお嬢さんの孤児院改造奮闘記である続編の方が面白く読めた。しかし今回読み直してみて、女性の自立と、夫に従属せぬ対等な結婚というテーマは相変わらず印象深かったものの、優生学的な視点、悪い遺伝子を持っている子供をいかに扱うか、早い話が悪い素質や知能の後れは遺伝するから、そういう子供は子供を産ませないようにするべき、というところが相当露骨にあり、この時代の世界でナチズム的な価値観が受け入れられる状況は普遍的に存在したのだな、と改めて考えさせられた。実際この時代の孤児院には、貧しさからアルコール依存や犯罪常習に陥った親の子供が、他の社会よりずっと多く収容されていたのだろうし、それにしては決して作者の視点は差別的でも冷酷でもないのだけれど、いま例えば歴史小説としてこの時代の話を書いても、校閲でズタズタにされかねないな、とは思った。

2010.11.13
 ニンジンとタイムとリコッタ・チーズのケーク・サレは非常にグッド。油はオリーブオイルしか使わないのでさっぱりした感じで、大量に入れたニンジンの味と香りが生きている。
 今日は婦人科の医者へ。寒くなってきてから、少し血圧が上がり気味なので、降圧剤を増やしてもらう。池袋でちらっと本屋だけ寄って帰る。仕事はホテル・メランコリアの3回目を手直ししただけ。明日はなんとか、次の一本のプロットが固まらないかどうか頭を叩く。

 読了本『光と影の誘惑』 貫井徳郎 創元推理文庫 貫井さんが上手いのはわかるが、最近は読後感の暗いミステリはどうも楽しく読めない。篠田もおばさん化が進行しているようだ。

2010.11.12
 近所の温泉に行ってうだうだしたいと思いながら、なかなか思うにまかせない。昨日デパートでリコッタチーズを見つけたので、今日は急遽前から作ってみたかった、ニンジンとタイムとリコッタチーズのケーク・サレを作ることにした。400グラム分のニンジンを千切りにするのが結構手間。朝のパンも切れたがそんなわけでそっちは手抜きにして、ベーカリーでレシピどおりのスイートブレッドを焼こうとしたら、冷凍庫にあんこが残っていたので、突然あんこブレッドになる。
 仕事はホテル・メランコリアの新しい短編を書こうかと思ってプロットをやるが、どうもあまりうまく行かない上、前から考えていた話とかぶりそうな気がしてきたので、そこは止めることに。前に書いてあった第三話を読み直しで、雑誌掲載の形式にする作業を先にやっておくことにする。

 読了本『あしながおじさん』 ウェブスター 新潮文庫 勝田文のマンガ化作品を読んで、それがなかなか良かったので原作を再読したくなり、書棚を探したが見つからず、再度購入。篠田は『若草物語』やら『赤毛のアン』やら、古典的な女の子文学はことごとく性が合わずにダメなのだが、これは面白い。ヒロインも好きだ。背筋のきちんと伸びているところがいい。そしてこの作品は実は叙述トリックだったのだなあ、といまさらのように思った。なおマンガ化作品は、そのトリック部分を放棄して「おじさん」側の視点を導入しつつ、戦前の日本に世界をずらしたところも成功している。
 『辛い飴 永見緋太郎の事件簿』 田中啓文 創元推理文庫 篠田はかなり田中さんのファンである。上方落語なんて全然知らなくても梅駆くんのシリーズは面白いし、ジャズなんて一向に知らなくともこのシリーズは楽しく読める。「これ、いいよー」と言ったら、「だじゃれの出ない田中作品なんて」と答えたアホがいたが(誰か忘れた)、田中さんはだじゃれだけじゃないのだ。でも無いはずの作品にもたまにちらっとだじゃれテイストが登場したりして、それはそれでまた嬉しいのだ。

2010.11.11
 天気がいいとつい出かけたくなってしまう。何冊かよみたい本があるので池袋まで。午後はジム。

読了本 『アベンジャー型犯罪 秋葉原事件は警告する』 岡田尊司 文春新書 この人の著書『脳内汚染』はトンデモ本だ、という人もいるらしくて、どうなんだろうと思いつつ読む。秋葉原事件の犯人は25歳だが行動は未成年の少年犯罪と変わらないという指摘、スクール・シューティングと同室の事件だというところにはなるほどと思う。
『ひろしま』 石内都 集英社 広島で被爆死した人の衣類を撮影した写真集。群馬県立近代美術館で偶然この人の作品を見て、それから先日ここにも感想を書いた『昭和二十年夏、女たちの戦争』にもこの写真集の話題が出てきて、いろいろ偶然が重なった。強いられたもんぺの下にあざやかな花柄のスカートやブラウスを着ていた広島の少女たち、その肌のぬくもりが伝わってくるような写真は美しく、同時に怖い。

2010.11.10
 ホテル・メランコリアのゲラの戻しをする。第二回用の原稿を手直しする。次の〆切は来年の2月なのだが、その月は文蔵と、ジャーロとSFJapanの〆切がもろかぶりするのだ。ずっと忙しいわけじゃなく、特定の月に集中するだけだから、前倒しで片づけておくしかない。下旬に担当と打ち合わせをするので、そのときに全体の構成と分量をある程度決めることにして、後は今年中に光文社と徳間と、どっちかの原稿を上げておけば、来年焦らずにすむ。どうやら今年もゆっくり大掃除が出来そうだ。

 読了本『謀略の首 織田信長推理帳』 井沢元彦 講談社文庫 『本格ミステリフラッシュバック』に、『修道士の首』という信長を探偵役にした歴史ミステリが誉めてあったので、ずっと探しているのだがまだ見つからず、この前高崎のブックオフで同じ作者のこれを見つけた。探していたのは短編集だがこちらは長編で、信長を探偵にした三作目。まあ、つまらなくはなかったけど、たぶん第一作のほうが面白いだろうな。

2010.11.09
 ツレと西立川にある昭和記念公園に紅葉を見に行った。まことにうららかな小春日和で、あざやかな銀杏や、紅燃える楓を愛でながら、ビールやらワインやらのみまくる。この公園は猫が多い。それもみんなよく肥えた、毛並みのきれいな猫ばかり。

 読了本『晩夏』 図子慧 創元推理文庫 ロマンチックなミステリ、とでもいいますか。残念ながら美しいのは被害者で犯人はババッチイ。
 『おひとりさまの老後』 上野千鶴子 法研 結婚していようがいまいが、誰でも死ぬときはひとり、というのは本当にそうだと思う。うちは子供はいないし、親戚づきあいは皆無だし、自分が周りにいる人間の中では一番若いから、順当に行けばひとりで死ぬことになる。だがひとりでいることは苦にならないというか、あまり他人とつきあうのは得意ではないので、施設には入りたくないし、ゴミ屋敷になっても自分のマンションで、誰の手を煩わせることもなく、ひとりで逝ければいいなと。別に悲観的な未来ではなく、本気でそう考えています。いつ死んでもいいように完全燃焼がモットーだし、建築探偵も終わったしね。ただまあ死体は一日二日の内に発見してもらって、片づけて貰いたいわねえ。腐ると生ゴミ化して後が大変だし。

2010.11.08
 歯医者で歯垢取りをした後、紅葉を探しながらずーっと歩く。しかしここらはまだのところがほとんど。午後は活字倶楽部の恒例アンケートに回答した後、ホテル・メランコリアの構成を考えようとするが、どうも睡眠の質が低下しているようで、頭がぼけていて今日は使い物にならず。やはり気温が下がるにつれて、血圧が高くなってきたが、そのせいもあるのかも。

2010.11.07
 ゲラを発送し、やれやれこれでまたひとつ仕事が済んだ。正確にはまだ校了していないけど。というわけで今日はひたすら本を読む。

 読了本『しがみつかない生き方』 香山リカ 幻冬舎新書 篠田はわりと香山ファン。理念より現実、肩から力の抜けたほどほど加減が。
 『ザ・フェミニズム』 上野千鶴子 小倉千加子 筑摩書房 この前読んだ『女ぎらい』が面白かったので、なにか他の上野さんの本というので買ってきたのだが、これはダメだった。篠田は女性性を内面化しそこねた女ジェンダーからの半脱落者ですが、フェミニストではありません。
 『昭和二十年夏、女たちの戦争』 梯久美子 角川書店 角川のPR誌「本の旅人」で連載していたときから、ときどき読んでいたのだが、これは非常に心に染みるノンフィクションだった。1918年から1931年に生まれてあの戦争の中で青春を過ごした5人の女性が語る戦中と戦後。

2010.11.06
 今日は仕事場周辺はお祭りで、おはやしの屋台が練り歩いたりしてうるさい。篠田は子供の頃からお祭りに興味を持てないという、はなはだかわいげのない性格であった。仕事の目鼻も付いたし、天気もいいので午後からまた付近の山を歩きに行く。赤とんぼが飛んでいた。
 建築探偵のゲラは明日発送予定。編集部から「差別表現的に受け取られる危険性がある」という、不本意な指摘を受けた箇所について、最低限の手入れをほどこした。その他、いろいろと未練がましくいじりまわした。
 活字倶楽部がインタビューをしてくれるそうだ。来年1/25発売号に掲載の予定。

2010.11.05
 ゲラを読んでいて集中出来るのは2時間が限度。原稿を書くには集中がとぎれればそれまでだが、困ったことにゲラは半分ぼんやりと斜め読みをしてしまうことがある。それではなんにもならないのだが、済んだような気になってしまうというのが駄目なところ。で、郵便物の投函や買い物に出たりそのついでに散歩したり本を読んだりしている。なんか怠けているような感じだけど。

 読了本『アシャワンの乙女たち』 牧野修 ソノラマ文庫 ブックオフで見つけて、イラストが可愛いので買ってしまった。女学校の生徒が光の戦士となって闇の怪物と闘うという、なんともいまさらな善悪二元論的世界観だが、心に乙女と怪物を住まわせている牧野さんだから、乙女が男性作家にありがちな「いかにも萌え的なキャラ」ではなく、ちゃんと生気ある女の子たちである。怪物は怪物で実にグロく、世界観の陳腐さを埋め合わせておつりが来る。
 『記録の中の殺人』 石崎幸二 講談社ノベルス 女子高生トリオ+若おじさん石崎組は相変わらず快調。事件の動機は珍奇で意表を突かれ、普通に考えれば鬼畜のドロドロなのだが、犯人も主人公たちに合わせて至極明快な、アニメのセル画くらいの書き分けだから、どんな凄惨な事件でも全然怖くない。本格ミステリをゲームとして読むには、余分な書き込みなんて無用で、これで必要勝つ十分なのだろうな。

2010.11.04
 グイン・サーガは途中で挫折してしまったが、『ガラスの仮面』はまだコミックが出るたびに買って読んでいる。今年はなんと、45巻46巻が立て続けに出たが、物語が進展したかというとそんなことは全然なくて、亜弓さんはいかに目に障害が起きたことを周囲に気づかせずに紅天女をやりきるかの特訓中で、肝心の試演までにはまだ時間がありそうだし、ほとんど足踏み状態。46巻は真澄とマヤの関係に嫉妬した婚約者の紫織が、マヤに恐ろしく古めかしい意地悪や拙い陰謀を仕掛けてふたりの仲を裂こうとしていて、その間抜けぶりが笑えてしまう。しかし紫織にも同情すべき点はあるというのは、真澄の優柔不断が現在の紛糾を招いたわけで、それに彼のような立場の人間がマヤと結婚できるわけもなく、だったら現状を潔く受け入れて、マヤに対しては後援者としての立場に徹するしかないと思うんだけどね。
 それにしてもこの話、私が生きている内に終わるんだろうか・・・

2010.11.03
 ハイキング日和だが、パンピーがぞろぞろやってくる日曜祭日は自粛。買い物に出た他はお仕事。12/6発売のメフィストに掲載されるインタビュー4頁とあとがきのあとがき1頁のゲラチェックをして、後は建築探偵の再校ゲラ続行。集中力が続かない。長いんだもん。って、書いたのは自分か。
 今日の驚き。メール便を出すのに封筒をふたつもってコンビニに行ったら、店員のおばさんが「伝票が1枚しかないので、もう1通は速達でいいですか」。いいですかって、普通は80円、速達は160円じゃないの。なんで伝票が切れているというあんたのとこの事情で、こっちが必要もない速達料金を払わないといけないわけ? コンビニはここだけじゃないんだし、というので、もちろん断って1通だけ出して、後は他へ持っていった。しかし断ったらそのおばさんは、非常に不本意な顔をしていた。本日の教訓。おばさんだからって若い子より常識があるとは限らない。

2010.11.02
 今日はツレと高崎にある群馬県立近代美術館へ、「白井晟一 精神と空間」展を見に行く。白井は非常に特異な建築家で、彼の仕事とか、その特徴とかを要領よくまとめて紹介する力が篠田にはない。和風であることとヨーロッパ的な石の建築とが折衷ではなく分かちがたく融合している、とでもいおうか。作品の写真や精緻な図面、模型などでその仕事を見せているだけでなく、面白いのは白井のモチーフを現代の芸術家たちが別の形に表現してみせる、という試みで、ここでまた篠田の好きな現代の画家、野又穣が登場してしまう。好きなものが好きなものを引いてくるといいますか。
 野又の絵は非常にいい加減な言い方をすれば「幻想建築画」とでもいうべきもので、昔、横浜のニューグランドでレセプションの壁にこれを見た時から、ずーっと気になっていた。だけど、ホテルの人に聞いても誰の作品だかよくわからなくてそのまま。それが数年後新聞の読書頁に作品集の紹介が掲載されていて、ようやく画家の名前が分かり、「ああ、いつかこの人の絵を表紙に借りて本を作りたい」と思っていたら、あっさり某人気作家にやられてしまったものだから、もう数年ほとぼりが冷めてから考えようと思うてます。

2010.11.01
 台風は去ったはずなのに昨日の夜はひどい雷雨。雨音で起こされるとブラインド越しに稲光。朝になれば雨は上がったが今度は蒸し暑い。天気が回復すれば暑くなる、悪ければ冬というめちゃくちゃな気候だ。いやになるなあ。
 今日は視力、眼圧検査の目医者。自覚症状のない医者通いというのは、なんとも納得のいかない気分がするものだが、歯医者以外は全部それだ。贅沢を言うようだがウザイ。

 読了本『少年少女飛行倶楽部』 加納朋子 文藝春秋 女の子感覚に満ちたさわやかな青春もの。キャラの感覚が地に着いたリアルさで、予定調和だなと思っていたら最後に突発事態が起こってぐわっと盛り上がる当たり、アニメ「魔女の宅急便」を思い出した。というかこれ、ドラマにしたらすごくいいと思う。宮崎駿がシナリオ書くと、きっとおやじの少女憧憬が入ってきて話が変になるからダメだけど。