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2009.12.25
 ケーキ、本体は上手く焼けたのだが、上に載せたミックスナッツのカラメリゼが多すぎて、歯にニチニチくっついてしまうので、しかたなく下だけそいで食べる。うーん、無念なり。
 今日は掃除というより片づけというか、新聞の切り抜きや展覧会のチラシのたぐい、箱に放り込んだままためてあったやつを、取捨選択してファイルに整理して、しかしここしばらく手を付けていない棚の中から、昔のゲラにとかノートとか、切り抜きとかが出てきて、ちっとも片づかない。リビングだけで時間切れ確実だなあ、こりゃ。
 というわけで、今年は今日で日記の更新が止まります。来年は1月4日から仕事開始の予定。それまでも積ん読本を読みふける寝正月だなあ、例によって。どうぞ皆様良いお年を。また来年よろしくお願い致します。

2009.12.24
 昨日、ネットで注文したポプラ社ルパン2冊が用意できたというメールが来たので、町田の高原書店まで取りに行った。ついでに店内を回って興味深い専門書のたぐいをかなりがっつり買い込む。2割引セールだった。ルパンは状態がいまいちだったが、まあいいかと思って購入。しかし今日入間のブックオフに行ったら、1冊だけだけど105円でもっと状態が良かった。人生ってこんなもんだよベイベー。
 今日は突然思い立ってケーキを焼く。といっても技術の必要なものはやらない。バターケーキ生地に、秋に作った栗の渋皮煮にブランデーをぶっかけたものを焼き込んで、上にミックスナッツのカラメリゼしたものをのっけてさらに焼いた。上手くできたが高カロリー。年末年始は目をつぶるのだ。
 クリスマスだなと思ったら、『Ave Maria』が読み返したくなって、掃除の手を止めてぱらぱら。事件らしいものは全然起こらないし、やたらシリーズの他の作品に繋がる話題が出てくるし、我ながら変な話だなあと思う。自分的には好きだけどね、装幀も含めて。
 昨日ミステリベスト10系の某ムックを読んでいたのだが、その中の論文や座談会を読んでなんだか変な気がした。登場人物がニートだったりフリーターだったり、お金に苦しい若者だったりすると、現代のリアルを表現していると肯定的に評価されて、登場人物の誰も経済的困難を抱えていなかったりすると、否定的に見られる、そういうことが書いてあったからだ。いつからミステリは、社会派でないと減点されることになったんだ? 現代の格差社会で生きることの困難さについて読みたいなら、別にミステリでなく、正面からそういうのを論じている本を読めばいいのでは。
 読了本『招かれざる客たちのビュッフェ』 クリスチアナ・ブランド 創元推理文庫 北村薫さんお勧めの短編集。上手いというのはわかるが、作者の意地悪さに腹の底から嘘寒くなってきた。要するに嗜好の問題です。

2009.12.22
 昨日は午前中だけ仕事場の大掃除を続行して、午後からはリクリエーション。バスで青梅山中にあるパン屋へランチに行く。車じゃないのでワインが飲める。天然酵母石焼き釜のパンは絶品なのに安い。しかし実に不便な場所なのだよ。数えるほどしかないバスのバス停からも10分は歩くし、そこから青梅の駅までは30分かかるという。で、買ったパンを手に歩いて青梅線で二駅。河辺の駅前にある温泉へ。ゆっくりたっぷり暖まったら、生ビールを一杯飲んで八高線で帰る。夕飯は冷蔵庫の片づけに作った残り野菜のミネストローネに買ってきたパンで。
 今日は数年ほったらかしにしてきた作りつけ本棚の整理と掃除で一日。真面目にやりすぎてくたびれた。新聞の切り抜きが山ほどあって、明日はこれをなんとか整理しなくては。
 読了本『ニコライ二世の日記』 講談社学術文庫 ロマノフ朝最後の皇帝となったニコライ二世は、皇太子時代に日本を訪問して、危うく殺されかかったりした(いわゆる大津事件)が、別にそのことと日露戦争とは関係はないだそうだ。皇帝とはいってもわりと普通の人で、普通に女好きで(極端に好色ではないけど、日本ではずいぶん夜遊びもしたし、奥さんを熱愛していたけど他に愛人らしい女性もいた)、かなりマザコンで、子煩悩で、普通に保守的で、激動する政治状況にまったく対応できないまま、家庭生活に逃避したりしているうちに一家もろとも裁判もなしに殺されてしまった。かなり気の毒な最後だけど、絶対君主が無能だというだけで、民衆の犠牲は増えるからなあ。下り坂にかかった国は、どんなに有能な為政者でも反転はさせられないものだとは思うが。

2009.12.20
 昨日からぼちぼち仕事場の大掃除を始めた。といってもふだんがろくに掃除してないので、普通の掃除でも結構やったぜ、という気分になる。掃除機はうるさいのであまり使わず、CDのグレゴリアン・チャントを聞きながら床掃除。今日はトイレと洗面所の床。荷物置き場になっている部屋までは、到達しないうちに大晦日になると思うけど、別にいいや、というので半日やったら日のある内に軽いハイキング。そのまま駅まで出て、100円ショップで掃除用具を買い込む。
 読了本『架空の料理空想の食卓』 リリー・フランキー 扶桑社 食べることも好きだが食べることについて書いてある本も好きである。実用的なグルメガイドみたいなものはネットで充分なので、実用性のない本をよく買う。『アガサ・クリスティの晩餐会』とか、『レオナルド・ダ・ヴィンチの食卓』とか。もっとも前者は小説の材料になったから、実用性ゼロとはいえない。クレオパトラから樋口一葉まで、歴史上の人物に捧げる献立を工夫してレシピも一部付けた『迷宮レストラン』河合真理NHK出版 なんて本は、いよいよ実用性は薄いが写真を眺めるだけでなかなか楽しい。で、今回の本は作家がマッチョなイタリアン・シェフに「下戸な女を酔わせる料理」「獄中の友人に差し入れる料理」といったお題を出して、シェフがそれに応える料理を作るという本。簡単なレシピはついていても、やってみようという気にはなれない料理がほとんどで、写真は現代芸術のオブジェに近いが、とにかくインパクトはある。食べることは暴力的で猥褻だ、と実感させるようなビジュアルばかり。そしてリリー・フランキーの文章は初めて読んだので、いつもこんな調子かどうか知らないが、やたらとマッチズモを押し出した、つまり性的なシモネタが多い。自らの男性性によほど自信がない人なのだろうか、などと邪推したくなる。

2009.12.18
 昨日は早起きして栃木県益子までドライブ。焼き物を買いに。毎日使うマグカップが壊れていないけどすっかり色が剥げてしまったし、仕事場で使っていた小さいティーポットの柄が取れてしまったし、というような、こまこました買い物ばかり。飲む器にしろ食べる器にしろ、基本は入れたものが美味しそうに見えることだから、どうしても白っぽいものに手が伸びる。形も素直なものの方がいいし、それでもシンプルすぎるのはさびしいし、そしてもちろん、壊したらけんかになるような高すぎるものは買えないし買わない。わりと気に入ったマグやポットがすんなりと見つかり、調べていったオーガニック・レストランでランチ。それから真岡の日帰り温泉施設に立ち寄ると、これがえらく立派なもので、ウィークデーの真っ昼間から地域の高齢者が集まり、宴会場からは大音量の演歌が流れる。お湯は塩味の強い温まる泉質で大変結構。
 そこから今度は茨城の笠間へ。冬のことで日暮れが早くいささかあわただしいことになってしまい、「今度は笠間メインで来ようね」という話になったが、ここでも取り分け皿とデザインの可愛い小皿を購入。それと、ここが皆川博子先生の『冬の旅人』のヒロインのモデルとなったイコン画家山下りんのふるさとにして隠棲の地で、資料室があることをそこまで行ってから知り、あわてて駆けつけたら開いてなかったというドタバタで、今度はそのへんも調べて来ようと決める。
 メインストリートに大型店舗が並ぶ益子と違い、笠間の陶器屋はアトリエ風の建物が点在しているので、季候の良い時期にのんびり時間をかけて散策したらきっと楽しいと思う。それから「入れたものが美味しそうに見える」という我が家の了解事項から大きく逸脱したひとつのアトリエの作品が、なぜかふたりとも帰ってからもまだ印象に残っていて「家で使うには個性が強すぎるよね」「青色を使ったのなんかもきれいだけど食器って感じじゃなくて」「すごくアートっぽい」「でもそれにしちゃ安い」「東京のセレクトショップに持ってきたら」「倍以上で充分売れるインパクトだったねー」「普通の食器や日本酒器だと負けるけど、いっそ黒いカップに黒いコーヒーはありじゃない」「かも」などという話になり、(なぜかふたりではなく)ひとりで、落ち着いてレギュラーコーヒーを楽しむ時に、それもいつもではなくときどき、取り出して使うという感じなら欲しいかも、という話になる。まあ、そういうデザインなんです。今度行って、見て、やっぱりそう思ったら、それぞれ好みの一客を買ってしまうかも。

2009.12.16
 完調じゃないけどいくらか復活したので、医者2カ所行って年末年始分の薬をもらう。降圧剤、降眼圧剤、女性ホルモンなんぞ。これでしばらく大丈夫。
 年賀状を書いているが、いまごろになって欠礼ハガキが複数舞い込む。久しく会わず賀状のみのつきあいとなっていた人でも、「亡くなった」と聞くとこたえるね。

 読了本 『華麗なる誘拐』 西村京太郎 講談社文庫 日本の全国民を誘拐したから身代金五千億円を払えという電話が総理大臣の下にかかる。誘拐っていうより無差別テロなんだけど、そこを敢えて「誘拐」ということばを使って見せたのがひとつの面白み。名探偵が犯人を洗い出すところは相当におおざっぱで都合がよすぎる。しかし犯人が金を手に入れる手段の意外性と、それがうまくいったとみえて実は、というあたりの逆転劇は面白い。ラストはまた失速ぎみか。いまだと「リアリティなさすぎ」といわれてギャグになっちゃうかな。
 『うたかたの恋と墓泥棒』 ゲオルグ・マルクス 青山出版社 ハプスブルグ王朝末期に記憶される一事件、帝国の皇太子ルドルフが男爵令嬢と心中死した事件は、政府が隠蔽を計ったためにかえって謎とされ、陰謀説が跋扈したが、結局自殺願望にとりつかれたルドルフがひとりで死ぬのが嫌さに、令嬢の恋心を利用して心中したということが確認された。というわけで、別にすごく意外な真相が現れるわけではないんだが、長く繁栄を誇った高貴なる一族が没落していくというのはこういうことなんだねー、と諸行無常の思いが募る。ルドルフの母親がかのエリザベートで、彼女のエキセントリックな性格がルドルフに歪みをもたらした一因だったというのは明らかだけど、彼の娘も婚約者のいる男性に恋慕してごり押しに結婚したあげくに、夫の愛人をピストルで撃つという大騒ぎを演じて離婚する。結婚によって栄えてきた一族が結婚によって滅んでいく皮肉。

2009.12.15
 昨日は一日角川のゲラをやって、宅急便に出すばかりにして帰ってきて、普通に夕飯を食べたのだが、なぜか真夜中に胃が痛くなって目覚め、少し吐いてそのままちゃんと眠れず。しかしいくらか眠っていた証拠に「遅刻するパターン」の夢を見た。それから『黎明の書』の続きの構想をなぜか忽然と思いついた。
 今日はゲラを出しにコンビニに行った他はほぼ沈没。何も食えず何も出来ず。

2009.12.13
 気温が下がると血圧が上がる。そのせいかどうか知らないが、最近短期記憶がすごく危ない。スーパーに買い物に行って、籠に入れた食品はマイバックに入れて持ち帰ったが、トイレットペーパーの12ロールを荷物詰め台の上に放置したまま帰ったことを、数時間後に思い出してあわてて取りに戻るなんて阿呆な真似をしてしまった。痴呆の始まりだったらどうしよう。
 そんなことを考えつつ、今日は『黎明』の次の展開を考えてノートを作る。

 読了本『本格ミステリの王国』 有栖川有栖 講談社 有栖川さんのエッセイは読んで面白い。今回は「トリックの創り方」とか、選考委員を務めた賞の選評とか、作家志望の人の参考になりそうな文章も多くて、特にそういう興味を持つ方にはお得感があります。
 『ノットイコールの殺人』 石崎幸二 講談社ノベルス 生きのいい女子高生コンビが若オヤジをボケ役にして、言いたい放題の漫才紛いを繰り広げる毎度のノリが好きな人にはお勧め。本格ミステリの中心部分は別に悪くないけど、漫才を外すと完全に短編ネタです。
 『一九三四年冬ー乱歩』 久世光彦 新潮文庫 再読つーか三読つーか、やっぱり久世さんの小説中ではこれが一番好き。筆に詰まって自宅から逃げ出し、外国人専用ホテルに身を潜めた乱歩が経験する不思議な出来事と、彼がそこで執筆する短編「梔子姫」。幻想と現実が奇妙に照応し、相互に入り交じる。しかしこれ、構想した内の前半だけだというんだよね。おかげで張ホテルのいくつもの謎も、なぜ乱歩がこの一編を発表せずにおいてしまったのかという謎も、置き去りにされたまま、とにかく満足のいく短編一編を書き上げた虚脱の内に終わってしまう。そして久世さんも死んじゃったっと。こんな中身の濃い小説が文庫でたった300ページチョイのコンパクトさなんだから、そのことに幾度でも驚いてしまう。そしてここに登場するモチーフ、怪しげな小ホテルに謎の中国人美青年は、どうしても篠田の頭の中では絵柄が森川久美なのだ。そう、『蘇州夜曲』の黄ですよ。

2009.12.12
 徳間の担当に『黎明の書』の原稿を送稿。結局171枚でありました。それほど伸びなくてまあ良かった。後は今日は料理の日で、数日前から煮ていた牛すじ肉の鍋に、リンゴ、セロリ、トマト、じゃがいもを添加して軟らかくなるまで煮て、野菜だけをフードプロセッサでつぶし、カレー粉を炒めて加える。後は少し寝かしてヨーグルトとか入れて、味を調えればオッケ。せっかく暖かいのでパンも焼いた。レーズンとクルミ入りのカンパーニュ。台所で煮物をしていると、室温が上がってその辺に放置しているだけで発酵が進む。カレーに入れるので買った紅玉の残りが、鮮度に不安があったのでジャムに煮てしまう。お湯かけて洗った皮もしばらく一緒に煮て、ピンクのジャムになる。少し甘いのでリンゴ酢を追加。
 読了本『プールの底に眠る』 白河三兎 講談社ノベルス ごめん。良さが判らない。文章、描写、ヘタではないけれど、物語がさっぱり動かないままダラダラと高校生男子の述懐を読まされて、ああかったるいっ、いつまでこのたるさに耐えればいいの、と思っていると、半分過ぎてようやく話は動くんだけど、だからどうしたのよ、といいたい感じのまま、なんかラストあたりで妙に「いい話」風になっちゃって、このぬるさはなに、といいますか。おまえ、感性が古びてるからわかんないんだよ、といわれればそうかも知れないんで、それならそれで謝ってまうだけです。

2009.12.10
 昨日で『黎明の書』巻之1に一応エンドマークを打ったのだが、当然ながらそれでは終わらないというわけで、今日から直し。まだ終わらない。でもまあ一応予定通りに進行してる。あと、角川の再校に校閲が入ったゲラが来ていて、これは年内戻し。それで今年の仕事はおしまい。たまった積ん読本を片づけながら、ゆっくり仕事場と家の書庫の掃除でもしようと思う。
 読了本『乙嫁語り』 森薫 ヴィクトリア朝メイドラブストーリーでヒットした作者の次の作品は19世紀の中央アジア、ウズベキスタンあたりかな、のお話。これまたディテールへの愛があふれている。衣装とか、建築とか、家庭内の風俗習慣とか。マンガの場合それを全部絵に描かないとならないわけで、うーん、たいしたものだよという。末子相続が当たり前の一族の、末息子は12歳。しかしそこに来た嫁はなぜか、ここらでは完全に行き遅れの20歳でした、というところから始まって、さあ、物語がどこへ転がるか全然わからない。楽しみなり。

2009.12.08
 『黎明の書』はやっと終わりそう。一応明日には終わる予定。いつも150枚くらいだけど、今回はやっぱりちょいとだけ長くなる。180くらいかな。この予測、どこまで当てになるかお慰み。
 龍の文庫ヴェネツィア編の見本が到着。今回の解説者は井上雅彦さん。吸血鬼愛にあふれてます。書影は上にあり。
 前回のパンが実はあまりうまくいかなかった。タンパク質の寮が少ない国産小麦粉だったので、準強力粉として使えるかなと思ったら、そこがいまいちで、後で本を見たら、もっちりした食感とあったので、今日は白神こだま酵母で、山形の食パンを焼いてみた。まだ味わってません。見かけはいいです。

 読了本『失われた町』 三崎亜記 集英社文庫 ある日ひとつの町からすべての人間が消失する。町の住人はその日の前から消失の運命に気づくが、マインドコントロールされて逃げられないし助けも求められない。そういう奇妙な事態が三十年に一度くらい起こるパラレルワールドの日本で、それに立ち向かう人々の話。人を消しているのは「町」だということになっているが、その理由もメカニズムも最後まで判らない。一種の伝染性の病気のようでもあり、自然災害の寓意のようにも読める。正体の掴めないものの巨大な意志というと、レムの『惑星ソラリス』なんか思い出すが、そういうリアリティは希薄で、SFというよりやっぱり寓話っぽい。なんとなく「ここで感動!」「ここで泣くところ!」と印が付いているみたいで、最後までしらけた感じで読み終える。要するに体質が合わないんでしょうね。

2009.12.06
 天気のいい日と良くない日が交互って感じだが、いい日でも夜になると急に冷え込んできて、そうするってえと血圧が上がって頭が痛くなるというのがなんとも困りものである。おまけに今日は手間のかかるパンを焼いていた。どう手間がかかるかというと、こねる時間がながいとかそういうことは全然なく、逆に水と粉とイーストを混ぜたらちょっとゴムべらでかき混ぜるだけで、後は延々と発酵させる。45分発酵させたら一混ぜしてガスを抜いて、それから90分発酵させ、混ぜて60分を二回。丸め直して20分休ませ、さらに濡れふきんをかけて30分成形発酵、ふきんを取ってもう10分。あとは焼き。発酵させるのはオーブンの仕事だが、間外に出るわけにも行かないしというわけで、それなりに仕事していた感じはする。
 小説の方はスプラッタシーンの続きで、心臓を素手でえぐり出して、血管の切れる音がブチブチとか、そんなのを書いておりました。

 読了本『夏の塩』『夏の子供』榎田尤利 大洋図書 元文庫で出ていた、エダさんのデビュー作にして世評も高い「魚住君シリーズ」がハードカバー愛蔵版として再刊された。これ好きなんです。書き下ろしの短編がついているというので、買ってしまって、つい頭から再読して、やっぱりひさびさに泣かされてしまいました。ジャンルとしてはBLですが、恋愛要素はあまり強くないし、エロ度はむしろ低い。脇役の特に女性キャラが魅力的。最近枯れてまいりましたんで、ラブの部分はほぼすっ飛ばしてました。不器用の生き方しか出来ないひとりの若者が、自分の道を見いだしていく成長小説、といってよろしいのではないかと。

2009.12.04
 『黎明の書』はようやくクライマックスに近づきつつあるのだが、アクション・シーンは正直あんまり得意でないので、これがけっこう大変である。でも得意でなくても、お話がそうなる必要が出てしまったので、それはもう仕方がない。なんとかするしかないんである。でもたとえばこれが映画で、見せられる立場になったら「こんなの見たくない」といいそうな気がする。スプラッタではないが、けっこう流血なシーンなのでありますな。受け手としてはだめだけど、書き手になるとなぜか平気なんだよ。切り裂きジャック書いた時も、内臓ドバドバがわりかし快感だったりしたからな。
 読了本『扉守 潮ノ道の旅人』 光原百合 文藝春秋 光原さんは兼業作家で、本がなかなか出ないのだが、なんと今年は2冊出た。快挙であります。ご自身のふるさと尾道をモデルにした町を舞台に、はんなりと品が良く美しい幻想連作短編。四季がめぐるのかなと思ったら、春のお話が多かった。尾道は何度か行ったけれど、桜の頃は知らない。少しだけ知っている町だから、かえってこんな不思議なことが、本当にここでは起きそうな気がしてしまう。物書きにとって、ふるさとというのはひとつの大きな財産だなといまさらのように思った。巻頭『帰去来の井戸』が絶品。

2009.12.02
 いよいよ12月と思うとほのかに気ぜわしい感じはしてくるけれど、有り難いことに差し迫った〆切があるわけでもなく、角川の書き下ろしはまだゲラは来るけれどそう大きな手直しは必要ではないし、本のデザインといったことは多少の希望はいうにしても基本的にお任せしてしまうので、わりと気は楽である。表紙画は藤田新策さんが描いてくれるそうで、初めての方になるから楽しみ。あとは『黎明の書』で、いま100枚は超えたのだが、この調子ならばそんなにページが超過することもなくまとまりそうで、これについてもホッ。といっても、今日は昨夜の飲み会の余波でいまひとつ労働意欲が湧かなくて、残りのプロットをざっとまとめただけで後は遊んでしまった。明日からは取り敢えず真面目にやろう。