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2009.02.28
 今日は大賞候補作のもう一作、未読だったのを読み終えるつもりだったが、ちょっと池袋に行く用事が出来たので電車。まあ、行き帰りはずっと読書だ。行ったのは本屋のリブロと地下の食品スーパー、これも毎度。今年のマイブームは果実酒なのだが、なにか変わったものがないかなとネットを見ていて「バナナ酒」というのを発見。ホワイトリカー一升にバナナ1キロ、皮ごと三つに切って放り込んで放置するだけ。砂糖も要らない。しかし普通に売っているのでは農薬が気になるというわけで、せめて無農薬と書かれているやつにしようと、これは西武の地下でゲット。他にも買いたかった本は首尾良く見つかったので、速攻戻ってきて読書続行。その本についてはまだ読み出したばかりなので、また明日報告します。あ、でもそろそろ北斗学園に戻らないとなあ。

2009.02.27
 関東は雨が雪になり、いまは止んだけど冷え込んでいる。サイン本発送完了。あとは本格ミステリ大賞の候補作のうちの、未読だったものを読んでいる。明日一日は読書にして、3月から北斗学園の残りを書くことにしよう。
 お礼状のお礼、一件。愛媛のKさん。いただいた手作りのトンボ玉、手持ちのシルバー・チェーンを通してチョーカーにしました。黒のハイネックと合わせるといい感じです。ありがとうございました。

 読了本『ペガサスと一角獣薬局』 柄刀一 光文社 本格ミステリとしての評価軸と小説としての評価軸は、常に対立するとはいわないが、ずれる場合が少なくない。本格プロパーの読み手は当然軸足が前者にいっているから、後者についてはほとんど気にしないようだが、篠田はどうしてもそれが出来ない。小説として引っかかると「それはさておき本格ミステリとしては」とは思えなくなってしまうのだ。
 イギリスやノルウェーが舞台の小説で、ほとんどの登場人物は現地の人間で、主たる会話は英語で行われているという設定で、親しくなったのでファースト・ネームで呼び合うようになったと書かれていて、その会話の中で「**さん」と書かれていると、この「さん」はなんだろうと考えてしまう。親しくなってのファースト・ネームに「ミスター」はつけないはず。それからイギリス人が「縁起が悪い」と語っているけど、英語ではなんといっているんだろう、とひっかかる。縁起は極めて東洋的な観念です。龍に髭があるといっているが、髭のある龍は東洋だけで、西洋の龍の図像は歴然と爬虫類であり髭は生えていない。ノルウェーに竹は生えているだろうか・・・
 こうした枝葉末節にどうしても引っかかってしまうんだなあ。ミステリに関係ないだろうって。だから、そういう細部に目をつぶれないのが篠田の読者的な弱点なの。

2009.02.26
 昨日転送されてきた郵便物を開封。新規お申し込みが10通、礼状が14通。サイン本は明日全冊発送しますので、数日中にお手元に届くと思います。もう少しだけお待ち下さい。お礼状はみなさん暖かいおことばで、お礼のお礼を出したいくらいですが、そうもいかないのでここでまとめて「本当にありがとうございます」と申し上げておきます。もう少し落ち着いたら、サイト上でイニシャルだけで簡単にお返事をつづるかも知れない。その場合は以下のような感じです。
 名前を小説に使っていいですよ、といって下さったMさん。ミステリ作家にそんなことをいうと、無惨な死体になったりするかも知れませんが、いいんですか?(笑) いや、これまでも許可をいただいて登場してもらった方がおりますが、やはりそういう場合はなかなか、死体役は振りにくいです。
 『黒影の館』のご感想もいただきました。門野じいさんの株が意外と高いです。神代とあの子を引き合わせた、という点が買われたか。神代さんは「俺の意志はどこにある」と少々文句を言いそうですが。モイラはあちこちから「怖い」といわれてます。作者はわりと好きです、この子。神代への片思いが切ないです。

 読了本『男爵最後の事件』 太田忠司 ノンノベル 『上海香炉の謎』から18年、霞田志郎シリーズも完結だそうです。このシリーズは探偵役が出会った事件の記憶を引きずり、痛みから自由でないという意味で、建築探偵の作者としても親近感を覚える作品でした。後半の重要人物だった男爵こと桐原の正体がここにきて明らかになります。この人下手をすると、京介父よりも猛悪な人物だったのね。そのへんをもっとねちっこく描いてくれたらなあ、と思ってしまいました。ねちっこく、なにをするかというと、もちろん志郎をいたぶるの、もっともっと。そのへんをさらりと終わらせてしまったところが、太田さんの健全さなのだとは思いつつ、ちょいと物足りなかったりしてね。はい、篠田はねちっこくやります。でも、もう少しエネルギーをチャージして、他社の連載原稿を書きためてから取りかからないと、途中で行き倒れるかも知れないので、待っててね。

2009.02.25
 二回目の手直しを終えてメフィストの原稿を送り、やれやれ。予定よりは早く終わったので少し休もうと思っていたのだが、今日家に戻ったら手紙の束が。消印を確認すると2/5の封筒も何通もあって、これはやはりいつまでも置いておくわけにはいかないので、明日開けます。サイン本を申し込んでしばらく経つのにまだ届かないという方、もうちょっと待って下さい。ぜいぜい。

2009.02.24
 ご無沙汰しました。やっとこ『緑金』の初稿が上がったので、久しぶりに日記を書きます。といってもほぼ毎日お籠もり状態で仕事をしていたので、あんまり書くことがない。昨日は一応目鼻が付いたな、というわけで池袋に出て、ビックカメラでイアホンを買い、これはエアロバイクを漕ぎながらDVDを見るためのもの。買ってみていないのがかなりあるんで、少しペダルを踏みながらこなそうかなと。後は本屋で好きなものを買って、地下の食料品売り場でパン用の小麦粉と鶏の丸のままを買って帰りました。なんで日本の普通のスーパーって、クリスマスの時以外は鶏の丸を売ってないんだろ。今日は書き上げた原稿をプリントアウトして、赤入れて、もう一度プリントして、明日頭が冷えたところでもう一度読み直します。例によってプロット立てずに書いているから「あれ、これってどういう話なんだろう」と首をひねりながら行きつ戻りつして、しかしいつもどうにか終わる。なぜか終わる。首の皮一枚で繋がるってやつです。そうしたら今度は北斗学園の残りを書き上げないとならないんだけど、あっちはあっちでまだ繋がってないのかも。クライマックス寸前で置き去りにしてきたからなあ。でも、その前にちょっとだけ休もうっと。

2009.02.20
 ここしばらくは講談社の雑誌メフィストの連載『緑金書房午睡譚』の原稿。今日でやっと94枚になり、ラストもほの見えてきた。だいたい他の原稿をやる都合で、一度お休みさせて貰っていたのがいけない。一度メモリがクリヤされてしまうと、次は何を書くつもりだったか、覚えているようで忘れている。プロットはあっても盛るべき気分が香りのように雲散霧消しているので、なかなか戻せない。今回は前に考えていたのとは、全然違う話になってしまった。でもまあ、なんとか今月中に目鼻は付くかな、という感じになってきた。

2009.02.15
 昨日から四月に出る神代もの『桜の園』のゲラをやっている。このシリーズは「ブルー・ハート、ブルー・スカイ」の1991年春と、『未明の家』の1994年5月の間の、年表的空白を充填しようという意図で始めたので、今回は92年の春と夏。神代がヴェネツィアへ研究休暇で出かけて不在になり、西片町の神代宅から蒼と京介がそれぞれひとりぐらしを始めるまで、短編集が少なくともあと1冊くらいは必要だと思うのだが、いまのところいつ書けるかはちょっとわかっていない。本編最終巻を終わらせてからになる可能性が高そうだ。
 友人で作家の光原百合さんから、『永遠なる神の都』の感想をいただいた。彼女はセバスティアーノのファンなので、その点ではご満足頂けたようです。

2009.02.12
 仕事が詰まってきたので、しばし日記の更新が滞ります。サイン本プレゼントは続行中ですのでご遠慮なくどうぞ。ただし発送は少々お待たせすることになるかと思います。

2009.02.08
 二日かけて21通のサイン本を発送するまでにした。昨日日記に書いたとおりの、厚手の名刺みたいな紙のカードがあって苦笑。糊で貼ったら端から反ってめくれてくるので、さらにセロテープをべたべた。見てくれは悪いけど仕方がない。それから切手も古かったりすると、糊が効かなくて剥がれてしまう場合があるみたい。実はこの前日曜日にポスト投函したら、切手が剥がれてしまったケースがあったらしい。それで一日遅らせても、小包はすべて郵便局の窓口経由で発送することにした。
 それから今回思ったこと。お礼状を下さる方がとても多い。前にも何度かサイト上で告知して、自分で作った本を売ったことがあるのだが、「届きました」というハガキ一枚来ることは希だった。やはり少額であっても代価をもらうとなると、「届いて当たり前、届かないけりゃ苦情」ということになるのかな。新刊を出したばかりだった、ということもプラスに働いたのかも知れないが、とても嬉しく拝見しています。暇でもないのに我ながら物好きなと思ったけど、手を掛けているだけの見返りはちゃんといただいているなあと。こんな機会がなければ、書かれなかったろう声を聞かせて頂けることが、どれほど篠田にとって有り難いことか。先日「ルール違反です」と心を鬼にして返送してしまった方からも、ちゃんとお手紙が届きました。どうしようか、かなり迷ったんですけどね、わかって下さる方で本当に良かった。
 それから「龍も読んでます」という方も意外に多くて、これも嬉しかったです。最終巻の感想、ぜひお聞かせ下さいね。講談社宛でかまいません。別に中開けてみたりしないから。建築探偵はまだこれから大変だけど、龍はとにかく書きたいことを書きたいだけ書いて、過不足なく畳めたと自負しています。クライマックスをぎゅっと圧縮した分、全員に均等に光が当たったとはいえなくなりましたが、そこはご勘弁。これについは完全燃焼した気分が強いんで、続編はいまのところ考えておりません。建築探偵は、というか、あの人たちは、なかなか退場しないというか、また戻ってくると思います。問題は商業出版が可能かどうか、ぶっちゃけていえば本が売れるかどうか、だけなんです。ほんとに売れないんですよ。特にノベルス。書店の棚が減ったでしょう。なんとなく温暖化におびえる白熊の心境です。いえ、マジで。

2009.02.07
 昨日サイン本応募手紙がどさっと転送されてきた。1/27から2月の頭あたりの消印のあるもの。これで合計が100通を突破し、いよいよ差し上げる本がなくなりかけてきた。上にも書いたが、文庫の未明から翡翠までの3種はまだ当面ある。これはなぜかというと、増刷が多くかかっているから。増刷するたびに文庫は、著者の手元に2冊、ノベルスは1冊送られてくる。増刷の結果『未明』が一番部数的には多く刷られている。ということは、最初の『未明』だけ読んで投げちゃった人がかなりの数いるのだなあ、ということになるんだけど、そのへんはあまり考えると落ち込むので考えない。
 まあともかくそんなわけで、いまからだと「終わりました、ごめんなさい」で希望でない本が届くかも知れないが、そのへんはなにとぞお許し願いたい。それからこの企画は講談社とはまるで関係なく、ただ転送だけしてもらって、後はひたすら篠田が内職のように封筒詰めから発送までやっているのであります。宛名カードを付けろとか注文しているのはそれだから。シールでなくただの紙に住所を書かれる場合、出来るだけ糊が効くような紙を使って下さい。てらてらつるつるした紙だと、貼り付けても途中で剥がれちゃうかもしれないよ。そこんとこ、よろしくっ。

 読了本『赤い月、廃駅の上に』 有栖川有栖 メディア・ファクトリー 鉄道怪談短編集。テツの方はやはり、鉄道を出すと愛情の籠もり方が違うみたい。篠田が建築に愛を覚えるようなものでしょう。篠田的に秀逸と思った一編は「密林の奥へ」。言葉の通じないアジアあたりを旅していると、カフカみたいな不条理感を覚えることがある。そのへんと鉄道を組み合わせていて、かなり怖い。これが鉄道じゃなくてバスだったら、この怖さは出ないなと思うところが鉄道怪談たるところ。深春が読んだらうなされそうな話(笑)

2009.02.06
 仕事場のガスレンジを新しくしたのだが、そこに「自動炊飯機能」というのがついているので、試しに使ってみた。付属の鍋があって、それに水と洗った米を入れてスイッチ、ポンであとは勝手に炊ける。炊けたけど、電気釜より美味いかどうかはよくわからない。篠田は米の飯にはあまり思い入れがないのです。仕事場には1977年に結婚したときに親からもらった電気釜があって、ちゃんと炊けるもんね。32年ものか、我ながらすげえ。

 ミステリーランドの本がぼちぼちノベルスに降りてきていて、今月は島田荘司『透明人間の納屋』が。しかし、この袖の著者のことばって、ネタバレじゃん。初読の方、袖を読んではいけません。

 気がついてみれば2/6.ということは龍のラストは書店に出たのだろうか。飯能には来てなかった気がするなあ。光文社文庫の異形コレクションは2/10らしい。よろしく。
文庫オリジナルアンソロジー「異形コレクション」の新刊『幻想探偵』光文社文庫

2009.02.05
 昨日は泡坂妻夫追悼というわけで、デビュー作の『11枚のとらんぷ』を再読した。昨日は書き忘れたが、泡坂作品のひとつの特徴に登場人物がいずれも個性が強く生彩に富んでいる、ということがある。本格ミステリの人物はどうかすると「殺され役」とか「疑われ役」とか「失敗する探偵」とか、役割の貼り紙が背中についているような書き方しかされない場合がままあるが、泡坂作品の場合はそんなことはない。どうかすると「こんなしっかり書き込まれた探偵役がシリーズにならないなんてことがあるだろうか」といいたくなる。『乱れからくり』の探偵役なんか、まさにそんな感じなのに、作者は惜しげもなく使い捨てた。しかし個性の強さはひとつ間違うと「あくどさ」や「悪ふざけ」の方に転がる場合もある。下品なおっさん役を書くのがお好きだったようで、そういうキャラがシリアスなムードを引っかき回して笑劇化してしまう場合もある。デビュー作では素人のマジック愛好会が主人公、探偵役、被害者、犯人を含んでいて、前半は彼らが市の公民館で行うショウのさなかに事件が起こり、後半はマジシャンの世界大会というお祭り騒ぎのさなかに事件の解明がされる。派手やかなことこの上ないし、途中で退屈などしようがない。というわけで、どうかぜひ読んで下さい。東京創元社の文庫でまだ手にはいるはず。

 やっとこすっとこメフィストの連載『緑金書房午睡譚』書き始めました。

2009.02.04
 ミステリ作家の泡坂妻夫先生が死んでしまった。パーティでお見かけして得意の奇術を拝見したことが何度もあるくらいで、特に面識があるというほどではなかったが、篠田は特に泡坂先生の初期作品のファンで、中でも『乱れからくり』は本格ミステリのオールタイムベスト10の不動である。なにがすごいといって、どんなミステリでも平気でぽろぽろとトリックやプロットを忘れてしまうのに、気に入りの泡坂作品はちゃんと覚えている。忘れない。というのは、文章力が優れているからだけでなく、トリックがシンプルで効果的だからだ。あまりにも複雑を極めたトリックは、そもそも理解するのが大変だし、その記憶も維持しがたい。『乱れからくり』は、わかってみれば実にシンプルな話なのだ。しかし冒頭に起きた驚くべき不測の事態が、まず読者を眩惑してしまう。そして始まる連続殺人。ラストで事件が解決されると、それが見事に反転する。あっという驚き、同時にすべての謎めいた要素が、しかるべきところに収まっていく快感と納得。しかし、謎が解体された後の「なあんだ」という索漠としたしらけ感はまったくない。ここで冒頭の不測の事態がずーんと効いてくる。人のたくらみを超えた運命、摂理、神の裁きのように。隔靴掻痒の書き方はお許しあれ。未読の読者で興味を覚えた方は、ぜひ探して読まれることをお勧めする。他にも『11枚のとらんぷ』『湖底のまつり』『花嫁の叫び』『妖女の眠り』など、いずれ劣らぬ傑作揃い。亜愛一郎シリーズなど、短編の巧みさでも定評ある著者だったが、ここは篠田の趣味に淫して、もっぱら初期長編をプッシュさせてもらう。

2009.02.03
 文庫オリジナルアンソロジー「異形コレクション」の新刊『幻想探偵』光文社文庫 見本来る。ヴェネツィアものの短編を寄稿しているので、ご興味がおありの方はよろしく。書店に何日に並ぶかは聞いていない。確認できたら書きます。
 しかしこういう本が来ると、つい仕事をほったらかして読みふけりたくなってしまうので、今日は暖かいし、コンビニでお茶とおむすびをひとつ買って近所の山へ。歩けば頭も動くし、読書に逃避することもできないし。駅からわずか一時間で到着できるピークで昼飯。かなり汗ばんでくしゃみが出る。となればまた下山して、一時間で着替えが出来るという、まことに怠惰なハイキングである。

2009.02.02
 メフィストに二回載せた『緑金書房午睡譚』の続きを書かなくてはならない。しかし篠田の悪い癖というか、しばらくそこから離れているとほとんど忘れている、なにもかも。というわけで、取り敢えず雑誌に載せた二回分を読み直すところから始めたわけだが、メフィストは最近やたらと厚くて、送られてきたときも読むのはほんの一部分。それで、つい読んでいない作品を読み始めてしまったりして・・・。いかんなあ(慨嘆)

 読了本『越境』 平澤是曠 北海道新聞社 昭和十三年に当時の人気女優岡田嘉子が演出家杉本良吉と、サハリンの国境を越えてソ連に逃避行を計った。それきり鉄のカーテンの彼方に去った彼らの消息は長らく不明で、戦後になって岡田のみが無事ソ連社会で生きていることは分かっていたが、マスコミに取り上げられたのは昭和四十七年の岡田の帰国からで、このときのニュースはなんとなく覚えている。この本は戦時体制に向かう昭和初期の日本で、共産主義者として弾圧に晒され続けた演劇人杉本が、共に配偶者のある身で岡田とふたり「恋と思想」をかけてソビエトに逃がれるまでの経緯を細密に語る。悲劇だったのは当時のソビエトが共産主義者にとってもまったく夢の国ではなく、スターリンによる粛清の嵐が吹き荒れる最悪の時代だったことで、彼らの亡命はスパイの潜入と決めつけられ、拷問によって筋書き通りの自白を強いられ、杉本が尊敬するメイエルホリドの処刑の口実とされたあげくに杉本も銃殺されたことだった。女の岡田のみが刑務所に送られるが処刑は免れたものの、戦後になって日本との往来が許されてからも彼女は生涯ソ連で彼らを待ち受けていた悲惨に運命についてはほとんど語ることがなかった。唯一の希望と思い、最善の道と信じて突き進んだ先に待っていたのが祖国以上の地獄であったと自覚させられたときの、彼らの心情を思うと絶句するしかない。この世には想像を絶する悲惨というものが、なにげなく転がっているものだ。

2009.02.01
 やっと晴れた。『黎明の書』第二回のゲラが来たので、これをやった。こちらからは直すところはないので、さらさらりと終わる。後は頼まれものの『日本幻想作家名鑑』のゲラを読む。思ったこと。日本の作家って広義の幻想ものを書いている人がすごく多いんだなー。純文学作家もミステリ作家も、ひとつやふたつは幻想っぽいものを書いている。でもたいていあんまり知られていない。そして自分はあんまり読んでないなー。決してミステリ・マニアではないといいつつ、ミステリ作家の書いた幻想小説はほとんど漏れている。読んでもディテールはほとんど忘れてるなー。つまりチェッカーとしてはあんまりものの役に立たないと自覚。ごめんよ。