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2008.04.30
 仕事場の隣で家の解体をやっていてかなりうるさい。しかし木造家屋というのは、ずいぶんあっさりと壊されてしまうものである。跡地にはもしかしてマンションでも建つのかなあ。そうするとしばらくずーっとうるさいだろうなと、ちょっと嫌になる。そんな先のことまで、気にしたってしょうがないんだけど。
 「龍」ローマ編後半戦、第2回も一応直しておわり。3回目のプロット立て始める。なんだかますますセバスティアーノが好きだ。自分がこれまで書いてきたかなりの数のキャラの中でも、好き度では相当上の方に来るかも知れない。いままで自分はもっぱら美形好きだと思っていたのだが、根暗なネズミ男がこんなに好きになるというのはまったくなぜなんだろう。

2008.04.29
 昨日は市販の睡眠薬を一錠飲んで寝た。薬で眠るとよく眠れてもぼけが残るので、結局あんまり快調ではない。しかたなくコーヒーをがぼがぼ飲み、エアロバイクをぎこぎこ漕いでなんとか眠気を覚まし、96枚で一応第二回終了。読み返して手入れしてぎりぎり四月中に2回分書き終わり、といえるかな。

 読了本『なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか』 今枝仁 扶桑社 タイトルはずいぶん際物チックだけど、中身はとてもまっとう。光市事件の被告弁護人のひとりが書いた本で、被告の成育史のこととか細かに書いてある。視点は被告寄りだけど、遺族の本村さんを敵視するようなことは一切なく、そういう点での配慮はちゃんとある。最高裁で被告の証言が翻ったわけではなく、検察が予断でゆがめていた部分がようやく明らかにされただけ、といわれてくると、過去の冤罪事件でも似たケースはあったことなどが思い出された。つまり検察が「ありそうなストーリー」を描いて調書を取り、途中から被告が気を取り直して「それは事実とは違う」と主張し始めるというのは、あることで、死刑怖さに後から嘘をついたと決めつけるのは早計だということ。それから新聞記事を読んでも、被告を幼児から虐待していた父親がそのことに一片の反省もなく、息子のことを「しつけただけだ」「早く忘れたい」などと話しているその無責任さを思い合わせ、暗澹とした気分にならざるを得ない。
 ただ、どれだけ「計画性のない行為」「母に見立てた女性への甘え」「殺意はなかった、パニックに陥って夢中で相手を押さえつけて死なせてしまった」といわれても、殺してしまったことは事実なんで、計画性と殺意がなければ罪にならないのか、と、いまの法律の考え方に対する疑問が湧いてきてしまう。それと本村さんが「反省して欲しい」と言い続けること。「自分の手で殺してやりたい」といっていた彼が、自分を理性によって必死に御した結果、「反省を」という要求になっていった、それは理解できるし、他に言いようがないというのはわかるが、遺族の目にも見える反省ってどうすればいいのか、被告の身になってみればこれは難しい。というか、そういう形で本村さんの心が満たされることはあり得るのだろうか、とも思ってしまうのだ。だってどんなに反省したって、一度殺した人は生き返らせられないんだよ。もうそこから先は、宗教の領域だもの。神を持たない日本人は、どうやってこういう「どうにもならないこと」に決着を付ければいいのかわからないんだろうな。

2008.04.28
 ちょっと不眠気味で頭が痛い。小川町の展示会に行き、そのまま池袋に出て、ぱぱぱぱっと買い物して戻る。が、結局不調が尾を引いてそのまま沈没。情けない。

2008.04.27
 今日は微妙に不調。なんかうまく原稿に集中できない感じで、頭が画面の文字の上を滑ってしまう。仕方なくジタバタと、パンなんか作ってみる。250グラムの粉に150グラムぎっしり胡桃入りの胡桃カンパーニュ。パンは美味しく出来た。夕方になって祥伝社の担当から連載第6回のゲラが出ましたというメールが来て、「ゴールデンウィーク中の日曜なのに彼は働いているのか」「わしも怠けているわけにはいかん」「それに第6回のゲラということは、いよいよ追いつかれたわけで」とそぞろ気分が焦り、大車輪でキーボードをぶっ叩いて、かろうじて77枚まで。コンスタントに20枚はやはりきついのお。

2008.04.26
 今日はどうにかぎりぎり20枚クリア。61枚まで。今月中に200枚、だけは終わりそうだ。しかし、去年の秋に買ったパソコンのマウスが突然壊れた。んもうう。

 読了本『聖域』大倉崇裕 東京創元社 落語にフィギュアといろいろ引き出しの多い大倉さんだが、こちらは山岳ミステリ、そして紛れもない傑作。山なんて全然登っていない篠田だが、知らない世界を知ったような気にさせてくれるのも小説の醍醐味のひとつです。

2008.04.25
 やっとこすっとこ41枚。進みが遅いなあ、我ながら。やっぱりお泊まりしないと無理かしら。光文社文庫のゲラも来てるんで、適当なところでこっち止めてそっちもやらないとならないんだけど、ずーっと引っかかっていた「激辛数独4」の2問がふと解けたりして。1から4まで全部やって、クリアし終えたのは1のみ。あとはいずれも2から3問解けないのが残っている。4はあと1問。時間食い虫のパズルなんだわあ。そういうことやっているから原稿が進まないのか。

 読了本『腕貫探偵、残業中』 西澤保彦 実業之日本社 読み出したら面白くて止められなくなってしまった。そういうことをやってるから原稿が進まないのか。今回は窓口で市民の相談を受け付けているのではなく、プライヴェートな状況で持ち込まれてくる各種謎解きに答える「腕貫さん」。意外にグルメ、しかも店情報もたくさん持っているなどという、前作では見えなかった側面も浮上してキャラの厚みが増した。ミステリの部分も西澤さんのディープな味、フェチなところや毒なところ、がほどほどに押さえられた分読み味が良くて好感度高し。

2008.04.24
 昨日は所用で一日外出。今日はジムに行ったのでやっとこ24枚まで。しかしゴールデンウィークは例によって外出予定なしなので、せいぜいがんばって仕事を進めよう。

 理論社の書店回りについては、担当編集Mさんがブログで報告してくれている。アドレスは以下の通りだが、この前書いたミステリーYA!公式サイトからも「路地裏日記」でリンクしています。
 http://www.mystery-ya..cocolog-nifty.com/blog/
 それから担当さんが北斗学園の校章をシールに作ってくれた。中等部高等部大学と、ちゃんと色とデザインを変えてある。「子供向きの小説だから読まない」なんていっている人から手紙をもらったら、宣伝のつもりで返事に貼り付けちゃおう、とか思ったんだけど、もしもセットで欲しい、という人がいたら、理論社の奥付住所気付篠田真由美宛お便りを下さい。その中に「サイトの日記を見ました。校章シール下さい」と書いて、ちゃんと返送先の住所氏名を明記してくれたら、若干名様にプレゼントしちゃいます。デザインについては上記ブログに写真がありますのでご参照。まあ早い者勝ちかな。そんなに殺到はしないと思うけど。

 読了本『幽霊狩人カーナッキの事件簿』 W.H.ホジスン 創元推理文庫 オカルト探偵ものシリーズ短編だが、中にはミステリのように合理で落ちる話もある、というのでかなり期待して読んだのだが、やはりジャンル・ミックスは難しいものだといまさらのように痛感した。霊現象ではなく人為だったという落ちでは、伏線がほとんどないのでミステリとして物足りなさを覚えてしまうし、実際に心霊現象だったという場合もそれはそれでリアリティに欠けている感じがしてしらけてしまった。全部の話が「事件が終わった後で主人公が友人たちに話して聞かせる」という形になっているので、いかにもわかりやすいのだけれど、1ステップある分話に巻き込まれる迫力はいまいち。ラブクラフトのような脅迫的な狂気がないっていうか。

2008.04.22
 昨日は合計五店の書店さんを回って、理論社の本のサインをしてきた。紀伊国屋新宿南口店、新宿本店、リブロ池袋西武店、ジュンク堂池袋店、丸善丸の内本店。というわけで、それぞれに新刊10冊サイン本あります。各書店さんは少なくともこれだけは売らないとならない。なぜかというとサイン本は返品できないからです。
 ふだんは準引きこもりをやっているので、たまにたくさん人と会うとがっくり気疲れする。というわけで今日はどうも不調だったが、そんなことはいっていられないので、どうにか駅前のスタバまで行って龍第8回のプロットをようやく立て終える。その後せっかくお天気がいいので少し遠回りして、山の緑とつつじの朱赤を眺めて、仕事場帰着。どうにかこうにか書き出して10枚。でも明日はまた出かける用事があるのじゃ。

 読了本『黒笑小説』 東野圭吾 集英社文庫 小説家についての小説を小説家が読むと、なかなかに複雑な気分になるもの。かなり誇張はあるんだが、賞の選考結果を待つベテラン作家と編集者のドタバタとか、全然期待されない新人作家の勘違いと悲哀とか、「いまは東野さん売れ売れだから平気でこういうの書くよなあ」とこっちなんか思っちゃうんである。いま毎日新聞の日曜版で石田衣良さんが、中堅であんまり売れていない小説家しかも父独り子独りというのを書いていて、こっちはリアルっぽいからよけい痛い。初版の8千部が7千部に削られて落ち込んだり、後輩作家の作品にジェラシーを掻き立てられたり、担当編集者が突然営業に異動した上自分の担当がいなくなってプランを練っていた作品が書く前に没になったり、まあ痛いこと嫌だこと。「石田さんも売れてるからなあ。でもきっとこの小説では、主人公もそのうちどっとブレイクしてめでたしめでたしになるんだろうなあ。けっ」とか思っちゃう。でも、読むんだけど。

2008.04.20
 手直しより先のプロットを立てようなあと思いながら、結局手直しを優先してしまった。103枚まで。でもまあ明日は一日書店回りで仕事は出来ないので、その前に区切りまで書けたってことで。そんなわけで明日はたぶん日記はお休み。

 読了本『日本を降りる若者たち』 下川裕治 講談社新書 篠田がバックパックしょって旅に出たのは1980年のことでした。その後も何度かかなり貧乏な旅はしているし、バンコクのカオサン・ロードでゲストハウスに泊まったこともあるけど、ああいうところに沈没するのはやっぱり嫌でした。旅して、いろんなものを自分の中に吸収して、日本に戻るのだとしか思わなかったというのは、ひとつは日本からではなく日本語から離れられなかったからだと思う。まだ小説家にはなっていなかったけど、活字中毒だったの。長旅は本が切れるのが苦しかった。今じゃすっかりものぐさになってしまって、国内旅にもなかなか出かけない。でも有名でない小説家って、半分引きこもりだし、世間を降りてる感じもあるからなあ。有名な小説家は、そんなことないんだよ。引きこもりたくてもマスコミが引きこもらせてくれない。文壇という一種の世間に己れを露出しないとならないし、直木賞とか獲ったら文壇以外の世間にも出まくりだ。大変だと思う。もっと本が売れたらうれしいけど、テレビに出たりエッセイで私生活をお金に換えたりはしたくないから、いまぐらいでいいのかな。って、あんまりこの本とは関係ないこと書いてますね。
 『芝浜謎噺』 愛川晶 原書房 愛川さんの落語ミステリ第二弾 おもしろいです。でも、落語についてざっとでも知識がある人の方が、たぶん知らない人よりずっとおもしろい。北村薫さんの円紫さんシリーズは落語にことよせてミステリを作るという感じだけど、こっちはもっとディープに落語です。「野ざらし」や「芝浜」の話としての弱点の指摘には、あっ、なるほどと思っちゃいました。落語好きな人なら、そこだけでも読む価値ありでしょうね。

2008.04.19
 朝は晴れたと思ったら、夜はもう雨。今年の天候はやたらと変わりやすい。
 昼間駅ビルの本屋に行ったら、北斗学園の1と2が面陳されていた。しかも1が1冊減っていた。ということは、前回買わないお客様が表紙に惹かれて買ってくれたに違いない。2も面白いです、買ってやって下さいと、本当は店頭で手を合わせたいところだが、それをやると危ない人にしか見えないので、胸の中でやりました。
 「龍」ローマ編の第7回、99枚で閉めた。プリント・アウトしたので、明日は読み返しながら第8回のプロットを立てる。
 
2008.04.18
 本日78枚まで。明日には第一回が終わるかな。で、完成まで六分の一、と。筆が進む時はおおざっぱには決めてあるラインの上からはずれないけれど、細部が「あっ、こうなるんだ」と書きながら発見がある場合が多い。今日もこれまでちらちらと出てきた脇役が、わりとまとめて出るので、固有名詞を決めないとやはり具合が悪い。イタリア人の名前で、そんな立派じゃなくて、軟派な感じで、というので資料本をぺらぺらやっていて、ロベルトというのを選ぶ。うん、なんか軟派っぽいじゃない。というわけでロベルト、かっこわるい役でした。まさかいないと思うけど、これを読んでいるロベルトがいたらスクージ、です。
 理論社のミステリーYA!のサイトで、「北斗学園七不思議」のページが、新しいイラストでリニューアルしてもらえました。猫が出張ってます。篠田が書いたへたくそなポップなんかまで掲載されていますので、よろしかったら見てやって下さい。
 http://www.rironsha.co.jp/Myatery_YA からです。

2008.04.17
 今日は54枚まで。ジムに行ったので20枚には達さなかったが、久しぶりに疾走感のある原稿書きになりました。この調子でドンドコと行ければいいんだけど。
 今年はいつもの年以上に桜に目が行く年で、「御衣黄」という名前の緑の桜があるというのは、小説に出てきたから知っていたんだけど、すごく珍しいものらしいと思っていたのが、仕事場の近所で人の家の庭にいまや満開になっているのを発見。なんとまあ、こんな場所にあってなんで気がつかなかったんだろうとびっくり。今日は朝ツレに見せに足を運んだのだが、空が暗く曇っていたせいか、昨日よりさらに緑色っぽく見えた。近づいてまじまじと見るとほとんど白いのだけど、遠目に見るとなぜかほんのり黄緑色なのだ。外の方の花弁には薄紅色も滲んでいたりして、すごく微妙繊細な色合い。これはすごい。
 そこのおたくは他に真っ白な八重桜やピンクのぼかしのボンボンみたいな八重桜があって、下はいま花大根の紫が満開で、しかも塀ではなく低いフェンスが回っているだけなので、路地に足を止めてほれぼれと眺められる。いやあ、良いものを見せて頂きましたというわけで、一日ハッピー。

2008.04.16
 「龍」ローマ編続行。本日で36枚まで。久しぶりに一日20枚。でも600枚だとして30日はかかるわけだ。先が長いなあ。
 北斗学園の第一巻が、カバー替えになりました。内容は一緒なんだけどね。イラストレータもデザイナーも変更になったので、二冊並べた時に前のままだと変だというわけで、理論社営業様のご決断でこうなりましたのです。

2008.04.15
 やっと「龍」ローマ編の第7回を書き出す。頭痛い。というのは比喩的な意味ではなく、肩こりで実際頭痛がするんであります。
 それはさておき。今日「光市母子殺害事件」についての記事が出ていて、思ったんだけど、「殺意の有無」で罪の重さが決まるのって、釈然としないと思いませんか。それは過失致死というのは、あるよ。蹴飛ばした石が人に当たって人を死なせたら、それは過失致死だ。でもさ、「人と会話してさびしさを紛らわしたかった」から宅配便の配達人のふりをして人の家に入り込んで、「甘えたい気持ちで抱きついたら抵抗されて、押さえつけただけで殺意はなかった」って、見ず知らずの男に家に入り込まれていきなり抱きつかれた女性、どうするっていうのよ。声あげて抵抗するのが当然じゃない。殺し屋や快楽殺人者でない限り、「殺意はなかった」でも不思議はないっしょ。当人もパニクってたら、なにがなんだかわからない内に殺してた、というのもあり得るでしょう。でもだからって「殺意はないから無罪」ってそんなのありか、と思ってしまう。
 篠田は死刑には反対です。でも被害者の夫が「死刑にしてくれ」という気持ちは分かる。だって無罪じゃ、自分の妻子の死が「何の意味もなかった」で終わりにされてしまうとしか思えないだろうから。幸せな夕餉の団らんを予想して家に帰った彼の悲嘆と絶望を思うと、ぞおっとしてしまう。あまりの恐ろしさに。でも、被告を死刑にしても妻子が戻ることはない。死刑が確定しても、処刑が執行されても、彼の苦しみは消えないと思う。消えないのに他にもうなにも出来ないと思って、きっといまよりもっと悲しくさびしくなると思う。
 だから無罪じゃなく、有罪、それも死刑相当という判決が出た上で、被害者の夫が被告を許してあげられたら、なんて思うのはセンティメンタリズムでしょうか。でもキリスト教の信仰を持つ人の中には、そうして自分の肉親を殺した犯人を「赦す」人もいます。血の出るような思いで「赦す」というのだと思うよ。それでも、彼が「赦す」といえたら、被告がよりも彼が救われる気がするんだ。

2008.04.14
 やっと「龍」ローマ編の前半6回分を直し終える。五月売りの六月号に掲載される第6回は、まだ間に合ったので差し替えてもらうことに。ほんとは第5回で殺した某悪役を「ちょっともったいなかったかな」とも思ったが、いまさら差し替えは間に合わないし、そこはあきらめることにした。まっ、ミステリじゃないので、いざとなったら「死んでなかった」にしよう(爆)

 読了本『猫島ハウスの騒動』 若竹七海 カッパノベルス 再読。舞台は江ノ島をモデルにしたとおぼしき湘南に浮かぶ観光の小島。久しぶりに江ノ島に行ったので、ちょっと思い出して読み返した。といっても、細かいことはたいていほとんど忘れてしまうので、十分楽しんで読める。事件も起こり人も死ぬのに、なぜかユーモラスで読み味がいい。こういうのをコージー・ミステリというらしいのだが、なぜか日本にはあまり作例がない。この作品は若竹さんの仕事の中でも、コージー度が高いと思う。江ノ島と違って干潮の時砂州で繋がる以外は船で渡る猫島という、舞台がとても魅力的。登場人物たちのキャラも立って、大量の猫さんたちがまたすごく良い。特にクライマックスの絵が。でも猫の行動はどこまでもリアルな猫の範囲。若竹さんは相当の猫好きと見た。というわけで、翻訳物のコージー・ミステリのファン、ミステリは好きだけど残酷やおどろおどろは嫌だという読者、そして猫好きの本読みさんには絶対お勧めの一冊です。

2008.04.13
 上天気の翌日にがっこんと天気が悪くなると、こっちの精神状態もがっこんと悪化してしまう。そうでなくても更年期性の鬱が出やすいので、そうなるとなんでもかんでも鬱のネタになってしまいます。まあ、最近の新聞なんか読むと、こういう状況で鬱にならん方がおかしいってなもんですが、この日記であんまりそういうことを並べてもみっともないだけなんで止めましょう。

2008.04.12
 今日は一日遊んでしまった。仕事場から歩いてハイキングに行き(その程度の田舎なのであります)、大した山道でもないのだがそれなりにアップダウンはあるところを、陸上のトレーニングをしているのだろう、ユニフォーム姿の青年が飛ぶように追い越していき、「天狗だあ」などといっていたら、またすぐ向こうから駆けてきて「もう戻ってきたよ、おい」。それが三度続いて「いくらなんでも速すぎるだろう」「近回りしているのかな」などといっていたが、忽然と答えが浮かんだ。「ユニフォーム同じだけど別人だよ」これすなわち、二人一役のミステリ。二人よりもっといたかも。
 散り残りの桜と新緑を愛でて、河原のそば屋で昼酒をたしなんだら、やっぱり午後は使い物になりませんでした。しかたなく、明日食べる予定のパンを焼いて、あとはメフィストを読んでました。恩田さんの沖縄旅行記、いいなー。オリオンビールの生、うまそ。

 「講談社ノベルス25周年全著作リスト」が届く。これって読者プレゼントはないのかな。全部書影が載っているので、「綾辻以前のノベルスって、ずいぶん表紙のデザインが違うな」などとわかって面白い。古い文庫は古本屋でけっこう探せるけど、古いノベルスってあんまりないんだよね。皆川さんの『聖女の島』も、元本は見たことないもんな。

2008.04.11
 ポップ作りが面白くなってしまい、文房具屋で色画用紙を買ってくる。濃い藍色と黒に金銀のペンで書いたり、小さな丸いシールで星座の図柄を作ったり。不器用なくせにこういう工作的な作業が好きで、我ながらつい熱中してしまった。後は「龍」続行。代わり映えがなくて日記の話題もないよ。

2008.04.10
 また雨で寒い。コートもブルゾンも洗濯してしまったので、セーターにウィンドブレーカー。仕事は相変わらず「龍」の直し続行。ポップはどうにか10枚ほど書いた。売り上げに貢献できるか、こんなへたくそなものを立てたら逆効果じゃないかといささか不安なり。
 メフィストが出た。凶器に使えば人が殺せる。仰向けに寝ながら読んだらマジ重さで危険。分厚い。重い。値段は1500円と、軽薄短小が当たり前の現代に平然と逆行する講談社文3だ。篠田の新作が載っています。新しい話です。ミステリ風味の軽ファンタジーってところか。書くのは別に軽くなかったけどねー。長すぎるシリーズを続行して、苦労が多いわりにあんまり恵まれない気がするんで、新しい試みをするのは正直嬉しいのです。建築探偵以外は読まないなんていわないで、お味試してみてちょ。

2008.04.09
 書店回りは紀伊国屋南口店と本店、池袋リブロと丸善本店だそうで、なんかなじみのある店ばかりです。書店回りというのは初めてなんで、いってなにをすればいいのか、サイン本とかせっせと作ることになるのかよくわからんのですが、4/21に行っていただけばなにかあるかも。いまはポップを書いております。どこに置かれるのかとかは、不明。
 長年某社で世話になった担当編集者が、出版社を変わって挨拶に来た。移った先の某社は篠田の担当はいないので、めでたく長年の彼がそちらで担当になってくれる。合わせる顔は一緒だが、全然違うことをやろう、と相談するのは新鮮でまた楽し。

 江ノ島で買ってきた釜揚げシラスは、スーパーで売っているのより甘塩でやわらかくて美味。一日目は和風スパゲティで、二日目はシラスおろしとトマトサラダで完食。また行きたいなり。
 本日は冷蔵庫の残り野菜でミネストローネ、パン屋が休みだったので急遽トマトとオリーブのパン。これはまずまずうまくいった。それから肉屋で値引きしていたサーロインに、ベランダのハーブとにんにく、オリーブ・オイルでマリネして焼きます。結局篠田の料理って「男の料理」だよね。

2008.04.08
 花散らしの嵐でありますね。明け方から風雨の音がうるさくて目が覚めてしまい、少しぼけ気味。「龍」の直し続行。それから4/21に理論社新刊の書店回りをするので、ポップの用紙が送られてきた。篠田はいたって不器用な上に金釘流なもんで、ろくなポップは出来ませんが、一応サインとかして、売り上げが少しでも伸びればいいのだがにゃ。

2008.04.07
 昨日は若い友人と久しぶりに鎌倉に行ってきた。日曜だからめちゃ混みだろうと覚悟したが、海岸はどちらかというと地元の人が散策している感じで、とてものんびり。釜揚げしらすのピザなんかで白ワインを飲んだりして、いい一日だった。
 今日はもちろん仕事、「龍」やってます。

2008.04.04
 結局「龍」ローマ編の後半に入る前に、前半の直しをしている。これでなんとか頭を、続きに持って行ければいいんだけど。えーと、暑い暑いローマなんだよなあ。いろいろ忘れちゃった感じ。なんか頭ン中桜だし(オイッ)。
 週刊文春の千街さんのコラムに、『美しきもの』を取り上げていただいた。でもそこに書いてある「日本人にとってキリスト教とはなにか」なんてのは別にテーマではなくて、この小説のネタを成立させるのに必要だったからで、しち難しい小説ではないので、気にせず読んでちょーだい。あっ、そうだ。これもたぶんどう考えても、やおい読みは出来ませんので、そこんとこよろしく。生きた人間はほとんど女で、男はひとりしか出てこないよん。ラスト1ページの衝撃、だそうだ。そうか、衝撃だったら嬉しい。いや、書いてる方は「全然見え見えかにゃー」と思ってたもんで。

 今週末は所用で出る日が続く。次回日記の更新は月曜夜になる。

2008.04.03
 若い頃は桜なんて咲こうが散ろうが知ったことじゃない的な気分だったが、人生の店じまいが見えてきた歳になると、なにやら毎年の植物の営みも愛しくて、今年は文京区千駄木の旧安田邸にしだれ桜を見に出かけてきた。ちょうど満開。なのに人少なし。二階の本座敷から額縁の中を埋め尽くすうすくれないの花房が折からの風にゆららめく様を、しばし独占して贅沢の極み。本格的な公開は去年の春からで、そのときはぎりぎり満開に間に合ったというくらいだったそうで、まだ知る人も少ないのだろう、まことに穴場だった。その後は六義園に回る予定だったが、あちらはもう夜のライティングも終わっているし、大変な人出だそうで、予定変更。立原道造記念館で詩人でありかつ建築家だった青年の見事な図面を眺めた後は、東大を抜けて駅に行き神楽坂に出た。飯田橋の駅ビルの書店を眺めに寄ったら、ノベルスの棚がきれいさっぱり消滅していて愕然。篠田の新刊すらない。いつの間にノベルスの小説は、こんなにも見放されてしまったのだろう。
 今日は小説ノンの連載ゲラをチェックして戻して、後はジムで一日終わり。明日から本格的に「龍」をやらなくてはならない。

 読了本『深泥丘奇談』 綾辻行人 メディア・ファクトリー すごく凝った造本が印象的。中身は怪談だが、墨絵調のイラストはやけにほのぼのとしている。そのミスマッチ感がなかなか面白いのだが、最初の一作で主人公が病室で、ちちち、という怪しい物音に脅かされる話があって、ここにヤモリのイラストが描かれているんだよねえ。おかげで「このちちちはヤモリの鳴き声に違いない」としか思えなくて、ちっとも怖くならないので困った。もちろん作中では、ついにそのちちちの正体は明確にはされないのだが、だからよけい「ねえ、きっとヤモリだよ」といってやりたくなってしまって。

2008.04.01
 昨日は胃の働きがばったり止まってしまって、胃痛と胃重で一日ほぼ沈没。突然の寒気のせいだと思うが血圧も上がって、マジどーもならんで仕事場で死んでいた。でも献本の礼状書いて、銀行行って、『綺羅の柩』の文庫直し原稿をメール送稿するだけはどうにかやったけど。
 一日準断食で、胃の方はほぼ回復。本日は『緑金書房午睡譚』の2をチェックして送稿。コンビニにメール便を出しに行くついでにちょいとだけお散歩。朝車の中で見たあざやかな黄色の花はなんだったのかと確かめに行った。たぶんレンギョウ。それからようやく7分咲きくらいになったソメイヨシノの下を通ったら、強風で花のついた小枝が引きちぎられていたので、それを拾ってきて硝子のボールにつけた。
 その後は仕事場の資料移動。『美しきもの』の執筆に使ったキリシタン関係の資料をダンボールに詰め込み、同じく『緑金書房』の資料はまた使うのでコンテナに入れて別室に。『闇の聖杯、光の剣』の原稿類も不要のものは捨てて、代わりに『龍』の資料をパソコン横に運び入れる。頭も「月島」から「ローマ」へ。
 というわけで、新しい仕事を始める前に明日はちょこっと半日お休み。都内の桜は盛りを過ぎたことと思うけれど、幸い週末より天気は良さそうなので、出かけてきます。日記の更新はお休み。