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2007.08.31
 昨夏亡くなった編集者の宇山さんも登場するというので、『星新一 1001話をつくった人』最相葉月 を読んで、小説家の業みたいなものにため息をついていたら、異形コレクションの次号は全部ショートショートでやるので、という原稿依頼が来る。長編で頭がいっぱいでとてもそんな余裕はないところだけれど、宇山さんの最初の仕事は星新一の文庫だったというのを読んだばかりだったので、「こういうのも縁だろうか」などと思ってしまう。
 で、布団の中でそんなことを考えていたら全然眠れなくなってしまい、とうとう頭の中でショートショートをひとつ書き上げてしまった。6枚。初体験。それでもまだ眠れなくて、北斗学園の頓挫している理由と打開策などまで考えたらいよいよ眠れなくなってしまい、今日は完全に死んでいる。
 でも、頭の中で書いた一編は文字にした。自分の作品の善し悪しは全然わからない。これがちゃんとショートショートになっているのか、ただの散文詩まがいなのかもわからない。星新一と宇山さんが化けて出るかもしれないが、篠田は短編は苦手なので、こんなものでごめんなさいというしかない。たぶん。
 ずーっと書き続けた作者には申し訳ないが、やっぱり星ショートショートの最高傑作は初期作品の「おーい でてこーい」だと思うのでありました。

2007.08.30
 北斗学園、ちょっと悩み中。調子に乗って書いていたら、リアリティをはみ出してしまった感じ。もちろんリアルな学園ものではないわけだけど、やりすぎるとあまりにも馬鹿馬鹿しくなってしまう。ありっこないけどでもありそう。その兼ね合いがけっこう微妙なようだ。

2007.08.29
 近頃の嫌なニュースといったら、なんといっても携帯サイト殺人である。ミステリというのはどうしても犯罪を扱うことが多いので、たぶん篠田は普通の人よりはそういうことを考える機会が多い。自分を犯人の立場に置くことも無論多々ある。そういう場合どう考えるかといったら、「いかにリスクを減らして利益を上げるか」だ。犯罪心理の基本といったらこれだろう、と思っていた。利益に「感情的満足」も含めれば、復讐や信念といった動機もカバーできる。
 しかしあの事件の犯人には、その程度の計算すらなかった。そもそも勤め帰りの女性を襲って、いくら現金が手にはいるのか。7万円でもずいぶん多いと思う。クレジットカードが発達した現代、多額の現金を持ち歩くのは特殊な場合だけだってことくらい、考えればわかるはずだ。バッグに入れている程度の金を狙うなら、バイクのひったくりで充分だし、せめて現金自動払い機のそばで獲物を狙うくらいのことはしないか。車に引きずり込むならストッキングをかぶって顔を隠すのが犯罪者ってもんだ。それさえしないで「顔を見られたから殺す」ってなにそれ。そんなあほな犯罪者いねえよ、と小説に出てきたらみんないったはずだ。
 ところが、現実にいる。これほど胸くそ悪くおぞましい話ってあるだろうか。ケダモノだっていったらケダモノに悪いような連中が、日の下を歩いていることが気持ち悪い。あまりにも頭が悪すぎるから、かえってミステリの論理で推理なんかしようがない。これが21世紀のリアルなのか? 吐き気がしてきた。

2007.08.28
 今夜は皆既月食のはずで、『月蝕の窓』が来月文庫になるし、赤い月が見られるなあと楽しみにしていたら、なんとドド曇りでだめでした。うーむ、不吉な卦なり、なんて、現実主義者を自認しているくせにあほですね。
 でも、小説の中では幻想とか、伝奇とか、オカルトとか大好きだけど、篠田はやはりリアリストなんだと思います。だからといって、剥き出しのリアルというか、俗な生活感丸出しみたいなのも嫌。毎日ご飯食べてトイレ行かなきゃ生きていけないのが人間だけど、それだけじゃないでしょ。夢は見るし、幻は心に湧く。おまじないも迷信も、馬鹿馬鹿しいと思いながら無縁ではいられない。それも含めてのリアルだということ。つまり、ひとつ例であげれば、鉛を黄金に変える錬金術はアンリアルだけど、それを信じて行動する人間というのはリアルだということ。人の心を掘ればそこに、良くも悪くも幻想がある。そういう認識です。
 いま書いている『闇の聖杯、光の剣』、このシリーズはファンタジーではありません。人語を解しているような猫はいるけど、口は利かない。聖杯を追い求める人間は出てくるけど、誰にも見えるような形での聖杯は発見されない。でも肌触りとしては、なんとなく幻想っぽくもある。それは人が心に抱えている幻想が現れるから。そういうの。いちおうヤングアダルトのつもりで書いているけど、大人が読んでしらけるようなもんじゃないです。

2007.08.27
 北斗学園の2は、章頭にカットが入ることになったので、いつもと違って、1章書き上げるごとに編集者に送っている。いわば連載状態。これはけっこう緊張感が高まる。なにせほら、きちんと決めずに書き出す篠田、だから。いよいよ中盤ででかい山が来るのだが、そこを明日から書く。いわばアクションシーンなので、複数の人の動きを絶えず視野に入れながら、不自然に途切れないように気をつけなくてはならん。こういうの、嫌いではないのだが得意だとはとてもいえない。

2007.08.26
 代わり映え無く今日も一日仕事。県知事選挙に行った他は仕事場から出もせず、あとは30分エアロバイクを漕いだだけなので、万歩計は全然動いていない。しかし運動すれば仕事はできない。北斗学園の続き、やっと160頁まで。今月中に200は、まあ行くだろうな。300では済まないにしても、400までは行くまい。
 読了本『やってられない月曜日』 柴田よしき 新潮社 柴田さんの「女性小説」を読んでいつも思うのは、甘さと苦さ、善意と悪意、納得と意外、安心とスリルといった対立する要素が、いつも過不足無くバランスを保って配されているということだ。だからとても読み味が良い。そしてもうひとつ思うことは、篠田はこういう小説は書けないな、だ。なぜかというと、篠田はちゃんと女でないからだ。人は女に生まれるのではなく、女になる。なにによって。女性文化を学習することによって。篠田は、学習し損ねた。だから大人の女のことがよくわからない。そのせいで、自分ではよくわからないけど、書く小説にはいろんなものが欠落しているのだろう。いまさらどうしようもないし、もう一度人生をやり直せといわれても、たぶん同じだろうけどね。

2007.08.25
 仕事をするときはよくおでこに冷えピタシートを貼る。冷蔵庫で冷やしておいたやつを、ぺたっと。しかし、一時間もしないで暖まってしまう。宣伝文句の「冷却6時間」とか、あれはなんなのだ。使い捨てはもったいないというわけで、今日おでこにくっつけるアイスノンを買った。これなら繰り返し使える。やっぱりすぐ暖まるけどね。見た目はさぞやみっともないが、冷えピタシートと違って、貼ったの忘れて宅急便の受け取りに出たりはしないで済みそうだから、まあいいか。
 読了本『木洩れ日に泳ぐ魚』 恩田陸 中央公論社 引っ越しを明日にしたほとんど空っぽのアパートで、向かい合って酒を飲みながら語り合う男女。登場人物はふたりだけ、舞台はほぼそこだけ、で長編という技巧的なサスペンス。決して悲惨な話でも残酷な話でもないのだが、ひえびえとした怖さがある少し不思議な作品だ。

2007.08.23
 北斗学園の二巻はイラストが増えて、ビジュアル的に楽しい本になりそうだ。しかしデザインが変わった分、章頭の空きが二行増えることになって、そのぶんまた書いたのを全部直さないとならないのが、ちょっと憂鬱である。そりゃまあそれが仕事だし、ページ末でセンテンスがまたがらないようにする、なんていうのは誰に強制されたわけでもない、自分で決めたことなんだから仕方がない。
 明日は残業する予定なので、日記の更新はお休み。

 読了本『続・日本殺人事件』 山口雅也 創元推理文庫 外国人が書いた少し変な現代日本を舞台にしたミステリ、のように書いたミステリの第二弾。しかしこっちはミステリというよりは、メタになって現代文学してる。ほとんど芸術である。長くミステリを書いていると、きっとこういう方へ行きたくなるんだろうな、という感じ。でも、小説ってもともと俗なものだと思うんだよね。敢えて芸術しない、通俗に留まる意志の方が、篠田には歓迎したいものであります。

2007.08.22
 昨日は京橋のINAXギャラリーで「室内」52年展を見学。インテリア関係の専門雑誌でありながら、エッセイスト山本夏彦を編集長に、読み物ページが充実して一般読者も多く52年続いた「室内」は、山本が87歳で病没して後休刊となった。うちも少し前からの購読者だった。その後わしたショップで買い物をして、キリスト教書籍の教文館で仕事の資料用に本とCDを購入、銀座7丁目のビヤホール、ライオンに。天井が高いインテリアを楽しみながら生ビールやローストビーフを食べる。少し混みすぎ。帰りに千疋屋の地下に出来たバーに寄って、果物のカクテル。
 半休を挟んで昨日も今日も仕事。やっぱり仕事するときは、エアコン無しでは無理ですなあ。
 読了本『リロ・グラ・シスタ』 カッパ・ノベルス 公募のカッパ1受賞作。やたらと気取った文章の読みにくさに眉をしかめ、リアルな学園青春小説の肌触りと、マンガ以外ではあり得ない頓狂な設定にぶつぶついいながら読み続けると、ラストにいたって綾辻さんがいう「綱渡り」の意味が解る。ただ、処女作からこういうことをして、この人は今後どういう作品を書いていくんだろう、と少し心配になった。よけいなお世話か。

2007.08.20
 昨日は仕事を休んでしまったので、かくてはならじと今日はきっちり午前中からエアコンをかけて働く。しかし、天気予報では今日は曇りだったはずなのに、晴れてるじゃないか。それも、午前中はまだいくらか涼しい感じがあって、そろそろ残暑かな、暑いといっても少し違うよな、風の感じが、などと思っていたのに、昼過ぎにコンビニへ出かけたら、ぐわっと来たよ、暑さが。ここはどこだ。日本? ウソだろ。インドだろ、こら!!
 というわけで、章の切れ目まで書いてから、少しプロットをやってだらっとして、それからまた書きましょと思っていたのに、ぼーっといつの間にか時間が過ぎてしまった。でもまあ、予定よりはいくらか早めに進行してるから、赦そうってことで、明日は銀座にビールを飲みに行くので、半休。日記の更新はお休みします。

2007.08.19
 昨日まとめて読者のお便りやペーパー希望手紙が転送されてきたので、今日はそれの返送をする。台湾版のご希望があったので、駅を超えた反対側のショッピングセンターの中の郵便局が日曜でも開いているはずなので、そこまで炎天下出かけていったら、開いていなかった。しばらく来ていなかったので知らなかったが、6/15から変更されたのであった。民営化って不便になるということなのね、と改めて痛感。そんなことしてると、客はどんどんメール便に流れちゃうからね。本は厚み2センチを超えるとメール便では出せないからダメだけど、薄いものなら定形外郵便よりずっと安いんだから。難点は少し時間がよけいにかかることだけど、これでずいぶん客は減ったのではないかと思われ。篠田も郵便局に行くのが日課みたいなときもあったけど、最近は半分以上コンビニです。宅急便も、ゆうぱっくのシールを貯めることもなくなったから全部ヤマト。

2007.08.18
 今日は仕事場のマンションの設備点検日で、立て続けにチャイムが鳴ったりして落ち着かない。
 祥伝社の編集部に、高校一年生から夏休みの研究みたいなものなのかな、「小説家という職業について調べたい」という連絡が来て、メールでアンケートみたいなものに答える。篠田は基本的に読者からのメールは受け取っていないので、今回は例外的。しかし職業として見た場合、小説家というのはつくづくハイリスク・ロウリターンだなあと、いまさらのように思う。
 ユリイカ今年三月号のレオナルド・ダ・ヴィンチ特集を見ていたら、特集自体はイタリアから来た「受胎告知」に連動しているんだろうけど、やはり『ダ・ヴィンチ・コード』とのからみか、「乱反射するイメージの彼方 ミステリに登場するレオナルド・ダ・ヴィンチ」という文章を千街晶之氏が書いていて、三雲岳斗さんや服部まゆみさんのミステリが紹介されているのは予想したことだけど、篠田の作品についても10行以上費やされていたのにはびっくり。デビューの翌年に創元推理に書いたきり、どこにも収録してない歴史ミステリ「石榴の聖母」とかね。あるんですわ、そんなのが。連作にするつもりだったのに、依頼がないまま中断しました。

2007.08.17
 北斗学園続行中。長引きそうな気配。困る。やっと悪役理事長登場。こいつより、まだ出てこない重要キャラがふたりいるんだよお。

2007.08.16
 あんまり暑いので今週はジムをさぼってしまう。エアロバイクを50分漕いだ他は、外にも出んとクーラーかけて仕事。北斗学園、昨日書いたところがどうもうまくないと思ったのだが、それは新しく出した登場人物がスムーズに動いてくれなかったから。実はある人の名前をお借りして名付けたので、出来るだけいい役にしてあげようと思ったら、それがしっくりしなかったためらしい。名前は別にすることにして、うんと嫌なやつに書いたらずいずいと進んだ(笑)。
 読了本『ベルリン1945』 クラウス・コルドン 理論社 昨日も書いたが、最終巻の1945年2月から6月、ベルリンの最後とソ連侵攻の部分は止められなくなって読んでしまった。この三部作は10数年ずつのタイムラグがあって、同じ一家の子供たちが交代して視点人物になる。次男のヘレ、三男のハンス、ヘレの娘エンネ。巻が変わるたびに、子供が大人になったり、死んでしまっていたり、というので驚かされたりほっとしたりだ。戦争と思想の対立が家族を引き裂き、貧しくとも仲の良い一家は、共産主義か社会主義か、収容所帰りの政治犯か、脱走兵か、兄弟の中のひとりきりの女の子は貧しさからの脱出を夢見てナチと結婚し、懺悔しても赦されず、立場の違いが気持ちのずれとなり、戦いは終わっても回復できるものとできないものがあり、それでも人は生きていく。悲惨なことはあまりに多いのだけれど、なぜか読後感は悪くない。
 そしてエピローグで生き残った一家と、その知人たちの運命が列記され、それがまた映画のエンディングみたいで胸に迫る。東西に分断されたベルリンで、兄弟たちは西に移るが両親は最後まで子供たちを育てた東の貧しいアパートに暮らし、「ふたりはベルリンの壁を体験しなかった」という、作者が最後に彼らに与えた一抹のささやかな慰め。しかし第一巻の主人公ヘレの年上の友人にして英雄、激動の時代を生き抜いた闘士ハイナーは、晩年、壁が築かれた翌年に自殺した。この、ただ一行の彼方に感じられる彼の覚えた絶望の重さに涙せずにはいられない。傑作。

2007.08.15
 暑い季節に『センティメンタル・ブルー』の文庫版出来。表紙がさわやかです。トップページでご覧下さい。
 北斗学園第二巻はもう少しイラストを入れようということで、書き上げた原稿を順次送っていくことに。しかし送ったそばからすぐ、そこを直したくなる篠田の悪癖がガン。いやあ、書いていたらそのキャラの性格が、名前と合わなくなってきちゃったんだよね。
 読みかけ本『ベルリン三部作』 クラウス・コルドン 理論社 ベルリンの下町で暮らす貧しい労働者一家を主人公に、1919、1933,1945という三つの時代のドイツを描く重厚な歴史小説。働いても働いても満足に食べられない彼らの苦闘と、労働運動、ナチとの相克、家族愛と葛藤。すげえ読みでがある本で、さすがになかなか進まない。歴史物というのは、彼らの先に何が待ち受けているか、こっちはわかっている分よけいどきどきする。
 
2007.08.14
 当面はずーっと「理論社の仕事」になりそう。問題は昨日も書いたけど、なんとなく伸びそうなこと。どうしても書き込みたくなってしまうんだね、いろいろと。ふたつめの章が「もう終わる」「もう終わる」と思いながらじりじり伸びてしまったもので。
 読了本『「世界征服」は可能か』 岡田斗司夫 ちくまプリマー選書 ちょっと前までは、漫画やアニメの悪役はほぼ必ず世界征服を企むことになっていたけど、「こんなことしていて果たして世界征服なんかできるのか」「そもそもなんのために世界征服するんだ」「世界を支配してなにかいいことあるのか」というような、根元的な問いを改めてしてみる。このへんはたくさん出ている「空想科学本」のノリに近くて、しばしばプとか吹き出すんだけど、後半はシリアスに「悪とは何か」「支配とは何か」というところまで行きます。この本の結論が100%正しいとは思わないけど、楽しめて考えさせられる本。

2007.08.13
 理論社の仕事、続行中。午後、打合せ。書き上げた冒頭部分だけを手渡し。篠田が予定通り9月中に書き上げられれば、来年3月には刊行できるもようだが、キャラの絵を描いてくれた山田ないとさんがすごく原稿が遅い人らしく、しかし困ったことに篠田は「なにごとも書いてみないとわからない」人である。キャラについても「書いてみたらあらびっくり」というようなことは平気であるので、こういう場合は「あらすじはこんなふうで、敵役はこうこう」などと前もって申告できないのが、まったく困りものなんである。
 それから、篠田は事前に言われていたページ数を厳守したのだけれど、他の人を見るともっと多い場合もままあって「なんだ。これくらい書いて良いんなら」と実は思った。語り手のアキは全然情景描写に向かない子なので、そのへんはバンバンすっ飛ばしたわけだが、書き手としてはやはり多少不満というか不足もあるわけである。しかし「あまり厚すぎない方が良い」と改めていわれる。
 家に帰ってきたらツレが、講談社ノベルスの復刊本、連城三紀彦の『敗北への凱旋』を読み上げていて「内容が濃い話なのにこんなに薄い。最近の小説は長すぎる」という。うーむ・・・ まあ、馬鹿みたいに長くてくどい小説というのは、篠田も嫌いではあるけれどね。

2007.08.12
 毎日毎日まあ暑いこと。篠田は生来の汗っかきなので、仕事場にたどり着いてちょっと片づけものをしたり、ベランダの鉢に水をやったりしているだけで、もうずぶずぶに汗を掻いてしまう。それからようやく着替えて気を取り直して駅のスタバに行き、ホット・コーヒーのマグカップを抱えて仕事。北斗学園のプロットをねりねり。戻って、休暇で増えた分の体重を戻すべく、本日の昼食はダイエットビスケットと低脂肪乳。エアロバイクを漕いで、シャワーを浴びて、それからやっとパソコン前に座り、仕事。無事に北斗学園三人組登場。しかし前の話をどれくらい説明するか、基本設定についてはどうか、けっこう悩む。悩んだあげくにどうするかというと、語り手のアキに任せてしまう。

2007.08.11
 一泊二日の夏休み。キリンのビール工場見学、ウズベキスタンの写真展、保存西洋館に港のクルーズ、日本郵船歴史博物館と、ほとんどノリは社会科見学。その合間には中華にギリシャにイタリアンと食べて、1.5キロ太って帰宅。今日からはまた真面目にお仕事。北斗学園の書いていたところを、結局また書き直す。最初はいつも、行きつ戻りつだからね。明日はちゃんと先に進もう。

2007.08.08
 北斗学園シリーズ第二巻『闇の聖杯、光の剣』の第一章を書き上げる。最近はなぜか、ざっと書き上げておいて後で全体を見ながら直す、ということが出来ない。取りあえずは満足がいくレベルまで仕上げてからでないと、先へ進めないのだ。しかしまあ、そんなわけで一応その部分は終了。次の章からまたあの三人組と会える。そこの場面の絵だけはクリアに浮かんでいるので、書くのが楽しみだ。
 明日明後日は夏休みにするので、日記の更新は土曜の夜になります。

2007.08.07
 昨日は銀座のアンテナショップ「わした」で沖縄物産を買って沖縄ディナーにしたので、今朝はチャンプルーにした残りのゴーヤでゴーヤジュースを作る。バナナと牛乳とヨーグルトを入れるので、青臭さや苦みはほどほどで大変に美味しい。
 朝からクーラーをかけて、北斗学園の第二巻を書き出す。オープニングは前巻同様過去のシリアスシーン。このあとがらっと変わって例の三人組が登場し、わいわいどたばたやることになるのだが、その前の場面が資料調べいろいろでなかなか進まなかった。調べると今度は書きすぎて、それをまた削ってやり直したりして、一応その章だけ書き上げる。来週の打合せのときに、見せられるようにしておきたいので。
 創元のミステリーズ、新しい号に神代ものの中編「桜の園」の最終回が載ります。よろしく。単行本は来年になります。

2007.08.06
 友人の翻訳家柿沼瑛子さんとランチの約束をしたので、その前に池袋のリブロに行って資料本の追加を買う。実際に必要というより、書かない余白を確認するために調べておこうというほどのこと。しかし小説で、調べただけのことを全部書き並べるのは下の下である。蘊蓄の真似ならハウトゥー本と入門書だけでも出来るが、底の浅さはわかる人間にはわかる。最近は怪しいが。

 読了本『月蝕島の怪物』 田中芳樹 理論社 ミステリーYA!の今月の新刊。ベテランの手腕が生きた快作。子供の時ポプラ社のルパン全集を読んでいたワクワク感を思い出した。アンデルセンとディケンズが活躍するというわけで、大人にも楽しめる作りになっている。ミステリーランドの『ラインの虜囚』と同系統だが、作品としてはこっちの方が成功している感じ。

2007.08.05
 スタバにプロット作りに行く。財布を忘れて一度戻ったりして、暑さですでにぼけている。それでも冷房効き効きのところで、ホットコーヒーを飲みながら頭を叩いていると、ぼちぼち物語が動き出す気配。仕事場に戻り、昼飯を用意するが当初予定していたホットドッグなんてものは全然食べる気がせず、急遽ざるそばに納豆とろろ温泉卵。クーラーつけてパソコンに向かうがうまく頭が働かない。ほんと、真夏は午前中が勝負である。夕方、夕立が来ていくらか気温が下がり、どうにかぼちぼちと冒頭部分を書き出す。

 読了本『水銀奇譚』牧野修 理論社 ミステリーYA!の新刊。牧野さんの真骨頂はその卓抜な描写力だと思う。あり得ぬものをありありと幻視させる筆の力。これが今回も文句なくものをいっていて、ハッピーエンドであることも、子供向けを意識したのかも知れないが読み味が良くて嬉しい。水の魔、というところでは天沢退二郎の名作『光車よ回れ』を思い出したが、ヒロインがシンクロの選手で水を扱えるというのも新鮮だった。

2007.08.04
 今日はもっと暑い。それでもクーラーをかけずに済ませてしまったが、さすがに限界だろうな。仕事場は部屋が広いので、そこが気に入っているのだが冷暖房の効率は悪い。明日は喫茶店に避難してプロット作りをしようか。

2007.08.03
 いや、今日は暑い。でも風があるから、まだエアコンはつけなくても大丈夫かなと思ったが、資料本を開いても、いかん、頭が働かない。というわけで、今日はいただいたペーパー請求手紙の発送をして、余勢を駆って皆川博子先生に『聖餐城』良かったです〜とファンレターを書いてしまう。午後は北斗学園用の読書も一応続行。
 講談社ノベルスの今月の新刊。25周年というので復刊企画がある。今回は連城三紀彦『敗北への凱旋』辻真先『急行エトロフ殺人事件』竹本健治『狂い壁狂い窓』の三点。竹本作品はすごくキモかった記憶がある。連城作品は暗号が印象的な佳作。辻作品は未読なんで楽しみです。

2007.08.02
 午前中に『月蝕の窓』のゲラを終わらせる。改めて読んでみると、この話もずいぶんとシリーズの定番破りだ。京介はやたらぐちぐちのたのたしてるし、そのくせ居直って後半はいつになくアクションしたり、名探偵したりしてるし。でも考えてみると、レギュラーがそろって事件に関わって、というスタイルの話の方がむしろ少なくないかい。いつものあれ、っていうのより、破調が好きなのは篠田の好みなんでしょうね。
 午後からはまた「北斗学園」新作のための資料読み。しかし、そのへんのことを書くとネタを割ってしまうことになるので、本のタイトルも書くわけにはいかない。仕方ないから別の話。
 いただいたおたよりで「建築探偵お料理本をぜひ」というおことばがあったのだが、そのほかに「門野老人の事件簿も苦しゅうないぞ」といって下さる方もおりました。篠田はもともと主従ものがわりと好きで、いまや知る人ぞ知るのデビュー作『琥珀の城の殺人』も実は探偵役は主従なんだけど、怪老人と美人秘書というのも主従の一種だし、なかなか悪くない、ですよね? 「美代ちゃん、くせ者を成敗してしまいなさい」「はい、会長」うなる美脚の回し蹴りに、もろくも吹っ飛ぶ悪漢ども。黄門様パターンだ。

2007.08.01
 今日ものんびり本を読んでいたら、午後になってゲラは来るは、別々の編集さんからメールや電話が来るはで、なんだか急に気ぜわしくなってきてしまった。今年中に、まずあれを終わらせて、こっちの連載を始めて、あれを本にしてと考えたら、もう一年が終わりかという気になって、ちょっとぐったり。
 ペーパーを送った方からの礼状に、ここでお返事。焼津市のOさん、ペーパーのタイトルはイタリア語で「どうもありがとう」という意味です。グラーチェがありがとうで、タンテがたくさん。少し日本語と似ていて、発音が可愛いでしょ。レシピ・ブック、作ったら買ってくれます? マニアックすぎるかな、と思ったんだけど、文庫の担当も面白がってはくれました。吹田市のKさん、しおりの写真は長崎県平戸島の明治建築の教会です。宝亀天主堂という、とても小さくてラブリーなお堂の窓から内部を撮影しました。カメラマンは半沢清次。ペーパー請求のお便りも今日まとめて転送されてきたんで、出来るだけ早く応じたいと思います。もう少し待っててね。

 読了本 『天使の歌声』北川歩実 創元推理文庫 歳のせいか、「面白い」と思える幅が狭くなってきている感じがする。この連作短編も、なんかどんでん返しのためのどんでん返しというか、登場人物が薄っぺらくて親しみが持てない分、話がひっくり返っても「へえ」って感じで。
 『闇に消える美術品』 東京書籍 美術品泥棒と盗品の流通についての翻訳ルポ。項目が多い分ひとつひとつはさらっとしすぎていて物足りない。