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2007.04.30
 今日はとうとう仕事場から一歩も出ず、ソファにひっくりかえって本を読んで過ごす。なんとなく無為な一日を過ごしてしまったような、後ろめたさを覚えるのは我ながらワーカホリックか。
 読了本『幸せはいつもちょっと先にある』早川書房 日常的な未来予測があまりにもしばしば外れてしまうわけ。人間の思考の落とし穴についての平易な心理学的考察。なんとなくこの平穏な日常がいつまでも続くような気分、とかね。でも、取り越し苦労ぐせよりはましじゃん、と思ってしまうわたくし。いつか死ぬことだけは確かなんで、そんなことは取りあえず気にしないでいられる方がええわ。
 『炎の聖少女』タニス・リー ヴェヌスの秘録第二巻 今回はヴェネツィア+ジャンヌ・ダルクでした。主人公の美男美女をさしおいて、リベラルな親父の司教様に惚れた。

2007.04.29
 近所へ出ただけで、あとはのったらのったらと本を読んで過ごす。心理学の本を一冊読み上げたが、持ってこなかったのでタイトルが不明確。その後で久しぶりのクリスティ。『三幕の殺人』。いまどきのミステリしか読まない若い読者が手にしたら、きっと退屈だと感じるのだろうな。でも、休みの日の午後を呑気に潰すためなら、こういうテンポのゆるりとした、激しく情動を揺さぶられるところのない、いかにもな本格ミステリというのは格好なもの。適当に現実的ではないし、何人殺されてもちっとも深刻ではなく、ラストではすべてが明らかになることが最初からわかっている。
 ただ、そういうのは本当にいまどき向きの感性ではないだろうし、過去であったとしてもたとえば10代の篠田がいまと同じようにこのミステリを楽しめたかというと、たぶんそんなことはなかったろう。高校生のときなら、SFの方がずっと好きだったに違いない。だから、本格ミステリは若者の小説ではないのかも知れない。21世紀だからというより、20世紀だって、ロジックによって楽しむ本格ミステリなんてものが、真の意味でメジャーであったことなんかないと思う。別に、それでいいんじゃない。本格ミステリのブーム、なんてもの自体、一種の幻だったのだよ。

2007.04.28
 昨日のサイン会。丸の内という場所柄か、丸善だからか、それとも版元が東京創元社だからか、以前新宿の紀伊国屋本店で『綺羅の柩』のサイン会をしたときとは、明らかにお客様の内訳が違った。男性がかなり多く、しかも若いめの男性が多かったのである。これが神保町の三省堂あたりだと、年配の男性が多かったのだけれど。建築探偵には二の足を踏んでいた読者も、これを機会に篠田のミステリを手にしていただけたら、こんなに嬉しいことはない。主人公は46歳のおっさん(といっても篠田よりずいぶん若いよ。とほほ)でありまして、路線としては渋いめです。
 今日は一日のんびり。サイン会に来て下さった方で、ご住所がわかる方に礼状を書いて、天気も良いのでのんびり切手を買いに行き、それから書店に回る。だらっと寝転がって西原理恵子の『できるかな 4』を読んで吹き出したり、吉田秋生の『蝉時雨のやむ頃』を読んでちょっと涙ぐんでしもうたり。本当を言えば全然仕事がないわけでもないのだが、差し迫っていない分少しの間棚上げにして、このゴールデンウィークは猫のようにのんびりするぞーっ。

2007.04.26
 午前中ジム。帰ってきてからはちょっとのんびり。なぜか講談社文庫の入稿日が、今月初めに予告されていたより一月近く後だったことが判明し、さらにのんびりした気分になる。いいさ。こういうときこそ読みたい本と読まねばならない本をどーっと読んで、脳に栄養をあげなくては。
 明日はいよいよサイン会。いままで何度も手紙をいただいている方から、「行きます」というお便りが届いています。こっちで気が着かなかったら、遠慮無く声を掛けてやって下さい。もしも人が多かったりすると、頭が煮えていて気がつき損ねる可能性もありますから。

 読了本『チェーザレ』第3巻 総領冬実 この方のまんがを読むのは初めてなのだが、非常にしっかりした端正な絵柄に好意が持てる。最新の歴史研究の成果を生かしたというチェーザレ像も興味深い。今回は若きニッコロ・マキャベリが登場。これがちょっとセバスティアーノみたいで、くせ者っぽさが実にいいです。ひとつだけ苦言。工事現場の家の建て方。あれじゃ日本の大工さんです。いくら工事人の飯場でも、木造建築じゃないと思うよ。

2007.04.25
 午後に講談社の担当が建築探偵のゲラを取りに来る。そのときに表紙用の写真を渡して、それから講談社ノベルス25周年の記念グッズとして書店で配られるしおりのデザインの相談。見本として作られていた綾辻さんの館シリーズのしおりを見せてもらう。作家別というか、シリーズ別に、いろんな種類が作られるらしい。どうせなら全部の種類をゲットしてコンプリートを目指したい、なんて思う人も出そうだ。なまじ只で配るもので、しかも書店に行かないと手に入らないということは、レアものになりそう。

 読了本『ガラスのなかの少女』 ハヤカワ文庫 ジェフリー・フォード 翻訳物はめったに読まない。こないだの『ファティマ』みたいにテーマで引っかかって買うと、たいてい失敗するし。でもこれはエンタメの見本のようなサスペンスもので、ちゃんと面白かった。インチキ霊能者が出てくると「またかよ」と思うけれど、これは大丈夫。大傑作というほどではないけど、良くできている。
 『集合住宅の時間』 大月敏雄 王国社 同潤会も含めて、少し前のアパートや長屋を扱う。日本では建物が古くなれば価値が低くなると当たり前のように思われているが、これは世界的に見て決して大勢を占める価値観ではない、というまえがきを読んで「おおっ」と思った。建物にまつわる生活の記憶、町並みの記憶がその価値となる、だからこそ大切に住み続けられる、というのがヨーロッパでは当たり前なのだといまさらのように。しかし日本には「消し去りの文化」がある、と。まあ確かに、きれいさっぱり新規まき直し、というのは快感ではあるんだよねえ。建築探偵の作者が、こんなこといっちゃいけないか。

2007.04.24
 朝から池袋へ。リブロで本一山、無印良品でちょっとした食べ物とか化粧水とか。そのまま有楽町線で銀座に出て、「わしたショップ」で沖縄食品を一山。今夜は島豆腐のチャンプルーに海ブドウです。
 仕事場に戻ってから本格ミステリ作家クラブの大賞投票を書き上げ、それからジャーロの続き。いつまでいじり回していても仕方がないので、メールで送稿してしまう。これで今月の予定していた仕事は片づいたので、ゴールデンウィーク中は読書に専念するかなあ。

2007.04.23
 歯医者。治した方がいい歯が一本あるといわれるが、まだ症状があるわけではないので、「今度でいいです」と逃げてくる。まったくもって歯医者は苦手だ。
 本格ミステリ作家クラブの大賞投票選評を書く。今回は自分にとって「これだ」という作品がなかったので、いままでほっておいたのだが、棄権するわけにもいかないので。それからジャーロの続き。

2007.04.22
 ジャーロの手直し続行。ふと作中に出した聖書の引用が正確かどうか気になり、キーワードで引ける聖書辞典で、いろいろ引く言葉を換えて調べてみるが見つからない。勘違いかと思ったがやはり気になる。イエスがペテロにいったことばだ、という具体的な記憶もあったので、福音書を頭からめくって最初のマタイで首尾良く発見。記憶の正しさを確認してちょいと良い気分。
 午後から担当が『風信子の家』の見本を持ってくる。日曜日だというのにご苦労様。カバーはマットで軽い手触り。表紙もイラストを使い、本家建築探偵よりずっと軽い雰囲気が出た。内容は決して軽くはないんだけど、本家の方が緊迫しているから、こっちも併読してホッとして欲しい。

 読了本 『サイン会はいかが?』 大崎梢 東京創元社 書店ミステリシリーズの第三作。ミステリとしてはこれがいままでで一番読めると思う。ただ、書店仕事のリアリティは相変わらず大いに買えるけど、表題作に登場するやたらと格好の良い若手ミステリ作家は、なんだか恥ずかしい。なんで篠田が恥ずかしがらなきゃならないんだっていわれるかもね。でも、なんだか知らないけどみょーに気恥ずかしいのっ。

2007.04.21
 ジャーロの原稿の赤入れをするが、もう少し時間をおいてからの方がいいみたいだ。それとサイン会用のペーパーをコピーしに行く。あとは4つ折りにして完了。

2007.04.20
 ジャーロの連載原稿、100枚で一応ラスト。プリントしたのでこれを明日から読んで直す。というわけで、いくらか余裕気分で読書など。
 港区のSさん、お便りちゃんとサイン会前に届きましたよ。27日はお待ちしておりますので、どうぞご遠慮なく声を掛けてやって下さい。
 理論社から読者カードのコピーが届く。いつもと違って11歳の男の子なんかからのはがきもあって、ちょっと嬉しい。まさしく自分が想定した読者がそのへんだから。

 読了本『イエロー・フェイス ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』 村上由見子 朝日選書 この前読んだ『ハリウッド100年のアラブ』と同じ著者の本。こちらは日本人を含む黄色人種のハリウッド映画での描かれ方を、豊富な具体例をもって観察していく。とても読みやすく、かつ示唆に富んだ本であります。

2007.04.19
 建築探偵のゲラ、午前中で終わらせる。午後になってやっとこジャーロの連載の続きに取りかかる。我ながら、一度気持ちが切れると繋ぐのが大変だ。枚数的には、明日で一応連載第四回分が終わるはず。もちろんその後、プリントして読み直して手を入れて、をしないとならないんだけど。
 大阪のサイン会、6/23土曜日の昼間で決定。場所と時間については、今少しお待ちあれ。いずれにせよ本は6月初旬に刊行されるはずなので、そこの書店で購入と同時に整理券をもらっていただく、ということになるはずで、そうすると東京創元社のサイン会とは違って、並ぶお客さんの大半はすでに拙著を読み終えておられる、ということになる。それはそれで、結構怖いというか、緊張いたしますね。

 読了本『水底の仮面』 タニス・リー 柿沼瑛子訳 産業編集センター 篠田はタニス・リーのファンなのだけど、最近ちっとも新作が訳されないなあと思っていたところが、友人の柿沼氏によるとこれがなかなか翻訳には難物であるらしい。ご苦労様。しかし今回はヴェネツィア風異世界を舞台にしたファンタジーで、全4巻順次刊行されるそうなので、しばらくは楽しめる。主人公は変にデカダンな青年で、彼にいまいち感情移入出来ないのが辛いのだが、しばらく頑張って読んでいると、謎めいた美女の正体が徐々に見えてくるあたりから急速に面白くなってくる。

2007.04.18
 午前中建築探偵のゲラをやって、池袋に出て本屋で資料本を買ってから、友人二人とフォーシーズン・ホテルのラウンジでお茶をする。前から銀のスタンドにお皿が三枚重なったアフタヌーン・ティをやってみたかったのだが、いざ実現してみれば紅茶で腹はがぼがぼ。粉もので満腹。口は甘あま。ケーキやスコーンなんてものは、ちょびっと食べれば充分なんだなあといまさらのように思い知る。
 6月に出る建築探偵の新刊合わせで、大阪でサイン会をやることになった。関西圏の読者様、どうかよろしくお願い致します。詳細は追って発表させてもらいます。一月置きに二度のサイン会というのは初めてというか、たぶんこれきりだと思いますが、こっちもサイン会限定ペーパーなど作製して皆様をお待ちしたいと思います。

2007.04.17
 布団に入っている間に、徳間向けの話のアイディアが頭にぐるぐるする。でもいまはまだ、ぐるぐるさせておくだけなのだ。というわけで担当に「こういうの考えとるからね」とメールしておく。
 サイン会で配る用のペーパー、一応作り終える。いつものA3用紙を四つ畳みにしただけのものだが、ご挨拶に六月刊の建築探偵の広告、それと「特別企画 我ら三人師を語る」という、蒼・京介・深春のおちゃらけ座談会がついております。本編が緊迫している分、こういうお遊びは書く方もほっとして、それなりに楽しかったりして。
 春日部のOさん、お便り有り難うございました。妹さんにもよろしく。6時半から1時間くらいはやっていると思いますので、足下にお気を付けていらして下さいね。お目にかかれるのを楽しみにしています。

2007.04.16
 歯医者は今日は混んでいて、歯石取りは下半分しかやってくれなかった。また来週行かなければ。ぶちぶち。帰ってきてサイン会に来てくれた方にプレゼントするペーパーの原稿を作る。まだ途中。
 徳間の担当来る。SFジャパンで連作短編、というような話。時間は全然ないのに、前から組んで仕事をしてみたかったイラストレータさんの名前が挙がると、ついやってみたくなってきてしまう。ミステリや伝奇はやる版元が決まっているが、SFファンタジーっぽいジャンルは現在やるところがないからなあ。しかしいまのところは実際の仕事配分もぴちぴちだし、具体的な構想を練る余力もない。どちらにしろ来年以降だ。
 徳間ノベルスで書き下ろして、その後デュアル文庫に入れた『天使の血脈』の続き、という話もあるが、前の二作はすでに書店にはないし、頭が完全に切れてしまっていて、正直な話あんまり食手が動かない。昔のものを蒸し返すよりは、新しいことに挑戦したい気分だ。それでも、デビュー10数年、賞も取らず評論家に誉められもせず世の注目も浴びず、雑草のごとく生き抜いてきたマイナー小説家に、いまだにこうして依頼がいただけるというのは、まったくもって有り難いことである。いや、ほんとに。

2007.04.15
 一泊二日山梨県の端っこの方にある温泉に行ってきて、今日体重を量ったらびよーん、と増えていて大変にショックの篠田です。加えてに明日は歯医者に歯石を落としにいかなくてはならないので憂鬱でもあります。

 読了本『ファティマ第三の予言』 エンターブレイン 温泉に行くときは分厚い小説本を持っていくことにしている。たいてい早々と宿に入って、一風呂浴びて、ビールを飲みながら本を開くことになるからだ。この本は『ダ・ヴィンチ・コード』のあおりで大量に訳されたキリスト教歴史物関連ミステリの一。玉石混淆半々よりずーっと石たくさんのうちの、紛れもない石です。なんでこんなものがアメリカでベストセラーになるのかようわからん。といいうか、ベストセラーってウソじゃないのと思う。少なくともキリスト教にさほど関心がない読者は、読んでもつまらないから止めた方がいいよ。興味がある人なら、小説として以外の楽しみ方の出来る部分もあるけどね。

2007.04.12
 今日はジムに行ったがジャーロの方もノルマはクリヤ。予想外の伏線が繋がってきたりして、ちょっと嬉しい。いや、深い意味もなく書いた細部が後になって「あら、伏線だったのね」ということがあるんです。こないだ山田正紀さんも同じことをいってらしたから、そういういい加減な書き方をしているのは篠田だけではないのだとわかった。決して山田さんがいい加減だなんぞというているわけではありませんが。
 新生メフィストが送られてきた。なんといいますか、しばらく工事中だった実家が完成したというので覗きに行ったら、なんだかすごく立派で大きくてしかもお洒落な建物が建っていて、中を覗いてみても懐かしい家具や見覚えのある絵なんかがちらちら目に付かないこともないんだけど、どうも空気が全然違う。そのうち「あら、いまになって出戻りたいなんていわれても、あんたの部屋はもう他の人が入ってるんだからね」なんていわれてしまい、いや、その、別に嫁に行ったつもりもないんですけど、などと口の中でもごもごいいながらうつむき加減にしおしおと帰ってくる、みたいな気分がしました。

2007.04.11
 焼き餃子を作って食べたら大変に美味しかったけど、体重がいきなり1キロも増えてしまってショックな篠田です。減らすは大変、太るは一瞬。
 友人から「サイン会の予約したよ」というメールをもらって感涙にむせぶ。これで少なくとも客ゼロはまぬがれた。って、整理券の定員100人です。どうかもう少し来てちょうだい。それから、サイン会には行けないけどサイン本は欲しいという方。東京創元社の公式サイトから予約が出来ます。4/16に告知が出るそうなのでそちらもよろしく。これも規定冊数に達すると締め切られますので。
 ジャーロの執筆は順調だが、今週末から来週はいろいろ予定が目白押しな上に、建築探偵のゲラも来るので、やはり上がりはぎりぎり月末になるでありましょう。

2007.04.10
 一日仕事でどこにも出かけず。49枚まで。
 上にサイン会のお知らせを書き込みました。連休直前の金曜日です。ご用とお急ぎでない方は、どうぞよろしく。

2007.04.09
 仕事場の近くの蕎麦屋に蕎麦を食べに行く。目の前は河原、散りどきの桜が満開。それを窓越しに眺めながら、日本酒一献、とくればいうことはないのだが、まだ今日のノルマが済んでいないので、ぐっとこらえてお茶でつまみ。天ぷらにせいろ一枚。いささか味気なし。こういうときはノルマなんか蹴飛ばしで、午後はお休みっという感じで酒ですねー、と連れ合いといいつつ桜を愛でる。そういうわけで、辛うじて10枚は書いたぞ(いばるほどのことでもなし)。

2007.04.08
 どうも今日は体調がいまいちで、労働意欲湧かぬことおびただしく、終日ベッドの上でのたくっていたが、さすがにこれは人としてどうよ、というわけでどうにかこうにかノルマの10枚だけは死守。千里の道も一歩から。雨だれ石をうがつ。ああ、地味で暗い職業だなあ。

 読了本『ミカドの外交儀礼 明治天皇の時代』 中山和芳 朝日選書
 『実録・天皇記』 大宅壮一 大和書房
 たまたま天皇ものが続いたのでまとめて。今頃になって知った自分ももの知らずだけど、大正天皇は明治天皇と皇后の子供ではなかったのだね。側室が生んだの。皇后はひとりも生めなくて、何人かの側室が15人生んで、生き残りが5人。うち4人は女子。辛うじて男子ひとりが成人して、これが大正天皇。天皇は男系に限る論者の方は、側室を認めることにでもしないとそもそも無理だ、というのはこれだけでもよくわかる。今回は切り抜けてもすぐまた同じ問題が起きるよ。それから女を「生む機械」と呼んだことが許されざる罪だというなら、そもそも天皇制の存在そのものが許されざる罪だ、ということはいい加減認めた方が良い。人間じゃないでしょ、血統を繋ぐことが第一目的化されている存在なんて、象徴天皇という名前の家畜でしょ。大宅壮一曰く「むしろ天皇こそ最大の被害者である」と。雅子さんが精神的に健康を保てなくなったのはけだし当然というか、ああいう有能な女性を生き殺しにする制度がそもそも間違っていることくらい明確。イギリスの王室なんか見てても思うけど、すでに血統によって地位を繋ぐシステム自体現代とは合わなくなってきているのじゃないかな。篠田、歴史好きなんで古いものは好きなんだけど、その古いものに人間が押しつぶされていくのは見たくない。

2007.04.07
 どうにかジャーロに取りかかった。毎日10枚書いていれば、今月はいろいろと外出する用事もあるけれど、四月中には完成するはずである。そうね、月に100枚程度なら、まあそれほどプレッシャー感じずに出来る。それだと生活費には足らないけど。

2007.04.06
 昨日は久しぶりに東京に出かけて、清澄庭園で鴨を見たり巨大鯉を見たりして、少しお花見などもして、その後は一杯。今日は例によってほぼ沈没。明日から心を入れ替えて、ジャーロに取りかかる予定。担当様ご安心を。

 読了本 『淋しい狩人』 宮部みゆき 新潮文庫 先日読んだ図書館リファレンスの本に登場したので読んでみた。作中に登場する「昭和三十年頃に書かれた『うそつき喇叭』という児童書」を読みたいという注文だったのだが、これがついに見つからなかったという経緯なのだけれど、これは宮部さんの創作だろう。いかにもそれらしく巧みに作られているのだけれど、これが実在する著作だったら、著者名も出さないままこう詳しく長く引用するとはちょっと考えられない。しかしリファレンスの人にしてみたら、虚構なら虚構と書いておいて欲しいというのは、まあ実感かしら。

2007.04.04
 ゲラの直し、一応ラストまで。そう大変な間違いはないようなので、まあいいかって感じで。
 雨は降る、雷は鳴る、おまけにこの寒さで身体がびっくり。明日は花見散策で一杯やってくるかー、で日記の更新はお休み。

2007.04.03
 ゲラが午前中に届くというので、他のことをしないで待っていたら、なんと11時58分に着いたよ、ペリカン便。そりゃまあ時計の上では午前中だけどさ、午前中指定って書いてあるのにこの時間について「遅くなりました」の一言もいわないというのは、ちょっとムッ。読み返しは終わらなかった。

2007.04.02
 スタバに行ってジャーロのプロットを作る。幸いしばらく離れて切れていた糸も繋がり、書けそうな感じになってくる。しかし〆切まではまだ時間があるので、もう少しのんびりしようと思う。不眠症発症前と比べると、一番調子が良くても出力はせいぜい60%だ。そうしたら『一角獣の繭』のゲラがもう出るという。入校前に冷やす時間がないので、校閲の鉛筆を入れる前の白ゲラをまずもらうことにしている。いくらかでも冷静に、客観的に読み直して訂正を入れるわけだ。だったら明日からそっちの読み直しを優先としよう、というわけで、今日はキリシタン関係の資料を再読したりして過ごす。

 読了本『図書館のプロが教える〈調べるコツ〉』 柏書房 これは久々のおすすめ本。内容は文字通り、図書館のリファレンス係の司書さんが、もちこまれるさまざまな質問を調べて答え、参考書を見つける、その方法を具体例に沿ってわかりやすく解説した本。司書を目指す人にも有益だが、篠田のように調べものが好きな人、レポートを書くのにインターネット以外の調べ方がわからない学生さん、それからミステリ好きにも大プッシュ。まさかこんな漠然とした質問でもわかるの、という謎の提示が、「絞る」「広げる」「射抜く」「視点を変える」といった調査のテクニックによって見事解決にいたる。北村薫『六の宮の姫君』を彷彿とさせます。

2007.04.01
 ジャーロの連載のための資料として、長崎県生月島のカクレキリシタンの祈りのCDを聞く。ほとんどのお祈りは意味はなにもわからないまま覚えたのを棒読みしてるって感じで、正直言って聞いて面白いものではない。だけど歌の節回しが伝承されているものが三曲あって、特にその中の「ぐろりおさ」は西洋音楽とはいえないんだけど明らかに日本の伝統的な音楽とは異質。それを聞いていたらなんか、ぞくっと来た。
 「キリエ・エレイゾン」が「きりやれんず」になまり、聖画のマリアが農婦のような顔に変わる250年の禁制のとき。それを越えて生き残った異国風の旋律の不思議と、そこにこめられていた人の思いを思うとね。
 マンガの「エマ」のサイドストーリーの単行本が出たので、買ったらその中にイギリスで作られた「マナーハウス」という映像DVDの日本版が出ますという広告があって、申し込んでしまう。実物のマナーハウスに貴族の一家と使用人達が住み込んで往事を再現したものらしい。別にメイド小説を書くつもりはないんだけど、こういう考証ものって妙に好きなんです。さて、当時のお貴族様にとって、メイドは「見えない人」だったのか否か。

 読了本『ハリウッド 100年のアラブ』 村上由見子 朝日選書 中東の歴史とハリウッド映画に描写されてきたアラブのイメージを追って、「アメリカ人の目に映ったアラブ、アメリカ人が見たかったアラブ、見たくなかった、また見えなかったアラブ」を浮かび上がらせた好著。まさしくオリエンタリズムの世界なんだけどね。いまだにハーレクインではアラブの金持ちと白人女性のエキゾチックなロマンスが書き続けられているし、ボーイズラブでもそれは人気のパターンだったりする。この場合ロマンスの男女、ボーイズでは受け攻めが逆転することはあり得ないし、相手のアラブはかならず高貴の出か大金持ちということになっております。えっ、篠田はこのパターンはダメ。シリア、ヨルダンで会った向こうの人間は、なぜか醜男ほど親切、逆また真だったもんでね。