←2007

2007.03.31
 頭の切り替えが下手だ。だから月刊連載に毎回一定量の原稿をコンスタントに書くというのは、まだやったことがない。いつも先に書き終えてから始めたのだ。季刊の場合は毎回書くのだが、すでに三回分書いたジャーロの連載、全然忘れている。頭をまたそこまで引き戻すのがえらいこっちゃ、というわけでなかなか腰が上がらない。
 朝はまずファンレターの返事を書く。最近『未明の家』文庫版に出合って、『聖女の塔』までイッキ読みして下さったという江東区のTさん。すでに13年も書き続けているシリーズに、いまから新しくお客様が増えることの有り難さ、無類なり。
 それから冬物の衣類をしまうのに防虫剤を買いに行ったり、突然パウンドケーキを作り出したり、我ながら仕事に戻るのがおっくうでいろいろ逃げ回っていたが、ようやく前三回分の抜き刷りを手にして読み返しを始める。うーん、やはり忘れているぞ。おかげで読み直すとなんだか自分が書いた気がしなくて面白いが(馬鹿)、待てよ。この話、どういう結末がつくことになっていたんだっけ?

2007.03.30
 今日も一日外に出ずに、仕事場でまったりとボーイズラブを読んだり数独をしたりして過ごす。これで出来れば、電話もメールもない山の湯治場あたりに行けていたらいうことないんだけどな。もちろん読む本は担いで行くわけです。読みたい本さえたっぷりあれば、あとは別に大したものはいらないなあ。ほどほどのアルコールとほどほどの飯があって、お湯が良ければ、それ以上贅沢は言わない。
 しかし次の〆切の編集さんからメールが来たりして、そろそろ御神輿を上げる算段をしなくてはならない。理論社から書店に渡す色紙を書いてくれといわれて送られてきたので、夕方になって取りあえずそいつを片づける。それから今年のこれからの予定を表にしてみる。最大のエネルギー消費である建築探偵は、取りあえず今年の分は終了したので、その次は、というのは当面聞こえないことにすれば、まあ死ぬほど忙しいわけではないな、と表を作ってみて思う。ジャーロの連載をあと200枚で無事完結させて、文庫三冊直しを入れて、あとは神代もので漠然と考えているやつと、龍のローマ編と、理論社の続きと。忙しく、ないか???
 あんまり深く考えないことにして、目の前にあるものからこつこつ片づけていくしかありませんねー。

2007.03.29
 今日はほぼ全休。本を読んだり、数独をやったり、料理をしたり、ジムに行ったり。でも仕事場にいるとどうしても、編集から電話が入ったりして完璧にまったりとはいかないね。
 作家の島田荘司さんがやっているサイト日記、といってもなぜか最近更新されるのが2006年11月の日付だったりする不思議な日記だが、宇山さんの死んだときに記事を検索して以来、ときどき覗きに行く。そこで「作家が作品の質を維持しようとしたら、書き上げたものはさっさと忘れなくてはならない。自己の達成を満足と共に反芻しているようでは危険信号だ」大意です、というようなことが書かれていて、それは本当だなと思った。篠田も基本的に、本になった小説はもう自分のものというよりは読者のものだと思っている。
 そして、書き上げたときは「ああもう嫌だ、疲れた、止めたい」などと愚痴を垂れているのに、わずか半日もすれば続きのことを考え、また編集者と話をすれば別の物語の構想が浮かび、というわけで、まったく懲りないというか、あほというか。浮かぶときは楽しいが、書くのはおおむね楽しくはない。とてもしんどい。だが引退してすっぱり小説書きから足を洗ったら、心穏やかに幸せに余生が暮らせるのかどうかというと、実はあんまり自信がない。

2007.03.28
 なかなか全休とはまいらない。今日は創元の担当と電話で話して『風信子の家』を校了とし、創元のウェブサイトにのせる「ここだけのあとがき」を執筆してメール。講談社の担当から昨日入稿した原稿の感想をもらい(徹夜で読んでくれたそうだ、感謝)、徳間の担当から久しぶりに電話をもらってデュアル文庫で出した『聖杯伝説』をケータイ配信する話にOKを出す。篠田自身は小説を紙以外のもので読むのは全然ダメだから、それ向けに新作を書き下ろす気はないんですが。
 で、その間に榎田さんのボーイズラブ・ノベルスを3冊イッキ読み。この方は本当に会話が上手い。濡れ場に思わずぷっ、となるユーモラスなやりとりを混ぜたりする手際が実に良くて。篠田は自分が会話を書くのが大好きなので、特にへたくそな会話、この設定のこのキャラがこんなことば使うわけねーだろというような部分にはすごいひっかかって冷めてしまう。逆にテンポの良い、それたけでキャラの立ってくる会話は、ただのエロ描写なんかより遥かにときめきます。ああ、久しぶりに脳内リゾートして、脳みその痺れが少し取れてきたぞ。

 読了本『パンダ育児日記』 中国パンダ保護研究センター 二見書房 昔上野にパンダが来たとさわいでたときには、馬ッ鹿じゃねえの、とか思っていた篠田だが、そしていまも大人パンダはでかすぎてあまり可愛いとは思えないのだが、赤ん坊は、これはもー、りあるたれパンダ。何度見ても見飽きない写真集です。
 『そして、警官は奔る』 日明恩 講談社ノベルス 面白いんだけど、この人の小説ってなんかキャラの立て方が、マンガっぽい。それが悪いというのじゃないけど、リアルな作品世界の中でキャラが浮いてる。それが違和感。

2007.03.27
 終わったー。あ゛ー、しんどがっだよー、と濁点つきで叫んでしまう。まだ脳が痺れたようになってて、緊張感から解放されない。次の〆切が射程距離にないわけじゃないが、なにがなんでも数日は休むぞー。
 と言うわけで今日は医者の帰りに池袋に出て本を一山買って帰る。結局読書、とはいえ仕事には関係ない趣味の読書。パンダの赤ちゃんの写真集とか。それとまあ、やはり脳疲労にはボーイズラブでございます。榎田尤利作品をまとめて大人買い。明日は布団の中でこれを読もう。

 読了本『騙し絵の館』 倉阪鬼一郎 東京創元社 きれいなミステリ。いつか倉阪さんのミステリを「館ものか」と思って読んでいたら、それが実は館どころかとんでもないモノだった、というオチがあって、おいおいと思ったけど、こちらはそういうこともなく、怪物が出てぐちゃどろになることもなく、鬼畜に主要人物が皆殺しになることもなく、本格の整合性をもって決着する。ので、倉阪テイストはぐちゃどろの鬼畜でなくちゃ、というディープなファンには物足りないかも。そこが苦手だった、という方にはプッシュ。

2007.03.25
 章の切れ目で306頁。後は最終章とエピローグでおしまい。というわけでだいぶ大詰めが近づいてきたので、明日は仕事場に泊まって一気に残りのかたをつけることにした。どうも最近眠りの質が悪いせいで午前中は仕事にならない日が多くて、完全昼型だとはかがいかない感じがあるのだ。困ったものだ。
 東京創元社から出る神代もの『風信子(ヒアシンス)の家』は、4/26頃らしい。で、久しぶりにサイン会をやってくれるんだそうだ。本決まりになったらここでもお知らせします。吉祥寺のミステリ専門書店TRICK+TRAPが閉店してしまい、あそこのこじんまりした雰囲気でサイン会をする、という夢は消えてしまったので、普通の書店。せめて来て下さった方には、ペーパーのプレゼントくらいはさせてもらうつもりです。
 それと、東京には行けないけどサイン本は欲しいぞという方には、東京創元社のサイトでまたサイン本の予約販売をするんではないかと思うので、そのへんひとつよろしく。

2007.03.24
 昨日原稿を書いていて、実はそこで蒼にあることをさせようと思ったのだが、どうもそっちに動いてくれない。なんとか動かそうといろいろ工夫するんだけど、どうしてもそうしない。彼が。「どうも困ったなあ」と思いながらパソコンの電源を落として、それからまだいろいろと「どうすべえ」と考えていたら突然「これはそうしないのが正解なのだ」ということがわかった。そうしないからこそああなって、こうなって。うんうんそうだそうなのだ。もちろんそれはストーリーの大きな部分が変わってしまうというほどのことではないのだが、蒼がそうしない方が、決めていた物語の流れとスムースに繋がるのだということが、ようやくわかった。こういうときは、まだ物語の神様は篠田を見捨てていないらしいな、と思ってしまう。

 読了本『ハルさん』 藤野恵美 東京創元社ミステリフロンティア 日常の謎系ミステリ。最近はもう完全に一大流派となりおおせた「日常の謎ミステリ」だけれど、実は篠田はあんまり好みではない。北村薫さんを読んだときは非常に驚くと同時に、「これは書くのが大変なタイプのミステリだ」と思った。首なし死体や密室より、さりげない日常の中に魅惑的な謎と解決を仕込む方がよっぽど難しいというのは、わかりますよね。最近はそれがどうも変な方向に行っている気がする。謎でもないものを無理やり曲解して謎にして、それをまた無理やり解決ならぬ解釈でおちをつけるみたいな。つまり「こりゃ無理でしょ」という不自然さが強くて、なまじ背景が日常な分その無理が突出してしまうのだ。『ハルさん』にはこの無理がとても少ない。自然にさらさらと謎があって解決があるというのは、その謎が不器用な父と一人娘の関係に生起するからだ。父にとって娘はしばしばそれ自体が謎である。だから自然で無理がない。ただ難しいのは、ミステリの魅力にはその「無理さ」も一部含まれているということ。フキノトウの苦みみたいもんです。苦すぎたらまずい。全然苦くないと物足りない。そんなわけで本作は、あまりすれっからしでない、優しい小説を読んでほっとしたいという向きの作品。
 ひとつ版元に注文。目次くらいはあっていいと思うよ。

2007.03.23
 新生メフィストは4/13発売だそうだ。小説以外にも有栖川さんと綾辻さんの対談とか、エッセイ系の読み物がいろいろあるそうだ。どっちかというと連載より読み切り中心だそうだ。でもって、ページ数が800もあるんだそうだ。ほえーっ。
 というのは講談社の担当から陣中見舞い電話をもらって、あれこれ聞いたからであります。会話のキャッチボールがうまくいく担当というのは、一日中閉じこもって他人と話す機会がない小説家にとっては有り難いですな。原稿、だいぶラストが迫ってきました。6月刊行のためには、4月に入っても2日か3日にはアップしないとあかん、ということなので、ラスト・スパートかけます。今日書いているときは、場が緊迫してけっこうどきどきしました。絶対こういうときって、血圧とか上がっているんだろうなあ、なんて思ってしまう、更年期は辛いよ、な小説家であります。

2007.03.22
 今日はジムに行ったんで、あんまり進まなかった。近いうちにまた泊まり込みして集中してやらないとダメだと思う。

 読了本『回転木馬』 柴田よしき 祥伝社 柴田さんが横溝賞を取って書いた受賞第一作の短編が「観覧車」で、そのシリーズが実に12年ぶりに完結したというわけで、当然『観覧車』から読み返した。悪意のある人間はほとんどいないのに、ヒロインに感情移入して読むとやっぱりとても悲しいし不条理だしやりきれない。ある意味ではハッピー・エンドなんだけど、彼女が奪われたものは決して戻ってこないんだものなあ。もちろん彼女はそれに替わるものを、女の自立とかひとりで生きる力とかを得たわけではあるんだけれど、それが生きるためのやむを得ざる選択だったというのが、とても悲しくて切ないわけなんです。しかし、愛する伴侶がある日突然帰ってこないというのは、想像する限り最悪の恐怖だな。

2007.03.21
 えーと、書いてます。終わりに近づいてます。でも今回はなあ、実をいうと書いていて「楽しく」はない。楽しい終わりじゃないんで。そんなもの書くなよって、いったってしょうがないんだ。ここを通過しないと大団円にたどりつけないんだもの。夜明け前は一番暗いんだよ。でもその夜明けまでが、遠いよなあ。ため息。

 読了本『饗宴 ソクラテス最後の事件』 柳広司 創元推理文庫 古代アテネを舞台に、哲学者ソクラテスが探偵をやるミステリ。毎度毎度他の人が絶対にやらないだろう不思議な時代設定でミステリを書く作者。すごくよく調べてあって、時代色を出したりその時代その世界なりのディテールがミステリに反映されるところを書き込んでいる人。だけど、ごめん、どうしてそのわりに「すごく面白い」というふうには感じられないんだろうと、首をひねってしまうのだよ。ミステリとしても、小説としても。書き込みの多さが物語の豊かさに繋がらないっていうか。

2007.03.20
 これまで書いた分を読み直して、ちびちびと細かいところを直しながら伏線とかいろいろ考えて、やっと271頁を書き出す。こういうときは、いままで書いてきた分がどうなんだろう、うまくいっているんだろうか、間延びしてないか、あるいは急ぎすぎて書き足り無くないか、と気持ちがうろうろする。あんまり迷いすぎてもかえってダメかも知れないので、マイナー・チェンジだけで先へ行くことにする。
 いままで小説を書くのってトンネル掘りだなとずっと思っていたのだが、最近は闇夜の綱渡りかな、などとも思う。見えないけど、足の下には綱の感触があるから、少なくとも方向は間違っていない、ということはわかるのね。それに綱渡りだと、少なくとも向こう端はちゃんとどっかに届いているっていうのがわかるじゃない。塀の上を歩いているのだと、その塀がいきなり切れているかも知れないんで、まずいんだけどさ。

2007.03.19
 章の切れ目、270頁まで。明日からいよいよクライマックスに向かって加速。読者の皆様の悲鳴がいまから耳に響いてくるような思いに襲われつつ、でもずーっと前から書くつもりでいたことだから、これはもう仕方がない。読者が泣こうがわめこうが石投げようが離れ去ろうが、書くもんね。精神衛生上悪いんだけど、ダメだっていわれたら筆折るしかないんだものさ。ジョナサン・キャロルの非情な筆を手本といたそう。どんなかって、創元推理文庫で出ているから、読んでご覧よ。あたしゃとてもここまでは出来ない。

2007.08.18
 日曜の朝は少しだけ寝坊をする。仕事場に行ってファンレターの返事をまとめて書く。なんとなく今日は気分で手書きにする。ポストに投函しに行って、スーパーに寄って昼の買い物をする。今日はなぜかコロッケ蕎麦が食べたい。しかしいつも買う冷凍の蕎麦が無くなっていて、しかたなく茹で蕎麦を買ったらこれが没だった。仕事もしました。

 読みかけ本 『百万のマルコ』 柳広司 創元推理文庫 マルコ・ポーロ、牢内にて語るホラ話の数々。謎があってオチがあるが、ミステリというよりはとんち小話といった感じか。読み味は悪くない。

2007.03.17
 266頁まで書いて章の区切りでプリント。読み返して直すのは明日にして、4月のミステリーズ!に載せる神代もの中編の第一回ゲラを読み出す。これ、比較的気に入った出来です。おそろしく登場人物の平均年齢が高いんだけど。
 読了本『蜂の巣にキス』 ジョナサン・キャロル 創元推理文庫 キャロルはものすごく好きな作家というわけではないんだけど、非常に印象深い作品を書いている。ただ、なんというか濃いので、立て続けには読めない。今回は幻想の要素がなくてミステリであると聞いたのだが、たぶんそうだろうと思ったけれど、差はない、ほとんど。キャロルにおける幻想性とかホラー性とかは、とってつけたような既成の要素ではなく、人間の中から湧いてくるものだからだろう。ミステリ性についてもまたしかり。主人公の作家を追い回すヴェロニカはミステリアスというよりは幻想的でコワイ。
 しかしああ、二度と浅羽さんの名訳を読むことは出来なくなってしまったんだな・・・

2007.03.16
 昨日は仕事場に泊まって残業。二日間で22頁進行。 ああしんどっ。日記に書くことなんにもなしです。

2007.03.14
 今日でまた章の区切り。234頁です。300くらいで終わるかなあ。終わって欲しいなあ。
 そろそろ『王国は星空の下』が書店に並ぶ頃です。当面東京に出る用事はないんで、篠田は見られないのですが、山田さん折原さんと一緒に並んでいるそうなので、見かけられましたらぜひよろしく。
 読了本『オモチャ箱』 野崎六助東京創元社 坂口安吾を探偵役にした三部作の完結編。全然時代の匂いのしないまがい物の凡百過去小説とは一線を画する。しかし今回は登場人物が事件当時全員正気でないというトンデモなミステリなので、さすがに読んでいるうちにこっちもわけがわからなくなる。その混沌ぶりも戦後の混乱期のムードそのものという感じだけど。
 『砂の城の殺人』 谷原秋桜子 創元推理文庫 今回がいままでで一番本格ミステリっぽさは濃いです。ただ、そうするとなおさらラノベ臭さがちょっと辛い。キャラの誇張された描写の仕方とかが。ま、それは好みの問題。

2007.03.11
 10頁は進まなかったなあ。やっぱり今回の話は恋愛というモチーフがでかくて、しかし篠田というのはほとんど恋愛を書いてこなかった物書きなんだよね。唯一のラブ・ストーリーは講談社ホワイトハートから出た『この貧しき地上に』全三巻、しかしこれはボーイズラブだ。講談社文庫オリジナルの『レディMの物語』は、恋愛のようでいて実はヒロインの自立物語だったりする。次に「恋やなあ」と思ったのは『龍の黙示録』の話が進行してからで、しかし齢二千歳の吸血鬼と女戦士とか、女戦士とへたれ修道士とか、一応はヘテロのカップルでしょとはいうものの、スタンダードな恋愛とはとてもいえない始末。
 それと比べると、今回はかなり普通に近い。完全に普通だとはいいきれないもろもろの要素はあるんだけどねー。誰の恋かというのは、ナイショですナイショ。
 来週は帰りが遅くなったり、仕事場に泊まったりで、日記の更新があまり出来ない模様。取りあえず、次は14日かな。

2007.03.10
 仕事継続。一日10頁は進めないと終わらないでしょう、という感じでもー。
 前からお便り下さっている方からの、嬉しいお便りが届いていた。最近ファンレターもめっきり減ってしまって寂しい限り。その方は以前建築探偵の同人マンガ本アンソロジーが出たときに参加してくれた方で、いまは同人は止めて子育てと主婦なのだけれど、イラスト入りのお便りがときどき届いて、この絵がとても渋くて、男前の神代教授なんぞなかなかうっとりであります。

2007.03.09
 今日は少しだけ残業。スタバで新章のプロットを練って、書き出したがどうも頭の切れが悪く、あまり筆の運びがスムーズでない。血圧が高くなっているような気がする。いや、頭が重くてなんとなく精神的にいらいらするのね。怒りっぽくなるというか。降圧剤飲み出してからは、ずっと調子が良かったんだけど。休みたいさぼりたい。でも書かないと終わらなくて結局自分の首を絞めることになる。

2007.03.08
 建築探偵は200頁で章の切れ目。次で大きく話が動く予定。書くにも話が動くときの方が書きやすい。しかし今回は恋愛要素がけっこうありまして、そっちが得意でない篠田にはちょっと大変なんです。誰の恋愛かはナイショ。
 上に書いたように台湾版の『桜闇』が来ました。タイトルを眺めると、「おお、中国語だとこうなるのか」となかなか面白い。「井中悪魔」はそのまんまだなとか、「塔中公主」はああなるほどとか。「君の名は空の色」は「汝名為天空之色」。けっこうわかるっしょ。

 読了本『秘密』 清水玲子 白泉社 恩田陸さんが「おもしろいよ」と勧めてくれたまんがの3巻目がやっと出ました。死者の脳を解析して死の前五年分の記憶を動画として取り出せる技術が確立した近未来、それによる捜査を専門とする警視庁9課のお話。確かに面白いが、今回はちといまいちかな。それまでと比べてってことだけど。篠田は実は第一話の、清廉潔白なアメリカ大統領が泥棒に刺されて死んだばっかりに、死後彼がひた隠しにしていた秘密(ある人物に恋心を抱いていたこと)が、熱烈な視線と記憶によって暴露されてしまう、という話が好き。でも大統領、そんなに熱心に目で追ってたらそのうち誰か気が着くぞ。

2007.03.07
 今日は一日建築探偵を休んで、4月に東京創元社で出る神代教授主人公の『風信子の家』のゲラチェックをした。半日くらいで終わるかなーと思っていたら、やはり一日つぶれてしまったので、ちょっとびっくり。最近、なんかこういうことが多い。気ばかり急いて、それに頭が着いていかない感じである。情けない。
 この本には巻頭に献辞がある。篠田は「本は買ってくれる読者のもの、読者に捧げられたもの」と思っているので、基本的に献辞をつけることはしないのだが、これは唯一の例外として許して欲しいと思う。どうしても、ここに彼の名が欲しいというか、彼にいて欲しいというか、彼に読んで欲しかったと思ってしまったので。その人は、残念ながらいま声の届くところにはいない。川を渡って逝ってしまった。

2007.03.06
 建築探偵を6月に刊行するためには、3月一杯に原稿が上がらねばならないということが、いまさらのようにわかった。なんとなく4月でいいような気がしていたんだよね。絶対に出来ないとはいえないが、予断を許さない状況であることは確かで、日記の更新がなかったら「仕事場に泊まり込んでるな」と思って下さい。
 ある知り合いの作家さんの掲示板をROMっていたら、おやおやということがあったのでちょっとその話題を。名前は出さない。男性作家Aさんの掲示板で新しい読者が「女性作家のBさんはAさんの奥さんなんですか」と質問していてびっくり。AさんはもともとBさんの熱烈なファンで、Bさんを実名で小説に登場させて文体模写の作品を何本も書いているのだが、なんでそんな話になったのかと思ったらば、ある電子書店サイトの投票書評に、あたかもBさんがAさんの奥さんであるのが公認された事実のような書き方がされていたのだよね。たぶん書評を書いた人は、洒落のつもりでそういう書き方をしたのだろうが、どこにも洒落ですとは断られていないので、なかには「そうなのか」と鵜呑みにしてしまう人もいて不思議はないと思った。本来ならサイトの主催者が注記ぐらいするべきではないかと思ったが、洒落を「洒落です」と書くのは野暮だとは、まあ思うよなあ。
 しかし「ふたりは夫婦説」がソースがわからなくなったまま転がれば、誤解が誤解を生むことだってあり得る。まったく、ネットで流れる情報は検証してから信じないとえらいことになる。もっと迷惑なデマだって、悪意なしに発生することがあり得るし、悪意ありで流布させることだって出来るよなあ。みんな、情報を検証する目を持ちませう。

2007.03.05

 夜には雨になった。しかし空気は暖かい。春の雨というと、西脇順三郎の詩を思い出すんだけど、正確な詩句がわからないのでまた後日。
 190頁を越えて、やっと半分は過ぎたかなという気がしてきた。内容的にそんな感じなんであります。ミステリの場合はいつも後半速くなるので、それに期待。
 HOMEのページに3月の新刊『王国は星空の下』の書影を入れました。配本は3/12頃になります。どうかよろしく。

2007.03.04
 仕事場から一歩も出ずにお仕事。しかし仕事場に来る前に、家の近所を少しだけ散歩。メジロの群がる満開の梅を眺め、道ばたに出ているフキノトウを採集した。田舎暮らしも悪くはありません。

 読みかけ本『窓から読みとく近代建築』 酒井一光 学芸出版社 窓に特化して近代建築を紹介した本。焦点がひとつに絞られている分、建築の素人が読んでも判りやすくて楽しい。写真も美しい。出版社が京都のためか、関西圏のこちらではあまり知らない建物が多く登場する。これ、みんな現存しているんだろうか。オペラグラスとカメラを持って、ゆっくりじっくり旅行したいもんだなあ。

2007.03.03
 ひな祭りですって、別になんにも関係ない。駅のスタバに新しい章のプロットを立てにいって、「今日のコーヒー」のおともにどピンクの「桜のなんたら」を食べましたわ。最近はプロット立てに行くのはもっぱらスタバ。空いてていいんです。前は珈琲館に行っていたんだけど、やたらと声のでかい客が多くて、へたすると仕事にならないから。
 唐突ですが「読者が自分で自分が好きなジャンルの幅を狭めるような読み方しかできなくなったら、そのジャンルは終わっちゃいますからね。」ということばを読んで、「ああ、なんかミステリのことみたい」と最近思った。実はここでのジャンルはボーイズラブマンガのことで、語り手は三浦しをんさんであります。

 読了本『童迷宮』 神谷悠 花とゆめコミックス シリーズ最新刊。面白いです。一度文庫版の解説を書かせてもらえて、とても嬉しかった。読み出したのはずいぶん後。主人公が性格の悪い美形で、名前が京、というのに気づいて焦った覚えがある。こちらの方がスタートはずっと早いのです。偶然です。ちなみに相棒は、深春と蒼を足したような男で、しかしすでに一児の父です。

2007.03.02
 本日で168頁。章の切れ目でプリントアウトしているので、今日もその切れ目が来たっつーことです。トンネル掘りの比喩でいくと、おおざっぱに最後まで試掘坑を掘ってから書き出せれば、ちゃんと見当がついていいんだろうと思うんだけど、篠田の場合は終着点が漠然とあるだけで、一応「方向は間違ってないよな」という野生の勘だけで書き出すのみならず、トンネルの壁は一応きちんと仕上げてからでないと次の章に進めないのだ。だから、書き上がって間違ってなければそこから直す手間はあんまりいらないけど、とにかくスピードがのろいんでありますよ。ええもう、頼りは野生の勘だけ。ただのトンネルでなくて、脱出トンネルのイメージですな。って、どこへ逃げるつもりさ、自分。

2007.
03.01
 3月になってしまった・・・という感じ。なんとか建築探偵は今月中に目鼻を付けたいのだが、今月は4月に出る東京創元社の神代もの連作本のゲラもあり、ミステリーズで三回分載してもらう神代もののゲラも来るはずなので、どうかなあ、という感じではあるのだった。それから理論社の新刊『王国は星空の下』は3/12書店配本に決定。児童書の棚にあるかも知れず、よろしかったら探してやって下さい。

 読了本 というかなんというか。『ポケット数独上級編2』 1/3から今日までかかってようやく終了。上級編の1はその後入手したので、また続けてやるのだ。我ながら安上がりな娯楽だな。600円でこれだけの時間遊べるんだから。
 読みかけ本 『團十郎切腹事件』 戸板康二 創元推理文庫 老歌舞伎役者中村雅楽をシリーズ探偵とする安楽椅子探偵もの。名作と評判の高かった短編集が5冊にまとめられて出る。こういう渋い企画は東京創元社ならでは(よいしょよいしょ)。さすがに驚天動地の読み心地とはいかないけれど、ウェルメイド揃いで、「本格ミステリって、鬼面人を驚かすようなものよりは、こういうのが本領だよなあ」と思わせてくれる。やや読者年齢高め、ではあるけどね。いいじゃん、高齢化社会だもん。