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2006.04.30

 建築探偵、新しい章に入って8頁。相変わらず桜井京介危機一髪な状況。その次の章ではまた蒼のパートになって、そこに京介が合流して、となってくれればようやく全体のクライマックスその1となる。でもその2もある。そして今回はエピローグもふたつ。実はプロローグもふたつある。なんかそういう構成になった。
 ところで小説を書いているときは、新しい小説はちょっと読みづらいのだが、それでも活字を切らすと発作が出る体質なので、旧作を読み返すことになる。今回は芦辺拓さんの『グラン・ギニョール城』がめっぽう面白かったので、さかのぼって芦辺拓集中読書をしております。「芦辺さんってすごいわ〜」といまさらのように驚嘆。そしてずっとおつき合いしていたら、日本一地味な名探偵森江春策が愛しくなってきました。

2006.04.29

 講談社の国際版権を取り扱っている部署の担当者様が、この日記を見て下さり、わざわざ『未明の家』は翻訳タイトル『黎明之家』ですとメールを下さいました。的と之の違いというようなことは、篠田にはわかりまへん。
 続行中の建築探偵、本日でやっと240頁です。なんか今回異様に疲れるのは、睡眠障害のためだけでなく、話の内容が緊迫しているせいだという気が。『月蝕の窓』のときと似てますが、あっ、そういえば今回も深春はお休みなんでした。短め短めと自分に言い聞かせてきたのに、300頁以内で収まるかというとちょっと難しいかも。死ぬな、篠田と我が身を激励。

2006.04.28

 えー、相も変わらず仕事。んでもって眠い。昨日「アナログメールを下さい」と書いたけれど、念のため。差し出し人住所氏名が外封筒に明記されていないものは開封できません、というルールを再度強調しておきます。次の新刊にはあとがきに明記しておこうっと。ある人にはわかりきったことが、ある人はまったく知らずに悪意もないままルールを破ってしまう、というのはある時代だから。でも、自分のこだわりが通用しなくなる前に篠田は撤退しますけどね。

2006.04.27

 相変わらず、眠い、と、書いてます、しか日記に書くことのないわびしい小説家です。これを読んでいる読者の方、たまには作者に励ましのお便りを書こう。アナログメールでね。電子メールは相変わらずというか、ますますというか、スパムメールだらけで、不特定多数にアドレスを公開していないでも一日に来るメールの五分の四はスパムという有様だから、とても読者からのお便りを受け取るわけにはいかないのだ、おゆるしを。

2006.04.26

 ミステリーチャンネルのことは、取りあえず忘れることにする。幸いうちでは視聴できないし。少なくとも小説は作者のインタビューの100倍はおもしろいことを保障します。

 読了本『グラン・ギニョール城』 芦辺拓 創元推理文庫 元本では読んでいたのだが、そのときは同年刊行の『時の密室』にやられていたのと、オチがわりと普通かも、などと思ってしまったせいで、そのまま読み過ごしていた。メタっぽい作りがどんな壊れた物語になるかと思ったら壊れなかった。変な期待をした分を減点にしてしまったのは、こちらの鑑賞眼のなさのせいである。おもしろうてやがて悲しきラストには、後の傑作『紅楼夢の殺人』を思わせる味わいもあって、まことに秀逸。装丁もいい。

2006.04.24

 味の素の「グリナ」は6回分お試しパックというのを買ったので、買った分くらいは飲まないとと思って、昨日も睡眠導入剤を飲まずにそれだけにする。一昨日よりは頭がぼけていない感じはするが、効いてきたんだろうか。まだよくわからん。しかし明日はぼけているわけにはいかないので、また薬の方にするつもり。
 というわけで、明日はミステリーチャンネルの収録に行くので日記の更新はお休みします。

2006.04.23

 相変わらず睡眠障害が直らないので、新聞広告が出ていて味の素の快眠サポートみたいなものを取り寄せて飲んでみるが、やはり昨日は眠れず頭ぼけぼけ。そらそうだ、アミノ酸飲んで眠れるなら誰が一日分300円超えなんて金を出すか、味の素そのまま飲むわい。そんなわけで今日は全然使い物にならず。原稿4頁書くもだめだめで丸めて捨てる。原稿書かなくていいならぼーっとして本でも読んでるけど、そんなことしてるとぼけきる前に飢え死にだ。

 読了本『パラケルススの娘』3 五代ゆう MF文庫 五代さんというのは重量級のど真ん中正統ファンタジーの書き手という印象が強かったが、このシリーズは良い感じに肩の力が抜けて食いつきのいい、楽しめる物語になっている。ただしビクトリア朝や、メイドと言った受けのいい材料を使っていても、正統ファンタジーの硬派の血は脈々と流れていることは保障できる。多彩なキャラも過不足無く立っていて、造形の確かさはさすがである。いずれも勝ち気な女性陣は魅力的だが、篠田はみんなからまんべんなく笑いものにされているおぼっちゃまクン、アレックスがけっこう好きだ。しかし君、クリスティーナみたいな性悪女に惚れてると、いずれ下僕2号にされるのがオチだよ。

2006.04.22

 本日198頁まで確定。どっと残業したせいでこの章はいままでで一番早く書き上げられた。今回の話は蒼のパートと京介のパートが平行して進む。どちらかというとやはり京介パートの方が書きづらいかな。しかし今回は少し短めのつもりなので、これで三分の二弱は終わったはずなのだが、ほんとに終わったんだろうかと不安な気も。ダイジョーブか、自分。

 来月出るノンノベルの「龍」の表紙見本をもらう。トウコがりりしくって、ヴェネツィアらしい建築も書き込まれていて、構図もダイナミックでかっこいいです。ミステリしか読まない読者にも、読んで欲しいなこのシリーズは。

2006.04.21

 昨日は仕事場のマンションの理事会で帰りが遅くなった。仕事進行中。なんとか今月末で200頁三分の二、は行くだろう。終わらなきゃどーしようもないんだけどね。

 建築探偵の台湾語版の翻訳が進んでいて、『玄い女神』が『黒色女神』になるけどいいですか、と聞かれた。いいですか、といわれてもなあ、中国語わかんないもんな。ことのついでに『魔女が死んだ家』の誤訳箇所を伝えておいた。万一増刷にでもなれば直してもらえるでしょ。しかし、『未明の家』はやっぱし『未明的家』になるんでしょーか。ああそれから角川のマンガの翻訳だと「建築探偵」はなぜか「建築偵探」でした。中国語だとそうなるらしい。

2006.04.19

 やっと164頁まで確定。今日はやっぱり昨日の夜薬を飲まなかったせいで眠れずボケ気味。飲んでも飲まなくても結局ぼけているのだが、どっちにしろ集中力が長続きしないのが辛い。次の章のプロットを作る。ジムに行ったあとはぐんにゃりしてとても仕事に戻る気力が湧かないので、新聞に載っていた、最近ちまたの流行ものというパズル、数独というのをやってみる。最初は手も足も出ないと思っていたのが、途中から解き方がわかるととんとんと進行した。脳力開発などといっても、パズル脳と創作脳は別物らしく、それで頭が冴えたり集中力が回復するというようなことは、ない。

2006.04.18

 今日は本格ミステリ作家クラブ大賞の投票をした。これには必ず400字程度のコメントをつけなくてはならず、しかしこういう決まった字数に必要なことを過不足無く書き込むというのは、わりと好きです。小説の帯とか、裏表紙の内容紹介なんかもね。

2006.04.17

 えー、代わり映えしません。ひたすらトンネル掘りのエドモン・ダンテスです。150頁は超えたんで、半分来たはずだと思いつつ、実感がない。そりゃ地の底にいればわかんないってばさ。

2006.04.16

 春の山梨に遊んできた。全然豪華な宿ではないが、食事がめっぽう美味くて、そこでしか飲めない和食によく合う勝沼産の白ワインがあって、お湯がいいという山の中の宿があるんである。湯上がりにビールを飲んで、絶対面白そうだと目星を付けて取っておいた本を読む。今回は『ロズウェルなんか知らない』篠田節子 講談社。観光客が離れて沈没しかけている田舎の村の青年が、悪戦苦闘して仕掛ける村おこしの話。あまり話題になっていない気がするが、これは傑作。

 そして今日は再び仕事。小説を書くというのは、脱出のトンネルを掘る脱獄犯の気分。方向だけは合っている、たぶん、と思いつつ、ひたすら少しずつでも、いつかは終わると信じて穴を掘る。一本掘ればまた一本。というわけで、延々と掘り続けているんだよね。

2006.04.13

 今日も淡々だったら淡々々であります。ちょっとやけ。明日明後日はリクリエーション。ほんといえば遊んでいるどころの話じゃないんだけどね、でも前々からの予定だったのでかまわず出かけます。日記の更新は日曜の夜です。

2006.04.12

 今日もマイナー小説家の日常は淡々と続く。喫茶店で先の展開を考えて、戻ってパソコンに向かって、ジムに行って、アマゾンから注文した本が届いたが、一冊考えていたのと全然違っていたので返品の手続きをして、帰ったらメフィストが来ていた。休刊直前号。分厚い。重い。ま、なにはともあれウロボロスの最終回を読むのだ。

2006.04.11

 昨日は頭痛があったのでためしに頭痛薬を飲んで寝たら、やっぱり睡眠導入剤ほどは眠れなかったけど、なにも飲まないよりはましだった。よく薬でプラシーボ効果というのがあって、睡眠薬と思いこんで毒でも薬でもないものを飲んでも効く、なんて話はあるけれど、誰か篠田を騙してくれないかにょー。
 今日はやっとこすっとこ128頁までを確定。ずっと書いていたのは京介が出てきて京介視点のパートなのだが、そして通常京介視点というのは他のキャラの視点より書きにくいのだが、今回書くのが時間がかかったのは、相手になっている人物が書きにくかったからなのだ。どこかどうして書きにくかったかというのは、ナイショだけどね。でも昨日書いていたとき、京介がいかにも京介らしいことを考えてくれ、ついで相手役が京介にとっても意外なことをしゃべってくれて、そこからとんとんっと進んだ。キーボード叩きながら自分でも「へー、そーなんだー」とかいってる。
 その後4頁間章のパートを書いて、ここはまあこのまま確定。というわけで132頁まで来ました。今月中に最低200頁。出来ればもう少し進めたいなあ。しかし今日はちょっと労働意欲を減退させるような出来事があったので、まあ、進行した方だ。今週は週末にリクリエーションの予定があるので、それまでにもう一踏ん張り。

2006.04.10

 睡眠不足でよれよれの篠田です。夜はつい眠いからそのまま寝てしまうと、目が覚めると三時、というわけで、やっぱり薬無しでは無理か。でもまあ今日は一応真面目に仕事をして126頁まで来る。今夜は忘れずに薬を飲もう。
 カーサブルータス五月号「次に読む本 237冊」に建築探偵のブックガイドが掲載。しかしこの雑誌の読者が本格ミステリを読むかというと、かなりビミョーな気がする。

2006.04.09

 本格ミステリ作家クラブの会議が長引いて、今日は全然仕事が出来ない。まあ、どちらにしろあんまり出来ないだろうと思って、睡眠薬は飲まなかったんだけど、やはり夕刻にはもうろうとしている。行き帰りが時間がかかるので、未読本が減らせるのが唯一の利点。
 読了本『君がぼくに告げなかったこと』 図子慧 祥伝社文庫 なんとなく昔の栗本薫を思い出した青春ミステリ。しかし、物語がぎりぎりに一点に引き絞られてクライマックスを迎え、ぱん、とはじける、というようなタイプの小説、篠田が理想としているような小説というのはすでに古いのかなあ、などと思う。

2006.04.08

 やっと108頁まで確定。ううう、やはり更年期が発症してから確実に原稿の速度が遅いよお。しんどいよお。
 東京創元社のミステリーズ! 4月号 神代先生の短編が載っていますのでよろしくお願い致します。今回は神代さんとミハルのコンビです。

 読了本『夏季限定トロピカルパフェ事件』 米澤穂信 創元推理文庫 小鳩君の傲慢を赦せない気分がするのは、自分がもう若くないからかいまだに青いからか、よくわからない。しかしラストは甘いどころか苦い。小鳩、てめえ、さっさと「小山内さんが好きだ」と認めてしまえ、と思うのはやはり篠田が若くないからか。この話、これからどう転ぶんだろう。

2006.04.06

 医者に行ったあと池袋で講談社の担当と会って『アベラシオン』下巻の見本をもらう。巽昌章さんの解説付き。元本をお持ちの方にも、この解説だけでも読んで欲しいという気が致します。明日は仕事場でがんばろうと思うので、日記の更新はなし。

2006.04.05

 今日はジム。明日は医者というわけで、フルに一日使えないとどうも仕事が進まなくていけん。日記の更新がなかったら、仕事場に泊まって残業していると思って下さい。

2006.04.04

 近所の桜が満開なので花見。ウィークデーにもかかわらずの人出の多さに閉口。すぐそばでカセットデッキから邦楽を流しているじじいにさらに閉口。しかしソメイヨシノというのは手元に落ちてくる花弁一枚が美しい。ひんやりとしたハート形が白かと思うほど薄い色づきで、芯に近いところにあざやかな紅が。つくづく眺めると、なんというか、とてもセクシィ。
 夜は眠れないのに、昼酒のせいで一時間ほど昼寝してしまう。

2006.04.03

 今日も直しで一日。でもまあ手応えはあるんで。この調子だと5月いっぱいぎりぎりかも。

2006.04.02

 昨日は薬飲んだけどいまいち眠りが浅くて、どうも毎日等量飲んでいても眠れなくなる気がするんだけどやる気が出なくてこれまでの部分の直しをして一日。
 さはさりながら、
 読了本『怪盗グリフィン絶体絶命』 法月綸太郎 ミステリーランド これは面白かった。単純明快に楽しめました。しかし重箱の隅を承知でひとつ。アメリカには戸籍はないんだから、新婚旅行中のカップルが「籍を入れたばかり」というのは変なんでは。校閲、これくらいチェックせいよ。

2006.04.01
 唐突にパンが焼きたくなり、冷蔵庫の白神こだま酵母と強力粉に少しライ麦をまぜてパン・ド・カンパーニュを焼く。といっても酵母を起こしたらあとはパン焼き機でこねて、取り出して丸めて最終発酵させて焼くだけなので、大した手間はかからない。今回はとても上手に出来た。自分でこねるとなかなかこうは出来ないのだ。
 しかしそんなことをしているので、原稿は82頁までしか進まず。今回はギャグっぽい場面とか、日常ほのぼのな場面とか全然ないので、書く方はけっこうしんどい。たぶんいつもより短めの300頁弱で終わるのではないかと思うが、いつも後半になると思ったより伸びるからなあ。恩田さんは思ったより二割くらい縮むのがいつもなんだそうだ。
 でも読者は一行一行逐一読んだりはしないものだから、クライマックスなんかは少ししつこく書いた方がいいような気がする。小説というのは、くどいと思ったら斜めに読むし、物足りなければ行間を読み込んだりする、つまりそうやって読者が主体的に世界をコントロール出来るというのが、映画なんかとは違う優れた部分だと思うのだった。