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2006.03.31

 マイスリー四分の一錠でまずまず快調。100には達さなかったが75頁までは来た。しかしどこにも遊びに行けないので、せめてアマゾンで洋書の写真集など購入して憂さを晴らす。
 棚の中に数年前本格ミステリ大賞評論部門を取った若島正氏の「明るい館の秘密」のコピーがあり、『そして誰もいなくなった』の叙述トリック分析を数年ぶりに読み返して面白いなと思っていたら、孤島テーマのオチの付け方についてひとつの思いつきを得る。トリックなどというものではない、ただのオチ。しかし他に書いた人がいないかどうか、ミステリに詳しい友人に確認しなくてはなるまい。なにせ篠田は読んだミステリを片端から忘れてしまう。老後は新しい本は要らない、というくらい。
 それとこれはシリーズものではうまくない。『すべてのもの〜』の読後感想を光文社宛送ってこられた人がいて、それを読ませてもらったらあの話をシリーズになるものと思いこんでおられたのでたいそうたまげた。あんな閉所空間大量殺人に遭遇するのは、一生のうちに一度でたくさんだと思う。もう一度そんなことがあったら絶対に発狂するぞ。江南クンは大丈夫だったのだろうか。あっ、つまり『暗黒館』は精神に異常を来してしまった彼の見た悪夢だったのか。

2006.03.30

 昨日テレビの旅番組を見ていたら、出てきたおいなりさんがやけに美味そうで、衝動的に油揚げを買ってきて煮てしまったが、イメージより味が薄い。というわけで明日もう一度煮直さなくては。いえ、あの、原稿も書いてますけど。今月中に100頁なんてどの口がいうたー。

2006.03.29

 薬が効かなくならないように昨日は導入剤を飲まずに寝たら、やっぱり夜中に目が覚めてぼけているけど、もういちいち知ったこっちゃねえやとやさぐれつつ生きている更年期篠田です。建築探偵、ちびちびとでも書いていればいつかは終わる、終わるはずだ、終わらなくてどーする・・・
 今日は「龍」のあとがきを仕上げてメールして、ジムにも行った。原稿打つときゃカフェ・バッハのコーヒー片手に、頭に冷えぴた貼って、肩にトクホン貼って、首に蒸しタオル、なんかもーすごい格好。考えんとこう。

2006.03.28

 同じだけ薬を飲んだのだが昨日は一昨日より眠りが浅く、その分今日はいまいち。午前中は建築探偵。午後祥伝社の担当が来てその場で5月に出るヴェネツィア編のチェック。彼が帰ってからノベルスのあとがきと著者のことばを書いて、エアロバイク30分乗ったらもうなんかぐんにゃりしてしまっておしまい。どうも体調はいまいちである。困ったものだ。

2006.03.27

 昨日はマイスリー0.5錠で朝までぐっすり寝たつもりなのに、夕方になるとめがシボシボする。これは要するにまだ寝足りないのか、どうもよくわからん。試しに今夜は続けて0.5錠飲んでみる。
 仕事は43頁まで。今回は蒼パートと京介パートが交互に出る構成になるが、いまのところ蒼パートなので書いている感じは少し懐かしい。もっとも『Ave Maria』のときとはまた少し違ってきている。蒼というのは本当にゆっくり成長する子だな、といまさらのように驚く。たいていの小説の中では事態は現実より急速に進むものだから、なおのこと蒼は変に「とろい」と思われているのだろうなとは百も承知だが、こればかりはいかんともしがたい。いやほんとに、建築探偵のキャラの中でも蒼は一番予想しにくいところがある。といって、いうことを聞かないわけではなく、書き出せば彼がどうであるかというのはちゃんとわかるのだが、書いてみないとわからない。
 今回も家庭内暴力をしてしまった女の子の話があって、作者は一度蒼が「大変だね」というようなせりふを返すのを書いてから、これはなんか違うと思って消したら、すぐに「それは苦しいね」というせりふが出てきた。蒼も一時は暴れて京介に暴力ふるってたりしたんだということを、作者は忘れていました(忘れるな)。そんな蒼が「大変だね」なんておざなりをいうわけがない。かつて好きになった人のために頑張ろうとして事件に巻き込まれていた蒼は、いま自分が必要とされているから、そしてそうするべきだと思えるから関わっていくことが出来るようになった。断じて作者の分身ではないし、蒼というのはまったく不思議なキャラクターだといまさらのように思うのでした。

2006.03.26

 土曜日は都内某所に立ち寄った後吉祥寺のTRICK+TRAPへ。貫井さんのサインだけでなく、そこに居合わせたマンガ家の喜國さんのサインもしっかりもらってしまいました。『天使の悪戯』双葉文庫 面白いっすよ。
 しかし二日続けて睡眠導入剤を飲まなかったら、ちゃんと眠れなくて本日はほぼ使い物にならず。飲んでもぼけるが飲まない方がもっとダメ、ということだけは確か。大豆イソフラボンを摂取すべくせっせと豆腐や納豆を食べているが、追いつかないですね。

 読了本『暗闇のセレナーデ』黒川博行 創元推理文庫 犯人像にふさわしいトリックが効いている。探偵役の美大生二人組も、『キャッツアイころがった』のふたりよりよほど魅力的。しかし中盤の連発トリックは「そんなにうまくいくかいなー」とつっこみを入れたい、やや作為的すぎるものが目立った。こういう場合「こうかな」と推理して外れたら「しめた、自分の作品で使おう」と思えるのが物書きの有り難さだったりして。

2006.03.24

 今日は久しぶりに頑張った。33頁。しかし明日はちょっとだけ取材と、吉祥寺に貫井徳郎さんのサイン会と、その後は飲むので日記はお休み。

2006.03.23

 というわけで再度ジム。原稿はやっとこすっとこ21頁。

2006.03.22

 入間のジムまで行ったら、イレギュラーな休館日でとんだ無駄足。
 原稿15頁まで。なんとか今月中に100頁。久しぶりに蒼視点。ミステリーズ用の原稿で蒼視点をやっているのだが、そっちはちび蒼なのでちょっと感じが違うのだ。今書いているのは2002年4月の蒼です。

2006.03.21

 昨日は薬を飲んだのだが、やっぱりちゃんとは眠れなかったらしくて、午後になると頭がくらくらしてくる。しかしどうにかこうにかやっとこさ、『聖女の塔』に着手。7頁まで。書き出してしまえばなんとかなるさ、たぶん。

2006.03.20

 寝付くときはかなり眠かったので薬を飲まずに寝たら、また3時に目が覚めてしまう。その後はいくらか寝たはずなのに、頭が重くて本を読む以外のことが出来ない。いままでほとんど医者に縁がないくらいの生活をしてきたので、薬を飲むことにどうしても抵抗感が消えないのだ。って、その結果翌日怠けてたんじゃあ、なんにもならないすっすよね。

 カーサブルータスのインタビュー記事のゲラをもらったのだが、限られた文字数の中に入れるにはなんとも未整理な文章で、ほとんど支離滅裂。いや、篠田のしゃべりがそもそも支離滅裂なのだ、といわれたら一言もないが、それを整理するのがライターの仕事なんでは。400字足らずの中にミステリとミステリーが混在しているし、本のタイトルは間違っているし、著者略歴からして変なのだ。やむをえず文字数の三分の二くらい大急ぎで書き直し、差し替えて欲しいといって希望を叶えてもらった。
 睡眠不足のところに焦りまくりであわてて文章を書いたから、今頃になって頭痛なり。だけどよく考えてみたら、これってただ働き??? いや、記事を読んだ人が1冊でも建築探偵を買ってくれたら報われますけどね。

2006.03.19

 キャンベルスープのおまけについていた種をマグカップに蒔いたら冬の間に芽が出て、しっかり大きくなったタイムとチャービルを鉢に移植する。別段園芸は趣味じゃないんだけど、仕事場のベランダが広いのでつい気が付くと鉢が増えている。
 それから相変わらずプロットと、逃避の読書。さっぱり話が転がらなくてもうダメか、ついに廃業かと悲観的な気分に取り付かれるが、ようやくクライマックスの絵が見えて、「ああ、今回の話は本格ミステリというよりはサスペンスなんだ」と気が付く。どうもなんかいつもと肌触りが違う、変だ変だと思っていたんだけど。ていうか、プロット立てながらなんで気づかない、自分。
 数えてみると最初の本が出た1992年から今年で15年目なんで、著作も去年で38タイトル、今年中に40タイトルにはなるっつーのに、普通15年も同じことをしていたらいい加減手慣れてくるだろうよと思うんだが、なぜか篠田の場合毎度そのたびに「ご和算で願いましては」になって、経験値がさっぱり上がらないというのはどうしたもんなんだろう。飽きなくていいじゃないか? ははは、まーね。

2006.03.18

 こういうときに限っていただきものの本が多い。逃避と知りつつ、ついつい手を出してしまう。
 読了本 『びっくり館の殺人』 綾辻行人 講談社ミステリーランド 面白くない、わけではない。だがこういうトリックなら、あとほんの一行、伏線を入れて欲しかった。
 『にわか大根 猿若町捕物帖』 近藤史恵 光文社 近藤さんの時代物には江戸の香りがある。歌舞伎の深い素養から漂ってきているものなんだと思う。装丁もすてき。

2006.03.17

 同じことばかり書いてまことに気が退けるのだが、「まだプロット、それも完成は遠い」と繰り返すしかない。夕方になって急に「あれ。この話はつまりこういうこと?」というような発見が浮上したが、「おまえはそんなこともわからないままプロットをひねくりまわしていたのか?」と呆れる気持ちの方が強い。物語の構造から発想することが出来ず、ディテールやモチーフばかりもてあそんでいたせいだろう。しかも今日はそんなところへ、いただきものの献本がどさっと。嬉しいような悲しいような。そうはいっても綾辻さんのミステリーランドを読まないではいられないでしょー。

2006.03.15

 ええっと、代わり映えありません。プロット作りです。ちょっと近くの図書館に新聞の縮刷版のコピーを取りに。本が出てくるのを待つ間に近くの小説の開架書架を見ていたら、倉阪鬼一郎氏の著作がどーっと揃っているのに気づいて、けっこう意外というか。ううむ、こんなど田舎にもクラニー・ファンがたくさん?

 明日は仕事場のマンションの理事会なので、帰りが遅くなるから日記の更新はお休み。

2006.03.14

 プロットを作り始める。やっと端緒についたという感じで先は極めて長い。果たして五月末に作品が仕上がっているか、予断を許さないというか、今の状況では無理の方が強い気がする。でもまあ、千里の道も一歩から。書かなきゃ終わりません、はいわかってます。
 ノンノベルの担当Y君から電話。CSのミステリィチャンネルから著者インタビューの申し込みだそうだ。篠田のまずい面を出して本の売り上げが伸びるのかどうか、はなはだ心許ないが、えらそうにご辞退するほどの度胸もない。篠田の主戦場と考えていたノベルス戦線は最近縮小の一途で、正直溺れる者は藁をもの心境なのだ。笑っていただいて一冊でもよけいに売れるならそれでけっこう。作者の顔より小説の方が面白いのは紛れもない事実ですしね。

2006.03.13

 読む予定の資料本の9割は読み終えたので、関わりのある建築探偵の既刊本を取り出して読み返す。前作『胡蝶の鏡』は、第3部の最初の1冊として、いわば「終わりの始まり」ではあるけれど、事件内容などはこれまでの建築探偵のラインに乗っかっていた。しかしこれからはそうでなくなる。前に出てきた人物が出てくるし、伏線がはっきりと尾を引くことにもなる。しかしいままで読者にリサーチしたところだと、いきなり『Ave Maria』から読んだなんて人もいるし、多少前から引きずる部分があっても読んでくれる人は読んでくれると思って、そのままいってしまおうと思う。
 たぶん15巻で完結するまでは落ち着かないような終わり方をすることもある。出来るだけ間を詰めて出したいとは考えているのだが、他社との仕事の兼ね合いも考えると建築探偵だけ書き続けることは出来ないので、そのへんはひとつご辛抱を願うしかない。しかしまあ、篠田が重病で倒れたりしない限りは、2009年までには桜井京介の秘密と彼の運命は明確になる。
 でも彼は死んだりはしない。未来像は『魔女の死んだ家』講談社ミステリーランドの中に登場しているので、(ぶらっと現れて謎を解いて去っていくフーテンの寅さんのような名無しの名探偵が京介の後身です)それだけはひとつご安心願いたい。本来なら「主人公が生きるか死ぬか」は読者を引っ張るポイントとしてないしょにしておくべきものなのだろうが、せめてそれだけは言明して安心させてくれ、という読者のコールに、篠田は深甚なる感謝と共に答えることに否やはない。
 シリーズを続行させることが出来なくなっても桜井京介は、そして蒼や深春は読者の皆様の心に実在し生き続けていく。性格の悪い無愛想な主人公を、そこまで愛していただけて有り難いと心から思っております。ほんとよ。

2006.03.12

 たまに日曜日に都心に出ると、人が多いので身体がたまげてしまう。というわけで今日は実質的に仕事休み。帰りがけに本屋で、今日の毎日新聞の書評欄に出ていた『人間の暗闇』岩波書店を購入。ナチの絶滅収容所の所長に1968年刑務所で1女性ジャーナリストが行ったインタビュー。ナチについては『アベラシオン』の中である程度扱ったので、当面直接作品に使う予定はないのだが、そして泣きたいくらい高い本なんだけど(4200円って・・・)、これは読まないわけにはいかないと思った。
 ミステリというのはやはり基本的に犯罪を扱うわけで、つまりは人間の「悪」や「罪」を描かざるを得ない。しかしエンタテインメントとしてそれなりの読み味の良さを確保したいと思えば、罪を犯す人間に一定のエクスキューズを与える、許し得る罪を描く、さらには犯人を英雄的に描くのが、もっともたやすいことになるわけだ。それが絶対にいけないことだとは思わないけれど、エンタメ小説にする便法として「正当な理由があれば殺人も許される」みたいな小説はどうよ、とも思う。これは世の中のまっとうな価値観に媚びて、とかそういうことではない。篠田は決して楽観的な人間ではなく、むしろ身も蓋もなく悲観的で性悪説的な人間なのだが、自分の中のそういう暗いものをほしいままに吐き出すことはしない。純文学作家じゃないし、自分が子供時代から思春期、どれだけ活字から影響を受けたかよくわかっている。だから特に若い読者には、うっかり自分のペシミズムを垂れ流して読ませるようなことはするつもりはないのだ。
 だが長らくエンタメ作家をしていると、知らず知らずたやすい道へ流れ込んでしまうことはあり得るわけで、とにかく「悪は決して英雄的なものではない」ということを己れに思い出させるためにも、ナチスの戦争犯罪を担ったおっさんの卑小さを赤裸々に示しているらしいこの本は読まなくてはならないなと思ったのだ。同じような感想は、アイヒマン裁判の記録映画をみたときも思って、それは『アベラシオン』の中で視点人物藍川芹の感想として書き込んだ。ホロコーストの立役者達は決してゲルマンの英雄ではない、「命令だったから私に責任はない」といいたがる、エイズ禍を引き起こした厚生省の小役人のようなおやじどもだったのだ。
 ところで面白いことに、芹は女性読者の多くから支持の声をいただいたが、男性読者からは否定的な感想を複数もらった。彼女の至極普通な、健全な感覚は、あのバロックのごとくゆがんだ世界を描くために作者としてはどうしても必要だったのだが、芹を批判した男性読者にとっては「しらける」ものだったらしい。性差で物事を語るのは誤解も生むし、まったく望むところではないのだけれど、こういうふうにはっきり感想が分かれるとついつい「男って・・・」といいたくなってしまう。まっ、いいけど。

2006.03.11

 どうも最近日記をさぼりがち、というのも書くことがないからだが、もしも毎日チェックしている人がいたら大変に申し訳ない。昨日も今日も代わり映えはしないのだが、今日はあまりに暖かだったので、桜餅を買ってポットとカップと茶葉を持って近所の河原に出かけた。また桜には全然早いが、梅はあちこちで咲いていて、浅瀬にサギが来ていたり、なかなかのどかで良い気持ち。猫になって喉をごろごろいわせたくなる。仕事は進んでないのに、我ながら危機感が薄いったら。
 明日は昼間都内某所に出かけるが、夜は戻るので日記は更新します。

2006.03.09

 今日も一日仕事場からでないで資料読み。その分エアロバイクは60分漕いだけど。というわけで書くことがない。

2006.03.08

 昨日は婦人科の医者に言ってから池袋と銀座、書店をはしご。その後打合せ。
 今日は一日買ってきた資料本をひたすら読む。そうして読んだ本についてはいまはいろいろ書くことはしない。とにかく早くプロットを立てないとなあ(ため息)。

 読了本『模倣の殺意』『空白の殺意』中町信 創元推理文庫
 前者は『新人賞殺人事件』、後者は『高校野球殺人事件』というタイトルで、手に入らない本格ミステリの傑作として知られていたもの。しかし残念ながら、これもまた篠田の好きな本格ミステリではない、ということを確認した。前者はあまりにも大きな断り無しの偶然にすべてがかかっているのが正直いって不満。改稿によって当初はあった「断り」を削ったそうなのだが、手の内をそこまで晒してくれれば、偶然によるという不満は解消されただろう。後者は実はごく最近、某ミステリ雑誌のトリック評論でネタを読んでしまっていたのが痛恨。
 しかしどっちにしろ「篠田の好きな本格ミステリ」ではなかった。せこい新人作家の盗作問題とか、甲子園出場と不倫とか、そーゆーいじましい動機の物語は嫌いです。いくらトリッキィでも、いやむしろトリッキィであるだけ、なんか幻滅してしまう。最近つくづく守備範囲が狭くなってきたなあ。

2006.03.06

 今日も本読み。新しい話を考えているときというのは、ちょっと風邪の引きはじめと似ている。なんとなく頭がふわふわして、皮膚がざわついて、眠いような眠くないような、落ち着かない気分がする。ばらばらにちぎったメモのようなものが、意識の中を行き来する。無意識にそれを拾ったり捨てたりする。非常にばかげたアイディアがこの前からその中枢に居座っている。どうすればそれをうまく物語の中に落ち着けられるのかわからない。ストーリーで結べない断片ばかり。視点人物は「蒼」と、これだけは確か。ただしプロローグにいるのは京介。久しぶりにこのふたりがメインの話になるかも知れない。シリーズを終えるためには、一度彼らの関係も大きな曲がり角を曲がらないとならないんだけど、まあ、怒ったり悲しんだりするのは全部終わってからにしてくれ。

2006.03.05

 だらだらと本読み。資料になる本もならない本も。マンガとか。

 最近ごひいきのマンガ 『拝み屋横丁顛末記』 宮本福助 一迅社ゼロサムコミック
 最初コミケでこの方の「ロード・オブ・ザ・リング」本と出会い、京極堂本を読み、商業誌でオリジナル作品として連載中のこちらと出会った。脱力系のギャグといいますか、気分がまったりします。キャラの年齢高し。ジジイ好き心を刺激されるのでありました。

2006.03.04

 昨日は徳間の日本SF大賞、日本SF新人賞のパーティ。ここでしか顔を見られない知り合いもいるのでいままで出席してきたけど、これもそろそろ行かなくていいかな、という気分。でも今回は辻真先先生とお話しできたのが嬉しかった。鉄道趣味もない人間にも面白くてエキサイティングで感動させてくれる『沖縄軽便鉄道は死せず』は紛れもない傑作だ、ともういっぺん繰り返しておこう。しかし75歳にしてなんとパワフルな辻先生。とても真似出来ません。
 今日は友人の榎田尤利さんのサイン会で新宿有隣堂まで。フェンリルシリーズも今回で六冊。ようやく世界が見えてきて、話は加速しつつある。ボーイズラブでは古典的な名作である「魚住君シリーズ」の作者だが、こちらは甘さを抑えたハードな本格SFなので、ボーイズは苦手、という方もぜひご一読を。(もちろんボーイズ・ファンが妄想を働かせる余地もありますので、そこはそれ) 主要な主人公がふたりいて、時間軸もずれている(次回からいよいよそれが一本になるらしい)ため、途中の巻から読んでさかのぼることも可能。ディストピアの未来社会を描く作者の手腕は確かで、ディテールはクリア。どこから入っても、物語の全体像が次第に明確になっていくスリリングな読み味が楽しめます。
 シリーズ既刊本 「神を喰らう狼」「隻腕のサスラ」「片翼で飛ぶ鳥」「おまえが世界を変えたいならば」「沙獏の王」「生まれいずる者よ」 講談社ホワイトハート

2006.03.02

 今日は建築探偵新作のプロットを考えながら、終日心理学関係の本を読む。当面こうした作業が続くと思うが、その間に読んだ資料系の本はいちいち感想は書かない。
 『アベラシオン』ノベルス版上巻の見本が到着。今回は元本にあった皆川博子先生の解説は上巻に収録し、下巻には書き下ろしたあとがきと新しい解説が入る。また巻頭には作中舞台のモデルとなったカプラローラのパラッツォ・ファルネーゼの写真と北イタリアの地図を新しく入れたので、いくらかイメージしやすくなったのではないかと思う。

 明日はパーティなので日記の更新は休み。極力パーティには出ない篠田だが、ここでしか会えない知り合いがいるので。

2006.03.01

 ここのところ仕事と関係のない未読本をまとめて消化して、面白いものも多かったので書名と、おおざっぱな感想も書き込んでおくことにする。

 『落下する緑』 田中啓文 東京創元社 サックスプレイヤー永見緋太郎を探偵役とする連作短編。ジャズには興味も知識もないにもかかわらず、さくさくと読めて非常に読み味もいい。
 『イノチガケ 安吾探偵控』 野崎六助 東京創元社 坂口安吾を探偵にした長編の二作目。仕掛けは早々に見えてしまうが、第二次大戦末期の空襲下での殺人という特殊な状況と、動機の切実さが、それだけでは済まない悲壮感を醸し出している佳作。
 『一週間の仕事』 永嶋恵美 東京創元社 いわゆる青春ミステリです。
 『沖縄軽便鉄道は死せず』 辻真先 徳間書店 迫り来る戦火から古酒の瓶を守り抜こうとする少女を中に、壊滅寸前の沖縄唯一の鉄道を走らせる男たち。鉄道愛好家も酒飲みも泣かずにはいられない。映画で見たい。そして、これだけの質の高い力作を放つベテラン作家の力量に改めて脱帽。
 『風と暁の娘』 五代ゆう メディアファクトリー ゲームの設定から書かれたファンタジーだそうだが、元ネタは知らなくても充分楽しめる。雰囲気に宮崎駿的なところがあるのがご愛敬。
 『白い果実』 ジェラリー・フォード 国書刊行会 あの山尾悠子が翻訳の文章を整えた異世界ファンタジー。『幻想建築術』を書いた篠田は、自分のイマジネーションの貧弱さを痛感してかなり落ち込んだ。
 『銃姫』6 高殿円 メディアファクトリー シリーズ快調。 どういう落ちをつけてくれるのか注目したい。
 『他人を見下す若者たち』 速水敏彦 講談社新書 非常に良く思い当たるんだけど、問題は若者だけでなく、もっと年上の大人にも似た傾向が現れていることだという気がする。携帯禁止の車内でいまだに大声でしゃべってるのって、たいていオッサンオバハンじゃない。
 『麻原彰晃の誕生』 高山文彦 文春新書 「教祖」もまた一日にしてならず、と。