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2005.11.28

 仕事。26日に書いた部分があまり気に入らなかったので、そのほとんどを直し、結局25枚まで。やっと少しスムースに進み出した。しかし、明日明後日は出かけてしまうのである。考えてみると12月はけっこう出かける日が多いし、よっぽど馬力をかけないと今年中のアップは危ういんではないかと思いつつ、まあ取り越し苦労しても仕方ありませんなあ。というわけで次の更新は12/1です。
 『螺鈿の小箱』出ております。お目につきましたらお早めにどうぞ。少し大判で絢爛たる装丁です。

2005.11.27

 府中競馬場に行って、やけに暖かい陽射しの中で生ビールを飲んで、パドックで馬を眺めて、JRAに1000円寄付して戻りました。篠田の買った馬は2着3着。いやあ惜しかった、というかありがちな話。

 読みかけ本 『サルバドールの復活』創元推理文庫 同じ作者の処女作は「このミス」の第一位だったというのだが、日本の作家が同じことをしたらエンタメとは認められないのじゃないか、と思ってしまう。時間軸が錯綜し、作中作や手記が断り無しに混じり込み、作者がシリアスなのかギャグなのかさっぱりわからず、ゴシック・ロマンスの枠にはちゃはちゃを山盛りにしたような感じ。ただし笑えない。しばしばえげつなくグロい。

2005.11.26

 喫茶店に行って第三回のプロットを作る。本を読んだりネットを開けたり寝っ転がったりしないためには、結局喫茶店に行く必要がある、というわけで、どうにか2時間ほどでプロットを作り終えて、どうにか9枚。
 しかし明日はジャパンカップなので府中に行ってしまうのだ。乗馬をやっていた頃はG1レースくらいは買っていたのだが、最近は全然。でも馬は好きなので年に一度せめてジャパンカップくらいは行きましょうというわけで。篠田が大金持ちだったら馬を飼いたかった。乗るためというより可愛がるために。だって馬って可愛いんですよ。寒いときは触っているだけで暖かくなる。

2005.11.25

 半澤氏の木工展をやっている坂戸のギャラリーに顔を出し、池袋に出て2.3買い物をして戻ってきたらもう真っ暗、というわけで仕事進まず。たまに東京に出ただけで、人が多くてなんかげんなりしてしまう。今月中に第三回どころの話か。アーメン。

2005.11.24

 祥伝社の担当がゲラを持ってくる、というわけで朝から仕事場の片づけと掃除。そうしたら仕事をする気がしなくなって、結局本二冊読んで沈没してしまった。我ながら怠け癖がついて困ってしまう。
 読了本 大作に手を出す気にもなれなくて、読みやすそうなものを選んでしまった。
 『結婚なんてしたくない』黒田研二 『ハートブレイク・レストラン』松尾由美
 どちらもするすると読めて、ミステリ味は控えめで、恋愛スパイスが多め。このへんがいまの時代の売れセンだなあ、という感じはする。つまり、篠田の路線からは遠い(ダメじゃん、自分)

2005.11.23

 「トリノ編」第二回のプリントアウトに赤を入れ、直して一応完成原稿。102枚。しかし明日は先のプロットを組むことからしなくては。今月中に第三回を書けてある程度プロットも出来てきたら、今年中に完成させられるかも。
 しかしやたらと寒いなあ。一度風邪治ったのに、下手したらまた引きそう。というので、手洗いとうがいをしています。

2005.11.22

 「トリノ編」第二回一応終わる。明日手を入れて完成。しかし相変わらず先行きはぼんやりしたまま。書きたい場面や展開はいろいろあるのだが、シーンとシーンの配置や繋がりがまだぴったり来ない。今回は龍がかなりダークなヒーローという感じになっていて、作者としてはそこが気に入っている。いやもちろん、ライラに手こずらされる龍とか、そういうのも嫌いではないのだが、ほのぼのばっかりやってると「なにを書いてるんでしょ、私」という感じになってしまうもんね。
 しかしトリノで二週間がんばった甲斐はあったともうしますか、同じイタリアでもヴェネツィアとは全然違う街の雰囲気とか、そういうものもわりと書けているのではないかな、とこれは自画自賛。ただなにぶんにも自分が行ったのがそういう季節だから、暗澹とした雰囲気になってしまっているのはごめんなさい。ヴェネツィアもそうですから。(ローマはどうなるんだろ?)

2005.11.21

 「トリノ編」続き。やっと80枚。しかし、今回は先の展開が見えない。ほとんどトンネル掘り状態。

 久しぶりにファンレターをもらう。焼津の方と新潟の高校一年生の方。建築探偵もすでに10年書いていて、「シリーズ物も長くなると新しく読み出してくれる人が減るな」などと思っていたので、「最近出会いました」といっていただけるのがとても嬉しい。自分の娘のような歳の方に共感してもらえる、というのもとても励みになる。「龍」が終わったら次は建築探偵の新作なんで、もうちょっと待ってて下さい。話はだんだん重くなるんで、そのへんも申し訳ないのですが、ギャグ満載の明るいコメディみたいなのはどうしても書けない性分なんで。でも読み終えて「ああ、うん、わかった、納得した」といってもらえるような話が書きたい、といつも思っています。

2005.11.20

 お久しぶりです。
 18日は昼間「ヴェニスの商人」を見に。しかしシェークスピアの喜劇をリアルな映画にする、という企画自体ちょっと無理がある。なにせもとは「嫌なユダヤ人がひどい目に遭うところをみんなで笑う喜劇」である。にもかかわらず「嫌なユダヤ人」シャイロックのせりふが、民族差別を告発するようにも聞けてしまうのが天才の恐ろしいところ。しかし今の時代にそのまんまやると喜劇どころか、後味の悪い話にしかならない。アル・パチーノの迫真の演技があるからなおさら。おまけに今回はアントーニオとバッサーニオがどう見てもホモである。年下のお稚児さんバッサーニオ君がもう大人になったのでお嫁さんが欲しい、それにぼくお金がないから金持ちのお嫁さんをもらわないと破産しちゃう、でも求婚に行くにも先立つものがないから貸してよアンートニオ。それでアントーニオは金を用意しないわけにはいかなくて、宿敵シャイロックから金を借りる。最後はみんなめでたしめでたしで、シャイロックが失意のどん底に沈むのはプロット上どうしようもないとはいえ、もうひとり孤独なのは恋人のいないアントーニオ、というのが現代的解釈ってことか。

 『螺鈿の小箱』の見本刷り到着。予約してくださった方に送る分は12/2にサインしに行くので、お手元に届くのはその後です。本屋に並ぶのは25とかそれくらいらしい。なかなかに絢爛としてます。まっ、去年に続いて豪華本を出してしまいましたが、この先当面そういうことはござんせんので安心してくらはい。

2005.11.16

 サイン本予約は昨日まででしたので、リンクは消しました。たくさんのご予約有り難うございます。実際にサインするのはまだ先のことなので、出遅れたけどどうしても欲しいという人は東京創元社にメールしてお願いしたらどうにかなる、かも知れない(無責任)。
 今回はほんと原稿の進みが鈍いので、第一回だけメールで送稿。第二回に取りかかって一応20枚。担当も風邪を引いているそうだ。金曜日は出かけるんだけど、せいぜい用心しなくては。原稿は今年中に片が付いたらいいんだけど、なんかこの異様な消耗ぶりといい、トリノの呪いつーか、なにかに血でも吸われたんじゃないのー、という気がしてきてしまった。
 ちょっと嬉しいこと。今頃になって『未明の家』ノベルス版が久しぶりに増刷になりました。なんと19刷り。しかし、ということは最初の一冊だけ買って読んだ、で後は止めたという人がたくさんいるのね、とまた暗いことを考えてしまったりして。

 明日は都合で帰りが遅くなるので、日記は更新できないかも。で、金曜は外出で、土曜はつれあいが外出で。そういう場合は残業っすね。日曜の夜からはまた普通に毎晩更新になります。

2005.11.15

 52回目の誕生日はしかしまだ風邪なのだった。今回の風邪はいつもと違って、頭が痛いし肩が凝るし、虚脱感が強くてどうもならないのでまいってしまう。しかしいつまでもまいっていてもどうもならんので、やっとトリノ編の第一回を読み直し、赤を入れて直す。101枚。

読了本 ダ・ヴィンチ・コード 正直言ってそれほど感心しなかった。登場する蘊蓄のほとんどは他の本で読んだものだし、修復後の「最後の晩餐」では聖ヨハネがずいぶん女性的に見えるのは事実だが、それをいえばレオナルドの絵はしばしばアンドロギュヌス的だし、ペテロのポーズが首を切る仕草だというのも納得出来ない。「岩窟の聖母」の天使は指さしているだけだし、ナイフを握っているのはどう見たってペテロの右手でしょうが。まっ、だいたい図抜けたベストセラーになる本って、読んでみると「なんでこれが」と思う場合が多いんだわ。


2005.11.14

 今日は一日全くの沈没。頭が全然動かないんだからどーしようもない。

2005.11.13

 完全に風邪である。というわけで今日はほぼ沈没。夕方になってからなんとか気力を振り絞ってトリノ編第一回96枚で一応終わらせる。はやく直ってくれーっ。

2005.11.12

 ちょっと風邪引きっぽい。鼻がむずむず。トリノ編はやっとこ明日で第一回が終わる。実をいうとヴェネツィアなんかとは違って、つくづくトリノというのは手軽に読める資料がなくて、英語のものすらほんの一部しかない。そして篠田の英語能力はてんでお寒い。だからトリノに関する記述はきっとヨタ半分になると思う。でもまあ伝奇小説ですから、そのへんはひとつ大目に見てやってくらはい。この日記を読んでくれているトリノ市民約一名もそういうわけでよろしく(意味不明)。
 実はこないだからいまごろになって『ダ・ヴィンチ・コード』を読み出しているのだが、期待したほどすごく面白いわけではない。作中に出てくるいろんな蘊蓄とか、トンデモな知識とか、そういうのはまあ面白いとしても、それを繋いでいく物語の手腕がたいしたことないんだなあ。つまりサンドイッチはパンと中身から出来ているんで、どんなに中身がたくさんで美味しくても、パンが薄すぎておまけにぱさぱさだったりしたら、サンドイッチとしては上等とはいえないでしょ。なんかそういう感じ。

 読了本 僕の見た「大日本帝国」 西牟田靖 情報センター出版局 これはほんとに興味深いルポだった。戦前の日本は大東亜共栄圏なんていってアジアに侵略をして、植民地支配をして、それは悪いことでした、と我々はひたすら教えられているけど、具体的にいって「支配」の実態は多様なものだった。「大日本帝国」の痕跡を求めて、サハリンから朝鮮半島、旧満州、ミクロネシアと巡る著者が出会った現地の人々の反応もまた一色ではない。なんとなくそうなんだろうなと思っていることを、実際に体験として確かめることの意味。それでいて著者には変な気負いはなく、淡々と自然体ですべてを受けとめている。

2005.11.11

 もしかして一冊も予約が入らなかったら超かこっわるいよー、と心配していた『螺鈿の小箱』、この日記経由で行って下さった方もいらしたようで、幸い順調に注文が届いている模様です。有り難うございます。嬉しいです。本当は掲示板でもやって、皆さんからの声を手軽に聞けるように出来たらとも思うのですが、手軽であることには常に弊害もあるもの、と思ってしまうのは篠田の生来の根の暗さか。年寄りの頑固か。なにとぞそのへんはご容赦を。お手元に届くのは少し先になりますが、本のご感想、アナログメールにてお待ちしています。

 「龍」はやっとレギュラー陣が登場。なんとか日曜くらいで第一回が終わりそう。インポケットの占い欄だと、11月の篠田は仕事運金運恋愛運二重丸、体力運バッテンという極端さだが、体調がいまいちだと仕事だってぶっ飛べないっすよねえ。

 徳間デュアル文庫で出ている篠田唯一のSF『聖杯伝説』のラジオドラマが再放送されるそうであります。
再放送
 11/28月曜日から12/9金曜日まで、午後10時45分から11時。土日を除く10回
再々放送
 12/5月曜日から12/16金曜日まで、午後5時45分から6時。土日を除く10回

 実は自分でも聞いてないんですけどね。だって、照れくさいやん。

2005.11.10

 100円ショップで万歩計があったので買ってみた。普通に生活しているだけだと2000歩程度、エアロバイクを漕いで30分でプラス3000歩弱。外にでかければ簡単に一万は超す。まあ、だからといってどうということはない。全然。
 読みかけ本 僕の見た「大日本帝国」 情報センター出版局  戦前の日本が被占領地に残した建築を訪ね歩く、という主旨のルポ。これを読もうと思ったのはジェンキンス氏の『告白』に掲載されていた写真の中に「平壌大劇場」というのが背景として映っていて、これがどう見ても日本の帝冠様式の建築だったから。帝冠様式を日本ファシズムの発現と一律に断じるのは過ちだと思うが、そのような文脈で用いられたことも多々ある、というのは事実なようだ。ものごとは常に単純ではない。

2005.11.09

 トリノ編のろのろと続行中。42枚まで。しかしまだこのへんはトリノで下書きを書いてきた分なので、筆が突っ走っている状態にはほど遠い。実をいうとレギュラーキャラもほとんど出ていない状態なので、たぶんトウコあたりが出てくるとずんと速度が上がってくると思う。
 今日はちょっと思うところあって『水の迷宮』カッパノベルスを読み直す。友人の作家さんとこの作品を巡って話をしたので、その意見を再度検証するつもりで。そしてなるほど、そのひとのいったことはもっともだわいと改めて思った。「感動」路線だというのはわかるが、それほど感動しないなとは初読の時から感じたのだが、どのへんが感動できなかったのかのわけをその作家さんは鋭く指摘していて、それになるほどと思ったんである。ねたばれにならないようにあまり細かいことは書けないが、人ひとりの生命というか、死があまりに軽く扱われていないか、という問題。たとえ正当防衛に近い状態だったからといって、たとえば恋人が殺されたときに、それに手を下した人間をとっとと赦せるものかということ。そして天秤のもう一方に置かれるのが「素晴らしい水族館を自分たちの手で実現する夢」なんだけど、それは人ひとりの生命と釣り合うのか、ということ。
 新作『セリヌンティウスの舟』では、やはり人ひとりの生命と「奇跡のような友情の絆」が天秤に載せられている。それが釣り合うか。作者は釣り合うと主張するわけなのだが、釣り合わないと物語は瓦解する。逆に言えば人間の命と拮抗し得るような「友情」を作者は描くことが出来たか。読んでいる最中には受け入れられたような気がしていても、読み終えて思い返すときどうしても釈然としなくなるというのは、やはり釣り合わないんだと思うんだよね。それにしてもこの作者は、なんで「人間っていうのはしばしば醜く卑しいものなんだ」ということを認められないのかな。

2005.11.08

 上記のリンクから東京創元社サイトのトップページに行けます。予約期間は11/15までで、予定冊数に達した時点で打ち切りだそうです。どれくらい予約って来るものか、かなりどきどき。ろくに来なかったら悲しいぞ(笑)。
 龍トリノ編ぼちぼちと続行中。ただし今日はジム。帰って新聞を開いたら「フランスで夜間外出禁止令」。世界がなんとなく不穏だ、このところ。

2005.11.07

 びっくりするほど暖かい一日。日本に帰ってきて初めて電車に乗って六本木ヒルズへ。ビル・ゲイツが買ったレオナルドの手稿を見に行く。文章がほとんどのノートなので展示としては地味。実験装置を作ってみたり、パソコンで他の手稿を見られるようにしてみたり、工夫はしているけどこれで1500円はちょっと高いかも、とけちくさいことを思う。前に東京駅のステーションギャラリーでやった展示では、螺旋状翼のヘリコプターが本当に浮き上がるところとか見せてくれたんだよね。でもカタログは、ノートの翻訳(残念ながら一部分、しかし写真版の手稿そのままのレイアウトに日本語を入れた状態で読ませてくれる、なかなかの優れもの)などもあって収穫。
 だが、ポスターにやたらと使ってあるレオナルドの肖像画はトリノの王立図書館にあるはずなので、おかしいなあと思っていたらやっぱりこれが来ているわけではない。紛らわしいじゃないかっ。おまけに会場出口のグッズ販売では、どう見てもレオナルドの手ではない素描を使って一筆箋なんか作って売っているし(レオナルドの真筆の素描は必ず左手描きのタッチがあるので素人でも一目で分かります)。
 美術館を見終えたらとっとと池袋に引き返し、リブロで買うつもりでいた本と、つもりはなかったが目に付いた本を一山買って、またとっとと帰る。我ながら東京に興味なし。人の多いところは嫌い。ブルゾンも帽子も今日はお荷物で身体がびっくりしている。午後は仕事場でぐでっとして、夕方やっと少しだけ「龍」をやる。9枚まで。

2005.11.06

 地域の資源ゴミ回収日が明日なので、たまっていた雑誌を束ねて出す。出す前にまたちらちら読みのがしていた記事を読んだりして。「いくらまでなら本にためらいなく金を出せるか」というような主旨の記事があって、やっぱり高い本は売れないよなあといまさらのように思う。今年最後の本は2600円ぷらす税。篠田は決して豪華本好みではありません。本という形は好きだけれど決して愛書家でもないし、読んでもらうことが一番だと思っております。にもかかわらず気がついたらこの値段。なんか忸怩たるものがあります。中島かおるさんの絢爛たる装丁に、中身は見合っているのだろうか。

 来月の「ミステリーズ!」に載せる短編のゲラを読む。書いたときはけっこういいかも、と思った作品が、数ヶ月経つと「なーんか、これってどうよ」という気分になってしまうことはよくあるので、これに関してもちょっと気持ちはダウン系。
 それから夕方一時間くらい、やっと「龍」に着手。4枚。といっても、ここはトリノで書いていた部分なので、それを少し手直ししながらパソコンに打ったというにとどまる。まあ、オープニングとしては気に入っているので。

2005.11.05

 どうにも体調がぴりっとしない、というわけで今日も「龍」の新作には着手することなく日が落ちてしまった。いくら歳だといっても、去年の暮れから今年の初めのベトナム取材旅行二連チャンはこんなに堪えなかったのになー。なんとなく、トリノという街は篠田に緊張を強いたような気がする。

 読了本 『告白』 こういうベストセラー狙い本は通常読まないんだが、やはり拉致問題は関心があるので買いました。興味深かったのはジェンキンス氏が入国した当時の北朝鮮はまだけっこうまともな国だったらしい、ということ。後になるほど物質的に困窮してきて、それと同時に腐敗が広まったという。国家に関して「清貧」は当てはまらないのだな。

 『フェティッシュ』 西澤保彦 体調が悪いときにはちょっと辛いものがあった。西澤流毒満載。

 『随筆 本が崩れる』 草森紳一 文春新書 世の中にはいろんな人がいる、といまさらのようにため息をつきたくなる本。「資料もの」を執筆するようになるとひたすら本が貯まる、というのはよくわかる。篠田も本は好きだけれどまったく愛書家ではないが、「いずれこのテーマで書こう」とか「書ける気がする」とか思うと、取りあえず目に付いた本は買っておこうと思ってしまう。それは本の機能を求めているので、本という物体にフェティッシュな愛を覚えているわけではない。だがとてものこと、これほど本をため込むことは出来ないし、家の様子を想像しただけでホラーだ。物を貯めすぎると妖怪化する。水木しげるさんの妖怪はラブリィだが、貯めすぎたものの妖怪は人を取り殺す本当に恐ろしいものなんでありますよ。

2005.11.04

 朝郵便局に行った以外はどこにも出ず、本も読まず昼寝もせず、ひたすら写真の整理。篠田はいつもA4のクラフト紙スクラップ帳に写真を貼って整理する。デジカメで撮ってもそれは同じ。夜までかかってどうにか全部貼り終える。こういうことは帰ってきたばかりのまだ記憶がホットなときに全部やってしまうか、後はもうやらずに袋に突っ込んだままにしてしまうか、どちらかである。幸い今回はちゃんとやれたので、取りあえずほっ。さあ、もういいわけはない。仕事だ。

2005.11.03

 写真が出来たのでトリノで会った人たちにその写真を送るべく手紙を書く。写真の受け取りに出たついでにユニクロでコートを買う。そんなこんなの雑用をのったらのったらやって時間が過ぎてしまう。いや、疲れてくるとホットカーペットの上に寝転がって本を読んだりしているし、眠くなればうたた寝したりして、ほとんど隠居のようだ。写真はとっととスクラップに整理して原稿を書き出さなくては。なんだかほんとに今回は身体の疲労が容易に抜けない。年を取るというのは難儀なことである。

2005.11.02

 本日は体調不良にてほぼ仕事場で沈。
 サイト内の旅日記のページに「2005イタリア/トリノ旅日記」をアップしました。なんの考察もともなわないお馬鹿な日記です。冬季オリンピックを見にトリノに行くぞ、という人のためにもたぶん役には立たない。でもホテル不足はいまから懸念されているようなので、そのへんは注意された方が良いと思います。それからくれぐれも、物価は日本並みと考えてご予算をお立て下さい。

2005.11.01

 連れ合いの展示会もひとまず終わったので、日記を再開します。ようやくいくらか疲れも取れて、そろそろ仕事開始。というわけで今日は小説ノン連載中のゲラの第四回分をチェックして担当に渡す。他にやったことはe-novelsのメルマガに「20の質問」のアンケート回答をしたこと。メルマガの購読者でなくても、e-novelsのサイトに行くとバックナンバーは読めるはず。もうひとつ、ダ・ヴィンチ誌のこちらもe-novelsのページに500字ほどの短文を書いた。トリノの話を。トリノ旅日記は、明日あたりアップできる予定。
 ひとつお知らせ。東京創元社から出る幻想ミステリ短編集『螺鈿の小箱』は11/25頃に書店配本となるらしい。定価2600円税別。高くて申し訳ない。学生さんは学校図書館か地域の図書館に購入希望を出そう。また東京創元社のサイトでサイン本の予約販売がある。11/8から予約受付だそうなので、ご希望の方は11/8以降そちらをチェックして下さい。数に限りがあるのでお早めに。って、全然申し込みがなかったらどうするんだろう、なんて悲しいことを考えてしまったりします。部数も少ない本なので、欲しい方はどうかよろしくっ。
 さて、帰ってきてから今日まではごろごろしながら本ばかり読んでいた。しかしごろごろしながら読むには、大部の長編はしんどい。というわけで読了本コーナー。
 『警視庁幽霊係』 祥伝社ノンノベル 坂田靖子さんの表紙イラストに西澤保彦さんの推薦文。とても新人の第一作とは思えない達者な作品で、軽やかに嫌みもなく読み味もいい。その分新鮮さに欠ける、というところもないとはいえないけど、まず定価分は楽しませてくれます。
 『セリヌンティウスの舟』 カッパノベルス 石持浅海さんの新作。面白いんだけど、なんていうか一抹の物足りなさが残るのは、あまりにも登場人物がいい人ばかりだから、というだけではないと思う。実のところ途中である種の矛盾というか、検討されるべきなのにすっこぬけている部分があるとずっと気になっていて、もしかしたらそれがトリックとかに関わっているんだろうかと思いながら読んでいた。でもどうやら、そうではない気がしてかなり残念である。いや、どこがそうかというのはここでは書けないわけだけど。
 『そして名探偵は生まれた』 祥伝社 歌野晶午さんの新刊。ただし書き下ろしは三本中の一本だけなので、400円文庫の二編を読んでいると、中編一本に1700円というのは少し辛いかも。作品としてはもちろん、ビターなツイストが利いていてとても面白い。
 『雪のマズルカ』 創元推理文庫 芦原すなおさんのミステリを読むのは初めて。女探偵のハードボイルド物。ドライで面白くはあるんだが、翻訳物を含めていままで読んだ女探偵ものの中では一番暴力的なヒロインでした。