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2004.07.30

 ジャーロ、101枚で一応ラスト。もちろん書き直すからもっと増えるけど。ちょっとだけ開放感。でも、鬼畜な話だ、死体だらけ。

 明日のサイン会、おいで頂ける方有り難うございます。楽しみにしております。台風もたぶん明日には大丈夫だと思うので、それから会場は地下で空調はありますから、並んで頂いても暑くてたまらない、ということはないと思います。
 もしも差し入れを下さるおつもりの方がいらしたら、必ずご住所お名前を品物につけて下さい。まとめて持ち帰ることになるので、わからなくなってしまいます。それから電車で家まで戻りますので、花束のような持ち帰るのに苦労するもの、傷みやすいものは避けて下さいますよう。これはコミケなんかでの場合も同じです。昔ものすごく大きなフラワーアレンジをいただいたことがあって、冬コミだったので和風で松とか入れてありまして、これを混んだ電車の中で持って家まで還るというのに、非常に苦労したことがありました。
 そんなわけで、来て頂けるのが一番のプレゼントです。ご心配なく、顔を見に来て下さい。大した顔じゃありませんけど。

2004.07.29

 いやあ、すごい雨だった。気温はやや低いが湿度がすごいので、涼しいという感じはしない。それにしてもこう土砂降りだと、つい雨音に誘われて雨に見入ってしまう。というわけで、なんかぼおっと雨ばかり見ているうちに一日過ぎてしまった。
 いや、たぶんジャーロの最終回は100枚くらいで、ということはあと30枚ちょっとで収まると思うんだが、いろいろ考えていると伏線の不備が山のように出てきて、まずいなあ、という感じがしてしまって、いささかめげている。本にするときは書き直す、ということで、もしもしジャーロの連載をリアルタイムで追いかけている人がいたら、勘弁ねっ、ねっ。どんでん返しなしで、生き残っている人の中に犯人がいるから、過大な期待はしないように。そして最終的に暗い終わり方しますんで、そのへんもあきらめてよろしく。

2004.07.28

留守電の応答メッセージを自前のものにしてないせいもあるのか、ときどき間違い留守電が入っている。大抵は一度きりだが、最近立て続けに明らかに同じ相手からの声が録音されていた。いきなり「おかあさんだけど」といわれてギョッとする。本当に母からの電話だとしたら冥界電話だ。心臓に悪い。この前は「クーラー買ったの?」で、「今回はメロン送っていい?」。どこのどじなお母さんかは知らないが、話が通じてないのに気づかないんだろうか。それとも……
 恐いことを考えてしまった。このお母さん、呼べど答えぬ子供へのメッセージを、やたらなナンバーにかけて吹き込んでいたりして。

ジャーロ、本日は63枚まで。明日は台風らしい。一日外に出ないで仕事に励もう。

2004.07.27

 話が後になったが、7/25日曜日の朝日新聞朝刊に、龍シリーズ新刊『聖なる血』の広告と、サイン会の告知が出ている。お時間と都合のつきます方、お出かけいただければ嬉しゅう存じます。
 龍の文庫ゲラをチェックし終えて、あとがきを書き終えてパソコンを閉じたところで吉田直さんのお父様から電話をいただいた。突然のことで狼狽してしまい、満足にお悔やみもいえないままで、電話が切れてから反省しきり。我ながら、大人じゃない。
 午後はジャーロ再開。52枚まで。どうこういわずに書くだけ。

2004.07.26

 体調低下につきほぼ沈没の一日。こういうときは新しい本を読む気力もないので、本棚からなんとなく目に付いた一冊を抜き出して、風のはいるところにひっくり返ってとばし読み。『予言が外れるとき』という、少し前のアメリカの小さなカルト・サークルで、チャネラーのおばさんが「大洪水とUFOによる自分たちの救い」を予言し、その小さなグループがどういう経過をたどったか、という社会学の調査報告。予言が外れたことが明確になっても、カルトの中枢にいる人はむしろ信仰を強固にし、活動を活発化させる。そのために支払ってきた代償を思えばこそ、信念を変えるよりもいっそうそれにしがみつくのが人間、というやつらしい。
 夕方になって『龍の黙示録』の文庫ゲラチェックをやる。あとがき、吉田さんへの追悼文にするつもり。

2004.07.25

 執行会議に出るまで、午前中はカレーのための玉葱炒めとエアロバイク。会議が今日はけっこう長引いて、その後ちょっと笠井潔さんとお話。ここの日記に前に少し書いたと思うが、次回の「龍」でモンセギュールに触れるので、笠井さんからそのへんの話を聞いたのだ。つまり南フランスラングドック地方の寒村にそびえる山と、山上の城跡で、12世紀最大のキリスト教異端と言われるカタリ派がここに依って攻め寄せるアルビジョア十字軍と長きにわたる攻防戦を繰り広げたのである。矢吹カケルシリーズの第二作『サマー・アポカリプス』がここを舞台にしている。篠田はとても取材に行く余裕はないので、龍版薔薇の名前の枕にちらりとそのへんを出すだけなのだが、日本で閲覧できる資料はきわめて限られているので、大変に助かった。
 帰ってくるともう夕方なので、本日は仕事はお休み。夕飯のために怪しげなカレーを作る。怪しげというのは、どこにも書いていないレシピで一期一会なカレーになってしまうからだ。

2004.07.24

 40枚まで。作品内容については、ネタバレの危険がある故一切触れられない。となると日記の話題がないんだなあ。読書の方も、仕事の最中はあんまり読めないし。
 というわけで、またコーヒーの話。紅茶もハーブティーも中国茶も飲むけど、消費量でいけばやはり断然コーヒーが多い。なぜか「さあ原稿だ」という気持ちのときは、圧倒的にコーヒーでなくてはあかんのだ。それもどちらかといえばホットコーヒー。通販で「氷出しコーヒー道具」を買って、氷だと時間がかかるが、水でも使える。それだと二時間程度で水が落ちて、わりとさっぱりしたコーヒー液が出来るのだが、難点は飲み過ぎてしまうところ。本日は先日の南千住カフェ・バッハで見せてもらったマスター著の本のレシピから、ハニー・アイスコーヒーを作った。ホットで濃いめに入れたコーヒーに蜂蜜を溶かし、それをたっぷり氷を入れたグラスに注いだもの。ガムシロップを入れるよりは味がマイルドな感じ。
 そんなこんなでコーヒーのことを考えていたら、建築探偵で名前だけ出てくる喫茶店「W茶房」のエピソード、なんてのが少し頭に浮かんできた。早稲田大学の正門近くに昔早稲田茶房という喫茶店があったのだよ。とっくに影も形もないと思うのだが、モデルはそこであります。最近は仕事場の近所の珈琲館か、後はスタバくらいしか行かないのだが、高校から大学の間は、ずいぶんいろんな茶店に行ったものだ。ジャズ喫茶や名曲喫茶、なんてものもあった。純喫茶というのは死語だろうな。高校生のときは、友人と喫茶店に行くというそのことが、「大人の自由さ」を味わう気がしたものだった。粋がって砂糖もミルクも入れずに、どこが美味しいのかわからないままブラック・コーヒーを飲んだ。そう、篠田にもそんな可愛い頃があったんです。白髪も老眼も他人事だった時代が。でも、いまさらその昔に戻りたいとは毛頭思わない。自分がどれだけ阿呆だったか、イヤってほどわかってるからね。

2004.07.23

 昨日発売の小説ノン八月号に、柴田よしきさんとの対談掲載。ご興味がおありの方は、ぜひご一読のほどを。
 それから昨日話題にした野間美由紀さんの「バズルゲーム・ハイスクール」は白泉社から文庫で現在9巻発売中。野間さんのミステリマンガには、この他宝石店の調査部を舞台に絢爛たるジュエリーの蘊蓄がミステリと絡み合う「ジュエリー・コネクション・シリーズ」、インテリア・デザイナーを主人公にした「インテリア」、天気予報士が名探偵役になる「アトモスフェア」など、すべて白泉社の文庫で読める。実は篠田は今回、のめり込むようにして全作品を読破してしまったのだった。いやあ、面白かったっすよ、野間さん。

 仕事は、今日は30枚まで到達。どんどんと終わりが近づいてくるのだが、今回はまだきれいに着地が決まる確信が正直いって持てない。どっちにしろ本にするときには、かなり手を入れないとならないだろう。八月刊の『龍の黙示録』文庫ゲラと、九月刊の『美貌の帳』文庫ゲラがかち合っているのだが、なんとか今月中に『すべてのものをひとつの夜が待つ』をラストまで書き上げて、それからゲラをやりたいものだ。気が散ると、またそこまでテンションを上げるのが骨だから。まったくもって、連載は苦手であります。

2004.07.22

 怠け癖がついてしまった、ということにしておこう。仕事場の台所を片づけたり、エアロバイクを漕いで汗まみれになったり、昨日買ってきた「パズルゲームハイスクール」の文庫本を読んだりしてだらだら過ごす。野間さんのお仕事をこれまでちゃんと読むチャンスがなくて、記憶に残っているのは法月綸太郎氏のデビュー作『密閉教室』のトリックのひとつを先にやっておられた、そのトリックが篠田にしては珍しく記憶に残っていたもので、ノリリンに触れたときにその部分だけはわかってしまった、ということ。しかしトリックの肌触りという点では、明らかに野間作品の方がリアルで説得力にも富んでいる。詳細を書くとネタバレになってしまうので、書けないのがとても残念。
 今回は文庫化されたものをどーっと読んだ。やはり後になるほどに、ミステリとしての厚みが増してくる。初期の高校内の事件のとぼけた味わいも捨てがたいが、後期のプロローグでさっと引いておいた伏線がきれいに畳まれていくお手並みが、なんとも快感。「金田一少年」的な山っ気はないが、大人の読み物になっている。テレビドラマ化されても、いいんじゃないかなあ。篠田は女優さんとか全然知らないのだが、ヒロイン三輪香月をやれる女優さんがいたらぜひ、という感じ。

 夕方になってやっとこすっとこジャーロの原稿に戻る。といっても17枚まで。

2004.07.21

 予定通り朝から上野に直行。西洋美術館の「聖杯 中世の金工美術」を見に行く。期待していたほどがらがらではなくて、特に前後してぺちゃぺちゃしゃべるおばさん二人組がいたのはかなり閉口だったが、珍しいものを見せてもらったという感じ。しかし篠田は聖杯というか、ミサに用いる葡萄酒を入れる聖餐杯は、もっとワイングラスのようなチューリップ型をしているものかと思ったのだが、ほとんどはわりと傾斜のきつい円錐形で、脚の部分に突起のような「握り」といわれる部分があるのが特徴なのだった。といってもこれはドイツにあるものなので、たとえばイタリアあたりならどうなんだろう。教会にはずいぶん行ったけど、ミサの聖具はそのへんに置きっぱなしにはされていないから、案外ちゃんと見てはいないわけだ。
 美術館を一時間足らずで切り上げ、日比谷線で南千住へ。ここらはいわゆる「山谷地区」で、やはり町のたたずまいには独特のものがあったりして、こういうところに珈琲専門店が? などと思わないでもなかったのだが、偏見はいけません。お店はちゃんとありまして、スタッフの方は大変親切で、こちらがカウンターに座ってじとっと手元を見つめていたりすると、珈琲のことをいろいろ説明してくれた。美味しい珈琲を二杯。わりとマイルドな感じのブレンドと、やや強炒りのイタリアン・ブレンドを飲んで、豆を買ってきた。送ってもくれるそうなので、もうコーヒー豆は浮気はしない。こちらのものなら新鮮で、よく吟味されていて、素人でも丁寧にいれればちゃんとそこそこ美味しいものがいれられる。
 後は、早く涼しくなってくれーっ。

2004.07.20

 ジャーロの第五回をメールして、喫茶店で最終回のプロットを組み立て、どうにか書き出すが、これが語り手が死体を発見して激しく動揺する描写からなもんで、なんともはや書きながらきついこと、気分が悪いこと。10枚書いて力尽きた。明日は上野の西洋美術館に行くことにした。読者がプレゼントしてくれた珈琲専門店の豆が無類に美味しく、その店が三ノ輪にある。上野からなら地下鉄一本で行けるので、ついでに脚を伸ばすつもりだが、今日の暑さからすると途中でアスファルトの上のミミズみたいにひからびるかも知れない。

2004.07.19

 今日はやけに夕焼けがあざやかだった。母に死なれたとき、葬式のときには気持ちが張りつめていて涙も出なかったのが、車で帰る途中高速道路の高架の上から落ちかかる真っ赤な夕日を見た途端、なぜか泣けて止まらなくなったことを思い出す。西の空にはためく赤い輝きに逝った人を思うのは、西方浄土から来る連想だろうか。

 一応ジャーロの第五回手直しを終える。120枚越えてしまった。明日から最終回に入る。
 読了本。『シェルター 終末の殺人』本格としてフェアか否か、議論が分かれるかも知れない。伏線はたんまり張られている。だが回答自体が、設問の意味を無化するようなものだからな。
『消えた山高帽子』 前の本とも東京創元社ミステリフロンティア 嫌みのない仕上がりの歴史ミステリだが、妙に印象が薄く感じられるのは探偵役がいい人過ぎるからかも、と思った。いい人であっても、たとえばカドフェル修道士のような、人生の酸いも甘いもかみ分けた、的な厚みはないのだ。
 『アン・ハッピー・ドッグ』近藤史恵 中公文庫 パリを舞台にした洒落た恋愛小説。自分にはこういうものは書けないし、この先もそれは同様だろうと思わせられた。男女の恋愛というものに、そもそも興味が持てないのだ。そう考えると、ボーイズラブ小説の中の恋愛というのはそれとは別のものなのだろう、といまさらのように感じる。ではなんなのだ、というところで言葉を探す元気がないんだけど。

2004.07.18

 いくら落ち込んでものたくっても、死んだ人が戻ってくるわけじゃない。そんなことは誰にいわれるまでもなく承知だけど、雑誌スニーカーに残された吉田さんのコメントを読むと、彼自身まさかこんなに急に死ぬことになるとは思ってもいなかったんだろうなあ、と感じてなんともいえない気分になってしまう。独身で独居の人は、親身になって心配したり、「そんなに働くな」と止めたりしてくれる人がいないので、そういう点で危ういんだろうなあ。飯を食わない不健康な京介の生活を、深春や蒼が心配してお節介焼かずにいられない気持ちというのもよくわかる。
 時計を見ながら「ああ、告別式やっている時刻だ」「そろそろ荼毘かな」なんてつい思ってしまって、なんかやりきれなくて昼飯にスパゲッティのやけ食い。またそういうときに限って、絶対美味しくは作れないんだな。鍋を火に掛けたままメール見てたりして、完全にゆですぎた麺を、野菜とトマトのソースであえてもくもくわしわしと食べる。ちっとも美味しくないが、残したらもっとまずくなって、食べ物に申しわけがないだろう。うー、気色悪い。
 夕方になってやっとパソコンの前に自分を引き据えて、ジャーロの手直し。うっかり死んでしまって箸にも棒にもかからない、ゆですぎスパゲッティみたいな原稿を残すことになったらたまらないからね。読者からいただいたまま返事を書いていない手紙がたまっているが、返事を書くのにはけっこう高いめのテンションがいるので、いまはちょっと苦しい。というわけで、すみませんがご勘弁を。サイン会までには浮上する予定です。

2004.07.16

 吉田直さんが死んでしまった。ここで何度か取り上げた角川スニーカー文庫トリニティ・ブラッド・シリーズの作者である。享年34歳。若い。若すぎる。篠田の仕事場の机の上には、彼からもらった転居通知の葉書がまだ置かれてある。なにかの折りに返信をしようと思って出してあったのだ。その消印は6/30.それだけしか経っていないのだ。悪い冗談のようで、まだ信じかねている。
 吉田さんとじかにお目にかかったのは一度きり。角川の昨年の新年パーティで、私がトリ・ブラのファンだと知っているスニーカーの編集者が紹介してくれた。ダイナミックでシャープな作品イメージをいい意味で裏切る、暖かく素朴な人柄にたちまち引きつけられ、パーティの間の一時間くらいずっとふたりきりでしゃべっていた。あちらも「篠田さんがこんなに気さくな方とは思いませんでした」などとおっしゃって、その後建築探偵の既刊本をお送りしたら、実家の九州から甘いスイカを送って下さったり、篠田が欲しいと言ったラテン語の聖書を見つけてプレゼントしてくれたりした。いつかまたゆっくりお会いして話をと思いながら、忙しいとの風の便りに、きっとそんなにばりばり仕事をこなされているなら、お身体の方は大丈夫なのだろうと思っていたところが、よもや寝耳に水の訃報。
 トリ・ブラはヒットして、アニメ化の話も決定したという。でもそれは彼にとっては、幸いとはならなかったのだ。そしていくらヒットしても、それが直木賞を取ることも、ライトノベルの枠を飛び出して世間の注目を浴びることもない。商品として消費されていく。それは篠田の書くエンタメ小説にしてもほとんど変わらないけれど、そんなもののために死ぬことはないとはいわないけど、でも死ぬまで働くことなんかないじゃないか。具合が悪かったら、けつまくってさぼれば良かったのに。
 吉田さん、いくらなんでも早すぎるよ。私より16歳も年下のくせに。弔電は打ったけど、「ご冥福をお祈りします」なんてとてもいえない。いっそ化けて出てきて欲しいとさえ思うよ。もう一度あなたと会いたかった。会って小説の話をしたかった。本当に。悔しくて、悲しくて、腹立たしい。大好きだ。これからもずっと、あなたのこと。

 明日は帰りが遅くなるので日記を休みます。

2004.07.15

 今日は完全オフ。「スパイダーマン2」を見に行った。映画はそんなにたくさんは見ないので、どちらかといえば肩の張らない娯楽ものが好きです、芸術映画よりも。というわけでこれはかなり篠田の好みだった。蜘蛛の糸をとばしながらびよよよ〜ん、と空を飛んでいくアクションがなんともいえず快感だし、ヒーローが強いだけでなく傷つく、というのも萌え。今回は彼が身体を張って電車の暴走を止めると、助けられたニューヨーク市民が彼を守ろうとする、というシーンがぐっと来た。それと恋人役のキルスティン・ダンストよりも、個人的にはおばさん役のローズマリー・ハリスが好き。美老女です。
 悪役は、爆笑もの。さすがアメコミというか、奇想天外な怪人系だけど単純な悪役ではなく、という仕込みもありがちだけど悪くない。それにしてはわりとあっさり倒れたな、というところはありますが、スパイダーマンは自ら敵を殺したら逸脱なんでいたしかたないかも。それと「蛸博士」つまりドクター・オクトパスっつーんですが、その造形が個人的に苦笑い。なぜかというと、某作品のネタバラシになるからこれ以上はいえない。わかった人だけ受けて下さい。しかしピーター・パーカー君、パトカーがサイレン鳴らして走りすぎた途端に出動していたら、確かに身体がいくつあっても足らないと思うぞお。
 本は三津田信三作『シェルター 終末の殺人』東京創元社をあともうちょっとで読み終わる。はて、これはミステリとして落ちるんだろうか。メタ臭く納めるんだろうか。ホラーのぐちゃどろになるんだろうか。いまのところまだ不明。

2004.07.14

 ジャーロの第五回を115枚で終わりにして、少し部屋の中を片づけたり。通販でまた本棚を買ったのだ。今回のは未読本専用、身長測定器みたいな格好をしていてそこに本を横に入れる。タイトルが一目瞭然。ここから溢れた本は断念するとしよう。
 夕方になってからプリントアウトを読み直す。とっとと最終回に入るつもりだったのだが、やはり人殺しがしんどくて。いつもの建築探偵みたいに「いい人は死なないが基本」ではないし、かといってホラーの短編なんかよりは被害者とつきあいが長くて、それを殺すというのがつくづくどーもいけない。身体の調子まで変になってきてしまった。情けない。
 というわけで、今日はプリントに赤を入れただけでおしまい。明日は朝一で映画を見に行って、土曜日は観劇。ちょっとだけ仕事から頭を離して、また仕切直しをすることにしよう。といってもこの最終段階まできて、話の構想を変えるわけにもいかず、今回の長編はつくづく「登場人物にとっては最悪に悲惨」な物語だなあ。

2004.07.13

 えーと、ごめんなさい。あんまり書くことがない。仕事場に行ってジャーロの続き。夕方ジムに行ってマシントレーニング。また戻って洗濯と原稿。本日で104枚。明日で第五回のラストまで来ますでしょう。そうしたらちょっとだけ息抜きして、また続きを書きます。今月中に終えられれば、光文社に入稿する前にラストまで行けるはず。でも最終回の雑誌掲載は冬の号になるので、カッパノベルスになるのは来年。
 そんなわけでいただいている手紙には返事を書かないまま、少し貯めさせてもらっています。もちろん全部大切に拝読していますし、ジャーロが終わったら返事を書きます。それから夏コミは例によって、大沢探偵事務所さんの売り子で参加することになりましたので、8/14です。小説FCです。配布ペーパーはたぶん今回はお休み。そんなに多忙ではないはずなのに、なんというか、気持ちの余裕がないのはなぜなのかなあ。まるで余命がないみたいに、妙に気が急く今日この頃なのですよ。
 それはたぶん、小説を書く意欲はちっとも衰えないし、書きたいことも山のようにあるのに、自分の肉体が歴然と時を刻んで衰えているのを感じるからなのでしょう。それが人間の宿命なんだから、是非もない。ただ同人のようなお遊びに時を費やすよりも、真面目に小説を書くことを必死にやらないとなあ、とは思ってしまう。そんなわけで、手紙の返事が簡単になってしまったり、同人本出せなくなっても、「小説一筋まっしぐら」の篠田のスタンスは変わりません。

2004.07.12

 結局マンションの機械に落雷していたようで、ネット接続の復旧が夕方になってしまった。落ち着かないったらありゃあしない。いつ電話がかかるかわからないので、エアロバイクをさぼることに。昨日から仕込んであった天然酵母の種にライ麦を混ぜてパン・ド・カンパーニュに再チャレンジ。今回は日清の強力粉で水やや多め。焼き上がりは上々。味はこれからだけど。原稿の方は調子に乗ってきて79枚まで。どうせ殺さねばならない子たちなら、さっさとそこまで行ってしまえっという気分。この回を書き終えたら、上野の西洋美術館に行くぞっ。中世の金工、聖杯展というのをやっているのだ。こういうのは押さえておかないとね。
 自宅に戻ったらなんと大学時代のクラスメートから手紙が来ていてびっくり。薄情なようだが相手の顔も名前も記憶からは消えている。人の顔と名前を覚えるのはほんとに苦手なのだ。しかし本名で本を書いていると、こういうときは便利である。覚えていてくれて有り難うというべきか。いや、果たしてその時代の自分はどんなふうに見えていたのか、なんてことを想像すると気分が落ち込みます。ええ、記憶する限りろくな人間じゃあなかったですから。向こう気ばかり強くて、生意気で、だらしのない酒飲みで。えっ、それじゃいまと変わらない? まあ、三つ子の魂百までも、ではありますがな。

2004.07.11

 今日は雷ぴしぴし雨ざあざあで、おかげですっかり涼しくなって快適なのはいいのだが、落雷を警戒して雷が近くなったと思ったら電源を落として待機していたのに、そうはうまくいかなくてしっかり落雷。原稿の被害はバックアップファイルのおかげで2行半ほどで済んだけれど、どうやら仕事場のサーバに落雷したみたい。メールが受けられなくなったようだ。日曜日だから今日は無理だろう。明日も出来るだけ早く回復してくれればいいのだが。ともあれ原稿は46枚まで。

2004.07.10

 昨日からジャーロを書き始め、今日で400字かける28枚。やっぱりどーも、辛い。これからは身に合わない大量殺人ものなんて、書くのは止めようっと。でも、書き出してしまったものを書き終えないわけにはいかないし、「全部お芝居だったのよ、はっはっは」なんてことはやれないしね。
 仕事の合間に近藤史恵さんの小説を固め読みしている。秋に対談をするのでその準備というつもり。ひとりの作家さんを固め読みすると、ときどき読むのとはまた違ったおもしろさというか、「ああ、この人はこういう世界を持っている人なんだー」という発見めいた感慨がある。篠田は評論家体質ではないので、その程度の感慨でとどまってしまって、あとは「合田先生に肩もんでほしいなあ」とか「今泉さんの事務所に遊びに行って、山本君のいれてくれる紅茶を飲みたいな」とか「キリコさんに掃除に来て貰えないかな」とか、しょうもないことを考えているだけなんだが。ちなみにこの三人はいずれも近藤さんちの名探偵です。困るのは面白くて、つい仕事がお留守になることですな。

2004.07.08

 クーラーの嫌いな篠田は極力使うまいと思うのだけれど、頭脳労働以外のことは出来ないわけで、つまり頭を使わないで済むことについ手を出してしまう。今日はまたパン焼き。しかし汗がぽたぽた出るので、こねを手抜きした気が。いや、ふくらみがいまいちなのだ。味は、夕飯に食べるのでまだわからない。頭使わないことでも、だめじゃん。
 それでも、まあどうにか次回の分のプロットは出来たかな。今回は終わったらそのまま、最終回まで書いてしまうつもり。そういうわけで明日は覚悟を決めて、朝からクーラーを入れてエアロバイクはさぼって、夜までパソコンに向かいます。2回分、最低200枚。今月いっぱいで目処が立てば上々吉だけど、でもその間に文庫下ろしのゲラを二本見ないとならないからなー。
 京都は忙しくて休みどころの話ではなかったので、ジャーロの辛い話を書き終えたら、せめて一泊はどこか温泉に行ってきたいものであります。そう、書き終えたらね。終わるまではひたすらこの暑さの中。ともかく明日は残業してくるので日記はお休み。

2004.07.07

 昨日はQEDの高田崇史さんと、古なじみの編集者Uさんと、六本木で飲んできた。タタルさんみたいにかっこいい高田さんと、おしゃれにカクテルを傾けたのだぞ。ファンの方、うらやましいだろー。良いお酒だった証拠に二日酔いもせず、安眠できて今日も爽快。
 しかし暑いことには変わらないというか、壮絶に暑い。エアロバイクを漕いでいると全身がプールに飛び込んだような始末になってしまう。シャワーを浴びて洗濯をしながら昼を食べ、クーラーを入れて珈琲を入れてジャーロに。
 今回の話は、はっきりいって悲惨である。篠田の信念に反して救われない。なんとかならないかと抵抗していたが、どうやってもこれは死人だらけのひでえ話になってしまう。今回はいよいよ、**君を殺さなくてはならない。あと二回連載の後、来年早々にカッパノベルスになると思うのだが、建築探偵のように「最終的には救われます」な物語に慣れ親しんだ読者は、そのつもりで覚悟して読むように。でもまあ、たまにはこういうのも書いてみたかったのだよ。
 講談社は時期を決めて増刷をかけることにしたのか、今日はノベルスと文庫、それぞれにほんの少しずつ増刷があった。三省堂でノベルスの棚がとんでもねえ片隅に追いやられて以来、心が落ち込んでたまらなかったが、「少なくとも未だ増刷ゼロではない」と己を慰める。決して自慢がしたいわけではなく、読者の皆さんに篠田の感じたかそけき安堵をお裾分けしたいからです。
 『魔女の死んだ家』も少しだけ増刷がかかった。数字でしか「読まれているらしい」ということを感じられないから、数字を口にしたくなる。それにしても単価がノベルスの倍するハードカバーの本が、一年近く経ってもまだ動いているというのは心慰められる事態だ。あきらめの悪い篠田は、また少しだけ訂正をした。未購入の方、三刷りを狙って買って下さい。たぶこれが最後の直しです。

2004.07.05

 関東は涼しいと書いたら、もうとてもそうとは思えなくなってきた。しかし取りあえずいつの間にか梅雨は明けたみたいなんで、盆ざるをベランダに出して塩漬けの梅を干す。良い香り。昼に赤ジソを少しご飯に混ぜて食べた。昔は欲しいとも思わなかったこういうものが、妙に美味しいのも年のせいかな。
 秋に対談をする近藤史恵さんのデビュー作、『凍える島』を再読。最初のときは独特の文体にばかり気を取られて、意識が行かなかったミステリとしての工夫に、いまさらのように目を惹かれた。本格ミステリというのは再読に耐えないどころか、再読しなくては本当に味読することは出来ない種類の小説だと今更のように思う。
 いくらか風は来るのでガラス戸を開け放っていたが、じっとしていても汗がにじんでくる。寝転がって本を読むことは出来るが、小説のプロットを練るのはとても無理。というわけで今シーズン初めてエアコンを入れ、珈琲をいれ、たばこを出して久しぶりに仕事態勢。ジャーロ連載の『すべてのものをひとつの夜が待つ』のプロットに取りかかる。あと二回で終わりなので、なんとか今回で二度分書いてしまいたい。頭がそこから離れると、引き戻すのが大変なのだ。ほんと、頭の切り替えがへたくそで困る。

 明日は夜外出なので、日記は休みます。

2004.07.04

 二泊三日あわただしい京都取材。昨日夕刻戻って関東の涼しさに驚く。とにかく京都は暑かった。特に町中を歩いている最中、下からの照り返しにまいった。
 この三日間に訪れ、あるいは外観を見物した京都の近代建築。
7/1 京都府庁舎旧館 長楽館 水路閣 九条山ポンプ場 ねじれまんぽう 東華菜館 7/2 進進堂 京大人文研 駒井邸 紫織庵 旧日銀京都支店 
7/3 新島穣邸
 これでもピックアップしたうちの三分の二程度。でも暑くてとても無理だった。
 いろいろ美味しいものも食べたが、戻ってからデパートで志乃田寿司のおいなりと海苔巻きを買って食べたら、その甘辛い味が懐かしく、自分はこっちの人間だなあといまさらのように痛感。卵焼きが甘くて悪いか。
 今回の取材は京都の出版社から出た洋館の本で、北白川の駒井邸というのが公開されはじめたというのを知って、心惹かれるものを覚えたから。京大の教授の家だったというそれはいかにもヴォーリズらしい、つまり家庭的で住人の住み心地の良さを最大限配慮した家で、写真撮影が出来なかったのが実に無念。周囲の環境もすばらしく、わざわざ見に行った甲斐は充分にあった。