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2003.01.28

 『angels』115頁.これでいったんこちらを中断して、メフィストの連載をやらなくてはならぬ.頭の切り替えがへたなので、そういうことはほんとはしたくないのだが、今更そんな事を言っても仕方がない.薄くなるかと思ったが、この調子だとやはり300頁くらいにはなるだろう.厚いのがはやらなくなりつつあるような最近のノベルス界だが、頼むからそう簡単に流行を移ろわせないでおくれよ.
 明日明後日他出のため日記の更新は2/1になります.1/30は角川のパーティなので、なにか仕事関連で面白そうな話題があったらさかのぼって書きます.
 
 2/1角川ビーンズ文庫『天と地の娘』『芯の樹を求めて』刊行.発売部数が少ないので、お求めになる予定の方は見つけたら買って下さい.さもなければネット本屋に注文してください.建築探偵の三分の一程度ですから、それだけお会いできるチャンスが少ないわけ.

2003.01.27

 また雪.今年はほんとに妙な天候だ.しかし灰色の空から大きな雪片がひひとして舞い降りてくるところは、天使の羽がむしられて散らされているようで、いつまでも見ていたくなる.

 もらいものの小説『マラケシュ心中』中山可穂を読んだ.なんと恋愛小説だった.篠田はこのジャンルに興味が薄いので、初めてかも知れない.そしてこれはレズビアンの恋愛小説だった.今の時代にヘテロの恋愛ロマンは難しいのだろうなあ、という気がする.で、レズビアンの恋愛を描く作品を読んだのも初めてなんだけど、主人公は自覚的カムアウトしている男前なビアンで、彼女に恋されやがて両思いになる女性は、かつて恋愛に傷ついてセックス恐怖症になっているフェミニンな人妻.この組み合わせ、篠田のようなボーイズラブ小説読みからすると「なんかキャラの立て方が同じですなあ」という気もする.同じだから悪いといってるわけではない.けっこう面白く読んだ.ただ、人間の想像力、小説における恋愛の想像力には、あんまりバリエーションはないものなのかしらん、という気がしたんでした.

 『angels』続行.蒼がさっぱり出てこない部分を延々と書いている.そういう意味では今回の作品は、番外編の番外編かもしれない.一種の群像劇を書きたいのであります.無論その中には蒼がいて、重要な役割を果たすのだが.

2003.01.26

 詩人で翻訳家の多田智満子氏の死亡記事を数日前に見る.篠田にとっての多田氏はマルグリット・ユルスナールの翻訳家である.『ハドリアヌス帝の回想』は、好きな小説ベスト10から外れることがない.それも優れた翻訳あってこそだと思う.

 先週中に届いた通販はすべて発送した.いまだに返信用封筒に「様」を書いてきてしまう人がいるので苦笑するが、実を言うと推理作家協会から来る返信用封筒にも「御中」がついているんである.もはや「様は書かない」は年寄りの頑固者しかいわないことになってしまったのかも知れない.

 通販同封のお便りでは、予想外に建築探偵以外の作品の感想も頂いている.今回「龍の黙示録」シリーズで、ヒロイン透子への支持の声が届いた.透子というのは不思議なキャラで、「元気づけられた」「勇気をもらった」という感想を下さる方が非常に多い.無論作者はそんなことを意図してはおらず、彼女の職場での疎外感も昔自分が働いていた時代に抱え込んだ辛さやきつさを投影したに過ぎない.だが読者というのは、書き手の意図を超えて、書き手も予想しなかった「良きもの」を作品から汲み取ってくれる.そんなあなたたちに心からの、愛と感謝を捧げたい.ありがとう、みんな大好きだよ.これからもよろしく.

2003.01.25

 胃の方はほぼ復調.ただし一応いまのところ禁酒禁コーヒー.篠田は原稿を書くときコーヒーはがば飲みなので、そのせいかどうも進みが悪い.
 通販は順調に発送中.感想のお便りもいただいているが、取り合えずいまは通販を優先しています.いまのペースなら、まだ当分在庫が切れることはないので、まだの方もご安心.

 白泉社文庫『アルファベット荘事件』を読む.ミステリマニアの某氏がほめていたのだが、なんか新本格の良くない部分がまとめて出ているような印象だった.細かいことを書くとネタバレになってしくまうが、「驚くべき真相とそのトリック」を聞かされて、感心するより驚くより、犯人の間抜けな苦労に「あれまあ」とあきれてしまったのだ.つまりこのトリック、ギャグにすれば生きたかもしれない.
 服部まゆみ『この闇と光』を読む.短編向きのネタだ、という印象がある.この二作品とも、ネタの生かし方を間違えたというか.他山の石であります.

2003.01.24

 幸い胃の方は回復に向かいつつある模様.今日の昼はレトルトのおかゆを食べた.わりと美味であった.あとはぼちぼち『angels』を書いている.今日活字倶楽部が届いて、そこで「できれば4月」などと書いてあるのに気づき、あちゃー.すみません.4月はちょっと無理です.その前に『アベラシオン』終わらせないとならないんで.
 活字倶楽部インタビュー載ってます.よろしく.

2003.01.23

 この日記は現在、前日にお断りしない限りは毎日更新することにしている.篠田自身知り合いのサイトを覗きにいって、更新されていないとちょっとがっかりするからだが、昨日は胃痛のためやむなく休ませてもらった.昼頃から「なんか変だな」という感じだったのが、夕方には「明らかに変」で、吐いてしまい、そのまま間歇的に差し込む胃を抱えて一晩悶々.ほぼ絶食中のため胃痛は収まっているが、なぜか頭痛もするので、いま冷えぴたを貼っている.たぶん昨日よく眠れなかったせいだろう.
 おまけに仕事場と自宅の周辺が雪で、通販の残りを投函に行く元気も出なかった.お待ちの皆さん、大変に申し訳ない.今日また講談社からかなりの数の封筒が回送されてきた.当面なくなる心配はないので、順次処理していきます.

2003.01.21

 銀座に映画の試写会.デビッド・クローネンバーグ監督の「スパイダー」という、ミステリ映画かと思ったら手触りはサスペンス.明らかに心を病んだ男が子供時代の記憶に導かれて街をさまようと、その前に両親と幼い自分が現れて、という普通なら回想シーンになるところを、いまの男がその場に立ち会うかたちで描く.ふたつの時間が混じり合い、眩惑的な描写が延々と続く.最後はどんでん返しがあるのだが、このどんでん返し自体は、ミステリ読者なら「たぶんそうじゃないか」と途中から思う程度のものだ.ただしその手がかりの出し方が、映画ならではの方法を使っている.つまり小説ではできない.ネタバラシになるからこれ以上書けないけど.
 戻って「根の国」3.4巻の再校を片づける.なんで校閲というのは、用字の統一にこうも血道を上げるんだろう.さて、明日からはまだ『angels』

 通販、いまいただいている分は今週中に発送を終える予定.でもまだ170冊以上あり.これが全部残ると増刷貧乏というやつであります.

2003.01.20

 昨日書いた記憶の話の続きなのだが、やはり母と生長の家がらみの記憶で、その教団の本部が原宿にあった.たぶんいまもあるのだろうが、当時は原宿のちょっとはずれたあたりというのは、ひどく田舎びていた気がする.どこまでが記憶でどこまでが空想かわからないのだが、教団のおそろしく広大な畳の広間と、そこでごろごろして遊んでいる自分とともに、母と手を繋いで歩く道が赤土の道で、延々と長く、そこで芋虫が土にまみれてもがいていた情景などが妙になまなましく思い出される.
 ところで記憶の情景というのは、自分がいる場面でも三人称的に離れた視点から眺めるようになるのだという.それは昨日もふくめ、私の記憶でも同様だ.幼い自分が見える.どういうものか.
 ところで小説、ミステリやホラーでは、記憶が謎の中核だったり、鍵だったりする設定が珍しくない.篠田で言えば『翡翠の城』のオープニングのあたりだ.ところがこの記憶は、三人称的に再構成されたものではなく、あくまで目撃者の一人称記憶である.どうも物語の中では、記憶を三人称的に書くと迫力が無くなる気がするのだ.つまりそのへんは、わかった上での虚構ということになる.

2003.01.19

 いま書いているのではない仕事がしたくなるというのは、篠田の以前からの癖みたいな物で、昨日は久しく埋もれていた幻想連作あるいは長編『緑金の午後』に使えそうなエピソードを思いつく.この話は大好きなまんが波津彬子さんの『雨柳堂夢咄』みたいな雰囲気の、あまり暗くなりすぎない、普通の日常の隣に不思議なことがある、みたいな話にしたいのだ.
 子供のとき一度だけ行った夢のような西洋館、というのは実は体験談だが、残念なことにその正体はわかっていて文京区の鳩山邸である.この家の刀自が生長の家という新興宗教の信徒で、私の亡き母もまたそうであったから、信徒の集まりのようなことをして、連れて行った小さな子供を庭先で遊ばせていたのだろう.そのとき半ズボンの少年がやってきて、名前を聞かれてしばらくいっしょに遊んだ記憶もあるのだが、顔の方はまるで思い出せない.まさかあれは鳩山由起夫ではなかろうな.かくのごとく現実は、ちっともファンタスティックじゃないんである.
 ただそれが鳩山邸だとわかったのはずっと後のことなので、思い出せないときのある種のもどかしさと、夢のような情景、緑の芝生に赤い薔薇、の美しさはこの上なく、正体が知れてしまって霧散したこの「夢」の空気を作品に出来たらなあ、というのが自分のもくろみなのだ.創元推理文庫版の中井英夫全集5巻「夕映少年」を読了し、そのへんの気分も尾を引いているようだ.
 篠田は中井ファンというよりは『虚無への供物』ファンなので、あまり短編は読んでいなかった.だから逆にいまになって新鮮であったりする.

2003.01.18

 昨日から「秘密の本棚」の感想お便りが届き始めた.いちいち返事を書く余裕はないので、春にでもなったら新しいペーパーを作ってお送りしたいと思う.番外編の小説を「本編を読む前に解説を読んでしまったような」と書かれてきた人がいて苦笑.早く教えろ知りたいと言う人もいれば、こういう人もいる.「解説」を見るのが嫌な方は、作者のサイトなんかも覗かない方がいいでしょう.
 再版分の発送は毎日少しずつこなしていく予定.いましばらくお待ち下さい.仕事優先で気長に処理します.

 その仕事、『angels』はやっと60頁を越す.今回は高校生が15人も出てきて登場人物はそれですべて、舞台は学校の校内のみ、時間はある夏の日の昼間から翌朝まで.物語は殺人事件とその真相.古典演劇の「三一致の法則」みたい.しかし叙述は多視点.別に意識してそうしたわけじゃないんだけど、これもいままでやったことのタイプの書き方だということはいえるな.

2003.01.17

 昨日の続き.都営地下鉄三田駅すぐ近くに日本建築学会の会館があり、そこにこのほど建築博物館がオープン.こけら落とし、とはこの場合いわないかも知れないが、最初の展示は「伊東忠太」.この人、建築探偵でもちらっと名前だけ出てきたはずだか、馬に乗ってユーラシアを旅して歩いた「冒険建築家」である.作品はけっこういろいろ残っていて、築地本願寺とか、国立の一橋大学講堂とか、妖怪変化が建物の外壁に寄生した奇態な建物をいろいろ造った.で、ベトナムにも行ったらしいのだ.だから、ベトナムをやるときに、この人をモデルに使おうと思っている.本名では書けない.ばればれでも名前を変えるのが最低の礼儀だろう.だからライトのときも本当は名前を変えるべきではあったのだが、ライトは火のないところに煙を立てる虚構より、ご当人が火だらけみたいな人で.いや、これじゃなおさら悪いか.
 ともかく建築博物館の展示には、伊東忠太が旅行中に描いたフィールドノート、これが絵が上手い、マンガなのだ、さらにハガキ絵、これも時事風刺マンガ、がぞろっと展示されていて圧巻.そうかと思えば学生の時、教授の辰野金吾にけなされてよほど面白くなかったらしく、日記に「辰野天狗」とか繰り返し書いていて笑えた.

 本日再版分到着.すでにいただいている通販申し込みから、順に発送します.もう少しお待ち下さい.

 それからこだわるようだけど、「いわれてないんだから、メモも入れなかった自分は間違ってない」という理屈は、よく考えたら少し変だね.返信用の切手が貼られてなかったりした場合、私は送り返させてもらっているもの.だから間違い扱いしているわけではない.ただ不快に感じたから不快だった、と書いただけ.いわれていないことだからしなくても間違いでない、というのは命令されないと何も出来ない子供の理屈.あるいは奴隷の理屈.「自分は入れる必要はないと思ったから入れなかった」というなら、これは篠田と常識が違うということだから、いたしかたない.この違い、わかるかな.

2003.01.16

 今日は「桜闇」の舞台モデルとなった新宿区の小笠原邸、現在はレストランになっているのだが、そこで写真家の増田彰久先生がトークショウをやる、それを聞きに出かけた.この建物と篠田にはかすかな縁があって、旅行会社でバイトしていたとき卒業旅行の相談で母校一文の学生さんが来て、以来友人となった彼女が卒論にここを扱いたいといっていた.ところが建築研究にも奇妙な縄張り意識があるらしく、彼女は「ここは東大がやるから」と拒否され、その結果新しいテーマとしてトルコに向かい、いまはイスタンブールに住んでオスマン・トルコの近代建築を研究している.
 当時は荒廃し尽くして、外壁の美しいタイルもすべて剥落、婦人センターの建物と大江戸線の工事現場に挟まれて、塀に囲まれた廃墟は悲惨の一言.しかしそこを作品のイメージ・モデルにしようと再度訪れると、偶然どこかの学生グループが見学に来ていて、篠田は素知らぬ振りをして中に入りさりげなく写真を取りまくって逃亡.その直後に書いた「桜闇」では、ご存じの通り館は見事に消滅している.
 その同じ99年に雑誌ダ・ヴィンチの「作品の舞台を歩く」特集で取材申し込みをし、無事内部を再訪.そのときの見聞は当時連載していた旅行読売のエッセイに書いた.さらに角川で「桜闇」を漫画化するとき再度取材を申し入れたが、担当者が変わっていて編集者はけんもほろろの扱いを受けたらしい.
 それがいまはランチ7000円の高級レストランとなった.もちろん消滅するより、残してもらう方がいいに決まっているが、今の状態で出会ったなら、「桜闇」を書くこともなかったなあ、とちょっと身勝手な感慨がある.
 午後は建築博物館に伊東忠太の展示を見に行ったのだが、長くなりすぎるので、それは明日書こう.

 今日も通販の申し込み到着.先日の「困った方」はすぐに小為替を再送してくださった.ありがとうございます.初めての沖縄からお申し込みのTさんからは、「メモを入れろという注文はないのだから、そうして欲しいなら最初から書いておくべき。自分は申し込みの要件を満たしているはずだ」というまことにごもっともなお手紙をいただいた.いわねばわからないことを要求するな、といわれれば全くその通りで、自主性にまかせるならここでぐちを垂れるべきではないのだろう.私にとっては「常識」に思えることも、常識とは言えない場合はいくらでもあるらしい.
 というわけで、告知板の記述をもう少し変えてみることにした.

2003.01.15

 昨日届いた通販6通.皮肉なことに今回はメモ一枚入っていないものがほとんど.なんだか悲しい.どっちにしろ何度もやることじゃない.増刷分の到着を前に告知板の「通販要領」を書き直す.
 仕事再開.『angels』やっと50頁に到達.

2003.01.12

 昨日の通販到着25通.初版希望の方のみ本日投函.残りは本が出来次第送れるように、ペーパーなどを用意する.これだけで午前中いっぱい.困ったことにおひとり、定額小為替の券面にご自分の氏名住所捺印をされている方が.無記名とお断りしてあります.申し訳ないがこれは返送する.再版分がかなり残った場合本のあとがきで広告しようかとも考えていたが、この種の勘違いや不備がたくさん来ると手間が増えるばかりなので、止めておくしかなさそうだ.ネット環境にない人を切り捨てる結果となるのは本意ではないが、すべて篠田ひとりで処理するとなるとあまり大量の通販をさばくことは難しい.
 返信封筒に「様」をつけてくる人はいなくなったので、引き続きサイトを見てくださっているのだと思う.しかし、メモ一枚入れてくれない人、まだいるのだなあ.篠田は金儲けで通販をやっているわけではない.ご愛顧を賜る読者への感謝の気持ちをこめての企画であり、お金のことを言うならその時間で原稿書いた方がよほど儲かる.郵便物というのはその人の人柄が出る.たかが通販.用が足りるんだからそれでいいじゃないの、という人は少なくとも篠田が感謝したいお客様ではない.そういう場合京介や深春や蒼や神代さんがなんというか、想像してみてくれればわかると思う.わかってくれるのが読者だ、と思いたい.
 それから「小為替が外から見えないようにしてくれ」とお願いしたらお願いしたら、それもほとんどの方がやって下さっている.しかし二重に封筒に入れて、口を糊付けするのはバッテンです.何十通も開封するものの身になって下さい.中身を切ったらまずいからはさみは使えないし、破るのも心配だし、けっこう大変なんです.返信封筒でくるむなり、便箋一枚でくるむなりで十分.相手の身になって考える、というだけのこと.でもすべての礼儀はそこから始まるんだよ.あー、また説教おばさんになってしまった.いいのかね、篠田なんかが人に説教して.

 通販の人で「『綺羅の柩』に登場したタイの風習、曜日と色を他の曜日も教えて欲しい」というお手紙があり、あわてて資料を探す.書き終えてしまった小説についてはどこかへ仕舞ってしまうので、こういうときは大変.結局一時間以上仕事場の中をほじくりかえすことに.いや、単に篠田がだらしないだけです.
 念のため、ご興味をお持ちの方もおられるかもしれないので書いておこう.
日曜 赤/月曜 黄/火曜 桃/水曜 緑/木曜 橙/金曜 青/土曜 紫

 明日明後日留守にします.仕事もしないので次の更新は15日.

2003.01.11

 『angels』粛々と進行中.高校生に夏休みの教室でコントラクト・ブリッジをやらせよう、というのは前から考えていた.自分の高校時代トランプが流行したことがあったのだが、どうせならブリッジの方がおしゃれだろうと思ったもの.これまた20代のころバイト先でブリッジがはやり、一時は仕事さぼってブリッジ三昧.とはいえビッドのシステムまでは覚えそこね、いまとなっては本を読んでも頭が混乱するばかり.なんともお恥ずかしい.本になった後で、露骨なミスがあったらどーしよう.
 『レディMの物語』見本出来.とてもきれいで洒落た本が出来た.内容はかなりエロティック度が高いので、大声でお勧めするのはためらわれるが、でもちょっと手にとってもらえたら嬉しいな.

 通販の封筒到着.まだ数えていないのだが、こうなったら再版の上がりを待ってからお送りする方がいいだろうと思う.そういうわけで、しばしお待ちを.

2003.01.10

 仕事しかしていないので書くネタがない.仕事は『angels』.それとおととい書いたe-novelsに手直しした短編と、奥付に付けるマークがいるというので、スキャナで落款を取り込んで送る.画像を送ったことがないので、これだけても大騒ぎ.
 西澤保彦さんの『謎亭論処』を勉強のつもりで再読.上手い.

2003.01.09

 通販を処理、いただいた方の中で2名は「再版で」というご指定だったので、後に回し、指定の無かった13名様は本日発送.初版の残はあと4冊.特に指定のない限りは、あるだけ初版を出荷します.

 『angels』じりじりと進行中.17.8歳の高校生を15人も出すので、これがけっこう厄介といえば厄介.だけど、自分で勝手に決めたことだから文句は言えない.本日は死体の描写でありました.ええ、健全な学園物じゃないっすよ.さらに舞台は学校だけど、夏休みなんで授業はありません.

2003.01.08

 今朝e−novelsのボランティアをしている浅暮三文さんからメールがあって、そろそろテキスト・データを下さいといわれる.すっかり忘れていたのだが、「遊歩人」というPR雑誌、なのかな、に掲載した連作の参加作品を、e−novelsで発売することになっているのだが、ページ数が少なくて気に入らないから書き直させてくれ、といってあったのです.e−novelsというのは、作家が産直で小説を売ろうというサイトで、本屋では手に入らないコンテンツがたくさん.ただし、作品をダウンロードするにはまずそのソフトをダウンロードしないとならないし、お金の支払方法とか手続きがあって、篠田もまだ買ったことはないのですね.
 まあともかくご迷惑をかけてはあかんというので、あわてて直しをやる.三割くらい増えて、まあいいかな、という感じになった.「黄昏ホテル」というタイトルでの連作で、20人の作家が集まってやって、随時e−novelsで売って、連載終了後は本にするそうです.ご興味をお持ちの方はe−novelsで検索してみてください.

 通販来ました.15冊.増刷は送ってあるのだけれど、いつ出来るかまだ全然わからないので、申し訳ないがこの方達には初刷りをお送りします.

2003.01.07

 書き下ろしより締め切りが厳格に決まっている雑誌を優先する必要があるのは当然のことだから、次回で最後になる『アベラシオン』をやった方がいいのは明らかなのだが、年末いくらか決まっていた分だけでも『angels』をやっておきたい気持ちもある.しかし読者の皆様の期待に応えられなくて悪いのだが、楽しい学園ものでは全然ない.自分のことを思い出しても高校生活というのはそんなにるんるんではなかったので、高校生を何人も出してくるとむしろ大人が出るより重苦しくなるところはある.
 結局後数日はそっちをやることにして、しかしその前に友人に頼まれた楽しみのための原稿を書いて憂さ晴らしをする.夕方になって『angels』に戻るが、ああ、暗いなあほんとに.いや、こうなると蒼の存在がひとつの清涼剤ですよ.しかし蒼ばかり書くわけにはいかないのだ.これはミステリなのだ.うー.

2003.01.06

 昨日日記を書いた後「青帝の鉾」を探して読み直したら、なんのことはない、こちらは全然ミステリではなかった.ノートに書き付けたのは、これをヒントにミステリ的に扱ったらこうなるかな、というプロットだったのだ.ああ、ほっとした.というわけで、どうにかこうにか最後までたどり着く.52枚.しばらく冷やしておいて、渡す前に見直すことにしよう.

 本日年内にちょうだいした通販をすべて発送した.しばらく待って届かない、というようなことがありましたら、どうかはがきでお知らせ下さい.それから添付のペーパーに恥ずかしいミスタイプがあります.途中で気づいて直したのだけど、大半の方へはそのままのペーパーが届く.お赦しあれ.

2003.01.05

 『秘密の本棚』の誤植を切り張り訂正する.それからいろいろ考えて、二月には到底別の短編を書く暇はないから、東京創元社の短編を先に書いてしまおうかと思うが、プロットがなかなかうまく立たない.非常にお馬鹿なトリックがひとつあって、誰かにやられる前にやらなくてはと思っていたのだが、馬鹿がむき出しではどうもならないので、それを粉飾するプロットがいる.だが、どうにもほっこりしない.
 しょうがなくて、アイデアノートの隣のページにあったやつを書いてみることにする.ただしこれは、赤江瀑の「青帝の鉾」という短編に触発されて、そのプロットの骨格だけを借りてもうひとひねりしてみるというものなので、まずいかなあ、というためらいもいくらかあるのだ.骨格はほんとに骨格だけで、世界も違えばキャラも違うんだけどね.とにかく書き出すことは書き出せたので、最後までやってみることにした.
 これが大丈夫そうなら、あまり早めに原稿を送るのも迷惑だから、しばらく手元で温めておいて、ということができるだろう.

 昨年の日記で故山本夏彦氏のことを書いたが、今月発売の「室内」に氏のグラビアが載っている.服のモデルになった写真.惚れ直すほどキュートだ.へいへい、篠田は爺萌えでございますからね.

2003.01.04

 予定通り今日から仕事開始.『根の国の物語』1と2の再校ゲラ、「龍」の聖徳太子編3のゲラ.後者は終わりあたりの文章がいまいち気に入らなかったので、かなり書き足ししてしまう.これもノベルスにするときは、かなりまた直さないと駄目だろうな.10年やってもちっとも慣れない仕事である.
 午後ゲラを宅急便で返し、『秘密の本棚』訂正のために打ち直しをする.校閲が嫌だの腹が立つだのいって、校閲なしだと誤植続出のぶざまなわけで、もう少し謙虚にならんといけませんなあ、と今年最初の反省.
 さて、明日から蒼の話に戻る.もっとも序章あたりでは蒼はまだ出ず、いやあな殺人肯定論を書かないとならない.いや、そういう構成なんです.登場人物のひとりが書いた文章が載せられる.困ったことに篠田、そういう文章を書いていると、そのときだけはそういう気になってしまうのだよな.我ながらアブナイやつ.

2003.01.03

 昨夜は柴田よしき『少女達がいた街』を読了.これは1975年の青春を描く青春小説であると同時に、紛れもない本格ミステリだった.『ロンド』が「本格ミステリのガジェットをちりばめた芸術小説」であるのとは対照的に.
 今日は書庫整理の続き.雑誌類ともう読まないだろう本をまとめて運び出すと、まだかなり余裕のあることが判明.やれやれ.しかし仕事場の方はほとんど手が着かないまま、明日からまた仕事再開である.東京創元社の新雑誌の締め切りは二月末なのだそうだが、それだとメフィストともろかぶってしまう.蒼の話を早く書きたいのに、それは中止して東京創元の短編を書かなくてはならないだろうか.頭の切り替えの下手な篠田はちょっと憂鬱.
 でもその前に『秘密の本棚』再版のために、誤植の直しをしなくては.主な訂正個所を告知板にアップします.本当に申し訳ない.今年最初の懺悔.

2003.01.02

 更新は4だといっておきながら、またこうして書いてしまうのは昨夜『ロンド』(東京創元社)を読了したからだ.翌日の予定を気にせずに本に読みふけれるというのも、正月休みの利点ではある.さて、昨年から世評が高かったらしいこの作品だが、はっきりいって本格ミステリではなかった.ただし、「本格」でないということが、この作品の価値を否定するわけではない.
 評論家はジャンルの枠を限定したがるようで、実作者は逆にジャンルに縛られたがらない.漠たる印象を言うならそうだけれど、篠田の場合「ミステリ」や「本格ミステリ」をあまり広く考えるのは好まないというのは、自分がミステリに対して部外者である証かも知れない.「本格ミステリ」とは乱歩がいったように、「主として犯罪に関わる謎が、徐々に論理的に解かれていくおもしろさを眼目にした小説」である.そして「本格ミステリ」は「ミステリ」の集合に含まれる.「ミステリ」とは私見に寄れば、「作中の謎とその解明をおもしろさの眼目とした小説」である.ふたつの定義の差異を理解して欲しい.
 『ロンド』には名画による連続見立て殺人という「犯罪」があるが、この犯罪は「犯罪を芸術と化せしめようという犯罪芸術家のゆがんだ意志による行為」という動機が、最初からあからさまにされているために、そこには「おもしろさの眼目」が存在しない.犯人が明らかにされるのも唐突で、それまで読者にはほとんど紹介されていない人物のために、驚きには乏しい.真相の明かされ方も、犯人が延々と告白をするばかりで、「論理的に解かれていく」とはいいがたい.
 おそらく作者が書きたかったのは、「死に取り付かれた天才アーティスト三ツ桐」という架空の存在であり、上記犯罪もまた「三ツ桐の作品によって狂わされた犯人」を描くことで、ひとりの死せる芸術家とその達成としての作品を存在させることに奉仕していると思われる.作者のもくろみには、「意外性」も「論理性」もなかったのだ.
 この作品が本格ミステリでないというのは、作者がそれを意図していないからだ.つまりこれは「本格ミステリめいたガジェットを用いた芸術小説」ということになる.そして「芸術小説」としてなら、かなり健闘しているといっていいと思う.しかしたとえば私の友人のようなミステリ嫌いなら、ミステリのガジェットをじゃまくさく感じて、そこを減点の対象とすることだろう.本が売れないと言われ続けている現在、「芸術小説」としてより「ミステリ」として売る方が売れ行き的に有利だ、とはいえるのだろうが、「本格ミステリマニア」の読者には釈然としないことだろうな.

2003.01.01

 当サイトを訪れてくださる皆様、明けましておめでとうございます.関東はいささか雪もよいのあいにくのお天気でしたが、どうお過ごしでいらっしゃいましょうか.
 篠田は朝寝をして(昨夜は十数年ぶりに紅白を見ました.中島みゆきが聞きたかったのです)、日本酒をたっぷりといただいて、『ロンド』を読みながら昼寝.さきほど腹ごなしの散歩をして、赤いカラスウリの実を摘んできました.夜はブルゴーニュにチーズです.と思っていたら『ロンド』の中でもブルゴーニュを飲んでました.がんばって読みますが、どうもこれだけで三が日かかってしまいそう.感想は読了してから書きます.
 今年はいつにも増して仕事の予定が目白押しなので、敢えて三が日は仕事場に近寄らず家で過ごすことにしました.明日は壊滅状態の書庫の整理をします.もっとも暖房設備がないので、うっかり座り込んで読みふけると凍死しかねない.
 当日記は仕事日誌なので、仕事をしないと書くことがありません.というわけで、次の更新はたぶん仕事を再開する1/4になります.
 今年の新刊は1/15に『レディMの物語』が出ますが、これは18禁です.肉体年齢というよりも、精神的に「ちょっとハードなエロティカでもファンタジーとして楽しめる」自信のある方はお読み下さい.別に篠田はサドの女王様でもマゾの奴隷志願でもないので、そのへんどうかお間違えなく.