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2001.10.31

 なぜか試写会のハガキが来たので、銀座に『フロム ヘル』 という切り裂きジャック映画を見に行った.ジョニー・ディップというのは、なかなかセクシィな俳優である.映画の出来は、切り裂きジャックに予備知識のある人はとても楽しい.ディテールが楽しめる.切り裂きジャックは知らなくとも、イギリスの世紀末やフリークスに興味のある人は楽しいかも.物語的にほとんど必然性がないのに、特殊メイクをこらしたエレファント・マンが登場するのは、もはや製作者の趣味としか思えない.
 しかしある程度切り裂きジャックに興味があると、終わりの30分は先が読めてしまう.ちょっとメロドラマチックな結末は趣味が分かれるだろう.犯人も、予備知識のない人にとってだけ「意外な犯人」です.いまさらこのネタで、意外な犯人はやりづらいが.この映画の監督や原作者、主演のディップもリッパロロジストらしいので、島田荘司の『切り裂きジャック百年の孤独』を読ませてあげたいものだと思いましたです.
 夜は仕事場で、泥縄な資料本読み.『アベラシオン』は書いていると、自分で計画していないネタがぽろっと出てきて、あわてて資料を探したりする.

2001.10.30

 今日は仕事場から一歩も出ずに仕事.夕刻198枚に達して、まだ終わっていないが少なくとも目処は立った.この回のラスト場面は決まっているので、そこへバンと持っていくのに、もう少し情景を入れるか入れないかというところ.どっちにしても明日には一応終わりそうなので、試写会に行くことにする.切り裂きジャックネタらしいので、これは行かないとね.その代わり明日はまた仕事場に泊まりということで、明日の更新はありません.

2001.10.29

 ようやく少し筆が速くなったかという感じで、170枚を越えた.200枚以内に収まるなら、明日でかなりめどが立つはず.
 日記もまとめて書くと、ネタがあっても忘れてしまう.というわけで、久しぶりの更新なのに短くて済まない.毎日見ています、などという手紙をいただくと申し訳なくなる.
 ようやく自宅に戻ったところ、マイラブ・クラチッチから『聖杯伝説』の感想のおはがきが.う、うれしいっ.パソコントラブルで二度も原稿が消えて、泣き泣き書いた甲斐があったよお.

2001.10.28

 遅寝すると起きられない.今日はひたすら仕事.

2001.10.27

 午後から友人三人が遊びに来る.作家は名前を出してしまえ.落語ミステリ『三人目の幽霊』東京創元社、で単行本デビューした大倉崇裕さん、後は以前からの知り合いで本読み、いまは某社編集の人と、奥さんがかわいい某社サラリーマン.特に編集者から「ここだけの話」が連続炸裂.ストレス解消になりました.ありがとう.夕飯代わりに近くでちょっと飲んで、戻って少し仕事.午前二時就寝.

2001.10.26

 連れ合いは今日からお出かけ.しばらく仕事場でひとりだと思うと逆に気がゆるむ.いかんなあと思いつつ、あまり原稿は進まない.

2001.10.25

 庭園美術館はカラヴァッジオ展.しかしあまりこの人の絵は好きではない.仕事場に戻ってから祥伝社担当からゲラの話.まだ時間的に余裕があるので、メフィストが終わるまで待ってもらうことに.帰宅するとおもしろそうな映画の試写会が10/31.どうしようか.すべてはこれからの進行具合でしょう、と人ごとのように.
 週末は仕事場泊まりなので、月曜日まで更新はありません.

2001.10.24

 朝『アベラシオン』を88枚まで進めて外出.岡山より上京の友人と、まず庭園美術館に行くが運悪く休み.やむなくたてもの園.夜は仕事場で酒盛り.

2001.10.23

 当然のごとく仕事であるが、相変わらず筆の進みは遅い.パソコン周辺に資料や辞書がちらかっていくばかり.そしてまた、アレはどこに書いてある、あの本はどこへ行ったの繰り返し.仕事場と自宅と両方に本が分かれているので、なおのこと探す時間がかかる.いまの捜し物は『モンス・デジデリオ画集』と『迷宮としての世界』.ひどいときになると、目の前の本が見つけられないんだから.
 夕刻講談社文三担当から電話.来週には取りに来られてしまう.しかし嫌な知らせがひとつ.講談社も海外渡航自粛なんだと.12月予定の取材はどうなる.建築探偵が出ませんよ.篠田のせいじゃないですよ.
 いいことも書いておこう.『聖杯伝説』誉めてもらった.ひとりは編集者をやっている友人.ひとりは連れ合い.
 明日は地方から出てくる友人を仕事場に泊めるので、日記の更新はありません.木曜は更新しますが、その後しばらく空いてしまうかも.遊んではいません.働いております.

2001.10.22

 仕事再開.しかし休んだ後は筆が重い.今週は忙しいので、ジムに行っておく.さて、明日一日でどれくらい進むか.へたしたら月末は徹夜である.

2001.10.21

 いつになく朝寝.池袋に出て映画『陰陽師』を見る.野村萬斎があまりにも岡野玲子のマンガのイメージにどんぴしゃり.狩衣の袖を翻してのダンシングも美しかった.
 本年度乱歩賞作品『13階段』を読む.あまりにも重い読後感でしんどい.それはまあ、テーマが死刑制度の是非と人間の罪の問題だから、明るくなりようもないんだけど、せめてもう少し読み終えたときに前向きな気分になりたいものだ.エンタテインメントなんだから.

2001.10.20

 光原百合さんがご贔屓の劇団の芝居を見に上京.三鷹の山本有三記念館というところで野外劇をするというので、友人とふたりで出向く.なんとなく和風の住居だろうと決め込んでいたら、大正15年建造のかわいらしい洋館だった.これはまた改めて見学に来たい.芝居の方は、篠田の頭ではいまいちピンと来ない前衛劇でした.
 夜は友人のアパートに泊まる.深春の住んでいたような木造二間台所であった.夜は映画『バトル・ロワイアル』とそのメーキング・フィルムを鑑賞.

2001.10.19

 予定通り耳鼻科とジムと健康診断.夕方前には仕事場に戻れたが、椅子でうとうとしてしまう.というわけでほとんど仕事できず.面目ない.明日は出かける前に二時間くらいはパソコンに向かえるかな.
 というわけで、日記の更新は日曜か月曜あたりまでありません.

2001010.18

 仕事にかかるとコーヒーの消費量が増える.たばこはできるだけ吸わない.舌が荒れるからね.
 本日は続きを書こうとして、ふと建物内の部屋の配置が気になってくる.おおむね五角形の平面なので、頭の中でだいたい決めてそれで書いてしまったのだが、今回はあちこち見物して廻るので、矛盾が出るとやっかいだ.おおざっぱな見取り図を書いていくと、すでに矛盾しそうなところもあり、抜き刷りを読み返しながらチェックして、これが意外に時間を食う.
 書き出しても、アレを書こう、ところで資料はどこだっけ、を繰り返すから進行が遅い.もっともこの作品は、ずっとその調子なのだ.会話場面は早いけど.結局本日は52枚まで.四分の一済んだぞ、と思ってほっとしかけたが、四分の一で三日ということは、後丸々九日必要なわけ.しかし月末に向かって、友達の家に泊まりに行く、泊まりに来る、お茶のみに来るなどで五日はつぶれる.明日は医者と健康診断とジムでこれまた丸一日パー.大丈夫か、俺.でもなー、仕事してたらなにもできないとなると、ずうっと誰とも会えないことになってしまうのだよ.

2001.10.17

 朝から雨もよい.
 午後徳間の担当氏、デュアル文庫新刊『聖杯伝説』見本をもって来訪.水樹さんのイラスト下絵をいただく.『アベラシオン』は36枚まで.いつになっても原稿を書いていると、「この調子では必要な枚数が全然埋まらないだろう」と思うが、書いていると「枚数が足りない」ということになる.前回は180枚だから、珍しく予定より少なくて済んだ.今回はどうなるだろう.大変なのでとっとと終わらせてしまいたい気持ちと、もっともっとねちねち書き込みたい気分と、相反する思いがある.
 家に戻るとカッパノベルスの推協アンソロジー『M列車で行こう』が来ている.「迷宮に死者は棲む」ほんの少しだけ改稿あり.これで本年出る本はすべて終わりである.まだ2ヶ月半あるのに、一年が終わったような、って、終わってないってば.まだたくさん仕事あるってば. 

2001.10.16

 鼻づまりの薬を飲んでいるせいで、副作用で口が苦くて閉口.なんだか眠いのもそのせいか.
 『アベラシオン』のプロットを立てていて、アレが使えるな、と思ったものの、どこの本に書いてあったかわからない.というわけで、アレを探し回るだけで半日経過.やっと発見.フィレンツェはベッキオ宮にある窓ひとつない小部屋である.公開されていないので見てもいないが、ここが錬金術の象徴に満たされているそうな.
 午後からようやく書き出す.結局プロットは頭の中で、アレとアレとアレを書いて、最後の場面はこう、という程度に立てただけ.本日は15枚まで.順調に進めばなんとか、月末までに最終シーンにたどりつけるはずだけど.

2001.10.15

 ブック・オフで買った皆川博子『霧の悲劇』を読了.出だしはあれっと思うが、やがて紛れもない皆川さんの世界に入る.それにしても皆川作品の絶版の多さよ.篠田は地方に行くたびに目についた古本屋に飛び込んで探すが、収穫はあまり多くない.気がつくのが遅れたのが悪いんだけど.
 『アベラシオン』の前四回分を再読しつつ、プロットを立てる.どうせそうきっちりとは決めないんだけど.

2001.10.14

『髑髏の結社 SSの歴史』を終日読み続ける.読めば読むほど事実というやつは単純じゃない.黒服を着た帝国のエリート、鉄の規律に身をゆだねたヒットラーの私的軍隊、というイメージは現実ではなかった.しかし、ナチズムの思想を肯定する気持ちなどこれっぱかしもないのに、なぜ彼らの視覚的イメージには拭いがたい魅惑、美を感じてしまうのか.押された悪の烙印が、それをいっそう魅惑的なものにしているのか.

2001.10.13

 昨日に続いて読書日記.ブックオフで買ったスティーブン・キングの『バトルランナー』を読んでびっくりしてしまった.ミステリではないのでお許しを、ということでラストをばらす.ばらさないとなぜ篠田がびっくりしたか語れない.
 近未来のアメリカ、貧富の差は残酷なまでにきびしく、しかも固定化し、下層の人々は這い上がれず、警官がうろつく社会.主人公のベンは病気の娘を医者に診せる金を稼ぐために、テレビの殺人ゲームのターゲットとなる.長く逃げればそれだけ賞金がつり上がって家族に届くが、いずれはなぶり殺しにされる.彼を追うのはハンターだけではない.国民全員が賞金につられて彼を捜し追いつめる.
 最後ぼろぼろになったベンは、唯一護らねばと思っていた妻と娘も殺されたと知って、手に入れた旅客機の中で敵を倒し、機首を殺人ゲームの企画者らが住む高層ビルへと向ける.ビルをあざ笑っていた男が、迫り来る飛行機に呆然と「馬鹿な」つぶやき、それが命中して大爆発を起こすところで終わる.なにがびっくりか、おわかりだろう.
 例の事件の後、トム・クランシーの小説が「似ている」と話題にされたが、『バトルランナー』は話に昇らなかった.なぜか.この話では、身を捨ててビルにつっこむのは孤独な英雄だからだ.しかし、私は思う.たぶんそのときのテロリストの心情と、小説の主人公ベンの思いは、さほど違わなかったろう.むろんベンは、自分を助けようとしてくれた女性をパラシュートで脱出させた.しかし、敵と自分の圧倒的な貧富の差、距離感、敗北感、それを一気に逆転させる特攻攻撃に身を捧げる高ぶりは、よく似ているように思う.
 テロリストを英雄視しろというのでも、同情しろというのでもない.しかし正義は所を変えれば逆転すること、そしてアメリカはあまりにも物質的に豊かであり、快適であり、ただそれだけでも持たざる者からは憎まれる理由になるのだということは、忘れてはならないだろう.

2001.10.12

 青井夏海の新刊『赤ちゃんをさがせ』東京創元社を読了.前作『スタジアム 虹の事件簿』がまことにエレガントな連作短編ではあるものの、第一作らしいぎこちなさを免れなかったのと比べれば、遥かに手の上がった一冊、とまずはえらそうにいってしまおう.
 解説でもそのように書かれているから、これを「日常の謎派」にふくまれる一冊といってしまっても、さほど文句は出ないはずだ.この「日常の謎派」が、本格ミステリというジャンルの中に完全にふくまれるのか、そこからはみ出す部分もあるのか、私には決められない.しかし謎とフェアで論理的な解決を必要とする本格ミステリは、宿命的に作者の作為が露出する危険から逃れられない.これをリアルなディテールによって包み隠そうとするケースは多いが、逆に作為の屹立によって作品世界を人工的なものに変えてしまう戦略も、近年では珍しくなくなっている.私は名探偵という存在も、そのような装置のひとつだと思っている.
 このことから考えると、本格ミステリと「日常の謎派」は必ずしも相性が良くない.それを完遂するのは、異様な名探偵を活躍させるよりも、むしろ至難の業だといえよう.青井夏海の第一作『スタジアム 虹の事件簿』は、さりげなく日常的なディテールを持つと同時に、美貌の未亡人で球団オーナーという非日常的な名探偵を登場させることで、ある種不自然なぎこちなさを持ってしまった.
 しかし『赤ちゃんをさがせ』の視点人物で探偵役でもあるのは、助産婦である.妊娠出産とはまぎれもなくこの世界の、日常に存在する出来事でありながら、同時に極めつけの非日常、人生の特異点ともいうべきイベントだ.それを助ける助産婦.しかも病院での出産が当然視される現代にあっては、異端的存在にされてしまった職業.古来西欧で、助産婦はしばしば魔女でもあった.そうした存在を探偵役に設定することで、作者は見事に日常と非日常、リアルと作為を結びつけることに成功したのである.
 なお、マイ・ラブ倉知淳の秀逸な帯には、「座布団一枚」.

2001.10.11

 雨は上がったがあまりさっぱりしない天気.ミスデラにマンガのおまけとして載せる会津旅行記と、編集への手紙を書いてFAX.もらいもののミステリ一冊読了.後は趣味の小説を書いて一日が暮れる.明日は所用で外出.ああ、そろそろ『アベラシオン』が気がかりになってきた.

2001.10.10

 せっかくここまで来たのだから喜多方へでも行ってみようかといっていたのが、朝起きると土砂降りの雨.これでは町をそぞろ歩くことも出来ない、というわけで朝食をいただいてチェック・アウト.電車の時刻を変更して東京に戻る.しかし期待むなしくこちらも土砂降りの雨.妙な天候である.

2001.10.09

 角川書店あすかミステリーデラックスに漫画化予定の「捻れた塔の冒険」のため、秋月杏子さん、担当編集者と会津若松へ.篠田の仕事は「蒼達はここを上がってきて、するとここらに京介が」といった解説をするのと、マンガ掲載時に記事ページとして軽い旅行記を書くことだけなので、まあ気楽.
 しかし首尾良く取材を済ませた後で、担当からちょっと気がかりな話を聞く.「捻れた塔」は2月頭売りの3月号掲載で、予定ではその後が「永遠を巡る螺旋」.で、秋月さんともどもフランスへ行ったろうかい、というつもりだったところが、アメリカのアフガン空爆で、報復テロの危険があるから、海外取材は自粛されたいというのである.
 ご心配いただけるのはありがたいが、ではどうすればいいのか.見ないと描けない、は秋月さんのこだわりであり、シャンポール城の資料といっても、写真は決まり切ったもので、物語のクライマックス部分はない.かといって、確かにテロの不安はある.空港や駅、そして飛行機.日本だって絶対に安全なわけではないが、旅行すれば危険はやはり増大する.篠田はあまりそういうことは考えないというか、そのときはそのとき的な居直りをしてしまうのだが、自分のことはともかく、同行の秋月さんをそうした危険に遭わせるのはあまりいいことではない.しかしことは戦争がらみなので、いまからいろいろ考えたところで、どうにもならない側面はある.やれやれどうしよう.
 夜は東山温泉の小さな旅館で、おいしい夕飯と温泉を楽しむ.

2001.10.08

 寒々しい日.午前中は同人本用短編「カゲリ君大ショック」を仕上げる.約60枚.結局足かけ三日かかったのでは、仕事と時間的に変わらない.それにしても、仕事も小説、趣味も小説というのは、我ながら悲しい話だなあ.
 午後は、そろそろ『アベラシオン』の続きが気になって、遊びきれない小人の悲しさだ、資料にするつもりの本を読んでいると、それではなく『龍の黙示録』シリーズのプロットが浮上してくる.忘れるといけないのであわててメモ.次回は時代を転々として短編をいくつか書き、最後は現代に持ってきて、第三長編に続けるもくろみ.しかしいつも目の前のやらなくてはならないことより、もっと先のことがやりたくなる.そしてそれがやらねばならなくなると、あんまりやりたくなくなっている.
 明日と明後日は会津若松.というわけで日記の更新は早くとも明後日.

 本サイトも昨日でカウンタが3000を越えた.10000番をゲットした人には、木工房風来舎からプレゼントが出るそうなので、お楽しみに.

2001.10.07

 本日は一日、冬コミに出る同人本に載せる原稿を書く.秋月杏子さんが『センティメンタル・ブルー』本を作ってくれるので、そこに載せる短編.もちろん非ミステリです.ご興味がおありの方は、篠田の手紙受付へ、アナログ・メールにてお問い合わせ下さい.通販は可能です.ただし冬コミあわせなので、お渡しは来年一月になりますが.
 ついでにもうひとつ、コミケ関連発行物についてお知らせしておこう.冬コミあわせで一部には前から予告していた「やおい小説研究本」が出ます.執筆者は翻訳家柿沼瑛子、レズビアン・アクティビスト溝口彰子、そして篠田.それぞれのウィタ・セクスアリスから、ここ以外では絶対読めないやおい習作、そして抱腹絶倒赤裸々本音吐き放題座談会.これも通販可能ですので、ご希望の方は手紙で問い合わせてください.こちらには予告チラシがあります.
 以上、関係ない人にはなんのことかわからないだろうお知らせでした.

2001.10.06

 今日はようやく本当に丸々お休み.講談社ノベルスの新刊山田正紀『篠婆 骨の町の殺人』を読む.非常に奇妙な味の小説.ミステリとしての謎は本格の範疇に収まるのだが、探偵役の正体を始め、大量の解かれない謎、過剰な謎が残る.そのへんはマヤユタカの作品と似ているか.
 10/9は漫画化の取材で福島に行くのだが、ネットで予約した温泉旅館が温泉旅館が、対応がルーズでいらつく.非常にこぎれいなサイトを開いていて、空室状況や予約フォームもしっかりしていると思ったのだが、ちゃんと運用されていない.こういうことはしかし、いくらでもあるんだろうな.こないだ飯田橋のエドモントにネットで予約を入れようとしたときも、電話でわからないことを聞いたら誰もわからなかった.
 今日発売のミステリーデラックスに、『桜闇』のマンガが掲載されている.87ページの力作です.ぜひ読んでください.

2001.10.05

 午前中、昨日ラストまでたどりついた『東日流』の直し.3枚増えて159枚.切りがないので送稿.午後はミステリ・マガジンのクリスティ特集エッセイ.本棚から子供の時に読んだ昭和33年発行のポケミスが見つかったので、「最初に読んだクリスティ」というタイトルで一文をでっちあげる.
 その後は寝椅子で虚脱.長編を書き終えたあとはひたすら虚脱.満足感とか充実感なんてものは、もっとずうっと後に、たとえば読者からほめてもらったときなんかに、ようやく感じられるものです.
 月末まで『アベラシオン』200枚.一日20枚として10日.なら10/20から書き出せばいいかと思ったが、友達が遊びに来る予定など月末に数日あることを思い出す.遅くとも月中からはかからないとダメだ.
 竹本健治さんにパーティの時調子を聞いたら、「書き出したけど全然だめえ」とおっしゃる.「登場人物が多くて大変ですよね」「もう後悔してるよおお」「でも、みんなが一渡りしゃべるだけでページがかせげるじゃないすか」と卑しいことをいった篠田に、「ページを稼ぐって意識はないのねえ」と答えられた竹本先生.その節は失礼しました.『ウロボロス』楽しみに待ってます.

2001.10.04

 眠ったのは二時過ぎだが、目覚ましを買ったので七時起床.あとはもう昨日と同じに仕事だけ.今日は曇天なのでかえって出かけたい気分にならなくて、仕事できたかも.午前中に幻想文学のエッセイを脱稿.小説とエッセイは二本立てて書くと飽きなくていいみたい.メール送り.『東日流』は夕方六時過ぎラストに到達.なんと156枚.果たしてノンは載せてくれるかなあ.メフィストと違うしなあ.ともかく今日だけはほっとする.明日はミステリ・マガジンのエッセイを書いて、『アベラシオン』のことを考え始めないといけない.そういえば入院した担当は無事復帰した模様.

2001.10.03

 ひたすら仕事である.実はこれを書いているのは4日で、3日の時点では、ああ、これを書こうとか思っていたはずなのだが、いまになったらてんで頭から抜けてしまった.あ、ひとつ思い出したぞ.西澤保彦さんの新刊『異邦人』がめっちゃ良かったのだ.いわゆるミステリの感動ではない.仕掛けはSFだがSFの感動とも違う.これはもう、西澤小説としかいいようがない.西澤さんという人は、ご本人はとてもいい方で、酒の相手としても、馬鹿話の連れとしても私は大好きだが、作品はときどき「わおう」というような甘いラブラブなストーリーを書いたかと思うと、読み終えたらどーんと身体が重いような鬼畜な結末を書いたり、死体ごろごろ笑うしかない、をやったりする.で、今回は甘い方の西澤さんだが、手放しの甘々ではなくて、ほろ苦く、切なく、でも甘いんです.
 仕事場泊まりで缶ビールを買い忘れたので買い物に.夕飯もパソコン前で済ませつつ缶ビール2本、ワインなみなみ一杯.午前一時ストップ.

2001.10.02

 昨日とはうって変わったさわやかな晴天.こんな天気だと「旅行に行きてええーっ」という気分がしてして、およそ労働意欲が湧かない.暑い盛りはクーラーかけた室内にとじこもっていればいいやという気分だし、天気の悪いときはもちろんだけど、こんな青空の日にパソコン前に座っているしかないなんて、情けないじゃありませんか、ねえ.
 朝から手紙を書いたりコピーを取ったり郵便局に行ったりしているうちに、たちまち昼.『東日流』は昨日緊張感と集中、なんてかっこいいこと書いたのに、読み返したらどうも気に入らないところが出てきたりして、ぐずぐず書き直す.ああー進まないっ.やばいぞおっ.
 本日の電話、早川ミステリマガジンから、クリスティの特集をやるので短編を.締め切りはいつですかと聞いたら今月末だというので、迷う余地もなく「無理です」.ならばエッセイをということで、6枚のエッセイを引き受ける.子供の頃から目にしてきた雑誌だものねえ.篠田はこちらより、SFマガジンの方がなじみだったけど、ちょっと胸がときめいて、思わず受けてしまいます.
 角川ビーンズ文庫から、スケジュールを詰めましょう.中公で出した『根の国の物語』をとりあえず文庫化するので、それにしても手は入れるから、それなりの時間はみないといけない.こちらは来月に回す.なんでも先送りの篠田、来月で済むことは今月はやらない.刹那的だなあ.
 本日の根付け.鬼の赤と、豆腐小僧の色.後者は三つ目.トレード先を探さなくては.他の掲示板も覗きに行こうかしらん.
 本日のお知らせ.9/30に書いた幻想文学の交換エッセイが久々に新作アップしました.ぜひ見に行ってやって下さい.
 http://www.d2.dion.ne.jp/~octa/  この中の篠田真由美の館内「大火通信」のページです。

 明日は残業するので、日記の更新はありません.

2001.10.01

 朝から肌寒い雨.今日もひたすら『東日流』の第五回を書き続ける.四回までで450枚になっているが、最終回、書いても書いても終わらない.本日は95枚まで.150枚くらいに納めれば、雑誌掲載もしてもらえるだろうが.五回で終わらせろというのは出版社の都合で、おいらのせいじゃあないわえ.
 まあともかく、今週中にこいつを終わらせて、9.10は福島へ、『捻れた塔の冒険』漫画化のための取材旅行だから、それを骨休めと考えて、後は三週間で『アベラシオン』を何枚書けるか.
 祥伝社担当Y田氏、第三回のゲラをもって来訪.鉛筆の部分だけ見てその場で済ます.この連載はいつもの優柔不断な行きつ戻りつと違って、書いたら書いたまま送って、ゲラもこの通り必要最低限しか見ない形でやっている.間をおかずにノベルスにしなくてはならないから、そのときはある程度念入りに見直せるだろうが.決して手抜きとか忙しいからというのではなく、緊張感と集中で仕事をするつもりであります.下手な考え休むに似たり、でもあるしさ.
 ところで、通常の日記のように後へ後へと書き足すのは、書く方も読む方も面倒ではないかと言う気がしてきたので、今月からは前へ前へと書き足すことにする.読んでくださる方も、どうぞそのおつもりで.