調子のいいニュージーランド娘

土曜日の朝4時。
私はオーストラリアのアデレードのホテルをチェックアウトし早朝の便に乗るためタクシーを待っていました。
ホテルのロビーで待つこと15分。
タクシーが来る気配はありません。
フロントでタクシー会社へ連絡してもらうが営業時間外なので電話はつながらないという。
昨晩予約してあるなら問題ないだろうとのことでした。

待ちきれずにホテルの外へ出てみると、昨晩から飲んでいた酒ぐせの悪い若者連中で騒然としています。
流しのタクシーはその連中に止められて次々と走り去ってしまいます。
私が予約したタクシーも彼らに横取りされてしまったのだろうか・・・。
思わぬ時間の浪費で次第に焦りが出てきました。

その時、同じホテルから長身の女性が大きな赤いスーツケースを転がして出てきました。
声をかけると彼女はニュージーランドへ帰るため空港までのタクシーを探しているというのです。
彼女に相乗りと割り勘を提案し協力してタクシーを確保することにしました。
ホテルのスタッフも私たちの苦戦に気付き協力してくれました。
奮闘の甲斐あってタクシーを何とか確保し空港に着くことができました。

時間がないので相乗りのニュージーランド娘にタクシー代を立て替えておく旨を伝えると、彼女はさっさと自分の荷物だけを持って立ち去ってしまいました。
しまった!という後悔と、やられた!という悔しさが同時に込み上げてきました。
割り勘の約束をしたのに感謝の言葉もなく逃げるように立ち去ったニュージーランド娘・・・。
とても悲しくなりました。

私が搭乗手続きを済ませて搭乗口へ進むと、何とニュージーランド娘が何事もなかったような表情で座っているではありませんか。
御礼のひとつくらいあるだろうと意味ありげに彼女の前を通ってみたものの完全に無視されてしまいました。

彼女の国には割り勘という概念がないのだろうか?
感謝の気持ちは万国共通ではないのか?
たまたま性格の悪い娘だったのか?
疑問は深まるばかりでした。

【2005年11月】