林くん
林くんとの出会いはプラハの国立博物館のロビーで開かれたクラシックの演奏会でした。
こっそり学生券で入場したのですが演奏会は有名なチェコフィルハーモニー管弦楽団の弦楽パートによる室内楽でした。
天井が高く大理石の柱と美しい装飾のロビーは3秒はあろうかという残響により甘美な響きを創り出していました。
バイオリンのトップを弾く金髪女性の美しさもさることながらバッハやヴィヴァルディの調べに時のたつのを忘れて聴き入ってしまいました。
終演後立ち寄ったトイレで、さっきまで隣りに座っていた同年代の日本人らしき男性と一緒になりました。
私 「日本の方ですか?」
彼 「・・・? アイム フロム タイワン」
すっかり日本人だと勘違いしていました。
彼の名前は林くん。
ハヤシではなくリンです。
チャイナエアラインズのアテンダントでフランクフルトへの搭乗の合間にプラハまで足を延ばしたそうです。
旅行の話題で意気投合し近くのマクドナルドで3時間もおしゃべりしてしまいました。
ちなみにチェコのビッグマックのセットは約300円でした。
翌年8月、林くんはホノルルへのフライトで羽田へやってきました。
都内で待ち合わせて箱根へ出かけました。
何度も日本に来ているのに箱根は初めてとのことでした。
登山鉄道やケーブルカーで大涌谷や芦ノ湖などを満喫。
最後に東京タワーに案内すると美しい夜景に驚いた様子でした。
またの再会を約束し彼はホノルルへ飛んだいきました。
一週間後、ハワイから届いた小包にはパパイアが詰まっていました。
【1998年3月】
