テリーズのチョコレート。

みかんの形をしていているチョコレートの話し

一昨年、このサイトを通じで知り合った方が
みかんの形の思い出のチョコレートについて話していたら、
それがこのテリーズのチョコレートだという事を教えてくれた。

今でも相変わらず売られている事に驚いた。

お父さんとの思い出の詰まったチョコレートにめぐり合えて
嬉しくて飛び跳ねてすぐに買った。



さっそく食べたらやっぱり、まずかった。
大人になってから食べても やっぱりまずいんだって分かった。


食べていたらお父さんのことを、次々と思い出した。
ずいぶん時間をかけて ひとつを食べきった


ふたつ買ったので、

もうひとつは、大切に冷蔵庫にしまっておいた。

僕はあんまり好きじゃなかった。

だけど、お父さんが買ってくると
とても嬉しくてはしゃいだ。

僕は、いつも優しいお父さんが 大好きだったから。


仕事から帰ってくると ねだって肩車をしてもらった。

部屋の中をぐるぐると、
しりとりやなぞなぞをやりながら 僕が飽きるまで歩いてくれた。

お父さんのおでこに両手をあてて 落とされないようにしがみついた。


お父さんは 僕が小学校高学年の頃には、入院をしてしまい

18歳の時に そのまま病院で死んだ

先日、娘と息子とテレビゲームをやっている時のこと。

息子が  『腹が減った〜』  というので、
冷蔵庫にしまったまま賞味期限の切れてしまっている、
このテリーズのチョコレートを思い出して、食べる事にした。

いつまでも思い出をしまっておいたって、しょうがないもんね。


子供たちにチョコレートを見せると
娘も息子も 『うわーっ まずそう ! 』 と言った。

息子は、前回食べた時に懲りていたのか
『絶対にいらない ! 』  などと言う。

僕は 『うん、まずいよね、パパも好きじゃないんだよ〜』と言う。


『じゃあ他のチョコないの〜』 と子供たち。


僕はブルームいっぱいで白くなったチョコレートを食べながら

子供たちの知らない僕のお父さんの話をした。

『このチョコレートはね、パパのお父さんが、
パパがまだ小さい頃に良く買ってきてくれたチョコレートなんだよ』


子供たちはゲームをやりながら、初めて聞くお爺さんの話しに
関心なさげに ふーん、とか相槌を打つ。。

僕は、ゲームをやりながら、
お父さんの思い出を もう少しだけ話した。

いつのまにか、僕の息子が 僕のお父さんと、話をしているような気持ちになった。

僕のお父さんが知らない、僕の子供たちのことを。
僕の子供たちが知らない、僕のお父さんのことを。




チョコレートが伝えてくれたような気がする。



テリーズのみかんのチョコレートの話でした。

だけど いくら鈍感な僕でもわかった。

息子が、まずいのを我慢して食べているっていう事。

大切に思って 食べてくれているのだという事。


まずいくせに半分も食うなよ息子 !  それで泣けちゃった。


あくびのふりをして目をこすり
黙ったままテレビゲームを続行。

みかんと同じように銀紙をむいて
半月の形をしたチョコをひと房ずつ食べる。

僕が幼い頃、小さな会社で貿易商をしていた父が、
良くおみやげに買ってきてくれたチョコレートなんだ。

味はオレンジの風味が強くて、渋い感じ。そのくせ甘ったるくて、

子供には、まるで不向きなチョコレートなんだ。

すると息子が 『ひとつ食べたい』と言いはじめた。

『まずいぞ〜』  と言いながら ひと房 渡す。
『微妙〜』とか言いながら食べる息子。

『パパもね、あんまり好きじゃなかったんだよね〜』と言う。

息子がもうひとつくれと言う。

息子は『歯ごたえが美味しい』とか言いながら、
もうひとつもうひとつと言って食べ続けた。

気がつくと 半分ほど食べてしまった。

『古いチョコレートは、白くなって、歯ごたえがパサパサするんだよ
パパもこの感触は好きなんだ〜』 と言う。


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