北方領土は、いま(後編)
【ロシア政策の変更・怠慢】
北方四島の概観を見てきた。
ロシアがどさくさ紛れに北方四島を占拠したのは、1945年の終戦直後、2年あまりにわたって
のことであった。
元島民の話などを見ていると、まず兵隊が乗り込んできて、アメリカ兵、日本兵の存在を
確認して回っていたそうだ。(かなりロシア兵は他国の兵を恐れていた、との情報があった)
その後、2年あまり後の1947年、住民はロシア兵の手により、まず南樺太に移され、その後
北海道は函館港に「帰った」。
なぜ、ロシアは北方四島を奪ったのであろうか。
調べる限り、それは明言されていない。(当然か)
思うに、北方海域は、千島寒流と対馬暖流がぶつかり合っているので、
豊富な水産資源に恵まれているからではないか。
主な水産物は、昆布、さけ、ます、たら、すけそう、タラバガニ等。
タラバにうつつを抜かした、ということではないだろうが、
売ればカネになるものばっかりである。
しかし、なにしろロシアにとっては辺境の地。
モスクワからは何千キロ離れているかわからない。
現大統領のプーチンは、これまでの地方自治から、中央集権体制にもっていこうとしている。
とすると、こんないくつかの島なんかに、大きな注意を払うだろうか?
ここで、戦後の歴史的背景をさらってみる。
旧ソ連・ロシア統治下になってからの最初の島民は、乗り込んできた兵士であった。
こんな島に残るよりは、モスクワかどこかで暮らしたほうが良くないか?
そう思われないよう、当時のソ連は「優遇政策」を考えた。
移住促進のため創設された優遇政策は、安定した高賃金・年金・休暇などを保証するもので
あった。
そのまま1990年代に入り、ソ連はロシアになって、エリツィンが大統領となった。
懸案事項は、どん底状態のロシア経済の立て直し。
しばらくして、多くの優遇生活は廃止された。
物価は、賃金の上昇を上回る急速なペースで上昇し、住民の生活はかなり苦しくなっている
ようだ。
ロシア人というと、我が物顔で北方領土を占領しているイメージを持つかもしれないが、
実際、不況の北海道よりもずっと苦しい生活を送っている。
住民は、様々な副業を持ったり、自給自足で野菜を作って生活している。
だが、1994年の北海道東方沖地震で、主産業は壊滅状態に追い討ちをかけられた。
それゆえ、日本は人道支援を数多く行ってきている。
では、軍事面ではどうか。
アメリカとの関係の悪化から旧ソ連は、1978年頃から四島の軍事基地化を急いだ。
軍事基地の整備とともに、道路・食料供給・住宅などもあわせて整備されることになり、
この時点で、少しはマシになったようだ。
しかし、1981年には、こうしたインフラ整備はなぜか中止され、せっかく作った施設の
維持・改修すら行われなくなったという。
というわけで、総じて今の北方四島の状況は良いとはいえない。
一方、自然は豊かであり、北海道では乱獲され、見られなくなった動物もお目にかかる
ことができる。
人間がほとんど自然に手をつけないので、ヒグマにとっても住みやすい環境だろう。
【あるアイヌ人の主張(想像)】
「 日本でいう北海道は、もともと我々のものだった。
日本でいう江戸時代に、シャモ(日本人)がウスケシ(函館)に侵略してきた。
奴らは、サケ・マスを、巨大な網を使って乱獲していた。
あまりの日本人の暴挙に耐えかねて、蜂起したりもしたが、
会談の最中に、我々アイヌの長が日本人に殺されてしまった。
江戸時代が終わったと思ったら、勝手に戦争を持ち込まれた。
箱館には、変な星型のものまで造られてしまった。
そして、東京政府は、勝手に「北海道」と名づけ、都道府県の一つとしてしまった。
いい事といえば、鉄道を作ってくれたことぐらいか。
戦後は、不況で東京政府の援助もけっこう受けてきたりもした。
でも、昔から北海道は日本人のもの、とは思ってほしくないな。 」
【総括?】
日本もロシアも、やってることは、あんまし変わらない。
ていうか、日本のほうが卑劣じゃないんですか?
で、あるページに書いてあったことであるが、
「北方領土が返ってきたら、その後どうすんの?」
ということ。もっともである。
テーマパークを造るのか?あるいは、トロッコ列車でも走らせるのか?
日本とロシアの架け橋となる、友好都市を作るのか?
そもそも、住民はロシア人しかいない。
返還後も、そんな島に、日本は援助する気があるのだろうか。
島自体はかなり広い上に、インフラも整備されていない。
ヒグマも多い。なにより、火山地帯である。地震も多い。
はっきり言って、どうするにせよ、この半ば廃れた状態を元通りにするには、
かなりの時間と手間がいることは間違いないだろう。単に200海里水域を確保したいとか、勝手に取られたから返せ、という理由
だけで闇雲に「返せ」 といってるのだったら、むしろやめた方がいいんじゃない?
こんなこと言うと、追い出された旧島民に怒られるだろうけど。
日本サイドの言い分を貫くと、
北海道に行くのに、パスポートが必要になってしまう。
それは勘弁してもらいたい。
それに、北海道がないと、日本の景色はいっそう窮屈に見えてしまう。
何とも人間とは、わがままなものだ。(苦笑)
《追記》
2008年に露メドベージェフ大統領が就任し、北方四島への投資に重点を置いてきた。
それにより北方四島の経済状態は、急速に改善されつつある。
日本人としては複雑な思いではあるが、現地の住民にとっては喜ばしい事である。
Special thanks to---
主要参考文献(サイト)・北方四島マップ(http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~yonto/sub1/suba.htm)
・北方対策本部(http://www8.cao.go.jp/hoppo/index.html)
・北方領土の基礎知識(http://www.pref.hokkaido.jp/soumu/sm-hrtsk/hp/kiso.htm)また、写真は、
・北方領土写真館(http://www.hoppou.go.jp/syasin/top.html)
がお勧め。