【激論】 ウルソーは、なぜ好かれるのか?

< 処世術はウルソーに学べ >



ウルソー投手は私をはじめ、数多くの野球ファンに愛されている。
ウルソーが愛されるのは、歴史の必然だと唱える人もいるかもしれない。あるいは、宿命と説く人もあろう。
しかしながら、ウルソーには、人々に愛される明白な根拠があったのである。
主な理由をあげれば、

・名前に濁音がない
・珍しい「中継ぎ」志望の外国人投手
・恐く見えて実は優しい
・丸い

などなど。
以上4つの理由を、一つずつ詳しく見ていくことにする。



1.名前に濁音がない

ここでいう名前とは、主に使われる登録名とする。つまり「サルバトーレ=ウルソー」ならば、サルバトーレではなく、よくウルソー、ウルソーと呼ばれているので、ウルソーとする。

外国人の名前には、よく濁音(ガギグゲゴ、バビブベボなど)が使われる。これらは、まぎれもなくカッコつけるためのものであると言えよう。たとえば「ガルベス」「ゴンザレス」など、いかにも偉そうな名前の外人が多いが、これは名前に濁音が入っていることで、強そうに見せかけているからだ。(笑)

こんな例がある。
2000年に中日に在籍した「ディンゴ」という選手がいた。
本当は「ニールソン」という名前だが、「ディンゴ」というハンドルネームをつけた。
いかにも迫力のある名前である。

ここで実験をしてみる。
「ディンゴ」から濁音をとってみる。

「ティンコ」、となる。

「ディンゴ」と「ティンコ」。どちらが迫力があるだろうか。
まるで雲泥の差だ。

逆に、「ディンゴ」と「ティンコ」。どっちが、親しみが持てるか。とっつきやすいか。
これは、おおかた、後者のほうではなかろうか。

ウルソーにこれを当てはめると、ウルソーという名前には濁音がない。
つまり、親しみやすい。
これは、地味な理由ながらも、ウルソーが支持されている最大の要因だと私は考えている。


2.珍しい「中継ぎ」志望の外国人投手

投手の「花形」といえば、日本もアメリカも同じ。先発投手と、ストッパー(最後に出てくる抑え投手)だ。中継ぎ投手は、あんまり重要とされないし、なにより目立たなかった。中継ぎといえば、先発投手が調整のために投げたり、先発で芽が出そうに無い選手が、しかたなく投げるようなものである。

わざわざ祖国での生活を捨て、日本に来るような外人は、「本国では活躍できそうにない。仕方ないから日本で先発or抑えをやってやるか」程度の考えだろうと思う。
しかし、ウルソーという男は、なんと中継ぎを志願してきたのである。

しかも、入団した先は、投手を酷使することで有名なカープ。
特に中継ぎ投手は、負けていても勝っていても同じ投手が幾度も登場し、3年もたてば全壊するケースが大半であった。
この手を使って、カープ球団は新人王を何人も潰してきている。
そんなカープに、わざわざ中継ぎを志願して入ってくるのである。これほどの「リスク愛好者」は、ウルソーをおいてほかにいないだろう。
ウルソーは、まさに自分で自分を窮地に追い込んだのである。茶目っ気あふれる名前とは裏腹な、その男気に魅せられた人も多いのではなかろうか。


3.恐く見えて実は優しい

氷点下40度の北極で、0度の氷水を浴びたらどうなるか。
結論は、「暖かい」と感じる、という。

一瞬、0度の氷水を浴びるというと、ぎょっとする。しかし、実際は暖かく感じるのだ。

日常で、40度のお湯を浴びることはよくある。
しかし、0度の氷水をかぶったときに感じる「暖かさ」は、40度のお湯の暖かさに比べたら、全く感動が違ってくるはずだ。

ウルソーは、一見すると恐く見える。
しかし、複数の情報筋によれば、実に気さくな人なのだそうだ。

優しそうな人が気さくに話しかけてきても、あまり感動はない。
しかし、ウルソーが気さくに話しかけてきたら、感動を覚えるはずだ。

ウルソーと話をした人、もしくはそれを目撃した人には、一様に忘れられない光景だったことだろう。
ウルソーは、感動を与えるプロ野球選手だったのだ。


4.丸い

ドラえもんは、なぜ人気があるか。
いろいろあろうが、「体が丸い」というのも、理由の一つであろう。

もともとドラえもんの体が丸いのには、理由がある。たしかドラえもんは「子供用の玩具」扱いになっていて、子供が角にアタマをぶつけることがないように、丸くされたものなんだそうだ。
だから、手も丸ければ、鼻も丸い。おまけに足まで丸い。

ウルソーも、また丸い。
丸いということは、愛敬があるということだ。
ウルソーが密かに人気を得てきた理由のひとつに挙げられよう。

プロ野球選手、というとゴツいイメージがあり、なかなか見ていて癒されるものではない。
そんな中で、マルティネス(西武→巨人)、ブーマー(元阪急)などは、その丸い体でソフトなイメージを植えつけた。
特に、マルティネスが「マルちゃん」と親しんで呼ばれているのも、そのためではなかろうか。

ウルソーは中継ぎで、なかなか目立たないので「ウルちゃん」などの愛称は定着しなかった(ヒゲダルマ、等は愛称に含めない)。しかし、ウルソーを知る野球ファンは、彼にいくらかの愛着を感じたことだろう。


誰からも好かれるウルソー。
彼は、野球界になくてはならない、一時の清涼剤なのである。