ある日の一言 ボールペン字の挑戦
(2004年9月〜2010年5月)
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内容紹介
俺は字を書くのが本当に下手である。我ながら驚くほど下手で、どんなに上手く書こうとしても全然上手く書けないのだ。周囲の人、両親に聞くと字を上手く書くコツはゆっくり丁寧に書くことと、言っているが、俺はどれだけゆっくりと丁寧に書いても上手く書けない。
そこでワープロの文書や本の書体を真似て書いたこともあるが、何かが違うのだ。一字一字は我ながら上手く書けていると思うのだが、文章全体を見ると全然上手く見えないのである。よく見ると一字一字の字の大きさにばらつきがあるのだ。それが原因かもしれないと思いながら書いても上手く書けない。
小学生の頃、習字を習っていたが、はっきりいってそんなのは今全く役に立ってない。結局続けてないからなんだろうけど。俺は特に学生の頃や数年ほど前までは自分の字が下手なことに、こだわらなかった。たまに自分の書いたメモを他の人に渡したりする程度だったから特に問題はなかったのが・・・。
ある時俺にとって重大な事件が起きた。俺にとってだ。他の人にとっては大したことはないかもしれないが。数年前イギリスに国際会議の発表に行ったとき、会社に現状報告をせねばならず手書きの文章を2回ほど送った。もちろん上長に報告するわけだから、俺は渾身をこめて丁寧に書いた、つもりだった。そう、つもりだったのだ。そしてそれをFAXで送った。メールで送ることができればよかったのだが、俺にはその手立てがなかった。
その後、会社に戻った俺は驚いた。俺の手書きの文章が部内を回覧されていた。見ると本当に”へたくそ”な字であった。そればかりか漢字が間違っていて社長に訂正されていたのだ。そう俺のへたくそな文章は社長まで回っていたのだった。俺は穴があれば入りたかった。俺はすぐにその文章を回収した、がとき既に遅し。もう全員に回った後だったのだ。当然だ1週間程イギリスに行っていたからその間に回覧されていたのだった。
俺は手書きのFAXを見て、「へたくそな字だな!」と叫んだら、隣にいた先輩が、一言「本当だな」と。俺はそれからいろんな人の手書きの字を観察することにした。あの人は上手い。あの人は下手だ。字の上手下手は年齢、男女、学歴は関係ないように思えた。
あるとき回覧がまわってきて見ると、すさまじく下手な字を見つけた。申し訳ないが本当に下手で自分とは比べ物にならないぐらい下手だった(お前も人のことは言えないだろう!)。これは絶対に人前には見せられないだろう、と心の中で俺は思った。それと同時に、上手い字を書かなくてはと本当に本当に思い始めた。
それから自分では字を丁寧に書こうと心がけるがやっぱり上手く書くことができない。何とかしなくては。俺は字が下手だから年賀状ももちろん全て印刷だ。できるかぎり手書きのところを少なくしているのだ。仕事でもほとんどパソコンを使うから手書きが少ない。
そしてある日の朝、新聞の広告を見ていたらユーキャンを見つけた。そう資格のユーキャンだ。今はコマーシャルをやっているが、その広告を見つけたとき2年前はあまりコマーシャルで見ることはなかったが、ときどき広告に入っていたのは知っていた。そう実用ボールペン字講座だ。金額は2万9千円。このままだと俺は一生下手な字を書き続けるだろう。俺はちょうどその頃博士課程を修了して時間の余裕もできて、結局挑戦することにした。ただこの実用ボールペン字講座の説明を見ると1日20分程度練習すれば見違える程上手くなるみないなことが書かれていた。1日20分だったら楽勝だ。俺でもできるぞとお金を払い教材を購入した。
まずはひらがなの練習からだ。あ、い、う、・・・。最初はやる気があるから1日15分どころではない。1時間も2時間もやる。会社から帰って字を書く練習をするのだ。妻は、”旦那がまた何かをやり始めた”という感じで遠くから見ている。そう知っての通り俺はNOVAにはまっていたからだ。俺の日課は会社の帰りにNOVAに行き、そして夜10時前に帰ってくる。そして今は、この新しく始めたボールペン字の練習をやっている。
妻は何を言うでもなく(文句も賞賛の声もなく)見ている。たまに言うのが、「年間いくら(俺が)お金を使っているか知ってる?」。もちろん俺はそんなことは知らないが、かなりの金額を使っているのは確かだ(反省はするのだが・・・)。
そういうときは俺は決まってこう言う。「今俺がやっているのは将来に対する自分の自分に対する投資だ。確かにNOVAで○○円以上は使っていると思うが、結果から見ると自分の英語が今は会社の役にたっている。おまけに自分が投資した金額以上に会社から戻ってきている(俺が思っているだけかもしれないが)。
だからこのボールペン字もそれと同じだ。必ず役にたつときがくるはずだ」。いますぐに役に立つとは思わないが、もしかすると将来的に自分の一生を左右するようなことに発展するかもしれない、と本気で俺は思っている。みなさんどう思いますか?更に付け加えて言えば、中国語もドイツ語も同じことだと俺は思っている。
俺のボールペン字の練習は最初は順調だったがやはり嫌になるときがくる。教材は全部で6冊あって6ヶ月かけて練習を続けるのだ。ひらがなの練習、カタカナの練習、数字、そして文章・・・。定期的に練習の成果を送ってチェックをしてもらうのだ。
忍耐力があると思っていた俺も結局1ヶ月程たつとあきてきた。最初は1日2時間ぐらいやっていたのが、そのうち平日は練習せずに週末の土日にまとめてやるようになった。そして土日もやらなくなりそのまま何もせずに1ヶ月ぐらいがたった。
ある時俺は、こんなことではダメだ。当初の俺の志はどこにいったのだと、もう一度やり方を考えることにした。やる気を継続させる方法は、何かないかな。NOVAの場合だとレベルが9段階に分かれていて試験があってレベルが上がるわけだが、このクラスというのが受講者のやる気を起こす1つになっている。つまり上のレベルを目指して頑張ろうと。
俺は最初に送られてきた教材と他に何か一緒に入ってなかったか調べてみた。するとボールペン字にも検定があることが分かった。5級からあるみたいだ。俺は早速練習をすることにした。ボールペン字の検定というのは、決められた文章があり、それを清書の用紙に書いて日本書道協会なるところに送るのだ。そして採点が行われて合否が決定するのだ。
5級の清書を送るとなんなく受かった。5級が受かると検定料を納入する振込用紙が送られてくる。3000円だ。お金を振り込むと5級の認定書と次の4級の課題が送られてくる。もし不合格ならばお金は必要ない。再度課題の用紙が送られてくるのだ。そして何度でも挑戦できるらしい。
なんとなく、日本書道協会なるものは怪しい金儲けの団体のような気もするが、ユーキャンがやっておりおまけに今はコマーシャルでもボールペン字を宣伝してるぐらい(人気が高い講座)だから信用するか。何より字が上手くなることが俺の目的だからそれが達成できればよい。それに5級でも検定に受かると気持ちがよくて、ようし次も頑張ろうかとなってくる。
とりあえず俺にとって継続する為のやる気がでてきたのは間違いない。調子にのった俺はすぐに4級の練習に取りかかった。そして翌日に清書を書いて出した。今考えるとそんな簡単に受かるわけが無いと思うのだが・・・、その時は動機が不純でとりあえず4級を目指そうというだけに成り下がっていた。
本当の目的は字が上手くなることなのに。結果は言わずとしれた不合格だった。「もう一度練習をして提出してください。あなたの字はここがよくないです。」というようにコメントが書かれていた。
ダメだったかと思うと同時に俺はあさはかさを知った。たった1日練習しただけで急激に字が上手くなるわけはないのだ。長い年月を書けて常に丁寧に書くことで上手くなっていくものなのだ。だから1日20分毎日練習を続けることに重大な意味があるのだ。つまりいつも丁寧に書く習慣を持つということだ。
ただ丁寧に書くだけでなく、字形を整えなければならない。それぞれの文字できれいに見せる為の書き方があって、ここは長めに書いて、ここは短めに書く、またこの漢字はバランスよく小さめに書く、他の字とのバランスを考えて縦書きの場合は中心線を揃えて書くなど非常に細かいのだ。俺はボールペン字は奥が深いと感心した(腕は未熟だがこういうことは一人前に思うのだ)。
また全体の文章をある程度バランスよく書くと一字一字が下手であっても全体的には綺麗に見えることが分かった。上手い人の文章は全体的にバランスよく書けているのだ。ようやく俺はそれに気がついた。結局4級が不合格以来毎日わずかな時間でも練習するようにした。また普段の仕事の中でもなるべく丁寧に字形を整えて書くようにした。そして3ヵ月後再度4級を出して合格した。
検定以外に教材の練習は14回ごと(14日ごと)に練習の成果を別の用紙に書いて提出しなければならない。全部で15回の課題を提出するのだ。そして今年の4月に15回目の課題を提出した。一時、数ヶ月間何もせずに過ごしたときがあったが、それ以外は順調に進めることができた。
最初はひらがなの練習、次にカタカナ、そして漢字、それ以降はあいさつの文章、年賀状の文章、行書の書き方、最後の練習課題は筆ペンを使った”のし紙”の書き方だった。6ヶ月で終わるところを、結局1年半ぐらいかけて行った。予定はかなりオーバーしたがとりあえずやり終えることができた。
後は日々の生活の中で書くのが練習で、丁寧に字形を整えてバランスよく書いていかねばならない。油断をするとすぐに元の字に戻ってしまうのだ。問題は字を書くのに時間がかかることにあるが、行書を上手く併用することで早く書けるようになるのだろう。
日々練習である。ちなみに検定は先月2級が合格した。今度は1級に挑戦だがこれは全て行書で書かなければならないので練習中である。書道はおそらく一生かけて行うもので、自分の腕は常に磨いていかなければならない。一朝一夕で上手くなるものではない。
我ながら2年前と比べると上手い字が書けるようになったと思う(自分で思っているだけかもしれないが)。妻に言わせると、俺が一字書くのに妻は四字ぐらい書いているから、あまりの字の書く遅さにあきれている。世の中のスピード時代に反するかもしれないが書道は別ものだと思っている。
ただこの2年の間やってきたボールペン字を永久的に保つには常に意識して書かねばならず俺にとって重荷になるかもしれないということだ。そうでないとやってきた意味が無い。ただ検定の受験料がバカ高い。2級は8千円で、次の1級はなんと1万円もかかるのだ(日本書道協会、やっぱり怪しいぞ)。おそらく妻も不満に思っているのだろうが何も言わない。
今日はたくさん書きすぎた。ここまで読まれた人ごくろうさまでした。俺はこのネタを書くかどうか迷っていた。実用ボールペン字講座をやり始めた頃に1つのネタとして書こうと思っていたが結局今まで書くのはやめていた。それは自分の字が下手だという恥をさらすことと、もしかすると講座を最後までやり遂げることができず挫折するかもしれないと思ったからだ。だがとりあえずやり終えることができたから書くことにした。
ただ第三者の立場からみると自己満足のためにやってんじゃねぇのか、思うかもしれない。ただこの自己満足が仕事に社会に役立てばこれほどうれしいことはない、と俺は思っているのだ。
2010年5月
郡山勤務になり手書きで字を書くことが非常に多くなった。メールよりもFAXで送付されてくる書類が多くなり、手書きで返信することが多くなったのだ。だから毎日なんらかの字を書いているのだ。最近テキストを開いて書く練習はやってないけど、ボールペン字のテキストに会社でよく使用する文章というところで何度も練習したことがあり助かっているのだ。
まだまだ不十分だが以前と比べると、大分上手くなったなと我ながら思う今日このごろだ。しかし油断をして書くとすぐに以前の自分に戻る。あせって書くとへたっぴになるのがよく分かる。もっと丁寧に書かなくては・・・。