西ナイルウイルス対策に関連する農薬急性中毒−米国
 
米国防疫センター(CDC)はWWMRの2003年7月11日号に、1999年4月から2002年9月までの西ナイルウイルス対策に使用した殺虫剤による中毒事故を報告した。
 
西ナイルウイルス対策のために、米国では有機リン及びピレスロイドなどの蚊の成虫駆除用の殺虫剤や幼虫駆除剤を空中散布及び地上散布によって使用している。
 
調査したのは全ての州ではなく、アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ミシガン、ニューヨーク、オレゴン、テキサス、ワシントンの農薬中毒報告制度のある各州である。これら各州の人口合計は約1億2000万人である。
 
表 1、2に報告された中毒症例及びその状況をを示す。
 
報告症例数は蚊駆除農薬散布に関連した実際の数より少ない可能性があることを、MMWRの注の中で指摘されている。第一に、この調査には報告されない症例があった可能性がある。、影響を受けたが治療を求めなかった人及び、調査システムに中毒症状が報告されなかった人が存在する可能性があるためである。また医療を求めても病気が殺虫剤に関連があると認識されなかった人がいるためである。第二に、米国の9州にしか農薬中毒調査制度がないことである。第三に、擬陽性報告が混入している可能性がある。
 
農薬による急性中毒は、呼吸器(66.2%)や神経系(60.9%)、消化器(45.1%)、眼(36.1%)、皮膚(27.1%)、心臓血管(12.0%)、尿生殖器(3.0%)、その他(28.6%)であった。
 
重症は 54才女性の1 例で、近くがピレスロイド系殺虫剤スミスリンで散布された時、換気扇とエアコンから入ってきたスミスリンに曝された。この女性はぜん息及び慢性の閉塞性肺疾患を悪化させられた。他の症例は中〜軽症であった。
 
これらの調査結果から、農薬被ばくを減らすためにCDCは次のような勧告をしている。
 
・ 総合防除の採用。幼虫駆除及び繁殖地減少・蚊成虫駆除に殺虫剤を思慮深く使うこと
・ 殺虫剤を使う場合、公衆衛生期間は散布の時期と場所を伝えるべきである
・ 公衆衛生当局は散布前に目で見える及び耳で聞くことができる警告をすべきである
・ 被ばくに関連した健康の心配がある場合には医療機関と相談すべきである
・ 不適切な散布を防ぐために、殺虫剤を取り扱い使用する人は適切な訓練を受けるべきである
 
日本にこのような統計があることを知らないが、最近、2003年7月16日に千葉県夷隅町で登校中の小中学生20人が、農薬空中散布で目に痛みを訴える事件があった 小中学生は目や皮膚の痛みやかゆみを訴えた。また、柏市内の中学校でも生徒3人が農薬によると思われる事故で入院している(毎日新聞7月25日)。日本でも農薬中毒報告制度が必要であり、十分な安全対策を講じる必要がある。
 
 
参考
 
CDC, Surveillance for Acute Insecticide-Related Illness Associated with Mosquito-Control Efforts --- Nine States, 1999--2002, MMWR 52(27);629-634 (2003.7.11)
 

 
表1.蚊駆除殺虫剤関連疾患のあった人数と割合、殺虫剤被ばくの種類・州*・性・被ばく場所・病気の重度・年による。9州 1999-2002

特徴
 
 1999   2000  2001  2002  合計
人数 (%)
 
人数 (%)
 
人数 (%)
 
人数 (%)
 
人数 (%)
 
殺虫剤          
 マラチオン 22 (84.6) 1 (3.3) 31 (63.3) 10 (35.7) 64 (48.1)
 マラチオン+ピレトリン  0 0  0  2 (7.1)  2 (1.5)
 マラチオン+ピレスロイド  0 0  0  2 (7.1)  2 (1.5)
 ネールド
 【=BRP、ジブロム】
 0
 
4 (13.3)
 
15 (30.6)
 
4 (14.3)
 
23 (17.3)
 
 スミスリン  2 (7.7) 21 (70.0) 0 1 (3.6) 24 (18.1)
 レスメトリン  0 2 (6.7) 1 (2.0) 7 (25.0) 24 (18.1)
 フェンチオン  1 (3.8) 0 0 1 (3.6)  2 (1.5)
 その他  1 (3.8) 2 (6.7) 2 (4.1) 1 (3.6)  6 (4.5)
         
 ニューヨーク 10 (38.5) 22 (73.3) 29 (59.2) 1 (3.6) 62 (46.6)
 テキサス  9 (34.6) 5 (16.7) 2 (4.1) 1 (3.6) 31 (23.3)
 フロリダ  7 (26.9) 1 (3.3) 15 (30.6) 5 (17.9) 28 (21.1)
 アリゾナ  0 0 1 (2.0) 2 (7.1)  3 (2.3)
 カリフォルニア  0 2 (6.7) 0 0  2 (1.5)
 オレゴン  0 0 0 2 (7.1)  2 (1.5)
 ワシントン  0 0 0 2 (7.1)  2 (1.5)
 ミシガン  0 0 1 (2.0) 1 (3.6)  2 (1.5)
 ルイジアナ  0 0 1 (2.0) 0  1 (0.8)
         
 男 15 (57.7) 18 (60.0) 15 (30.6) 13 (46.4) 61 (45.9)
 女 11 (42.3) 12 (40.0) 34 (69.4) 15 (53.6) 72 (54.1)
被ばく場所          
 公共の場所  8 (30.7) 6 (20.0) 35 (71.4) 11 (39.3) 60 (45.9)
 家庭  6 (23.1) 11 (36.7) 9 (18.4) 8 (28.6) 34 (25.6)
 職場 12 (46.2) 12 (40.0) 3 (6.1) 9 (32.1) 36 (27.1)
 その他  0 1 (3.3) 2 (4.1) 0  3 (2.2)
重症度§          
 重症  0 1 (3.3) 0 0  1 (0.8)
 中 11 (42.3) 18 (60.0) 11 (22.4) 5 (17.9) 45 (33.9)
 軽症 15 (57.7) 11 (36.7) 38 (77.6) 23 (82.1) 87 (65.4)
合計 26 (19.6) 30 (22.6) 49 (36.8) 28 (21.0) 133 (100)
*アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ミシガン、ニューヨーク、オレゴン、テキサス、ワシントン
クロルピリホス(n=1)、ペルメトリン(n=1)、石油系炭化水素(n=2)、ピレトリン(n=1)、テメホス(n=1)
§ 州の急性農薬疾病傷害調査で使用するための重症度インデックスにより定義
 
CDC, Surveillance for Acute Insecticide-Related Illness Associated with Mosquito-Control Efforts --- Nine States, 1999--2002, MMWR 52(27);629-634 (2003.7.11)
 
 
 
表2.蚊駆除殺虫剤関連疾患のあった人数と割合、殺虫剤被ばくの種類、年齢グループ、重症度による。9州、1999-2002

特徴
 重症    中   軽症  合計
人数 (%) 人数 (%) 人数 (%) 人数 (%)
殺虫剤        
 マラチオン  0  18 (40.0)  46 (52.9)  64 (48.1)
 マラチオン+ピレトリン  0   0  2 (2.3)  2  (1.5)
 マラチオン+ピレスロイド  0   1 (2.2)  1 (1.2)  2  (1.5)
 ネールド  0   4 (8.9) 19 (21.8) 23 (17.3)
 スミスリン  1 (100)  18 (40.0)  5 (5.8) 24 (18.1)
 レスメトリン  0   4 (8.8)  6 10  (7.5)
 フェンチオン  0   0  2  2  (1.5)
 その他§  0   0  6 (6.0)  6  (4.5)
年齢グループ        
  0-5  0   1 (2.2)  0  1  (0.8)
  6-19  0   7 (15.6) 22 (25.3) 29 (21.8)
 20-39  0  13 (28.9) 21 (24.1) 34 (25.6)
 40-59  1 (100)  22 (48.9) 33 (37.9) 56 (42.1)
 60以上  0   2 (4.4)  6 (6.9)  8  (6.0)
 不明  0   0  5 (5.8)  5  (3.8)
合計  1  45 (33.8) 87 (65.4) 133 (100.0)
* 州の急性農薬疾病傷害調査で使用するための重症度インデックスにより定義
+ アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ミシガン、ニューヨーク、オレゴン、テキサス、ワシントン
§ § 州の急性農薬疾病傷害調査で使用するための重症度インデックスにより定義
 

掲示 2003年7月31日 渡部和男
 
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