新車の臭いは有毒
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自動車が新しいと車内には独特の臭いがある。この臭いに対する感覚は人によって相当異なる。購入後、一夏を越すまでは相当強い臭いがある。人によっては三年後でも臭いを感じるという。この新車の臭いを魅惑的と感じ、あるいはステータスシンボル?と考える人がいる。しかし、一部の人は新車の臭いに強い抵抗感を持っている。
 
揮発性有機化合物による自動車の車内空気汚染は、主に排気ガスや燃料からの蒸発との関係で注目されてきており、自動車内は一般環境よりベンゼンやトルエン濃度などが高いことなどが知られている [1-3]。
 
 
新車の臭いとは?
 
最近、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO;オーストラリア政府系の研究機関)が新しい自動車中の揮発成分を分析し、有毒成分を検出した [4]。全揮発性有機物質の量は、初期にはオーストラリアの国立保健医学研究会議の勧告値を大きく超えていた。その中には、発ガン物質とされているベンゼンや、発ガン物質として推定されているシクロヘキサノンやスチレン、神経毒物として知られているトルエンやキシレン異性体・MIBKなどが検出されている。
 
報道発表によると、新車に乗ることにより、わずか 10 分間だけ運転しただけで病気になった例や、新車で化学物質に過敏な人が「麻薬がまわった」と感じた例が報告されているという [4]。詳しくは報道発表の日本語訳を参照してください。
 
これとは別に、米国の質量分析器やガスクロマトグラフ・液体クロマトグラフなどの供給やサービスを提供しているサイエンテフィック=インストルメント=サービス Scientific Instrument Services 社は、新車中の揮発性有機化合物を分析している [5]。
 
揮発性有機化合物は 100 種類以上が車内で検出された。朝の温度の低い時に検出されたのはトルエンや炭化水素水で、自動車のインテリアからの放出ガスとガソリンや廃棄ガスの成分であると考えられた。このほかシロキサン誘導体が検出されているが、クリーニング用資材および潤滑化合物に関連するものである。
 
日中に温度が上昇すると、朝に検出された化合物の濃度が高くなり、さらにスチレンや多数のベンゼン誘導体や抗酸化剤 BHT が出現してきた。
 
ベンゼン誘導体はガソリンやペンキ、カーペット地に普通に見られるものであり、BHTは皮革や塩化ビニルの手入れ用品に一般的に見られ、スチレンはカーペット生産に用いられている。フェノールは一般的な殺菌剤である。1-メチル-2-ピロリジノンはポリマーの産業用溶剤として用いられる他、石油精製に用いられる。
 
2 か月後に測定した場合、自動車内の揮発性有機化合物は大きく減少した。スチレンやフェノール、1-メチル-2-ピロリジノン、BHTは検出されなくなり、多数のベンゼン誘導体濃度は減少した。しかし、ベンゼンやヘキサナールやオクタナール、ノナナール、その他アルデヒド化合物は依然として検出されている。2ヶ月後でも温度上昇に伴い揮発性有機化合物濃度は増加した。
 
リンカーンコンチネンタルから検出された主な物質は次の通りであった [5]。
 
・ BHT
・ エチルベンゼン
・ ウンデカン
・ [E]-5-オクタデセン
・ オクタナール
・ オクタメチル-シクロテトラシロキサン
・ オクタン
・ キシレン
・ 酢酸エチル
・ 2,6-ジメチルウンデカン
・ 2,6-ジメチルオクタン
・ 2,4-ジメチルヘプタン
・ 1,2-ジメチルベンゼン
・ 1,4-ジメチルベンゼン
・ d-シメン
・ デカメチル-シクロペンタシロキサン
・ デカン
・ 1-テトラデセン
・ テトラデカン
・ [E]-5-テトラデセン
・ [E]-3-テトラデセン
・ デカナール
・ 2,6,11-トリメチルドデカン
・ [E]-2-デセナル
・ ドデカン
・ 2-ドデセナール
・ トランス-2-トリデセナル
・ 1,1,1-トリクロロエタン
・ トリデカン
・ 1,2,3-トリメチルベンゼン
・ トルエン
・ ノナン
・ 1-メチル-2-ピロリジノン
・ ノナナール
・ フェノール
・ ヘキサデカン
・ ヘキサナール
・ ヘキサメチル-シクロトリシロキサン
・ ヘキサン
・ ヘプタン
・ ベンゼン
・ (1-メチルエテニル)ベンゼン
・ 4-メチルー2-ペンタノン
 
以上のことは、自動車内の空気汚染については、排気ガスの影響以外に、インテリアに使用したプラスチックやカーペットからの揮発性有機化合物に対して自動車製造業界や衛生関係機関が注意を払う必要を示している。新車を運転する場合、良く換気をする必要があり、さらに消費者としては新車の臭いが強い自動車をさけた方が良いかもしれない。ただし、臭わない有害物質もあり得ることにも気をつける必要がある。
 
 
参考
 
1. Weisel CP ,Lawryk NJ ,Lioy PJ, Exposure to emissions from gasoline within automobile cabins. Journal of Exposure Analysis & Environmental Epidemiology 2(1):79-96 (1992).
 
2. Fromme H, Oddoy A, Lahrz T, Piloty M, Gruhlke U, Exposition der Bevolkerung gegenuber fluchtigen Luftschadstoffen im Autoinnenraum und in der U-Bahn. Zentralblatt fur Hygiene und Umweltmedizin 200(5-6):505-520 (1998).
 
3. Jo WK, Park KH, Concentrations of volatile organic compounds in the passenger side and the back seat of automobiles. Journal of Exposure Analysis & Environmental Epidemiology 9(3):217-227 (1999).
 
4. CSIRO press release, New car drivers exposed to toxic emissions, Australia's Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation, http://www.csiro.au/index.asp?type=mediarelease&id=newcars, Last Update: 2001.12.19 (2002.1.3 時点). 日本語訳
 
5. Overton SV, Manura, JJ, Identification of volatile organic compounds in a new automobile, Scientific Instrument Services, http://www.sisweb.com/referenc/applnote/app-36-a.htm, Last Update: 1999.12.23 (2001.12.26時点)
 

 
掲示 2002.1.3 渡部和男