子どもと大人のちがい
−子どもは汚染に敏感
 
ホームへ    メール
 
このページはNRDC(1997)の資料を参考にしました(1)。
 
 子どもたちは汚染に敏感であると言われています。子どもたちの環境を考える場合に十分留意しなければなりません。その主な理由は次の通りです。
 
生理的な違い
 
 子どもはたくさんの食品をとります
 子どもの体の表面積は大人より大きい
 
行動のちがい
 
 子どもは口に手や品物を良く入れます
 子どもは地面や床近くで遊びます
 
子どもの身体機能の未熟さ
 
 胎児特有の敏感さ
 乳児や子どもの急速な成長
 化学物質の吸収や排泄が異なります
 子どもは環境汚染物質を保持しやすい
 
子どもは大人より長く生きます
 
子どもには不明なことが多い
 
 
生理的な違い
 
 体重あたり、子どもは成人より多くの空気を呼吸し、多くの水を飲み、多くの食物を消費します。このために子どもは空気や水・食品中の汚染物質を大人より多く取り込みます。乳児は大人より相対的に皮膚表面積が大きく、化学物質の皮膚吸収が増加することがあります。
 
子どもはたくさんの食品をとります。
 
 1〜5才の子どもたちは、成人より体重あたり3〜5倍の食品を食べるといわれています。
 乳児や子どもは、体重あたり成人が飲む水の量の2.5倍以上を飲みます。人工乳のみを飲んでいる乳児は自分の体重の約1/7の水を飲んでいるといわれます。
 
子どもの体の表面積は大人より大きい
 
 新生児の体重は成人男性の体重の約1/20ですが、乳児の体の表面積は成人男性の約1/8以上あります。このため、汚染された水中で泳いだり、入浴したり、ほこりの中を転げ回ることにより化学物質に曝される乳児の全皮膚面積は、体重あたり大人の2.5倍も大きいとされています。
 
 
行動のちがい
 
子どもは口に手や品物を良く入れます
 
 子どもたちの一般的な行動も環境中の毒物被曝を増やします。幼児はよく物を口に入れます。このために土壌や家の中のほこり・品物の表面にある物質を子どもが取り込みやすくなります。
 
子どもは地面や床近くで遊びます
 
 子どもたちは地面でよく遊びます。世界共通の面白い遊びは泥んこ遊びや土いじりです。成人は地面から120〜170センチメートル上の空気を呼吸します。子どもは、地表近くの空気を呼吸するため、床や土、草の中にある化学物質に被曝しやすくなります。鉛や粒状物質のような重い化学物質は地面近くの空気中に多いと考えられています。
 
 また、活動が活発なため、体重当たりの呼吸量は大人より多く、環境中の化学物質に被曝する可能性も増加します
 
 
子どもの身体機能の未熟さ
 
 乳児や子どもは大人と、大きさのみでなく、生化学的・生理学的機能の発達でも差があります。急速な身体的精神的成長が子どもの特徴です。器官のあるものは十分発達していないのために化学物質による障害に弱い可能性があります。子どもは、化学物質を吸収・代謝・排泄しますが、大人とは異なります。
 
胎児特有の敏感さ
 
 胎児は環境毒物に特に敏感です。化学物質は妊娠中に被曝した女性には影響を与えなくとも、胎児に影響することがあります。このことは睡眠薬として使われたサリドマイドによる先天性障害の事例でも明らかです
 
乳児や子どもの急速な成長
 
 生後1〜6ヶ月の間に乳児の体重は急速に増え、体重が倍になり、1才の誕生日には誕生時の体重の3倍になります。中枢神経系(脳)や免疫系(胸腺)の成長は生後6ヶ月頃に最も急速にみます。6才の子どもの体重は成人の30%にすぎませんが、子どもの胸腺はほぼ大人と同じ大きさで、脳の大きさは大人の約80%になります。
 
化学物質の吸収や排泄が異なります
 
 乳児と子どもの化学物質の吸収や代謝・排泄の経路は成人とは異なります。化学物質の吸収率が高く、排泄が少ないために、子どもたちは成人より化学物質に敏感なことやその逆のこともあります。
 
 子どもは取り込んだ鉛の約50%を吸収しますが、成人はわずか10〜15%しか吸収しません。腎臓は体からほとんどの化学物質を排泄する主な器官ですが、誕生時、乳児の腎臓の濾過率は成人のごく一部でしかなく、1才になって大人の濾過率になります。
 
子どもは環境汚染物質を保持しやすい
 
 乳児と子どもはある種の環境汚染物質を多量に体内に保ち続けます。
 
 多環式芳香族炭化水素によるDNA障害について、ポーランドの新生児とその母親について、研究者が調べました。子宮内で多環式芳香族炭化水素に被曝した新生児では、胎児の被曝量は母親の1/10と推定されましたが、DNA障害は母親のレベルに匹敵していました。同様に、幼い子ども(2才以下)の尿中の多環式芳香族炭化水素の被曝指標のレベルは母親より高いことが知られています。
 
 アメリカのセントローレンス川の汚染源下流の居留地に住むモホーク族のPCBレベルを調べました。川で捕まえた魚を食べた女性の母乳と尿中にPCBが検出されました。母乳を飲んでいた乳児の尿中のPCB濃度は、母親の尿中の濃度より10倍も高いことが報告されています。
 
 
子どもは大人より長く生きます
 
 子どもは大人より将来長く生きていきます。そのため、人生の早い時期に化学物質によって引き金を引かれると、慢性病が発病するまでに十分な時間があります。化学物質によって引き起こされる多くの病気は発病まで数十年が必要です。発癌物質や毒物は、子ども時代初期の被曝は後の時期よりも影響を与えやすいと考えられています。このことは農薬などで証明されています。
 
 
子どもには不明なことが多い
 
 子どもと乳児に対する被曝の影響についてはほとんど知られていません。弱い決定的な時期はあるのだろうか?子ども特有の感受性とは何だろうか?あらゆる環境中の害に対する子どもと大人の差や、毒物の種類による差(たとえば、神経毒は発達中の神経系により大きな影響を与える可能性)はどのようなものでしょうか?
 
 これらのことは今後研究する必要があります。
 
 
子どもの発達と学習・行動への影響
 
 以上から、胎児や子どもが環境汚染の影響に敏感な反応を示すことが分かります。胎児や子どもは、まだ発達中の脳を持ち、異物が脳の中に入るのを妨げる血液脳関門が発達していないために、環境汚染物質の発達や学習・行動への影響が懸念されています。
 
 以下の異常には遺伝的原因も考えられますが、環境汚染による障害は避けることができるものです。避けることができる可能性があるのなら、積極的にこれらの原因を排除すべきです
 
 
毒物の健康への影響(文献2より)
 
(重)金属
 
●カドミウム
 
 学習障害(人間・動物)
 IQ低下
 運動機能不全
 多動性
 寡動性
 
●鉛(人間・動物)
 
 学習障害
 IQ低下
 注意欠陥
 衝動性
 暴力
 多動性
 攻撃性
 
●マンガン(人間・動物)
 
 脳障害
 運動機能不全
 衝動行動
 記憶障害
 多動性
 学習障害
 注意欠陥
 
●水銀(人間・動物)
 
 視覚障害
 学習障害
 注意欠陥
 運動機能不全
 記憶障害
 小さな脳の大きさ
 脳細胞のゆがみ
 精神遅滞
 
 
溶剤
 
●エタノール(アルコール)(人間と動物)
 
 学習障害
 注意欠陥
 記憶障害
 行動異常
 摂食および睡眠障害
 軽い脳重量
 種々の成長と発達の遅れを伴う顔頭部と心血管奇形
 精神遅滞
 
●スチレン(動物)
 
 自発行動減少
 逃避行動減少
 食餌蛋白減少との組み合わせで:低脳重量・多動性
 
●トルエン(人間・動物)
 
 学習障害
 言語障害
 運動機能不全
 顔頭部奇形
 
●トリクロロエチレン(動物)
 
 探索行動増加
 多動性
 
●キシレン(動物)
 
 運動機能不全
 学習障害
 記憶障害
 脳重量低下
 
農薬・有機塩素
 
●DDT(動物)
 
 多動性
 混合物(人間)
 持久力低下
 記憶低下
 良く知っている対照を描く能力
 
●有機燐、DFPやクロルピリホス・ダイアジノンを含む(動物)
 
 発達遅延
 多動性
 行動異常
 運動機能不全
 
●ピレスロイド(バイオアレスリン・デルタメスリン・サイパーメスリンを含む;動物)
 
 多動性
 
その他
 
●ニコチン(人間と動物)
 
 多動性
 学習障害
 認識機能の発達の遅れ
 
●ダイオキシン(人間・動物)
 
 学習障害
 
PCB(人間・動物)
 
 学習障害
 注意欠陥
 記憶障害
 多動性
 精神運動機能不全
 
フッ素
 
 多動性(動物)
 IQ低下(人間;疫学研究))
 
 
文献
 
1. Mott, L. et al. "Our Children At RiskThe 5 Worst Environmental Threats To Their Health", Natural Resources Defense Council, Inc., 1997.
 
2. Schettler, T.Jill Stein, J., Reich, F., Valenti, M. and Wallinga, D., In Harm’s Way: Toxic Threats Child Development, Greater Boston Physicians for Social Responsibility (GBPSR), 2000.