多剤化学物質過敏症(MCS)
−−環境中の化学物質被ばくにより
誘発された病気
 
 
Multiple Chemical Sensitivity (MCS) -- A Disorder Triggered by Exposures to Chemicals in the Environment
http://www.crisny.org/not-for-profit/nycap/mcs.htm#   
この論文はNew York Coalition for Alternatives to Pesticides (NYCAP)の許
可を得て、渡部K. Watanabeが翻訳したものです。法的制度などには日本
との違いがありますが、考え方としては役に立つでしょう。又、代替療法
の評価に関する私の意見は保留します。2000年12月16日
 
 
 

多剤化学物質過敏症とは何か?
何がMCSを引き起こしうるか?
治療
医学界でのMCS論争
MCSは現在障害として認識されている
職場でMCSの人に便宜をはかる
 
合成化学物質は私たちの周りの至る所にある。それらは、私たちが使う製品や、着る衣服、仕事で呼吸する空気中にある。環境のいたるところに化学物質があるため、被ばくを逃れるのは不可能である。それで、多くの人が周囲の化学物質に敏感になるのは驚くことではない。事実、人口の15%が一般的な家庭用・商業用製品に敏感になったと推定されている。
 
一部の人にとって、過敏なことは余り深刻な問題ではない。一つ以上の化学物質に対して軽いアレルギーと思われるものがあるだろう。他の人はずっと深刻に影響を受ける。その人々は常に疲れを感じ、精神的混乱や呼吸障害・筋肉の痛み・免疫系の弱まりを患っている。このような人は、多剤化学物質過敏症Multiple Chemical Sensitivity (MCS)として知られている状態を患っている。
 
多剤化学物質過敏症とは何か?
 
MCSは環境中の化学物質被ばくによって誘発された病気である。MCSの人は、大部分の人が耐えることができるレベルよりはるかに低い濃度の化学物質被ばくによる症状がある。被ばくは、空気や食物・水から、また皮膚接触を通じるだろう。一部の人の反応は遅れるだろうが、症状は被ばくとともに起こる傾向があるため、アレルギーのように見えるだろう。MCSが悪化するにつれ、反応はさらにひどく、ますます慢性的に、しばしばさらに多くの身体機能に影響するようになる。
 
MCSの初期段階で、最初の健康影響を引き起こした物質またはいくつかの物質に対するくり返し被ばくが、反応を引き起こす。ある期間後、症状を引き起こすに必要な、このあるいは関連する化学物質に対する被ばくは、よりいっそう少なくなる。体が屈するにつれて、最初の被ばくとは無関係なものを含む、ますます多くの化学物質が反応を誘発することが分かる。
 
MCSはこの障害を持つ人の全般的な健康と幸福感に影響する。神経系と消化を含む多くの身体機能をいつも弱める。MCSに影響を受けているそれぞれの個人は、独特な健康問題を持っている。化学物質に過敏な人は、他の既存の健康状態もあるだろう。多くの影響を受けた人は、化学物質被ばくに関連する多くの症状を経験する。MCSの症状には次のものがある。
 
・ 頭痛
・ インフルエンザ様症状
・ 喘息あるいは呼吸器病
・ めまい
・ 臭いに対する過敏性の増加
・ 精神的混乱
・ 鼓腸あるいは他の腸の障害
・ 疲労と抑うつ
・ 短期および長期記憶低下
・ 慢性疲労
 
MCSの人は次のような他の多くの健康状態を報告する。
 
・ 持続性の皮膚発疹と痛み
・ 炎症
・ 筋肉の弱まりと関節痛
・ 食物アレルギー
・ しびれとひりひり感
・ 視覚障害
・ 耳・鼻・のどの障害
・ 自己免疫疾患
・ 心臓血管の不規則
・ 発作障害
・ 尿生殖障害
・ 怒りやすさ
・ 持続性の感染、特に酵母
・ 行動障害
・ 子供で学習障害
 
MCSは1つ以上の有毒物質に対する1回の大量被ばく、あるいは少量に対するくり返し被ばくにより生じる。一方、一部の人は、仕事で有毒化学物質の漏出に続いて、または直接農薬を散布された後に化学物質に過敏になるだろう。一方、その中で現代の生活様式で一般的である大量の化学物質を呼吸しながら、換気の悪い建物に毎週40時間を過ごすことにより、一部の人は発病するだろう。
 
多くの場合、MCSは家や仕事で見られる幅広い化学物質によって引き起こされる。MCSと診断された多くの人は次の人であることを、研究が示している。
 
・ 産業労働者
・ 気密な建物内の教師・生徒・事務・医療労働者
・ 化学事故犠牲者
・ 有毒廃棄物処分場近くに住む人
・ 空気や水が高度に汚染されている人
・ 消費製品や食品・医薬品中の様々な化学物質に被ばくした人
・ 湾岸戦争帰還兵
 
MCSの全ての人ががこれらの範疇のどれにも当てはまるわけではない。例えば、一部の人は、ノミまたはゴキブリスプレーにより、または家の中の(尿素ホルムアルデヒド)発泡断熱材による有毒な被ばくを経験しているだろう。他のMCSの人は、化学物質に対する異常な被ばくがあったという、どのような状況も突きとめることができない。
 
MCSの人々は数年間あるいは一生の間、部分的にあるいは完全に無力となる。この身体条件は生活のあらゆる側面に影響する。家で生活様式の劇的変化をしなければならない。結婚やその他の関係は、この無力な条件に対処するストレスから終わるだろう。従業員の1人として、毎日病気がより重くなり、より消耗し、家に帰るだけのために、仕事に自分を引きずって行くのだろう。代わりに、余儀なく仕事を離れ、収入の破滅的な損失と結果としての貧困に対処しなければならないだろう。しかし、最も重度の症例でさえ、一部の人では少なくとも部分的に最後には回復する。
 
 
何がMCSを起こすのか?
 
誰も何がMCSを起こすかを確かには分からない。しかし、非産業職場で、多くの一般的な製品と工程がMCS発症に関与すると突きとめられることが多い。
 
・ 新しいカーペットのガス
・ ガスストーブ
・ 洗濯用品
・ 家庭のペンキ
・ 農薬と木材防腐剤
・ 自動車排気ガス
・ 新しい建材と家具
・ 絵画や写真・印刷・その他で使う有毒化学物質
・ 新しい衣服や本・その他の製品中のホルムアルデヒド
・ 感圧複写紙やインキ・コピー機・レーザープリンターのトナー
・ 受動的喫煙
 
私たちのシステムが安全に処理できない有毒化学物質のレベルに襲われた場合、私たちの一生のどこかの時点で、多くの人が病気になるだろう。一部の人にとって、結末は癌や生殖障害であろう。他の人はこれらの化学物質に対して過敏になり、あるいはその他の慢性疾患を発症するだろうが、一部の人は何らの気づかれる健康影響を経験しないだろう。高レベル被ばくが起こってさえ、一般に、ごく少ない割合の人が化学物質に過敏になる。毒物の傷害に対する閾値は、感受性が個人間で非常に多様なので、誰に対しても同じではない。
 
消費製品中の大部分の化学物質は、癌や生殖障害、長期間低レベル被ばくの影響のような、健康影響は検査されずにいる。これらの物質が女性や子供・すでに病気のある人にどのように影響するかもほとんど研究されていない。
 
一度、人の防御がうち破られて、過敏になると、幅広い様々な一般的化学物質被ばくが反応を誘発する。問題を引き起こす製品や化学物質は、影響を受けた人々の間で非常に多様である。これには最初にMCSを引き起こした同一の化学物質と、次のものがある。
 
・ 香水と香料
・ ドライクリーニング溶剤
・ 洗剤やその他のクリーナー
・ 麻酔
・ 処方薬
・ 食品・飲料・薬中の人工色素と香料・保存料
・ 治療
 
MCSは医者にとって定義し診断することが困難である。症候群として互いに一致する症状の単一の組合わせ、あるいはMCSの単一の診断検査はない。その代わり、医者は環境と産業被ばくを含む患者の完全な経歴をとり、この問題のある状態を診断する探偵としての役を努めるべきである。
 
MCSの発症後、個人の健康は一般に悪化し続ける。化学物質に過敏な状態が明らかになってのみ、改善し始める。多くの治療は一部の患者の基準的な健康状態を改善するのに役立つだろうが、現時点で、避けることを除いて単一の「治療法」はない。
 
反応を誘発する化学物質を避けることは、MCS治療の本質的な部分である。厳格に被ばくを避けることができるMCSの人は、1年以上の期間に渡って健康の劇的改善を経験することが多い。しかし、大量の新しい検査されていない合成化学物質はこのことを極度に困難にしている。
 
MCSに影響されている人は、家庭内に化学物質放出から比較的免れる「聖域」を作ることが多く、そこで可能な限り多くの時間を過ごす。事故的な不可避的被ばくの深刻な衝撃のため、MCS患者は可能な限り家で多くの時間を過ごすことが多く、社会に参加しないことを選ばなければならないことが多い。結果として、活発な仕事や社会生活ができないことによる、強い孤立と自尊心の喪失と抑うつを経験するだろう。このため支援的なカウンセリングは非常に役立つ治療であることが多い。
 
 
医学界でのMCS論争
 
多くの伝統的アレルギー専門医とその他の医者がMCS診断の存在を度外視している。MCSが存在するという科学的証拠がまだないと主張する。MCSを生じるメカニズムに関する研究努力は、不適切であり、不幸なことに化学物質の急増から利益を得ている産業によって資金を供給され支援されていることが多い。一般に医者は、MCSの様な状態を理解し深く研究することを訓練されていない。事実、相当多くの医者は、産業医学や環境医学、または毒物学と栄養学の訓練をほとんど受けていない(4時間以下)。
 
そのため、多くの影響を受けた人が多数の専門家と相談するのは驚くことではない。MCSの人々は、深刻な変性疾患であると診断されることさえ多い。困惑した医者はMCSの患者に、彼らの病気は完全に心身症である(頭の中にある)と伝える。医者からの支援と理解がないことと、症状に対する説明がないことから生じるストレスは、MCSの人々に高レベルの不安と苦しみを生み出す傾向がある。
 
現時点で、通常の医学は、不快な製品を避けることを除いて、MCSのためにごくわずかな医療しか提供しない。残念ながら、医薬品や通常の医療はほとんどまたは全く苦痛の軽減を提供せず、新しい一組の症状さえ刺激するだろう。抗うつ剤治療は根底にある状態を覆い隠し、他の深刻な問題も起こすだろう。
 
MCSの減少を明らかに認識している医者には、一部の産業および環境保健専門家と、この新しい臨床生態学分野の専門である医学博士がいる。広い範囲の新しいあるいは「代替」治療を、様々な成功とともにMCS患者が使っている。一部のこれらの治療は事実上依然として実験的であるが、MCSの一部の人に役立っているように見える。これらの治療には次の組み合わせがある。
 
・ 栄養プログラム
・ 免疫療法ワクチン
・ 食品アレルギー検査
・ 運動と発汗を通じた解毒系統化
・ 重金属に対するキレート
・ 多数の非西洋治療法
 
診断には、蓄積した農薬の全身負荷のような、通常の医学に慣例ではない、通常的でない検査を含んでいる。
 
多くの労働者がこれらの治療で改善を示しているが、他の人にはない。残念ながら、関与するほとんどの実務家は代替法を支持しないのでこれらの治療は保健によって通常返済されない。しかし、一部の障害となった労働者は、勝訴した労働者補償Workers' Compensationの訴訟によってこのような治療に返済を勝ち取っている。
 
 
MCSは現在不能(障害)として認識されている
 
米家屋都市開発省Housing and Urban Development (HUD)と社会保障機関Social SECURITY Administration (SSA)は、MCSを障害状態と認識している。MCSの人は労働者補償の訴訟に勝利している。ペンシルバニア州での最近の人権訴訟は、助成金を与えられた家屋の中で安全な生活空間に対する、影響を受けた人の権利を確立した。メリーランド州立法府とニュージャージー州保健部の両者は、公的にMCSの研究を任命した。ニュージャージー州の研究はMCSに関連する医学的・法的な卓越した概観を提供している。
 
ちょうど車椅子での接近に物理的障壁があるように、化学物質使用と放出はMCSを持つ人の入場を妨げることがある。障害のある米人法Americans with Disabilities Act (AD)と呼ばれる新しい連邦法は、多くの種類の差別から障害のある人を守っている。この法律は障害のある人に対する合理的な接近を提供している。合理的な適応は、MCSを持った人が、仕事や公共施設・その他必要な状況に接近するのを楽しむことを可能にする。
 
個人が仕事でMCSを発病しようと、雇用前にすでに過敏であろうと、安全な職場に対する権利は保障されるべきである。
 
労働者保証または障害に対する権利のある傷ついた労働者にとって、MCSを診断でき、患者の法的な主張を支援もする医者を見つけることが必要である。そのような医者の発見は、そのような主張の勝利と、仕事や貸家で合理的な受け入れを得るために重要である。
 
もしあなたが影響を受け、あなたの雇用主が差別していると考えるなら、
 
・ あなたの状態の診断を得なさい。
・ 組合のある職場で働いているなら、苦情の提出あるいは法的措置をとるかに付いて組合と相談しなさい。
・ 法的弁護人を捜しなさい(組合は弁護士を提供、あるいは法的な相談所あるいは適切な紹介によって援助を探すだろう)。
・ 支援グループに加わりなさい。
 
それ以上の援助のためには、あなたの地域の労働者保健手段グループまたは支援グループと連絡しなさい。これらの訴訟は勝利が難しく、解決に長期を要することがある。
 
同様に、あなたが仕事で傷つけられたなら、労働者補償システムで化学物質被ばく訴訟の経験のある、または個人の障害を主張した経験のある弁護士を捜しなさい。このような訴訟で、あなたは弁護士に公然と払う必要はないだろう。代わりにあなたの弁護士は、あなたが勝利したなら保険金支払いから1%を受け取る。あなたの訴訟に負けても何も必要がない。
 
 
職場にMCSの人を収容する
 
MCSの個人を仕事に入れるいくつかの示唆的な方法がある。全ての場合に有効ではない。また、これらの方法は、他の労働者を来るべき同じ様な障害から防ぐために役立つ有毒物質の全ての削減は一般的な環境の健康に貢献するだろう。
 
合理的な収容
 
・ 窓をあける
・ タバコの煙や農薬・毒物・香料の入った清掃製品・脱臭剤・排気ガスのような、汚染物質のない換気の良い空間
・ 最も毒性とアレルゲン性の少ない建物の家具と日常品の選択
・ 建物の中と周囲で散布や揮発性農薬を用いない、「最も毒性のない」総合有害生物管理(IPM)
・ ペンキ塗りや農薬散布・改修の前に、交代の労働準備のために事前通知
・ 汚名や悩ませることを避けるため、障害の性質について仕事の同僚・経営者・雇用主の教育
・ 同僚が少ない時、換気が最大に働いている時、あるいは周囲が最も問題がない場所で影響を受けている人々が働けるように、スケジュールの選択枝
・家で働く選択枝を許す
 
MCSは予防できる障害だろう
 
MCSを患っている人は、室内空気の質の改善のためと、毒性の少ない家事と建築物維持実務の採用のための原動力になってきた。良い室内空気質と毒性の少ない材料の入れ替えは、モラルと生産性を増進する。健康的な職場も常習的欠勤と傷害を減らす。
 
安全な作業環境は常に雇用主にとって立派な投資である。そのため、室内空気問題に関する苦情は、雇用主や労働組合・規制当局・保健提供者によって、深刻に受け取られなければならない。

NYCAP New York Coalition for Alternatives to Pesticides 
 
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phone 518-426-8246, fax 518-426-3052, nycap@crisny.org
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     渡部和男 メール