*のついた語句は小さな用語集を参考にして下さい
西ナイルウイルス(ウェストナイルウイルス)とその防除
厚生労働省が西ナイル対策としてガイドラインを作成したというニュースが報道された(読売 2003.6.3)。この中で、患者発生時やカラスから病原が検出された場合には、10キロ四方に空中散布を含む、農薬散布を実施するとされている。西ナイルウイルスが侵入する前に、ウイルスを媒介する蚊対策のために、ガイドラインを作成するのは重要で、かつ価値のあることであるが、大きな問題があった。
このガイドラインに対して、健康擁護団体や自然保護団体・農薬に懸念を持っている団体が強い懸念を示し、厚生労働省に対して見直しを求める要望書を提出している。さらに、2003年 6月12日の参議院厚生労働委員会でも取り上げられ、厚生労働省健康局長は、ガイドラインとはしないで、研究班から提出された文書として扱うという答弁をしている。
しかし、各自治体に「研究班から提出された文書」が配布された場合、ガイドラインに記載されたような、盲目的な殺虫剤使用がされかねない。このため、西ナイルウイルス及びその対策について、先に経験している米国の状況を中心として触れる。
西ナイルウイルス
西ナイルウイルスは分類学上フラボウイルス属に属し、1937年にアフリカのウンガンダの西ナイル地区で最初に発見されたRNAウイルスである。日本脳炎やセントルイス脳炎などに近縁であるとされている。
このウイルスはアフリカや中東・西アジア・東欧などに広く見られ、その後主な流行はイスラエル(1951-1954、1957年)年や南アフリカ(1974年)などで大きな流行が起こった。最近ではルーマニア(1996年)やモロッコ(1996年)、チュニジア(1997年)、イタリア(1998年)で発生している。1999年にはロシア及び米国・イスラエルで、2000年にはイスラエル及びフランス・米国で発生している。
最近の西ナイルウイルスによる流行は人間とウマでの発生が多いこと、及び重症の患者が多く、鳥類の死亡が多いことが特徴となっている (Petersenn and Roehrig 2001)。
このウイルスは東西の両半球で蚊と鳥類の地方病的なサイクルで維持されていると、考えられている。ウイルスの増加は鳥類→蚊→鳥類というサイクルの中で起こると考えられている。このサイクルには、天候や気候・鳥や蚊の捕食者・宿主の免疫状態などが影響するといわれる。そのため、鳥類と人間の両方を刺す蚊が人間への伝染に関与すると考えられる。
CDCの西ナイルウイルス対策
米国は1999年の経験から、同年防疫センター CDCと米国農務省はウイルス学者や疫学者・検査技師・駆除専門家・野性生物訳者などが1999年11月に会議を行い、西ナイルウイルスが米国に侵入した意味を評価し、包括的な対応計画を作った。さらに、2000年末にも、同様な会議を開き、
ガイドラインを改訂した(ガイドラインの概要は資料1を参考)。
この CDCガイドラインによると、蚊の防除対策は駆除対策は表1のように段階を追って実施される(資料2参考)。
CDCによると、西ナイルウイルスを含むアルボウイルス病の予防と駆除は、包括的な総合蚊駆除計画によって最も有効に行うことができる。このためには西ナイルウイルス流行を検出するために、適切な監視を行うことが必要である。CDCの指針に掲載されている方法を簡単に説明する。
1.監視:標的となる害虫と媒介生物の種類・季節毎に幼虫の生息地を突き止め地図にする・駆除の必要性の証明などが第1に必要となる。
・幼虫の監視
・成虫の監視
・ウイルスの監視
2.発生源対策:多くの場所で長期的に蚊を駆除するためには、最も有効で経済的な方法。発生源を少なくするとは、そこで蚊が繁殖するのを防ぐために、蚊の幼虫の生息地を変化させるかなくすことである。古タイヤをなくしたり、排水溝や小鳥の水浴び場の水を換えたりすることなどで達成できる。このことによって生息地を減らし、殺虫剤をくり返し散布する必要もなくなる。
3.化学物質による駆除:化学物質による駆除は発生源対策が失敗した場合や実行不可能な場合に行われる。米国の場合、農薬使用業者は免許(許可)が必要であるが、日本では最近の農薬取締法の修正で、農薬使用業者の定義がなくなり、指導監督もおぼつかなくなっている。この化学物質対策は次のように分けられる
a.蚊の幼虫対策:幼虫を殺す。発生源対策より永続的でないが、蚊の成虫を駆除するよりも効果的で、標的を特異的に狙える。成虫が飛び立つ前に殺すので、西ナイルウイルスの広がりを防ぐことができる。また、使用面積は成虫を殺すより少なくて済む。薬剤にはBT剤のような生物製剤からIGR、有機リンまで存在する。
b.蚊の成虫対策:地上散布又は空中散布により蚊の成虫を殺す。通常最も効果が上がらない方法である(usually the least efficient mosquito control technique;p. 30)。これは最後の手段とされる。蚊は夜行性であることが多く、有効性を悪化させる原因となる。使用薬剤は有機リンやピレスロイドなど。
4.蚊の抵抗性獲得対策
厚生労働省は西ナイルウイルス対策のために、除放剤としてDDVP製剤を使うとしている。DDVP製剤には発癌性や変異原性などが懸念される以外に、蚊の有機リンに対する抵抗性を獲得させる可能性がある。米国CDCでは蚊の抵抗性獲得を防ぐために次のような指針を出している。
「1.節度を持った管理−次のことによって抵抗性発生を防ぐ
a.遺伝的選択を避けるために、ラベルの最少量より少なくない量を使うこと
b.散布を頻繁にしないこと
c.環境残留が短い化学物質を使うこと
d.徐放剤を避けること
e.成虫と未熟な段階の両方を駆除するために、同じ種類の使用を避けること
f.局所的に使うこと−−現在、大部分の地区はホットスポットのみを処理している。地域規模の処理は、公衆衛生の警戒警報発令期間か、爆発的発生の間のみに使われている
g.特定の世代や個体群の一部、又は処理しない地域を残す。.
h.殺虫剤使用に先立って、高い蚊の密度又は行動の閾値を確立すること
i.バイオレイショナル殺幼虫剤及びIGRを毎年、又は長期間で変えること」
ここではDDVPのような徐放剤を避けることを明瞭に述べている。
又、次のことも注意する必要がある。
・ 散布を頻繁にしないこと
・ 事前にどの位の蚊がいた場合、駆除行動に移るかという「閾値」の事前設定を求める。
・ 農薬の局所的使用を求めている(重大な事態を除く)
環境グループの批判と勧告
米国CDCの発表している指針は、蚊の発生源対策に重点を置いているが、米国の環境グループ、特に、毒物アクションセンター及びメーン州環境政策研究所の報告「過剰殺戮:西ナイルウイルス農薬散布が良いことより多くの害を起こす理由」は、安易な農薬使用に警鐘を鳴らしている。
その主な理由は次の通りである。
1.薬剤の危険性
・ピレスロイドは、皮膚刺激や異常感覚・反射亢進・ふるえ・過剰興奮などを起こす。又、エストロゲンの模倣をし、ホルモンかく乱作用を示す。小児脳腫瘍や神経障害・自己免疫疾患・行動障害・甲状腺障害との関連が指摘されている。
・メトプレンは、幼虫を成長を阻害することによって殺すために使われるIGRである。人間にほとんど無毒であると考えられている。しかし、汽水域の無脊椎動物には非常に高い毒性があり、エビやカニの幼生の変態を阻害する。1999年の西ナイルウイルス対策の蚊駆除農薬使用後、米国のロングアイランド海峡では、ロブスターが激減した。この原因をメトプレンと考えた漁師が製造業者を告訴している。カエルでは、レチノイドに影響を与え、カエルで先天異常を起こすという。レチノイドは人間でも重要な役割を果たしている。、
・生物製剤はBT剤などである。安全な製剤と考えられているが、眼や皮膚への刺激がある。無分別に使用すると、害虫が抵抗性を発達させる可能性がある。
・マラチオンは有機リン剤であり、変異原性で、発癌物質の可能性が示され、視覚消失や生殖障害・学習障害・免疫系かく乱・その他の悪健康影響と結びつけられ、非標的生物に害を与える。
2.有効性
・かごに入れた蚊で行う実験的駆除効率の評価はあてにならない。蚊はかくれたり移動したりする。
・トラックからの散布で蚊に直接当たるのは0.1%以上ではない。
・超微量散布で、蚊に当たるのは、0.0001%でしかない。
・蚊の高い駆除率が報告されているが、専門家は散布後に30%程度しか減少しないという。
3.西ナイルウイルス流行は致死的な流行ではない
・1999年夏、ニューヨーク市の700万人中、62人(0.0009%以下)が西ナイルウイルスで病気になり、7人が死亡した(100万分の1)。死亡した 7人は高齢者で、7人のうち、1人はHIVで、3人は癌のために免疫抑制薬を使っていた。ニューヨーク市で2,000人以上が1999年にインフルエンザで死亡している。
・1999年発生の中心地、クイーンズ北部住人の血液サンプルを分析した、ニューヨーク市保健部調査は、677人中19人がウイルス検査陽性であった。3 平方マイル内に済む46.000人中1.2-4.1%(533-1,903人)が感染し、感染者中4人に非特異的な痛みや熱があった。
・ルーマニアやアフリカでの流行でも死亡者は非常に少ない。
安全で有効な駆除法
・大量の農薬散布は、住民に安全であるという錯覚を起こさせ、個人防御を含む対策を放棄させる。
・職員が各戸を回り、蚊の発生源対策をアドバイスするのは有効である。
共同体レベルの対策
・一般人の健康への脅威ではなく、迷惑であるという理由での蚊個体群駆除のために行われる農薬散布を止めること。
・蚊の成虫を殺す農薬は使うな
・未熟な蚊の駆除に焦点を合わる
・池や他の水に蚊を食べる魚をいれ、魚などが生き残れるように水路をきれいにする。成虫の機械的駆除もできる。
・自治体レベルで、市民が自分の家の近くにある水たまりを報告する制度を作る。
・蚊が媒介する病気が発生した場所を正確にするためのモニタリングシステムを設ける。
・全ての蚊駆除対策の有効性を常に評価する。
・人々が家で蚊にさらされるのを最小限にし、繁殖場をなくすためにできることを、一般人が確実に分かるようにする。
昆虫忌避剤
・ディートは使うな
・バイトブロッカーは有効で効果があり、主に植物由来の成分からなる。
・シトロネラは有効であるが、効果が弱い。
・エーボンスキンソーソフトは効果が弱い。
・超音波電気撃退器は効果がない。
米国の自治体の対応
米国の自治体ではパニックに陥って強力な薬剤散布をしていた都市があった。しかし、自治体の対応は、いきなり有機リン農薬を環境中に広範にまき散らすのではなく、オハイオ州シェーカーハイツのように、たまり水をなくすこと、生物製剤の準備をしているところがあった(NewsNet5 2002.3.10)。
コネチカット州議員のジョージ=ガンターは、化学農薬使用の一時中止を求めている。その理由は、化学農薬散布とロングアイランド海峡のロブスターの死滅とが関連すると考えられるためである。また、コネチカットの大部分の自治体及び州は西ナイル駆除のために、主に生物製剤(殺幼虫剤)を用いているという(Porter, 2003)。ペンシルバニア州でも細菌製剤などの殺幼虫剤を用いるようである(Hook 2003)。
2002年に西ナイルウイルス患者が発生し、テキサス州ダラスでは大規模な殺虫剤散布を実施したが、蚊駆除に使う化学物質に対する懸念のため、今年は患者が出てもすぐ散布を実施しない。西ナイルウイルスが鳥や蚊・ウマで確認された場合、住民の家周囲の蚊が繁殖するたまり水を取り除き、昆虫忌避剤を使い、夜間外出をする場合良く体を覆うことを、市は住民に要請する。又、幼虫駆除剤として細菌製剤などを使う方針である。ダラス市は化学物質に過敏な人が治療に訪れる病院がある都市としても有名であるが、昨年の散布に今も苦しんでいる人がいるという(Jacobson 2003)。
日本の場合
日本の各地自治体は、西ナイルウイルス対策ではなく、迷惑害虫対策として町内会や自治会に、道路の側溝などの蚊、又はユスリカ駆除のために有毒な農薬を配布している。本来、蚊の駆除は発生源対策が重要なのであって、農薬使用は一時的に蚊個体群を減少するだけで、長期的な効果はない。更には、有無をいわせず農薬を個人の庭にまで散布するような町内会(自治体)もあった。
近くで農薬散布をされると、体に重度の影響・被害を受ける人々がいる。このような人を守るためには、農薬使用を限定して行わなければならない。又、有機リン剤は子供や胎児などの健全な成長に悪影響を与えることも知られている。
町内会や自治会に農薬散布の下請けをさせた場合、西ナイルウイルスの有無も確認せずに、半強制的に、化学物質弱者の居住空間に安易に散布を実施する恐れがある。又、駆除業者に委託する場合も同様である。
このため、西ナイルウイルス伝播の抑制のためには、ウイルスレベルの監視が必要で、どのレベルの時にどのような対策をとるかあらかじめ決定しておく必要がある。その場合には、安易な農薬散布ではなく、総合防除の採用が必要である。
まず、蚊駆除の担当部局は、患者や環境中で西ナイルウイルスが検出されてから、薬剤で蚊の駆除を開始するのではなく、あらかじめ蚊の密度を低下させる努力、即ち、繁殖地となる水たまりや水のたまる容器などが放置されていないようにすることから、雨樋や排水溝の清掃などの常識的手段を採用することから、ウイルスの上陸に先手を打って対応する必要がある。高価な薬剤を用いなくても、貯水槽に数匹の金魚を入れても十分効果があり、安全である。
また、いきなり有機リンのような強力な毒物を使うのではなく、周囲の飛散が少なくて住む蚊駆除用のバチルス剤などを準備する必要があり、関連機関は速やかに生物製剤の開発に取り組み、促す必要がある。
参考
Centers for Disease Control and Prevention, Epidemic/Epizootic West Nile Virus in the United States: Revised Guidelines for Surveillance, Prevention, and Control (2001).
http://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/westnile/resources/wnv-guidelines-apr-2001.pdf
Hook J, State begins trapping adult mosquitoes to stifle West Nile, Public Opinion, 2003.6.11.
http://www.publicopiniononline.com/news/stories/20030611/localnews/461961.html
Jabobson S, Dallas relying less on mosquito spraying. Some experts dispute health concerns cited in control policy. The Dallas Morning News 2003.6.11.
http://www.dallasnews.com/sharedcontent/dallas/healthscience/stories/061103dnmetspraying.a04c.html
NewsNet5, It may be a dangerous summer in northeast Ohio. 2002.3.10.
Petersen LR, John T. Roehrig JT, West Nile Virus: A Reemerging Global Pathogen, Emerging Infectious Diseases 7(4)611-614 (2001).
http://www.cdc.gov/ncidod/eid/vol7no4/petersen.htm#Figure%202
Porter L, Senator wants end to spraying for West Nile, The Advocate 2003.6.6
http://www.stamfordadvocate.com/news/local/scn-sa-westnile3jun06,0,2204259.story?coll=stam-news-local-headlines
Sugg, III WC, Wilson ML, Overkill: Why Pesticide Spraying for West Nile Virus May Cause More Harm Than Good, A Report by Toxics Action Center and Maine Environmental Policy Institute, Toxics Action Center (2001).
参考資料1
防疫センター
Centers for Disease Control and Prevention
米国における人及び動物の流行性西ナイルウイルス:監視及び予防・駆除のための改訂指針
Epidemic/Epizootic West Nile Virus in the United States: Revised Guidelines for Surveillance, Prevention, and Control
2001年1月31日から2月4日、ノースカロリナ州チャーロットで開催された研究会より
From a Workshop Held in Charlotte, North Carolina
January 31 - February 4, 2001
米国厚生省
公衆衛生サービス
防疫センター
国立感染症センター
病原媒介生物感染病部
コロラド州フォートコリンズ
2001年 4月
U.S. Department of Health and Human Services
Public Health Service
Centers for Disease Control and Prevention
National Center for Infectious Diseases
Division of Vector-Borne Infectious Diseases
Fort Collins, Colorado
概要
1999年晩夏に、国内で最初に手に入った西ナイル(WN)脳炎の人間症例が米国で文書化された。1999-2000年冬の間にウイルスに感染し越冬した蚊の発見は、次の春の間にウイルスの活動が再び起こることを予想させ、ニューヨーク市及び周囲の地域でシーズン初期の媒介生物駆除及び病気の監視を開始させた。これらの監視努力は、人間の病気発生を予測することができる歩哨として、鳥や蚊・馬のWNウイルス感染を突き止め証明することに焦点があてられた。2000年の伝染シーズン末までに、WN活動は北方でバーモントとニューハンプシャー州、南方でノースカロリナ州まで12州地域で突き止められている。2000年にWNが報告された211人の症例、63頭のウマ、4,304羽の鳥(1999年データを含む78種)、480のプールした蚊(14種)があった。この年間の人間の発症率は、米国で報告された人間のアルボウイルス脳炎の主な原因として、ラクロス脳炎ウイルスに続く、第 2番目に現在ランクされる。
米国でWNウイルス侵入の意味を評価し、包括的全国対応計画を作成するために、防疫センター(CDC)と米国農務省(USDA)は、アルボウイルス学者及び疫学者・検査技術者・病原媒介生物専門家・野生生物学者・州と地方の衛生及び脳症職員の会議を、コロラド州ホートコリンズで、1999年11月8-9日に共催した。この会議の自然の成り行きとして、米国内WNウイルスの監視及び予防・駆除のための勧告が、連邦及び州・地方の公衆衛生職員によって作られ、発行され、使われた。CDC及び公衆衛生研究所・その他の連邦及び州の機関が共催した、第 2番目の全国会議が、2000年のWNウイルス活動を再評価するために、ノースカロリナ州チャーロットで開かれ、勧告していた調査及び予防・駆除活動の結果を評価した。会議はそれぞれの主な指針の題目を再評価するために組織された。それぞれのセッションは、概要の講演及び、その後の米国全体から集まった専門家のパネルデスカッションから構成された。2001年会議予定及び参加者リストのコピーは、この報告に付録Aとして添付する。この第 2 回会議結果に基づいて、修正した指針が作られた。この文書はCDCのインターネットウェッブページで利用できる。
監視
監視を強めることは、影響を受けている州又は、鳥の渡りのパターン及びウイルスの広がりのためにWNウイルスによって影響を受ける危険が高い州に、強く優先されるものである。これらの州には、メーン及びニューハンプシャー・バーモントからテキサスまで、大西洋及びメキシコ湾岸までの州、現在WNウイルス活動がある州に直接接している州、カナダ,カリブ海及び中米・南米の諸国がある。州の地理的位置に応じて、活発な監視を春に実施し、晩秋まで続けるか(冷涼な気候のため蚊の活動が終わる州について)、又は冬の数か月を通じて続けるべきである(蚊の活動が一年中続くであろう南部の州)。潜在的なWNウイルス活動に直面している全州で、次の監視活動を強調すべきである。
1.活発な鳥類監視。アルボウイルス活動を野鳥及び監視用の鳥、又は両方で監視すべきである。死んだカラスと他のカラス科の鳥は、特に、地理的場所内にWNウイルスの存在を検出するための感度の良い手段である。しかし、一部の地域に関し、WNウイルス感染が突き止められる最初の鳥がカラスでないかもしれない。
2.活発な蚊の監視。蚊個体群の監視を、特定の地域内の潜在的な媒介する蚊を突き止めるのに役立て、これらの媒介者の個体群密度を監視するために、WN及び他のアルボウイルス活動の検出のために開始すべきである。1999年に、WNウイルス感染は主に鳥の血を吸う蚊に発見された。2000年に、WNウイルスに感染したほ乳類を吸う蚊も突き止められた。
3.強化された受動的な動物の監視。WNウイルス存在を検出するため及び、鳥−蚊サイクル外での伝染の程度を監視するためのバックアップシステムとして、ウマ及び他の動物の神経疾患について受動的監視(受動的監視は獣医師に対する一般的な警告によって強化される)を実施すべきである。2000年に、人間の感染は一時的にウマの感染に先立っていたが、この理由はわからない。
4.強化された受動的な人間の監視。WNウイルス存在を検出するバックアップシステムとして、人間のウイルス脳炎の症例及び、予算が許すなら無菌性髄膜炎に関する、強化された受動的監視(受動的監視は医療提供者への一般的警告によって強化される)を実行すべきである。
検査室診断
WNウイルス又は他のアルボウイルス*感染に関するあいまいでない診断は、特殊な検査室診断検査が必要である。監視活動の成功は、診断の補助を提供できる検査室が利用できることに依存する。次の最小限の検査室支援が重要である。CDC及びUSDAは必要に応じて試薬と訓練を提供しており、提供を続ける。
1.血清学。免疫グロブリン(Ig)M(IgM)及びIgG酵素リンク免疫吸収アッセイ(ELISA)は、人間と動物の血清及び脳脊髄液標本の第一線の検査を提供するために、すべての州の公衆衛生及び獣医検査室で利用できるようにすべきである。それ以外に、特定の州の衛生及び獣医、基準検査室は、特定のフラビウイルス抗体を同定するための中和検査の能力を持つべきである。
2.ウイルス単離と検出。特定の州の公衆衛生及び基準検査室はウイルス単離と同定能力を持つべきである。良く定義されたリアルタイムのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検定が開発され、発表され、実施されている。特定の検査室はウイルスRNAを検出するためにPCRの能力を持つべきである。PCRに財政的な委託ができないこれらの検査室は、プールした蚊及び鳥の組織中のWN及びセントルイス脳炎ウイルスを検出するために、直接的RNA検出及び抗体捕捉ELISAのような他の分析が利用できる。生きたウイルス又は生きたウイルスを含む可能性のある組織を取り扱う必要のある全ての検査プロトコルは、CDC/NIHの微生物及び生物医学研究室の生物安全性マニュアル Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories manual が勧告している生物安全性レベル封じ込めの下で行うべきである。最後に、特定の州公衆衛生及び基準検査室は、剖検組織でWNウイルスを検出するために、免疫組織化学を行う能力を持つべきである。
抑制と駆除
現在、人や他の動物へのWNウイルス及び他のアルボウイルスの伝染を防止する又は、一度伝染が始まった流行を抑制するための最も有効な方法は、蚊駆除を通じて人間の被ばくを減らすことである。人間と家畜の病気を予防するために、州及び地方の衛生部は適切な蚊駆除能力を持たなければならない。WNウイルス活動に基づく対応規則集を指針の表1に示す。【訳注:末尾に示してある】
1.蚊軽減区mosquito abatement district。蚊を駆除する最も効果的で経済的な方法は、幼虫の発生源減少である。蚊個体群を監視し、人間と家畜に病気の伝染が起こる前に駆除を開始する、地域的に資金提供を受けた軽減計画を通じて最もうまく行われることを、経験が示している。これらの計画は、ウイルス活動がある地区で検出され、又は人間の病気が報告されたなら、又はその場合、蚊駆除のための第一線の緊急対応としても使うことができる、殺虫剤の空中散布による蚊の成虫個体群駆除は、通常最終手段としてとっておかれる。
2.一般人援助。生物媒介病に関するあらゆる予防抑制計画の重要な要素は、これらの病気について、どのように伝染するかを、及び予防又は被ばくの危険を減らす方法を一般人に教育することである。一般人教育は、目的とする集団に情報を効果的に伝えるために、行動科学及びソーシャルマーケッテイング方法を使うべきである。
公衆衛生のインフラストラクチャー
WNウイルスによって起こる病気を含む、生物媒介病の効果的な監視及び予防・抑制は、地域及び州衛生部内財源の優先度の再評価を必要とするだろう。現在、2、3州及びさらに少ない地方保健部が、生物媒介病に適切に対処するために職員又は人材を教育している。各州の保健部は少なくとも、昆虫学と動物保健の能力、訓練された職員がいる適切な設備のある検査室を含む、機能的なアルボウイルス監視及び対応能力を持つべきである。最終的に、アルボウイルスの毎年のリスクは、アルボウイルスを取り扱う州の活動程度を決定するだろう。
管轄間のデータ共有
WNウイルスは、人間を含む多数の動物に影響を及ぼす動物病原性感染症である。効果的な監視と対応は、連邦及び州・地方公衆衛生及び媒介生物駆除・農業・野生生物の部局を含む、多数の機関の間の協調とデータ交換を必要とする。情報及びデータの交換は、許可されたユーザーがアクセスできる安全な電子的コミュニケーション、すなわちリストサーバー及びウェッブサイトを通じて促進される。2000年に指針の実行を支援するために、CDCは人間やウマ・ほ乳動物・鳥・蚊でWNウイルス活動を追跡するため、電子的な監視及び報告システム(アルボネット)を作った。アルボネットの詳細は指針の付録Bに詳細を示す。
研究の優先度
どうして、なぜWNウイルスの流行が起こるか及び、西半球にこの侵入の公衆衛生と動物の健康に意味すること、有効な予防戦略の作成を理解することは、かなりの研究を要するだろう。優先度の高い研究題材の一部には次のものがある。
・現在と将来の地理的分布
・ウイルス拡散の機構としての鳥の渡り
・病原媒介生物の関連と範囲
・脊椎動物の宿主の関連と範囲
・ウイルスの持続性の機構
・蚊の生物学と行動
・蚊駆除方法
・蚊の監視法
・予防戦略の作成と評価
・改善された検査室診断検査
・人間で病気の臨床的スペクトラム及び長期予後
・風土病地域のリスク因子の研究
・ウイルス病原
・病原性の遺伝的関連と分子的基礎
・動物と人間のためのWNウイルスワクチン開発
・WNウイルスの抗ウイルス療法
・流行の経済的分析
・野生生物への影響
・人間に対する農薬影響の評価
・米国にWNが入った方法
参考資料2
表1.ウェストナイルウイルス監視データに対する段階的対応のために示された指針
CDC指針 p.38
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| WNウイルス対応計画の作成。緊急対応をするために必要な監視及び駆除手段を確実にする。共同体援助と一般人教育計画の開始 |
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| 春又は夏・秋;この地域で以前又は現在のWNウイルス活動がないことに基づき、2001年にWN流行するとは思われない地域 |
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| 0分類のような対応、さらに、昆虫学的監視(目録と地図、蚊集団、指針のためにAMCA及び他のマニュアルを見よ):共同体援助及び一般人教育;鳥の死亡率、人間の脳炎・髄膜炎、ウマの調査 |
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| 春又は夏・秋:この地域で以前又は現在のWNウイルス活動に基づき、2001年にWNの動物での流行が予想される;この地区で動物でのウイルス活動を現在の調査所見は指示しない。 |
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分類1aの対応、さらに;発生源削減、昆虫学的調査によって突き止められ、媒介生物種と橋渡しを増加させると思われる所を標的として、特定の発生源で殺幼虫剤の使用;鳥類の死亡率・媒介生物・ウイルス監視を維持する;発生源削減を強調した一般人教育
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春又は夏・秋;鳥又は蚊でウイルスの動物での流行活動が初めて又は散発的・限定的にある地域
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| 分類1bの対応、さらに;幼虫駆除と発生源削減を強化及び、特に高齢者で個人防御対策を強調した一般人教育。人間の監視の強化及び動物での流行活動(すなわち、蚊のわな及び検査)の調査。人間のリスク増加の可能性があることを監視が示したなら、局所的又は標的を定めた蚊の成虫駆除を考慮 |
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| 春又は夏・秋;ウマ又は人間でWNウイルスが又は鳥や蚊で中程度のWNウイルス活動が初めて確認された場所 |
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分類2の対応、さらに:人間の危険が続く又は増加するだろうと監視が指示したなら、蚊の成虫駆除を強く考えよ
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| 春又は夏・秋;定量的測定が人間感染のリスクが高いことを示すレベルで、動物での流行活動を示す(例えば、死んだ鳥密度が高い、蚊の感染率が高い、ウマやほ乳類の症例が動物での伝染流行がエスカレートしていることを示す、人間の症例と高いレベルの動物流行活動)、及び大量の大人の媒介生物 |
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分類3の対応、さらに:一般人への情報伝達計画にTVとラジオ・新聞を含めて、拡大する(忌避剤使用・個人防護・発生源削減を続ける・蚊の成虫駆除に関する危険を連絡)、又は人間症例の活発な監視の継続;潜在的に人間の危険がある場所を標的とした蚊の成虫駆除計画の実施
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複数の確認された人間の症例;人間に伝染が続くのに好適な条件(レベル3をみよ)
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| 分類4の対応、さらに:蚊の成虫緊急駆除計画の実施又は強化、蚊の成虫駆除に関する危険の連絡を強化、標的蚊個体群への散布の有効性の監視、もし急増が広汎で複数の管轄にわたるなら、WNウイルス緊急事態計画として、広範囲空中散布を考慮せよ |
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最終更新 2003.7.10
掲示 2003年 6月16日