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α−ナフタリン酢酸
 
別名:α−ナフタリン酢酸、1-ナフタリン酢酸、1-naphthaleneacetic acid、α-naphthaleneacetic acid
 
商品名:ナフサク、ヒオモン
 
植物成長調整剤として使われ、オーキシン類に分類される。1964年に登録されたが、1976年に失効した。園芸用の発根促進剤などに利用されている。無登録状態で農作物の栽培に使用され、問題になっている(参考
 
 
毒性
 
急性毒性は低いと考えられている。
 
致死量


 
経口

経皮
ラット
マウス
ウサギ
1000-5900 mg/kg(Cal EPA 2001)
670 mg/kg ( PMEP)
5000 mg.kg以上(Cal EPA 2001)
 
この物質は吸入、皮膚や眼との接触、嚥下によって体に侵入すると思われる(AMVAC 1999)。その結果、過剰被ばくによって皮膚や眼・粘膜の刺激が生じる。飲み込んだ場合は、酩酊や頭痛、吐き気、おう吐、腹痛が現れることがある (ANVAC 1999)。
 
 
慢性毒性
 
慢性毒性は弱いと考えられているが、多量に投与した場合、肝臓や腎臓、副腎、膀胱、肺、胃、血液等への影響が見られている。カリフォルニア州環境保護庁(Cal EPAと省略)が1999年に作成し、2001年に改訂した1-ナフタリン酢酸に関する「毒物学データの要約」(Cal EPA 2001)に記載された内容を中心として紹介する。
 
肝臓
 
5000 ppmを含む餌を投与すると、肝臓の相対重量が増加し、肝小葉の中心部(中心静脈に近い部位で肝障害時に影響を受けやすい)ではグルコース代謝に関連する酵素などが消失した。この所見は肝障害を示していると思われる(Verschuurenn et al. 1976)。
 
イヌの経口投与実験では、類洞の組織球症が見られた (Cal EPA 2001)。
 
 
ラットに1000 ppm又は5000 ppmを含む餌を与えると、雌で肺胞のマクロファージ(大食細胞)の増加が見られた (Cal EPA 2001)。マクロファージは食作用を持つ大形細胞で、細菌などの異物や生体内の老廃物などを取り込んで消化する。また抗原となる物質を取り込んで、リンパ球に伝えるなどの役目を持ち、炎症のある場所に遊走する。又5000 ppm餌投与雌では、肺胞に局所的な慢性炎症が見られた (Cal EPA 2001)。
 
 
5000 ppmの餌を与えた雌雄のラットで、腺胃で粘液を分泌する腺が拡張した(Cal EPA 2001)。
 
イヌに74 mg/kg/日の割合で52週間投与した場合、胃に病巣が見られた(Cal EPA 2001)。
 
副腎
 
8000 ppmの1-ナフタリン酢酸を含む餌を投与したラットで、副腎皮質の球状帯の肥大が見られた。この肥大は2000 ppmの餌を与えた雌でも見られた (Cal EPA 2001)。副腎皮質は外側から球状帯、束状帯、網状帯に分けられ、球状帯からはアルドステロンなどの鉱質(ミネラル)コルチコイドが分泌され、腎臓の機能をコントロールする。
 
その他
 
イヌに 75 mg/kg/日、52週間投与で骨髄で細胞減少が見られた (Cal EPA 2001)。また、450 mg/kg/日、13週間投与で、血液中の赤血球数やヘマトクリット、ヘモグロビン、AST、ALT(=GPT)、全ビリルビンの値が減少した (Cal EPA 2001)。
 
ラットに1-ナフタリンを餌に混ぜて投与すると、体重増加や餌摂取の減少が見られた(雌、1000 ppm, 5000 ppm)(Cal EPA 2001)。
 
5000 ppm餌投与のラットで甲状腺や精巣、脳などの相対重量が増加した(Verschuurenn et al. 1976)。
 
ラットで膀胱の粘膜細胞の肥大が観察されている (Cal EPA 2001)。
 
イヌに450 mg/kg/日、52週間投与した場合、前立腺や精巣、精巣上体が小さくなり、精巣萎縮や精子の無又は低形成が見られている (Cal EPA 2001)。
 
300 mg/kg/日、6か月間投与によって、眼の網膜の浮腫及びブドウ膜炎が見られた (Cal EPA 2001)。ブドウ膜は虹彩、毛様体、脈絡膜を総称し、この部の炎症はブドウ膜炎と呼ばれる。炎症の影響は長く残り、視機能に影響を与える。
 
発癌性
 
5000 ppm餌投与の雌で良性の子宮内膜間質ポリープが見られ、発癌影響の可能性がある (Cal EPA 2001)。AMVAC社のMSDSでもこの事実を指摘している(AMVAC 1999)。
 
マウスでは発癌性はないと報告されているが、報告は不十分であるという (Cal EPA 2001)。
 
変異原性
 
変異原性はないと考えられている (Cal EPA, 2001)。
 
生殖毒性
 
3000 ppmを含む餌を与えたラットの二世代研究で、子ラットの体重減少、体重増加減少、生存率の低下が見られた。また、6000 ppmの餌を与えた二世代研究では、生きたまま産まれる子の減少、一腹の子の減少、胎児と子の生存率の低下が見られている (Cal EPA 2001)。
 
 
生態影響
 
生物濃縮
 
模擬的な環境中で、かなり急速に分解されるが、魚で498倍、巻き貝で169倍に濃縮される(Suzuki et al. 1975)。
 
 
参考文献
 
AMVAC Chemical Corrporation, K-Salt Fruit Fix 800, AMVAC MSDS No.188-6 (1999).
 
California Environmental Protection Agency, Departmentt of Pesticide Regulation, Medical Toxicology Branch, Summary of Toxicology Data, 1-Naphtaleneacetic Acid, Chemical Code # 423, Tolerance # 155, SB 950 # 164, 1-Naphthaleneacectic acid sodium salt, Chemical Code #761, Tolerance # 50784, SB 950 # 761, 1-Naphthaleneacetic acid, ethyl ester, Chemical Code # 749, Tolerance # 155, SB 950 # 759, 1-Naphthaleneacetamide Chemical Code # 422, Tolerance # 309, SB 950 # 765 (2001).
 
The Pesticide Management Education Program at Cornell University (PMEP), 1-naphthaleneacetic acid (NAA) Herbicide Profile 3/85 (2001).
 
Tsuge S, Kazano H, Suzuki K, Kashiwa T, Tomizawa C, Biological condensation of alpha-naphthaleneacetic acid in a model ecosystem. Noyaku Kensasho Hokoku (Bull. Agric. Chem. Inspect. Stn.) 15: 36-40 (1975).
 
Verschuurenn HG, Kroes R, Den Tonkelaar EM, Van Esch GJ, Helleman PW, Short-term toxicity of 1-naphthaleneacetic acid in rats. Toxiccology 5 (3) 371-378 (1976).
 

 
掲示 2002年9月6日