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農薬の性ホルモン受容体への影響
 
農薬がホルモンの働きに影響を与えること(内分泌かく乱)はいくつかの報告で報告されている(例えばフェニトロチオン)。しかし、検査方法が研究によってまちまちであり、研究相互及び農薬相互間の比較は困難であった。
 
内分泌かく乱物質(ほぼ環境ホルモンと同じ)は、ホルモンの受容体に影響を及ぼすことによって作用を発揮する場合がある。ホルモンが受容体に影響を及ぼし、次に受容体から細胞内信号伝達系を介してDNAの転写活性に影響を及す。この結果、特定のタンパク質などの合成が引き起こされる。
 
北海道立衛生研究所のKojimaらは、エストロゲン及びアンドロゲンの受容体に対する200種類という多数の農薬の影響を調べるという精力的な研究を行った。彼らはチャイニーズハムスター卵巣細胞に人間のエストロゲン受容体(ER)及びアンドロゲン受容体(AR)を組み込み、200種類の農薬に対する受容体の反応をリポータージーンアッセイを用いて調べた。
 
エストロゲン受容体(ER)には古典的なα(アルファ)受容体(ERα)と、最近発見されたβ(ベータ)受容体(がある。ERαはエストラジオールなど女性ホルモンに高い親和性を示すが、ERβはゲニスタインやアルキルフェノールなどといったいわゆるホルモンかく乱物質に高い親和性を示すとされている。彼らは2種類の受容体のそれぞれに対する影響も調べた。
 
彼らの結果は多数の農薬が性ホルモン受容体に影響を及ぼすことを示し、農薬の内分泌かく乱作用のスクリーニングとして重要な結果を示した。このように多くの農薬が性ホルモン受容体に影響を与えることは、注目に値する。農薬が性ホルモン受容体に影響を与えることと、動物でその影響が直接現れることとは同じではないが、スクリーニングとしての意味は大きく、又農薬毒性を見当する場合に注意する必要があるだろう。Kojimaらの研究結果を表の形で次に掲示する。
 
 
文献
Kojima H, Katsura E, Takeuchi S, Niiyama K, Kobayashi K, Screening for estrogen and androgen receptor activities in 200 pesticides by in vitro reporter gene assays using Chinese hamster ovary cells. Environmental Health Perspectives 112(5 )524-531 (2004).
 
 

 
表:農薬の性ホルモン受容体に対する影響
 
以下の表はkojima ら(2004)の論文から作成した。彼らは作用の強さを示しているが、ここでは簡単に分かるように作用の有無のみを示した。○はエストロゲン受容体α(ERα)及びエストロゲン受容体β(ERβ)で農薬が受容体を活性化したことを示し、アンドロゲン受容体(AR)でテストステロンの働きを阻害したことを示す。(女性ホルモン様作用を持つこと、又は抗男性ホルモン作用を持つこと)





























 
1.有機塩素 ERα ERβ AR
α-BHC    ○  
β-BHC  ○  ○  
γ-BHC    ○  
δ-BHC  ○  ○  
p,p´-DDD  ○  ○  ○
p,p´-DDE  ○  ○  ○
o,p´-DDT  ○  ○  ○
p,p´-DDT  ○  ○  ○
アルドリン Aldrin  ○    
α-エンドスルファン α-Endosulfan  ○  ○  ○
β-エンドスルファン β-Endosulfan    ○  ○
エンドリン Endrin  ○    
キャプタン Captan      
キントーゼン Quintozene      
cis-クロルデン cis-Chlordane  ○  ○  ○
trans-クロルデン trans-Chlordane  ○  ○  ○
クロロタロニル Chlorothalonil      
クロロプロピレート Chloropropylate  ○  ○  ○
クロロベンジレート Chlorobenzilate  ○    ○
ジクロベニル Dichlobenil      
ジコホル Dicofol  ○  ○  ○
ディルドリン Dieldrin  ○    ○
フタリド Fthalide      
ヘプタクロル Heptachlor    ○  
ヘプタクロルエポキシド Heptachlor epoxide  ○  ○  ○
ペンタクロロフェニル Pentachlorophenol      
ホルペット Folpet      
メトキシクロル Methoxychlor  ○    ○
硫酸エンドスルファン Endosulfan sulfate  ○  ○  
 
 











 
2.ジフェニルエーテル Diphenyl ether (数= 11) ERα ERβ AR
アシフルオルフェン Acifluorfen      
アシフルオルフェンメチル Acifluorfen-methyl      ○
オキシフルオルフェン Oxyfluorfen  ○    
クロルニトロフェン(CNP) Chlornitrofen  ○    ○
クロルニトロフェンアミノ Chlornitrofen-amino  ○    ○
クロロキシウロン Chloroxuron    ○  ○
クロロメトキシフェン Chlomethoxyfen      
ジクロホップメチル Diclofop-methyl      ○
ニトロフェン Nitrofen      
ビフェノックス Bifenox      ○
フルアジノホップブチル Fluazifop-butyl      ○
 
 
























































 
3.有機リン農薬 Organophosphorus pesticides (数 = 56) ERα ERβ AR
EPN  ○  ○  ○
アセフェート Acephate      
アニロホス Anilofos      ○
イソキサチオン Isoxathion  ○    
イソフェンホス Isofenphos  ○    ○
イプロベンホス Iprobenfos      
エチオン Ethion  ○  ○  ○
エデイフェンホス Edifenphos      
エトプロパホス Ethoprophos      
キナルホス Quinalphos  ○  ○  ○
グリホサート Glyphosate      
クロルピリホス Chlorpyrifos      
クロルピリホスメチル Chlorpyrifos-methyl      
シアノフェンホス Cyanofenphos  ○    
ジクロフェンチオン Dichlofenthion  ○  ○  ○
シアノホス Cyanophos    ○  ○
ジクロルボス Dichlorvos      
ジメトエート Dimethoate      
ジオキサベンゾホス Dioxabenzofos      
ダイアジノン Diazinon      
ダイスルホトン Disulfoton      
ターブホス Terbufos      
チオメトン Thiometon      
テトラクロルビンホス Tetrachlorvinphos      
トルクロホスメチル Tolclofos-methyl  ○  ○  ○
トルクロホスメチルオクソン Tolclofos-methyl oxon  ○    
トリクロルホン Trichlorfon      
バミドチオン Vamidothion      
パラチオン Parathion      ○
ピペロホス Piperophos      ○
ピリダフェンチオン Pyridaphenthion      
ピリミホスメチル Pirimiphos-methyl  ○    
フェナミホス Fenamiphos      
フェニトロチオン Fenitrothion      ○
フェニトロチオンオクソン Fenitrothion oxon      ○
フェンスルフォチオン Fensulfothion      
フェンチオン Fenthion      ○
フェンクロルホス Fenchlorphos      
フェントエート Phenthoate  ○    
プロパホス Propaphos      ○
プロフェノホス Profenofos      
ブロモホスエチル Bromophos-ethyl  ○  ○  ○
ブロモホスメチル Bromophos-methyl  ○  ○  
ブタミホス Butamifos  ○    ○
プロチオホス Prothiofo  ○  ○  
プロチオホスオクソン Prothiofos oxon      
ホサロン Phosalone      ○
ホスメット Phosmet      
ホレート Phorate      
マラチオン Malathion      
メカルバム Mecarbam      
メタミドホス Methamidophos      
メチダチオン Methidathion      
メチルパラチオン Methyl-parathion      ○
モノクロトホス Monocrotophos      
レプトホス Leptophos  ○  ○  
 
 












 
4.ピレスロイド(数=12) Pyrethroids ERα ERβ AR
 エトフェンプロックス Etofenprox      ○
 シフルトリン Cyfluthrin  ○    ○
 シハロトリン Cyhalothrin      
 シペルメトリン Cypermethrin  ○    
 テフルトリン Tefluthrin      
 デルタメトリン Deltamethrin      
 トラロメトリン Tralomethrin      
 ピレトリン Pyrethrin      
 フェンバレレート Fenvalerate  ○    ○
 フルシトリネート Flucythrinate      ○
 フルバリネート Fluvalinate      
 ペルメトリン Permethrin  ○    
 
 
.






















 
5.カルバメート (数 = 22) ERα ERβ AR
イソプロカルブ Isoprocarb      
エスプロカルブ Esprocarb      
エチオフェンカルブ Ethiofencarb      
オキサミル Oxamyl      
カルバリル Carbaryl      
カルベンダジム Carbendazim      
カルボフラン Carbofuran      
クロルプロファム Chlorpropham      
ジエトフェンカルブ Diethofencarb      
ジメピペレート Dimepiperate      
チオベンカルブ Thiobencarb      ○
チオベンカルブスルフォン Thiobencarb sulfon      
チラム Thiram      
ピリブチカルブ Pyributicarb      
ピリミカルブ Pirimicarb      
フェンメデファム Phenmedipham      
ベンジオカーブ Bendiocarb      
ベノミル Benomyl      
フェノブカルブ Fenobucarb      
メチオカルブ Methiocarb  ○  ○  ○
メソミル Methomyl      
モリネート Molinate      
 
 











 
6.酸アミド Acid amides (数 = 11) ERα ERβ AR
    アラクロル Alachlor      ○
アシュラム Asulam      
カフェンストロール Cafenstrole      
テニルクロル Thenylchlor  ○  ○  ○
プレチラクロル Pretilachlor      
プロピザミド Propyzamide      
フルトラニル Flutolanil      
メタラキシル Metalaxyl      
メトラクロル Metolachlor      
メフェナセッット Mefenacet      ○
メプロニル Mepronil      
 
 







 
7.トリアジンTriazines (数= 7) ERα ERβ AR
アトラジン Atrazine      
アニラジン Anilazine      
シマジン Simazine      
シメトリン Simetryn      
プロメトリン Prometryn      
プロメトン Prometon      
メトリブジン Metribuzin      
 
 








 
8.尿素(数= 8) ERα ERβ AR
ジウロン Diuron      ○
ジブルベンズロン Diflubenzuron      
ダイムロン Daimuron      
ペンシクロン Pencycuron      ○
プロクロラズ Prochloraz      ○
プロパニル Propanil      ○
ベンスルフロンメチル Bensulfuron-methyl      
リニュロン Linuron      ○
 
 
.












































 
9.その他 (数 = 44) ERα ERβ AR
MCPA      
2,4-D      
アイオキシニルオクタノエート Ioxynil octanoate      
アミトラズ Amitraz      
イソプロチオラン Isoprothiolane      
イプロジオン Iprodione      
イミダクロプリド Imidacloprid      
イミノクタジン Iminoctadine      
イマザリル Imazalil      ○
インダノファン Indanofan      
エトキシキン Ethoxyquin      ○
クロリダゾン Chloridazon      
ジクワット Diquat      
セトキシジム Sethoxydim      
ダゾメット Dazomet      
チアベンダゾール Thiabendazole      
チオシクラム Thiocyclam      
チオファネートメチル Thiophanate-methyl      
チオメチオナート Chinomethionat      
トリアジメフォン Triadimefon      
トリシクラゾール Tricyclazole      
トリフルミゾール Triflumizole      ○
トリフルラリン Trifluralin      
トリホリン Triforine      
パラコート Paraquat      
ビフェニル Biphenyl      
ビテルタノール Bitertanol      ○
ピラゾキシフェン Pyrazoxyfen      ○
ピラゾリナート Pyrazolynate      
ピロキロン Pyroquilon      
ビンクロゾリン Vinclozolin      ○
フェナリモル Fenarimol  ○  ○  ○
2-フェニルフェノール Phenylphenol      ○
フェリムゾン Ferimzone      
フルアジナム Fluazinam      
プロシミドン Procymidone      ○
プロピコナゾール Propiconazole      ○
プロベナゾール Probenazole      
ブロムプロピレート Bromopropylate  ○  ○  ○
ベンゾキシメート Benzoximate      
ベンタゾン Bentazone      
ペンディメタリン Pendimethalin  ○  ○  ○
ベンフレサート Benfuresate      
レナシル Lenacil      
    Kojima et al. (2004)
 

    掲示 2004年 9月 7日 渡部和男 メール