【文献紹介】
 
エチレンチオウレアと甲状腺障害
 
多用されているマネブなどのジチオカーバメート系殺菌剤及びその代謝物と甲状腺障害との関連が指摘されている。パンガニバンらの研究グループは、これらの殺菌剤に被ばくしたフィリピンのバナナプランテーション労働者で、血中の殺菌剤代謝物と甲状腺障害の関連を明らかにした。
 
Panganiban L, Cortes-Maramba J, Dioquino C, Suplido ML, Ho H, Francisco-Rivera A, Manglicmot-Yabes A. Correlation between blood ethylenethiourea and thyroid gland disorders among banana plantation workers in the Philippines. Environental Health Perspective 112(1)42-45 (2004).
 
マンネブ(マネブ、商品名エムダイファーなど)やマンゼブ・ジラムは多用されている殺菌剤である。これらの殺菌剤はジチオカーバメート系に属し、エチレンチオウレア(ETU)に代謝・分解される。ETUは消化器から急速に吸収され、排泄されることが知られている。ETUは国際癌研究機構(IARC)によって発癌物質(Ub)に分類されており、抗甲状腺作用を持つ化合物である。
 
これらの殺菌剤は甲状腺の過形成を誘導し、ジラムはラットで甲状腺腫瘍を発生させることが知られている。人間でもジチオカーバメート剤チウラムthiram被ばくが甲状腺障害の発生を増加させ、悪性甲状腺腫瘍発生例も報告されている。しかし、これらのジチオカーバメート系殺菌剤の影響に関する疫学調査は少ない。
 
マニラのフィリピン医科大学のグループは、バナナプランテーション労働者を対象に、殺菌剤の代謝物ETUと甲状腺障害との関連を調べた。
 
4つのバナナプランテーションから直接被ばくした57人の労働者と間接的に被ばくした31人の労働者、及び有機農場からの43人の労働者を選び、検査を行った。
 
エチレンビスジチオカーバメートを使用していた労働者17人及び有機農場労働者2人に甲状腺肥大が見られた。甲状腺腫発生には有意差は見られなかった。
 
被ばくした労働者は対象と比較して甲状腺刺激ホルモンの高い平均測定値を示したが、このレベルは正常範囲内であった。9人の被ばくした労働者に異常な超音波所見があり、ほとんどが孤立性結節からなっていた。
 
直接被ばく及び間接被ばく・対照群との間で血中ETUレベルは有意差を示したが、尿中ETUレベルには有意な差がなかった。環境中ETUレベルは米国環境保護庁の改善レベルremediation levelより低かった。孤立性甲状腺結節患者中で、結節の大きさと血中ETUレベルとの間に直接的関連を発見した。
 
この研究中で、尿中ETUよりも血中ETUがEBDC被ばくのより信頼できる生物指標であり、そのため血中ETUの定量は甲状腺障害発生を検出するためにEBDCに曝された労働者の間で医学調査の一部にすべきであることが示された。
 

 
掲示 2004年 2月14日 渡部和男
 
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