下水汚泥リサイクル肥料と行動異常
雄子ヒツジの行動の雌化
 
下水やし尿をを処理した際に生じる汚泥の有効利用又はリサイクルとして肥料が作られ、配布されている。[例えば参考1−3]。さらには工場排水の汚泥からも生産されている。[4]。
 
これらの汚泥が畑などに使用された場合、収穫された農産物や畑の汚染、周辺環境に対する影響は良く分かっていない。下水汚泥肥料から高濃度の鉛[5]や水銀[6−8]が肥料取締法基準を超過したレベルで検出されている。
 
微量の人工化学物質が人間の健康及び環境に与える影響が懸念されており、河川水や下水処理場からの放流水が水生生物、特に魚に与える影響は良く知られているが、下水汚泥からリサイクルした肥料の影響はほとんど不明であった。
 
英国のマッコーレイ研究所のエアハルトとリンドは下水中の環境汚染物質がヒツジの行動を変化させるかどうか調べた。一群(対照群)は普通の牧草で飼育した雌ヒツジの子で、他の一群は下水汚泥を肥料として用いて栽培した牧草で飼育した雌ヒツジの子で、情動的反応と探索行動をを調べた。[9]
 
5か月齢両群のヒツジを調べたところ、下水汚施肥培牧草の子羊は対照群より活動が少なく、鳴き声を多く出した。
 
また雌のヒツジは雄よりも周囲を探索する行動が多いことが対照群で知られているが、汚泥施肥牧草を与えた群では、雌雄に差がなかった。このことは雄ヒツジの雌化を示していると、この研究者らは考え次のように述べている。「これらの観察は非常に低い環境濃度であっても汚染物質の組合せの影響を考慮に入れる必要を証明して」いる。
 
この研究で重要なことは、下水汚泥の施肥によって牧草に取り込まれた「環境汚染物質」(又は汚染物質の組み合わせ)が、環境濃度に近いレベルでヒツジの雌化を起こす可能性があること、今までは検査もされていない微妙な行動学的変化を引き起こすことである。
 
下水汚泥のリサイクルとして肥料が作られているが、リサイクル肥料の安全性を確保するためには重金属などの現在の検査以外に、ホルモン攪乱物質及びその肥料の総合的な安全性を、行動学的影響を含めて検討しなければならない。下水汚泥には数千種類の低レベル化学物質が存在すると考えられている。[10]
 
なお、紹介した研究の分野は、今後注目し続けなければならない。
 
 
参考
 
1.バラの親木と肥料を無料配布−富士・中央公園で「緑と花の百科展」/静岡、毎日新聞 2004年10月11日。
 
2.[交差点]下水道まつり開かれる−−二本松 /福島 毎日新聞 2004年9月12日。
 
3.有機質富む肥料「すくすく君」無料配布へ 小山広域クリーンセンター生産=栃木 - 読売新聞 2004年8月3日
 
4.工場汚泥、肥料に 富士通沼津工場のし尿施設から生成 格安販売へ=静岡 - 読売新聞2002年12月14日
 
5.下水汚泥肥料から高濃度鉛 恵庭の会社製造=北海道 - 読売新聞 2002年12月25日
 
6.汚泥再生肥料から水銀検出 基準値の40倍超 鹿西町中部浄化センター生産 /石川 - 毎日新聞 2003年5月22日。
 
7.肥料から水銀、基準の3.5倍 夷隅町のし尿処理施設製造=千葉 - 読売新聞2003年5月29日
 
8.[情報ファイル]し尿肥料から水銀−−農水省 - 毎日新聞 (199文字) 2003年5月29日(木)
 
9.Erhard HW, Rhind SM, Prenatal and postnatal exposure to environmental pollutants in sewage sludge alters emotional reactivity and exploratory behaviour in sheep. Science of The Total Environment 332(1-3) 2004.
 
10.Edwards, R. Alert as gender bending sewage alters lambs' sex. Fears for human health after scientific study reveals loss of male characteristics. Sunday Herald - 2004年11月21日
 

 
掲示 2004年11月22日 渡部和男
 
 
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