死体腎移植の実際(1)

  「腎移植手帳」から

以下に示すのは、私の手元にある、R愛知県腎臓財団編集「腎移植手帳」によるものである。従つて、これは臓器移植法案成立以前のものである。しかし、基本的な手続き等は変はつてはゐないのではないかと思はれる。この点を、予めお断りしておく。

           

 

1、死体腎移植登録後

 組織適合検査が済み、R愛知県腎臓財団に登録されますと「腎移植を行いますよ」という連絡はいつ入るかわかりません。連絡は昼夜を間わず突然です。また、移植後は約1〜2ヵ月の入院が必要ですのでその旨を職場や家族の方々にも十分承知しておいていただく必要があります。突然の連絡に驚かれる方が大半ですが、いつでも腎臓移植が受けられる心の準備と、良い自已管理により安定した透析を施行していることが重要です。1年間腎移植ができなかった場合、R愛知腎臓財団より登録更新の連絡があります。それに従って名古屋第二赤十字病院にて組織適合検査のための採血をしてください。もし登録を更新されない場合、自動的に死体腎移植移植リストからはずれ、死体腎移植をうけられなくなりますからご注意下さい。

 

2、死体腎提供が発生した時

 不幸にして尊い命を失い、ご本人またはご遺族の御厚意により腎臓を提供される事が許されますと、直ちにその方の組織適合検査が施行されます。この検査には約7時間の時間が必要です。腎臓バソクに登録された方の血液型、組織適合型は常時コソピューターに入力されています。腎臓を提供される方の血液型、組織適合型をコソピューターに入力しますと組織適合が良い患者さんのリストがコソピューターより打ち出され、この中からよく合っている人から順に連絡(多くは電話)がされます。その際、現在腎移植を受ける意志が有るのか否か、あれば現在の身体の具合いはどうかが確認されますのではっきりと答えて下さい。腎移植OKの返事をいただいた人を数名選び出します。また透析施設の主治医の先生にも運絡いたしますので透析施設にて必要事碩を記入していただいて、指定された移植施設(ぺ一ジ2 6参照)へ出来るだけ早く来院して下さい。その際持参していただく物品については別記(ぺ一ジ26)します。移植施設を受診していただくと数人の侯補者の中より二人の方を選びます。必要があれば血液透析、輸血などを施行し手術の準備をします。しかし場合によっては提供していただく方の事情により移植が中止されることもあります。

 

3、腎臓移植手術後

 手術は全身麻酔により施行されます。移植腎は下腹部の腸骨窩に移植され、尿管は膀胱に吻合されます。(下図参照)

 手術後すぐに尿が出れば良いのですが、死体腎移植の場合、提供者の摘出までの状態、あるいは摘出されてから移植されるまでの時間によってはすぐに尿が出ないことがあります。その場合は透析をしながら尿が出るのを待ちます。手術後、拒絶反応を抑える免疫抑制剤の内服、水分の管理など、自己管理が必要ですが要領は各移植施設にて教育して貰えますのでご安心下さい。

 シクロスポリソという免疫抑制剤の導入により死体腎移植の成績も著しく向上し生体腎移植の成績と大差無くなりました。1年後に移植した腎臓がうまく働いている確率は約80%です。入院は約1〜2ヵ月で、順調であれば移植後3ヵ月目には職場復帰も可能です。腎移植について更に詳しくお知りになりたい方は各移植施設におたずね下さい。

(R愛知県腎臓財団編集「腎移植手帳」より)